4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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朧月夜の恋~さくらの木の下で  (9)さくらと共に・・・【完結】

 無事に将直さんは日本に帰ってきてくれたの。とても苦労したみたい・・・。とても痩せてしまって、こっちに帰ってきてひと月くらいちょっと表情に生気がなかった。私は精一杯の愛で、将直さんを慰め、助けてあげたの。するといつもの明るくて優しくて爽やかな将直さんに戻ったの。将直さんは海外での生活のことを詳しく話さないけれど、きっといろいろ大変だったのかなって思った。そして将直さんは昇進して一等陸佐になったの。

朧月夜9
 そして博雅は防衛大学校に首席合格。はれて幹部自衛官への道を踏み出したの。防大は全寮制・・・。私は将直さんが非番の日、博雅を連れて、必要なものを買いに行ったり、いろいろ忙しい日々を過ごしたの。




 最近ちょっと体調が悪いのよね・・・。きっと風邪なんだわ。それとも更年期障害かしら・・・。もう私もいい歳だもの・・・。




 この日は博雅の入校式。私はとびっきりの着物を着てみんなで防大前で記念撮影。将直さんは防大の防衛学の教官としてこの春から派遣されたの。私たちも防大近くの官舎に引っ越してきた。博雅は入校式のあと私に笑顔で行って来ますと敬礼。これから近くに住むって言っても博雅は学校内の宿舎だし、週末にのみ私たちと会うことが出来るの。本当にここ数年で博雅は大人になってひとり立ちしていく。私は今まで博雅の子育ての苦労が一瞬でとんでいったような気がしたの。ホントにいい子に育ってくれた。親孝行のいい子に・・・。




 私は数日後、体調の悪さから病院に行ったの。すると先生は将直さんを呼んで何か話しているのよ。そして即入院。




「将直さん。どうして入院を?」


「ん?子宮筋腫だって・・・。手術しないといけないらしいから、即入院になったんだよ。綾子、いい休みをもらったと思ってゆっくりしたらいいよ・・・。」




なんか将直さんの態度がおかしいの。将直さんは嘘が苦手な人・・・。すぐ顔に出てしまうのよ。もう20年も一緒にいるのよ。それくらいわかる。




きっと何か重病なんだわ・・・。筋腫くらいで即入院だなんてありえない。




「将直さん、何か隠していない?はっきり言って・・・。嘘ついているんでしょ。もしかして私、癌???」




すると将直さんは重い口を開いたの。




「じゃあはっきり言うよ。綾子が言うように癌だったんだよ・・・。それも・・・末期の・・・。」


「え?」


「先生に余命1年といわれてしまった。でもこれは何もしなかったときのことだから・・・。治療すれば延ばすことが出来るって・・・。」


「でも死んじゃうのは確かなんでしょ。まだ私には小さな娘たちがいるのよ。」


「でもしょうがないんだ。全身に転移している可能性があるんだから・・・。だから今度手術して少しでも悪いものを採って、抗がん剤で治療を・・・。綾子、がんばろう・・・。少しでも子供たちのために長生きできるように・・・。」




私は決意したの。まだ小さな娘たち、そして博雅のためにも少しでも長く生きることができるように・・・。




もちろん子供たちには私の病名は言わなかった。私は副作用に襲われながら一生懸命生きる努力をしたの。いい新薬が出来たと聞くといろいろ試したりもした。神戸から将直さんのお母様も私の看病のために出てきてくださって・・・。みんな一丸となって私が少しでも長生きできるように、がんばったの。




 外にはさくらが見える。綺麗なさくら・・・。まるで将直さんと出会った頃と同じような綺麗なさくら・・・。もうこのころの私は頭を動かすことも精一杯で、綺麗なさくらを眺めるのも大変だった。毎日のようにお見舞いに来てくれる娘たち。週末になるとやってきてくれる博雅。そして出来る限りそばにいてくれる将直さんとお母様。ホントに感謝しなきゃ。




 ひにひに弱くなっていくのが自分でもわかる。もうそろそろだめなのかな・・・。このさくらが全部散れば私はきっとこの世からいなくなる。そう私は感じたの。頑固だったけど私を愛してくれた仙台の父、そして私のよい理解者だった母。いつも優しかったお兄ちゃん。そして心から私の幸せを願ってくれていた弐條常康さん・・・。会いたいよ・・・。




 私はふと目が覚めた。外はなんともいえない朧月夜。そして春の嵐。このままではさくらが散ってしまう。側には将直さんそして子供たち。私は目を閉じた。生まれて物心がついたころから今までの思い出が走馬灯のように浮かんでは消え浮かんでは消える・・・。そして遠くから聞こえる私を呼ぶ声・・・・。私はすべての苦痛から解放され、気がつくと仙台の実家にいた。いつもどおり頑固な父と父を支える母。私は父と母の体を触ろうとしたんだけど、触れない・・・。そして次はお兄ちゃんの部屋?幸せそうに奥さんと微笑んでいる。そして最後は・・・遅くまで官邸で仕事をしている常康さん・・・。常康さんはふと私のほうを見つめて言う・・・。




「綾子さん?そんなはずは・・・。官邸にいるわけないよな・・・。」




私はそっと彼の机にさくらの花びらを少し置いておいたの。私は会いたい人みんなに会えた。




きっとこれは神様の仕業?ご褒美なのかな・・・。




 私は朧月夜、さくらの花びらと共に永遠の旅に旅立った。ありがとう将直さん。ありがとう子供たち、そして私を愛してくれた人たち・・・。きっと私は生まれ変わって戻ってくる。そう私の大好きなさくらと共に・・・・。




(完)

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朧月夜の恋~さくらの木の下で  (8)18年ぶりの再会

 綾乃が生まれて3年後に次女彩子が神戸で生まれたの。さらに数年後、将直さんはPKOで海外派遣。1年は帰ってこない。育ち盛りの三人の子供をかかえ、東京の官舎で過ごしていた。




 「母さん、親父がいない間、俺が母さんたちを守るから安心してよ。」




と、高校2年生になった博雅。今、将直さんのように防衛大学校に入り幹部自衛官になるため、博雅は一生懸命受験勉強中。本当に将直さんが海外派遣されてから急に頼もしくなった博雅。8歳の綾乃と5歳の彩子を大変可愛がってくれて、本当に私は助かったの。




「母さん、今日誕生日だよね。俺バイト代出たからさ、みんなで食事に行こうよ。ランチバイキングくらいならいけると思うけど・・・。」


「博雅、その気持ちだけで嬉しいわ・・・。じゃ、私が出してあげるから久しぶりにいいところに行こうね。」




私たちは赤坂プリンスにランチに出かけたの。私はお気に入りのスーツを着て私の運転する車に乗って紀尾井町の赤坂プリンスへ・・・。ここは何度か官舎のお友達と来たことがあるの。




博雅は2人の妹の手を引き、最上階のレストランへ・・・。2人の娘はお行儀良く楽しそうに食事。博雅も、満足そうにしている私を見て将直さんと同じ微笑で私を見つめてくれたの。ここに将直さんがいればよかったなって思いながら家族四人で楽しく食事。




「母さん、おいしかったね・・・。親父が帰ってきたらまた来ようよ。」


「そうね。みんなで食べに来ましょ。」


「ねえママ、ケーキは?今日ママと彩子のお誕生日でしょ。綾乃とおにいちゃんで2人のケーキ買うの!」


「彩子はイチゴのケーキがいい!!」


「じゃ、ホテルのケーキ屋さんで買って帰ろうか・・・。」




私は会計を済まし、ロビーに降りる。

朧月夜8


すると前から黒尽くめの集団・・・。足早にこちらのほうに向かってくる。中には懐かしい顔が・・・。私は気づかれないように横を通り過ぎようとしたんだけど・・・。




「綾子さん???覚えていますか?弐條です。弐條常康です。」




もちろん覚えているわ・・・。


私の元婚約者・・・。


弐條常康さん・・・。


今は若き官房副長官・・・。




私は博雅に言うの・・・。




「博雅、妹たちを連れてケーキでも買ってきたら?」


「うん、車の鍵ちょうだい。ケーキ買ったら車で待ってるからさ。」




私は博雅に鍵を渡したの。




「綾子さんのお子さん?」


「はい・・・。」




弐條さんは側にいる秘書に何か言って私にこういったの。




「ちょっとお茶しませんか?いろいろ話したいことがありますし・・・。」


「はい・・・。」




私と弐條さんはホテル内の喫茶室でお茶をしたの。




「綾子さん、元気そうで何よりです。」


「弐條さんも・・・。」


「相変わらずお綺麗ですね・・・。きっと旦那さんが大事にしてくださっているのでしょうね・・・。今はどちらに?」


「目黒の自衛隊官舎に・・・。」


「やはり自衛隊の方とご結婚されたのですね・・・。あの時私は驚きましたが、綾子さんが駆け落ちしていただいたおかげで、私も好きな人と結婚できました。丁度私もあの頃好きな人が出来ましてね・・・。数年後あなたのように妻を連れて海外へ・・・。」


「そう・・・今は?」


「数年前、妻が他界しました。今13歳と10歳の息子がいますが、実家の芦屋に住まわせているんですよ。私と住んでも世話をすることが出来ないから・・・。ご主人は何を?」


「今はPKOとして海外派遣中です。あと半年で帰ってくるといいんですが・・・。」


「そうですか・・・大変ですね・・・お子さん3人連れて・・・。きっと半年すれば帰ってきます。それまで我慢を・・・。あ、今お兄様がこちらにいらっしゃいますよ。よろしければお呼びいたしましょうか?」


「いいえ・・・。私は藤原家を裏切った娘ですから・・・。お兄様と顔を合わせることなんて出来ません。」


「そうですか・・・。でもよかった、こうして幸せそうな家庭を持っておられる綾子さんにあえて・・・。では私は時間がありませんので・・・。」




弐條さんは伝票を持って会計を済ませ、小走りでホテルを出て行ったの・・・。




相変わらず、優しい眼差しで、変わらない表情の弐條さん・・・。ちょっと嬉しかったかな・・・。18年経って、いい歳した2人の再会・・・。




ほんの少しの時間だったけれど、昔を思い出して懐かしい思いだったの。




昔と同じように接してくれてありがとう弐條さん・・・。


私はあなたのやさしさを忘れない・・・。


立派な政治家になってね・・・。






【作者からの一言】


この弐條常康さん。本編の主人公弐條雅和君のお父様です。そしてこの7年後に8歳だった綾乃は、総理大臣になったこの弐條常康さんと再会するわけです。しかし、彼は綾乃が綾子さんの娘と気づいていません。ただ似ているなって感じかな・・・。綾乃の母が綾子であると知るのはさらに8年後・・・。そして綾子の夫将直と子供たちは綾子の父と会い、将直は今までの事を詫びるわけなのです。そして仲直り・・・。これは本編「ドリームクエスト【本編】」に更新予定ですが、まだまだ先。




次は完結です・・・。綾子はどうなるのか????泣いてしまうかもしれません・・・。書きながら泣いていた私^^;おかしいかしら?



朧月夜の恋~さくらの木の下で (6)家族三人の生活&(7)10年ぶりの帰郷

(6)家族三人の生活


 春、将直さんは無事幹部学校を首席で卒業したの。


次の派遣先は彼の実家がある兵庫県の中部方面隊。そこの第3師団の中隊長として働くことになりました。もちろん住まいは官舎。




将直さんは彼の実家に私を連れてご両親を紹介してくださったの。神戸北野にある古い素敵な洋館。将直さんのご両親は私を快く迎えてくださって、まるで私を娘のように可愛がってくださったの。将直さんは一人っ子・・・。突然連れて帰ってきた妻であるのに、お母様は嫌な顔ひとつせず・・・。




そして私のおなかの中には将直さんとの愛の結晶・・・。もう随分大きくなって、臨月に入っていたのね・・・。私は兵庫県川西市にある自衛隊阪神病院で可愛い将直さんによく似た男の子を産みました。名前は博雅。将直さんのお母様はわざわざ私のために神戸から出てこられて、私の身の回りの世話をしてくださったの・・・。本当に感謝で・・・。そして私にこういってくださったの。




「綾子さん、あなたたちはまだ結婚式をしていないらしいわね・・・。博雅ちゃんが少し大きくなったら、写真だけでもいいから撮りなさいね・・・。きっといい思い出になるから・・・。」


「お母様・・・。」




私たち夫婦は博雅が少し大きくなった頃、将直さんのご両親のご好意で、写真だけ撮ることにしたの。


朧月夜6


私はお母様が用意してくださったドレスを着て、将直さんは礼装制服。博雅は可愛い赤ちゃん用のタキシードを着て三人で記念撮影・・・。実はその写真をこっそり焼き増しして仙台の母に送ったの。一言手紙を添えて・・・。




『お母様。私は母親になりました。将直さんによく似た男の子、『博雅』といいます。先日将直さんのご両親のご好意で結婚写真だけ撮りました。本当に彼のご両親は私のことを本当の娘のようにかわいがってくださり、幸せです。だからお母様、私のことは心配いりませんので、ご安心ください。 綾子』




もちろん住所は書かなかったけれど、きっと私のことを心配していると思ったの。でも本当に幸せなの。




このときから私はことあるごとに博雅の写真を母に送っていたの。もちろん返事はないけれど、きっと母はこの手紙を見て安心してくれていると思うの。




 ある日私は新聞で元婚約者弐條常康さんの衆議院議員選挙当選の記事をみた。側には奥様かな・・・。とても幸せそうな顔をして万歳をしている写真・・・。そして小さな男の子を抱っこして・・・。幸せなんだ・・・。よかった・・・。私は心に痞えていたものが綺麗さっぱりなくなったの・・・。






(7)10年ぶりの帰郷




 将直さんと出逢って11年後の春、私は彼の転勤で仙台に戻ってきた。




丁度将直さんと駆け落ちした日、同じ官舎に戻ってきたの。




あの時二人だった家族が4人家族になったの。この年の1月に生まれたばかりの綾乃。綾乃は私によく似た可愛い女の子。博雅は9歳になってこの春から仙台の小学校4年生。やんちゃだけどとても思いやりがあって、妹の綾乃をとても可愛がってミルクを与えたり、おしめを換えてくれたりしてとてもいいお兄ちゃんになりました。




 博雅の初登校日、私は綾乃をベビーカーに乗せて博雅の小学校へ・・・。通学路の途中には私の実家・・・。そして思い出のさくらの木・・・。博雅は新しい学校に喜びながら私の前を歩くの。




「お母さん!ここの家でっかいね!!」


「そうね・・・。」


「どんな人が住んでるんだろ!うちの官舎と大違いだよね。」




ここは私の実家・・・。このあたりでも一番大きな家。家の端から端まで100m以上あるかしら・・・。正門を通り過ぎた頃、門が開き黒塗りの大きな車が出てきたの。そして私たちの横を通り過ぎた。ああ、あれはお兄ちゃん・・・。お兄ちゃんも代議士になったのよね・・・。優しかったお兄ちゃん。元気そうでなんとなく嬉しかった・・・。




 博雅を学校まで送ったあと、私は綾乃を連れて思い出のさくらの木下へ・・・。ベンチに腰掛けて、綾乃をあやしたの。ほんとここだけ変わらない。ここだけ時が止まったよう・・・。もう10年経っているのに将直さんと出会った夜のことをつい昨日のように感じるの。綾乃はつい涙を流してしまった私を見て不思議そうに眺めている。この10年、幸せだったけれど、それ以上にいろいろ苦労もしたわ。何度実家に帰ろうとしたか・・・・。でもいつも将直さんが助けてくれて、我慢できた。




「綾乃、帰りましょ。」




私は綾乃をベビーカーに乗せて帰路につく。知っている人に会ったらどうしよう・・・。10年経っても私のことを連れ戻すのかな・・・。きっと父はいまだ許してくれていないだろう・・・。だって父の期待を裏切った娘だもの・・・。




 綾乃が生まれてすぐの頃、将直さんは私にこう言ったの。




「綾子、もう10年経ったよね・・・。そろそろ綾子の実家にご挨拶に行ったらどうかな・・・。綾子、私は知っているよ。時折綾子は私に隠れて泣いていることを・・・。結婚してすぐから・・・。やっぱり仙台に帰りたいんじゃないの?もし、仙台に転勤になったら、綾子の実家にこの結婚の許しをもらいに行こう。もう遅いかもしれないけれど・・・。」


「いいのよ・・・きっと父はあなたに会ってくれないわ。私だってそう・・・。親不孝な娘だもの・・・。婚約者がいたのにも関わらずあなたと駆け落ちして・・・。」




あのあとこっちに転勤になった時は驚いたの。もしかして将直さんが希望を出してくれたのかな・・・。少しでも実家の近くに住めるようにかな・・・。そして思い出のさくら・・・。

朧月夜7


 あれから何度将直さんとこのさくらの下に来て実家に行こうとしたか・・・。


でもできなかったのよ。


やっぱり親の反対を押し切って駆け落ちした罪悪感からかしら・・・。


行こう行こうと何度もここに来たけれど、結局実家に行くことができず、また転勤・・・。


後ろ髪を引かれる思いで仙台を離れたの。

























朧月夜の恋~さくらの木の下で (5)源綾子になる日
「荷物をほとんど送ってしまって・・・何もありませんが・・・。」

彼が私を部屋に招きいれてくれたの。彼は私に温かいホットレモネードを作ってくれて一緒に飲んだの・・・。甘酸っぱくって暖かくって・・・。あんなに冷え切っていたからだがポカポカ・・・。

「明日東京についたら、綾子さんのものを買いに行きましょう。安月給の私ですからいいものは買って差し上げられませんが・・・。」
「はい・・・。」

彼は微笑んで私を抱きしめるの。その夜、私は同じ布団の中で、彼に腕枕をされながら眠ったの。とても暖かくって私は緊張してなかなか眠れなかったけれど、とても幸せな気分で、朝を迎えたの・・・。もちろん彼は相当疲れていたのね・・・。布団に入るなりすぐに寝てしまったんだもの・・・。はじめて見る彼の寝顔・・・。

「おはよう綾子さん・・・。」

とても清々しい顔で目覚める彼・・・。私は真っ赤な顔をして彼を見つめたの。

「こんなものしかありませんが・・・。」

彼は食パンをトースターで焼いて、コーヒーを入れてくれたの。ただのパンとコーヒーがこんなにおいしいなんて・・・。

「東京の官舎に着いたら、二人で役所に行きましょう。そのあと綾子さんのものと生活用品を買いに・・・。」

ホントにほんの30分のことなのに何時間もいるような感じがして・・・。彼の微笑む顔を見ながら食べる朝食。幸せって感じで・・・。

このあと私と彼は最後の引越しの準備。彼の車に荷物を積み込んでそして官舎の人にご挨拶。彼は私のことをきちんと彼の妻として紹介してくれたの。私もきちんとご挨拶をして一緒に車に乗り込み、東京へ・・・。初めて彼の運転する車に乗った私・・・。緊張してしまったの。途中私の家の前を通った・・・。もう帰る事のない私が生まれ育ったお家・・・。ホント涙が溢れてきたの。

「大丈夫?」

彼は私にハンカチを手渡してくれて、私は涙を拭いたの。 

東京に着くと丁度彼の荷物が着いていた。2DKのお部屋。今まで住んでいた家と違って狭いけれど、二人で新生活をするには丁度いい大きさ。車の荷物を仲良く運んで、官舎の人にご挨拶。

「目黒の幹部学校に入ることになりこちらに越してきました源です。うちの家内です。まだ結婚したばかりで何もわからない家内ですが、お世話になります。よろしくお願いします。」

と、近所の1軒1軒ご挨拶。皆さんは温かく迎えてくださって何とかやっていけそうな感じ・・・。

「綾子さん。困ったことがあればちゃんと相談してください・・。もう夫婦なのですから・・・。」

ホントに彼は優しくて安心感がある人・・・この人となら寄り添っていけると感じたの。 

私たちは婚姻届と転入届を区役所に提出したの。きちんと受理されて私たちは夫婦となったの・・・。

私の父に反対され、駆け落ち同然でやってきた東京・・・。東京は、元婚約者の常康さんに会うために何度か来たことがある程度・・・。高度成長真っ盛りの東京に私は驚きながら、何とか彼との新婚生活をこなして行ったの。 

風の噂で、私が駆け落ちしたことを知って、父はショックのあまり寝込んでしまったって聞いたの・・・。そして嫁ぐ予定だった弐條家に謝って父が誇りにしていた官房長官の職を自ら辞退したらしいの・・・。

朧月夜の恋~さくらの木の下で (4) 父の激怒と駆け落ち
 あれから半月・・・。私は彼と会っていない・・・。実は彼との密会が近所の噂になってついに父の耳に入ってしまったの。もちろん父は激怒して、私を部屋から出してくれなくなった。きっと彼はずっと私が来るのを待っているかもしれない・・・。 

「綾子さん、ちょっといいかしら?」

私の一番の理解者の母が私を心配して部屋に入ってきたの。今日から父は東京に行って不在。父が不在の時だからこそ、母はこうして私のところに来てくれたのだろう。

「綾子さんはその人が好きなのね・・・。わかるわ。私も好きな人がいたのにあなたのお父さんと結婚したのだから・・・。いい恋をしていたのね・・・。春からずっと綾子さんは幸せそうで・・・はつらつとしていたのだもの・・・。いいたいことを言いなさい。お父さんには言わないから・・・。」

私は母に出会いからプロポーズまですべてを話したの。母はすごく同情してくれて・・・。

「綾子さん、行きなさい・・・。そのほうが幸せになるでしょうね・・・。いろいろ苦労はするかもしれないけれど、好きな人と一緒にいるのが一番だと思うわ。」

そういうと母は、私に私名義の通帳と印鑑を渡して言ったの。

「あなたはずっと箱入り娘として育ってきたから、本当に大変だと思うわ。困ったことがあればお使いなさい。もし辛くなったらいつでも帰っていらっしゃい。私はいつもあなたの味方だから・・・。」

私は母に感謝して、最低限の荷物を持っていつものあのさくらの木の下へ・・・。

例のさくらはつぼみが膨らみ、つぼみの先はもうピンクがかっている。

私はいつものベンチに座り、彼を待つ。いつもの時間になっても彼は来ない・・・。ここ半月ここに来なかったから・・・彼はきっと私のこと・・・。

私はずっと彼を待っていた。

ここに来た時、東の空に昇り始めた大きな満月が、気がつくと南の天高く輝いていた。

春はそこまでといってもまだ冷える仙台・・・。

寒さに震えながらついうとうとしてしまったの・・・。すると誰かが私の肩にコートを被せたの・・・。

「風邪引きますよ。綾子さん・・・。」
「源さん・・・。」

相変わらずの爽やかな微笑で、私を見つめる彼・・・。私は彼の顔を見て一気に涙が流れ出した。そして私は源さんの胸の中に飛び込んだ・・・。

「すみません・・・。引継ぎの残業がありまして・・・。このような夜中まで待っていてくれたのですか?」
「はい・・・。」

大きな荷物を持った私を見て彼は言ったの。

「もしかして家を出てきたのですか?」
「はい・・・父があなたとの関係を反対したので・・・。でも私はあなたが必要だから・・・。私も一緒に東京へ連れて行ってください。」
「ホントにいいのですか?」
「はい!」

彼は満面の笑みで私を見つめると、私の荷物を自転車の籠に乗せて一緒に歩いて彼の住む官舎へ向かったの・・・。

お父様・・・ごめんなさい・・・。
ホントに親不孝者の娘・・・。
きっとお父様は私を勘当するわね・・・。

そして今まで婚約者として接していただいた弐條常康さん・・・ごめんなさい・・・。

朧月夜の恋~さくらの木の下で (3) 父がいないのをいい事に・・・
 私の父は1年の大半を東京で過ごしているの。だから父のいない時はある程度は自由が利くの。母も私が窮屈な生活をしていることくらい知っているわ。私の母は一番理解してくれているの。 
 私はずっと彼が私のお邸の前を通って通勤することくらい知っていたの。毎日私の乗っている車と彼の自転車がすれ違うのだから・・・。彼は私のことに気がつかないのか勤め先に急いで自転車をこいでいたの。何度彼に声をかけようかと思ったか・・・。でもそれは出来ないでしょ。彼は私がここの娘だって知らないの。 
 あのさくらの木はもう葉桜になっていたの。平日の夜、ここは私たちの安らぎの場になる。私は彼の肩にもたれて夜空を眺める、それが私の安らぎだった・・・。
「今度の週末、休みを取りました・・・。どこかに行きませんか?」
「え?」
「実はこの春こちらにきたばかりで、仙台のことをもうひとつ知りません・・・。案内してください。」
私は出来そうもない約束をしてしまった・・・。週末、父が帰ってくるかもしれない・・・。でも私は彼のお誘いを受け入れたの。運よく父は帰ってこなかったから、何とか理由をつけて邸を出る事が出来た。 
 私はとびっきりのワンピースを着て、待ち合わせのさくらの木・・・。繁華街にでたら二人で映画を見たり、ショッピングしたり、お食事したり、今までしたことのないことをたくさんしたの。生まれて初めての楽しい体験・・・。ホントにこのまま時間が止まってくれたらいいな、なんて思ったの。 
 ある日彼は真剣な顔をして私にいったの。もうこんなお付き合いをして10ヶ月・・・。
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「あの、綾子さん。ご両親に会わせていただけませんか?」
「え?」
無理よそんな・・・。どうして?
「あの、綾子さん。この私と結婚してくださいませんか?春から私は東京に行くことになったのです。」
「東京?」
「ええ、東京にある幹部学校に入ることになったのです。だから・・・。だから私と一緒に東京に行きませんか?」
「きっと父も母もあなたと会ってくださらないわ・・・。だって私・・・。」
彼は溜め息をついて私に言ったの・・・。
「そうですよね・・・いきなりのプロポーズに驚かれたのでしょう・・・。まだ綾子さんはお若いし・・・。私が焦りすぎたのでしょう・・・。3月末までこちらにいますので、それまでのお返事をください。じゃあ、帰ります。」
彼は私を抱きしめ、頬にキスをすると、いつものように自転車に乗り、帰路へついた。
きっと父は会ってくれない。それどころかこうして婚約者のいる私がほかの男の人と・・・。

でも私は・・・彼が好きだから・・・。
彼といれば幸せだから・・・。


朧月夜の恋~さくらの木の下で (2)朧月夜の君との恋のはじまり
将直「あなたはさくらの精ですか・・・?」
私の後ろで声がする・・・。私は声のするほうを振り返る。そこには自転車を支えながら立っている制服姿の男の人・・・。この制服って・・・・ここから1キロくらい先にある自衛隊の・・・。
「すみません・・・ついあなたを見惚れてしまいました・・・。着物姿でさくらを見つめているあなたの姿を見て・・・・ついさくらの精がいると・・・。勘違いですね・・・。」
私は彼の言葉につい噴出し、微笑んだの。そうしたら彼も微笑み返してくれたの。すごく素敵な微笑み・・・。私は胸の辺りが熱くなって・・・。これが初恋なのかしら・・・。私と彼は側にあるベンチに腰掛けて、一緒に綺麗なさくらを眺めたの。

「あ、そろそろ帰らないと・・・家の者が心配を・・・。」
「明日もここで会えますか?」
「会えるといいですね・・・。」

私は彼の名前を聞かないまま彼と別れたの。次の日もまた次の日も、同じ時間にいろいろ話しながらさくらを見つめる楽しい時間・・・。このとき私は本当の自分のような気がしたの・・・。毎日の窮屈で堅苦しい生活を忘れる事が出来る・・・。こんな気持ち初めて・・・。ホントにこれが初恋なんだ・・・。

すると彼は私を抱きしめて、くちづけを・・・・。私のはじめての・・・。

「すみません・・・。私はこうしてあなたと会って、あなたを好きになってしまったようです。よろしければ私とお付き合いしてくれませんか?」

私には婚約者がいるの・・・・なんていえなかった・・・。私はこの人が好き・・・。好きで好きで・・・。彼のことで頭がいっぱい・・・。

「はい・・・。」

私はつい・・・。承諾の返事を・・・。

私ははじめて彼の名札に気がついた。制服につけられた名札を・・・。

「陸上自衛隊東北方面総監部 源」

源さんっていうんだ・・・。

「名前はなんというのですか?私は源将直(みなもとまさなお)と言います。」
「私は・・・藤原綾子です・・・。」
「綾子さんか、いい名前だ・・・。またここで会いましょう・・・。」

そういうと彼は満面の笑みで再び私の唇にくちづけを・・・。そして自転車に乗って自宅へ戻っていったの・・・。

初めてのくちづけの感触・・・。部屋に帰るとベッドに潜り込んで顔を真っ赤にして夕食も食べずに眠ってしまった・・・。彼に抱きしめられた感覚・・・。夢にまで彼が出てきた・・・。

ああ、私は彼が好き・・・。

【作者からの一言】

綾子のしてはいけない恋のはじまりです。今まで婚約者と結婚するために育てられていた綾子は20歳にして初めてのキスを・・・。実は婚約者とも、手さえ握ったことのない古風な女性なのです。この話は1970年代後半の話です・・・。

これが綾子の幸せの始まりであり、苦難の始まりなのです。

朧月夜の恋~さくらの木の下で (1)さくらさくら・・・
 私は退屈だった。毎日が窮屈で・・・。

 父は仙台でも有名な代議士で、私の家系自体が政治家ばかり・・・。そのおかげで私は生まれてすぐに婚約者が決められ、その人と結婚するために堅苦しい生活をさせられている。小さい頃から、茶道、華道から始まり、着付けや日舞、政治家の娘、そして政治一家に嫁ぐ娘として教育されていた。ずっと小さなころからお嬢様学校で、毎日車での送り迎え。私の友達といったらみんな父から与えられたようなお嬢様ばかり。清く正しく美しくって感じで・・・。学校のみんなが好きな人ができても私はそんなことは許されなかったの。それどころか出会いさえない。

 私の近くにいる異性と言えば、父と、二つ年上の兄、そして婚約者のひとつ年上の弐條常康さん。常康さんのお父様は総理大臣。私の父と元戦友で、あちらの家庭も代々ずっと政治家筋。親同士で勝手に私と常康さんを婚約させたのね。そのほうが都合がいいから・・・。

 常康さんはとてもいい方よ。今は慶應義塾大学に通いながら、お父様の後継者になるために学んでいる。誠実でおやさしいし、そしてお顔も整っているの。この人と結婚するのが当たり前だと思っていたから、ときめくっていう感情なんてないのよね・・・。この人と会うと言っても私は仙台で、彼は東京に住んでいるから、年に数回ほど・・・。

 今日は私の誕生日。今日から私は20歳。父は家に政治・経財界で有名な人たちをたくさん呼んで、私のための誕生日パーティー。もちろんこの日のために常康さんもご招待。私の誕生日だと言ってもまるで懇親会のようで、主役の私は蚊帳の外。はじめのうちは私にいろいろ話しかけていただけるんだけど、すぐに父と何か話すの・・・。

「綾子さんは二十歳になり、本当にお綺麗なご令嬢になられましたね。」
「そうだろ、私の自慢の娘だ。今すぐにでも弐條家に嫁がせてもいいくらいだよ。しかし今はまだ大学生だからね・・・。大学卒業と同時に嫁がせる予定なのですよ。常康君も理想的な後継者になるだろうしな。お似合いだろ、うちの娘と常康君は。」

本当にみんなと同じことばかり・・・。私は父の政治の道具にしかないの。

「綾子さん・・・。」
「常康さん・・・。」
「今日のお着物、似合っていてよかった・・・。」

そうこの着物は常康さんが私の20歳のお祝いにくださった白地にさくらの模様が散りばめられた上品な振袖・・・。本当に私の生まれた春の花、さくら・・・。そして私の大好きなさくら・・・。きっとそれを知っていて常康さんが選んでくださったんだと思うの。

「綾子さん、今日はもう帰らなければならないのです・・・。すみません、もう少しゆっくりしていこうと思ったのですが、明日大事な用事が入ったので・・・。」
「そうですか・・・。」

今日はこちらに泊まっていかれるって父が言っていたから、ゆっくりお話でもしようと思っていたの。いつも常康さんが話してくださる東京のお話が、楽しみでたまらなかったのに・・・。

ますますこのパーティーがつまらなくって、退屈・・・。

私は常康さんを玄関前の車まで見送ったの。

「綾子さん、また来ますね・・・。今度東京に遊びに来てください。うちの両親が会いたいと・・・。」
「はい・・・また・・・。」

私は常康さんの車をお辞儀して見送ったあと、その足で邸を抜け出したの。

もう日が陰っていて、辺りは暗い。今日は満月なんだけど、うす曇の朧月夜・・・。

着物姿のままでトボトボと近所にある大きなさくらの木へ・・・。私はここのさくらが大好き。よく邸を抜け出してさくらを眺めるの。

4月に入ってやっと咲いた仙台のさくら・・・。
満開とはいえないけれど、朧月夜に照らされたさくらがとても綺麗で・・・時間を忘れてじっと私は見つめていた・・・。
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ここのところよく邸を抜け出して眺めているのよね・・・。
何度見ても飽きないのよ、このさくら・・・。

「あなたはさくらの精ですか・・・?」

(つづく・・・)


【作者からの一言】

これはずっと連載していたものの番外編です。実は一番初めにサイトで発表した平安小説の50章あたりで頭中将源将直と、皇后藤原綾子のしてはならない恋を書いたのです。もちろん2人の間には綾乃姫という姫が生まれ、雅和帝に入内します。2人が最後、別れ際に交わした言葉、「来世は必ず一緒になりましょう・・・。」という言葉・・・。それが現代版の流れであり、そしてこの話は来世である1000年後に出会った2人を書いたものです。平安版も、現代版も、実はつながっているんです。本編主人公弐條雅和と源綾乃の出会いも、和気泰明と源彩子の出会いも・・・。今書いている本編のひとコマに和気泰明が和気家の菩提寺神護寺にお参りにいった際に変に懐かしい感覚に襲われ、昔の夢を見てしまう・・・という場面が出てきます。ですから平安版=現世、現代版=来世という感じなんです・・・・。

もろネタバレですね・・・。
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さくらと空 
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