4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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四神降臨 最終章 黄龍降臨 総集編③~戦国・安土桃山時代編完結

「東宮様はどうなされたの?」

麻耶姫は西斗に詰め寄る。西斗は首を横に振り、悲しげな顔をする。

「姫様、落ち着いて聞いてください。黄龍出現のためには生贄が必要であると陰陽の秘伝書に書かれておりました。あのまま龍哉様は食われてしまうのかは・・・・。わかりません・・・。とりあえず、魔王は黄龍に任せないと私たちの力ではなんとも・・・。」

 魔王も黄龍同様に大型化し、魔王と黄龍は向かい合ったまま時間だけが過ぎていく。最初に仕掛けたのは魔王こと暗黒龍・・・。黄龍のクビに噛み付き、離そうとはしない。しかし黄龍はびくともせず、反対に強い力で暗黒龍は飛ばされ、倒れこむ。力の差は目に見えてわかる。黄龍にとって暗黒龍は赤子のようなもの。

「お前の正体はわかっている。」
「ふ、わしの正体だと???」
「この神獣の長、黄龍にわからぬものなどない。お前の本体は数千年前に反乱を起こし、龍族から追放された黒龍族!魔族に寝返った黒龍族!そうであろう!神獣に属する龍族にも関わらず・・・。恥を知れ!恥を・・・・。」


魔王と黄龍はぶつかり合い、激しい波動が起こる。


「力の差がわからぬか?神獣いちの聖なる力を誇る黄龍にかなう者などいない!!!」


黄龍から聖なる波動が放たれ、魔王を包み込む。


「ギャーー!!!!」


魔王はなんとか仁王立ちしながらも、苦しむ。


「おのれ!黄龍!!!!」
「黒龍よ!まだわからないというのか!」

黄龍はさらに強い光を放つ。
黄龍の聖なる光により倒れこんだ魔王であったが、最後の力を振り絞り、立ち上がると、黄龍めがけて飛び掛る。黄龍は魔王の喉元に噛み付き、力を加える。

うぐぐぐぐぐ・・・・。

魔王は泡を吹き力尽きる。黄龍は魔王を離し、魔王は地面にたたきつけられる。魔王は白目をむき、虫の息。


「黒龍を、深海奥底に封印する!」


黄龍が魔王に呪文を掛けると、魔王の体から3つの光の玉が飛び出す。赤、白、黒・・・。光の玉が飛び出したあと、魔王の体は元の黒龍の姿に戻る。黒龍の体が浮かび上がり、光を伴いながら、どこかへ飛ばされたである。

 黒龍の姿が消えた後、都の空は晴れわたる。戦い終えた黄龍の前に浮かぶ、3つの光の玉。


白い玉は西方へ、

黒い玉は北方へ飛んでいった。

赤い玉は黄龍の戦いを見つめていた朱央の前に現れ、その玉は朱雀の形になる。


「朱央・・・・。」


さらに朱雀は女性の姿となる。


「朱央・・・。このような立派な姿に・・・・。」
「あなたは?」


と朱央が問いかける。


「私は朱雀王妃。あなたの母です。」
「母上?」


朱雀王妃は微笑みながらうなずく。

「朱央を人間界に逃がしたのは間違いではなかった。黒龍に国を襲われ、王をはじめ皆別れ別れとなったのです。私だけが黒龍につかまり、喰われてしまったのです。王の機転で前もって朱央を逃がした。ありがとう朱央・・・。これで国を復興できる・・・。もし王が国に戻らなかった暁には朱央、あなたが王となり、復興を・・・・。」


朱央は首を横に振る。


「きっと父上は生きておられます。そして私はここに残り、育ての親とともに生きます。人間として・・・。」


朱雀王妃は悲しそうな顔をしたが、別れの言葉を交わすと、朱雀の姿となり、南方の空に消えていった。


「朱央様。よろしいのですか?」


と西斗が問う。朱央は苦笑し、南の空を見つめて言う。


「ずっと人間として生きてきた。いまさら朱雀の皇子として生きてもしょうがないだろう。子供のいない育ての親たちはどうなる?私が世話をしなければね・・・・。」
「そうですか・・・・。」


西斗も空を見上げて苦笑した。

 ふと麻耶姫は気がつく。


「黄龍様!!!東宮様いえ龍哉様はどこ???もしかして生贄に???」

黄龍は麻耶姫に向かって言う。

「焦るな・・・。青龍の皇子の心が清ければ清いほど、みなを愛する心があればあるほど、皇子は無事に戻るであろう。あの青龍の皇子は清く、強く、みなを愛する心を持っている。私の姿が消えたとき、必ず戻ってくる。」
「では、そのような心ではなければどうなるのですか?」
「その時はこの私に喰われ、吸収されるであろう。まあ、あの皇子はそのような心を持ってはいまい。安心なさい・・・・。さて、私はまた深い眠りにつくとする。再び魔王復活のとき、出現するだろう。」

黄龍は都を見回して言う。

「魔王のおかげで都は壊滅状態・・・。このあと、鳳凰が現れ、魔王によって壊された物を元通りにし、人々の記憶を消し去るであろう。」
「私たちの記憶までですか?」
「そこまでは私にはわからないが・・・・。」

そういうと黄龍は金色の光を放ち、姿を消す。

姿を消したあと、青白い光に包まれた龍哉が横たわっていた。
龍哉は気を失い、意識がない。麻耶姫、朱央、西斗は駆け寄り、龍哉に声をかける。


「東宮様!!!」


朱央が龍哉の体を起こし、麻耶姫が龍哉に声をかける。


「東宮様・・・。起きて・・・。東宮様!!!」


龍哉は確かに生きている。何度も何度も麻耶姫は龍哉に声をかける。


「リンビョウトウシャカイジンレツザイゼン。」


と、西斗が手刀で四縦五横に九字を切る。すると龍哉は目覚める。


「ここは???」


龍哉はゆっくり立ち上がると、胸元の4つの勾玉に気がつく。そして不意に空を見上げる。


空には聖天子出現の後この世に現れるといわれる瑞獣・鳳凰が現れ、清い光を放ちながら、都中を飛び回る。魔王との戦いによって壊されたモノが、徐々に元通りになる。

もちろん聖天子とは龍哉のことである。

その光は龍哉、麻耶姫、西斗、朱王に降り注ぐ。

鳳凰が消えた後、今までにない初夏の空になる。もちろん都の者達がみた事のないきれいな初夏の空。四人はみな微笑んだ。
「終わったね・・・。これで国は乱れることはないだろう・・・。乱れたとしても、再び四神が出現するほどではないと思う。」


そういうと龍哉は東宮御所の御殿に戻って行った。


 何もなかったように時間が過ぎていく京の都。本能寺の変を起こした光秀は三日天下に終わる。信長に代わり、正親町帝の新しい後見人は秀吉。正親町帝は東宮の婚儀の後、譲位を決意する。


 魔王との戦いの記憶が消えることなくいつものように東宮御所にいる四人。違うのは守護龍龍磨と、式神白狼の白老がいないことのみ。四人と龍哉の母宮以外は、龍磨と白老の存在の記憶はない。



「東宮様、麻耶姫様。明日は婚儀ですね。」


龍哉と麻耶姫は見つめあうと、赤い顔をして微笑む。母宮も二人の表情を見てうれしさのあまり涙を流す。


 婚儀は滞りなく行われ、龍哉と麻耶姫は夫婦となった。いつも寄り添い、幸せそうにする様は東宮御所中を和ました。もちろん祖父である正親町帝も、二人仲のよさに微笑む。

「あ、そうだ・・・これを皆に返すのを忘れていたよ・・・。」

と龍哉は立ち上がると、厨子に置いてある黒い塗りの箱を持ってくる。龍哉はふたを開け、一人一人に勾玉を返していく。

「多分、今までのような力はないと思うけど、お守り代わりとして持っておくといいと思う。」

みなはうなずくと、今までのように勾玉を首にかける。もちろんあの戦いのあと、西斗と麻耶姫の四神の力はなくなっている。

「東宮様、もう私には癒しの力はないのですね・・・。」

と麻耶姫は悲しそうな表情で龍哉に言う。

「麻耶、あなたにはきちんと力がありますよ。あなたが側にいるだけで、この僕は癒される。立派な癒しの力ではありませんか・・・・。」

麻耶姫は扇で真っ赤になった顔を隠し、照れ笑いをする。龍哉の麻耶姫に対する惚気話に、西斗と朱央は微笑みながら退出する。

龍哉は麻耶姫を引き寄せると、抱きしめる。

「東宮様。」
「何?麻耶。」
「麻耶は懐妊いたしました。」
「え?」
「ですから、麻耶は、東宮様のお子を懐妊しました。このおなかに東宮様との赤ちゃんがいるのです。」


龍哉は驚き、真っ赤な顔をしてマヤの顔を見つめると、満面の笑みでさらに麻耶姫を抱きしめ、麻耶姫にくちづけをする。

 国は平和になり、都は活気付く。そして青龍の皇子・龍哉と、玄武の姫君麻耶姫は末永く幸せに過ごしたのです。


四神降臨~戦国・安土桃山時代編(完)
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四神降臨 最終章 黄龍降臨 総集編2

 大きな爆発音とともに、今まで味わったことのない邪気が東宮御所めがけて襲ってくる。





 この邪気に龍哉をはじめ、不思議な力を持つものたちは震え上がる。しかし、それと反対に龍哉の体は知らず知らずのうちに覚醒へ着実に向かっている。



『龍哉様、ついに時が来たようです・・・。私も覚悟を決めなければ・・・。龍磨もだぞ!』


と、白老は龍哉、朱央、西斗、麻耶姫の前に仁王立ちする。


『白老、わかっているとも・・・。俺も変化し、少しでも龍哉様が覚醒するための時間稼ぎをしないとな・・・・。』
『若造、お前も成長したな・・・。』




白老と龍哉は最高の力を注ぎ、東宮御所に結界を張る。




『どこまで我らの力が通用するか予測不能だが、この命が燃え尽きるまで、守護しようぞ!龍磨!』
『おお!』




白老と龍磨の結界は襲い掛かる魔物たちを跳ね除ける。




「西斗、我らで未だ覚醒していない龍哉様を守護しよう!!!」
「わかっています。朱央様。」




やはり白老と龍磨には限界があるのか、どんどん結界に力が弱まってくる。力の強い魔物の一部は結界を抜け、龍哉のほうへ襲い掛かる。何も出来ない龍哉は呆然と守護する朱央と、西斗を見つめることしか出来なかった。




『何故四神に関するものが揃ったのに、何も起こらんのだ???』





と白老がいう。


「やはり未だ龍哉様が覚醒しないからではないか!」
『もう限界だ!!!どんどん魔族の力が増強されていく!!!!ううううう・・・・。』
「俺もだ・・・でも・・・で・・・も・・・・龍哉様をお守りしなければ・・・・。」





しかし白老と龍磨の力は限界に達し、結界が破られ、白老と龍磨は魔族の力で飛ばされてしまったのだ。





「白老!!!!龍磨!!!」





龍哉は叫び、飛ばされて動かなくなった白老と龍磨に駆け寄る。麻耶姫も駆け寄り、行き絶え絶えの白老と龍磨に癒しの力を与えようとする。





『麻耶姫様・・・・。癒しの力を一度使った者にはあまり・・・効力は・・・ございません・・・・。まして・・・・前回は・・・・死ぬ一歩手前・・・でしたから・・・。いらない力を使うのは・・・いけません・・・・。』
「そうです・・・麻耶様・・・・。私たちは主を守護するために生まれてきたもの・・・・。主のために命を落とすことなど・・・・それが本望でございます・・・・。」





徐々に息が弱くなる白老と龍磨。龍哉は龍磨を抱き、白老を麻耶姫が抱きしめる。





「龍磨!僕が覚醒するまで一緒にいるっていったじゃないか!!!まだ僕は覚醒していないんだ!龍磨!僕の前からいなくなることは許さん!!!!」
「白老さん・・・せっかく仲良くなったところじゃない・・・。あなたがいなくなったら西斗さんはどうすればいいの?」





龍磨が最後の力を振り絞り、龍哉に申し上げる。





「龍哉様、麻耶様・・・。末永くお幸せに・・・・。私は必ず・・・転生してまいります・・・・。龍哉様・・・。」





白老と龍磨は力を失い、白老は白狼の絵の書かれた札となり、白い炎とともに燃える。一方龍磨は灰状になり、風に流されていった。



「どうして・・・。どうして陰と陽は敵対しないといけないのか?もう嫌だ・・・。こんなの・・・。」
「東宮様・・・。」





龍哉はどんよりとした空を見上げ、涙を流した。



 龍哉はうなだれながら、御殿へ戻ろうとする。


「東宮様!!!」





龍哉は振り返り、麻耶姫に言う。





「今の僕には何も出来ない。まして龍磨がいないと僕は・・・。ただの人に過ぎない・・・・。まだ覚醒していないのだから・・・・。」





すると天から声がする。





『いい事を聞いた・・・・未だ青龍の皇子は覚醒していないとはな・・・・。』





その声の主は魔王。魔王はそこまできていたのだ。





「きゃ!」





魔王は人型に変化し、麻耶姫を羽交締めにする。魔王の人型は金色の髪に白い肌、そしてブルーの瞳を持つ男である。





『青龍の皇子、龍哉よ・・・。お前の大事な姫君を返して欲しければ、お前の力を食わせていただこう・・・・。』





龍哉は引き付けられる様に魔王のほうへ近づく。





「東宮様!!!来てはいけません!!!東宮様!!!!」





龍哉が魔王の手の届くところまで近づくと、魔王は暗黒竜の姿になり、龍哉の頬をぺろりとなめる。





「東宮様!!!!だめぇ~~~~~~~!!!」





麻耶姫の叫び声とともに、麻耶姫と龍哉の勾玉が光る。その光は大変まぶしく、魔王は一瞬怯んだ。その隙に麻耶姫と龍哉は魔王の側から離れ、朱央の「烈火」と、西斗の「疾風」が合わさった火の渦に包まれる。







龍哉はふと我に返り、魔王からさらに離れる。




 「魔王かなんか知らないけど、あなたは龍でしょ?どうして龍同士仲良く出来ないの?人を傷つけて、苦しませて、何が楽しいの?同族だけではなく、生きている者がどうしていがみ合わないといけないの?そんなのだめだよ・・・。」







麻耶姫は涙を流し、魔王に訴えかける。







『やかましい!!!癒しの力しかない玄武の姫が!!!どけ!!!!あと一神・・・あと一神・・・青龍の力をこの手に・・・・。』







魔王は麻耶姫に襲い掛かり、麻耶姫も飛ばされる。壁に打ち付けられた麻耶姫はぐったりする。もちろん朱央も西斗も動けない状態である。



「よくも!僕の大切な姫を!!!僕の大切な仲間を!!!よくも!!!!」




龍哉の体は青く光る。

龍哉の目は獣の目となり、青い光は龍の形をしている。

龍哉は覚醒したのである。




龍哉は両手のひらを魔王に向け叫ぶ。




『水龍波!!!』




龍哉の手のひらから激しい勢いで龍の姿をした水が勢いよく飛び出し、水の渦が魔王を襲う。







『こんなもの痛くもかゆくもないといっただろう・・・・。』







龍哉はふっと笑い人差し指を天高く指して叫ぶ。







『雷(いかずち)!』







激しい雷が水の渦に落ち魔王は感電する。







『ギャー!!!!』







魔王はなんとか脱出し、よろけながら仁王立ちする。







『これぐらいでわしは倒せん・・・・。わしを倒せるのは伝説の五神目!黄龍のみ!!!!!』







魔王は竜巻を出し、龍哉を巻き込み、吹き飛ばす。








『おのれ~~~~~~このようなもの痛くも痒くもないわ!!!わしの体内には朱雀、白虎、玄武の力が備わっておる。あと青龍の力さえ食えば!わしは魔族最強の暗黒黄龍となるのだ!!!!』





魔王は炎の渦を振り払い、西斗と朱央に襲い掛かる。もちろん二人は飛ばされる。





「やめて!!!」





麻耶姫は叫び、朱央と西斗に駆け寄った。




 地面にたたきつけられた龍哉は痛みに耐えながらも、立ち上がる。もちろん西斗、朱央、麻耶も同じである。


『あと一神・・・・。あと一神の力・・・喰わせろ・・・・・・。』



龍哉は魔王を睨みつけると仁王立ちし、呪文を唱える。


『臨・兵・闘・者!・・・・』


すると龍哉の体は光り、足元に五行星が浮かび上がる。そして4つの勾玉が龍哉に集まる。


『出でよ!四神!!!!』


4つの勾玉は四方に飛び、激しく光る。光が弱まると現れたのはまさしく四神。

東に青龍、南に朱雀、西に白虎、そして北には玄武が現れた。四神は啼き、龍哉の次の言葉を待つ。魔王は叫ぶ。


『しまった!!!四神が降臨してしまった!!!早く青龍の皇子を倒さなければ黄龍が!!!!』









龍哉に向かって襲いかかる魔王。しかし、四神に守られた龍哉はびくともせず、黄龍降臨の儀式を続ける。


『四方を守りし神よ!乱れし国を守るため、我が体を生贄とし、御願い奉る。出でよ!黄龍!!!!』


再び四神は四色の眩い光と変わり、龍哉めがけて降り注ぐ。眩い光と爆発音。まぶしさのあまりみなは眼を背ける。光がおさまると皆は龍哉のいた方向を見る。




龍哉のいたところに仁王立ちする黄龍。その大きさは計り知れない大きさである。


『我は黄龍。清い心を持つ選ばれし青龍の皇子の願い聞き入れる。』


黄龍は金色の光を放ち、魔王をはじめとする魔族をにらみつけるのである。

四神降臨 最終章 黄龍降臨 総集編1

 謀反の計画が練られている同じころ、寝所にいる龍哉は胸騒ぎに襲われる。どう寝返りを打っても眠れないのだ。


龍哉は小袖の上に着物を羽織り、表の廊下に出て、しとしとと降る梅雨の雨を眺めている。




「龍哉様、どうかいたしましたか?」


不思議に思った守護龍・龍磨は龍哉に声をかけた。



「ん?なんだか胸騒ぎがするんだ。それがなんなのかは定かではないんだけど・・・。龍磨は感じないのか?いつもどんよりしている都がさらに重苦しい。龍磨はいいね・・・。」




龍哉は龍磨を眺め微笑む。




「どうかなさったのですか?」
「僕だけだよね・・・。何も力がないのは・・・。先日朱央は朱雀に覚醒したし、西斗は昔から陰陽道に精通している。麻耶姫は癒しの力・・・。僕だけが中途半端なんだよね・・・。」




龍磨は溜め息をつき申し上げる。




「龍哉様、龍医師が申していたように、着実に覚醒に向かっていると・・・。朱央様のように何かの引き金で一気に覚醒するかもしれません・・・。安堵なさいませ。」
「龍磨、久しぶりに馬に乗り、都を見てまわりたい・・・。そうすれば気が晴れるかも・・・。」
「それはいいかもしれません・・・。そのように手配いたしましょう・・・。明日すぐにとは・・・。まずは寝所にて体をお休みになられては?」


龍哉は微笑んで寝所に入っていく。
しかし、どうしても激しい胸騒ぎを覚える龍哉だった・・・。




 東宮御所の庭に馬が用意される。麻耶姫のみ東宮御所に残し、龍哉をはじめごく側近の3人と、白老のみがお忍びという形で馬に乗り、御所を出る。久しぶりの京の都は武士達が徘徊し、物々しい雰囲気であった。





「今日は特に武士たちが多いね・・・。また戦でも始まるのかな・・・。」





と龍哉は朱央に聞く。





「昨日から元右大臣、織田様が本能寺に滞在とか・・・。今備前のあたりで戦が始まると聞いております。そのためではないかと・・・。」
「そうかまた始まるのか・・・たくさんの民衆がまた苦しむんだね・・・。」





本能寺に近づくほど、武士、特に足軽の数が増える。そしてなぜかおかしな雰囲気。邪気とかそういうものではなく、今からここで戦でも起こるのではないかというような雰囲気というべきか。道に武士が溢れ、なかなか前に進めなかった。





「東宮様、私が道をあけるように命じてまいります。」
「いや、いい、朱央。僕は忍んできているわけだから、遠回りでもするよ・・・。」
「しかし・・・。」





すると遠くから馬が走ってくる。





「どけどけどけ!!!!」







馬に乗った武士は龍哉たちと鉢合わせになる。





「道を譲らんか!このくそ公家ども!!!」





朱央はその言葉に反応して武士に言う。





「無礼者!!!ここにおわす方は東宮和仁親王様であられる!」
「朱央!もういい・・・。別に僕達は急いでいるわけではないから譲ってやろう・・・。」


その武士は東宮であることを知ると、馬を降り、平伏する。

「そなたに聞きたいことがある。どうしてこのように兵が多いのか・・・。物騒で困る。」
「は!よくはわかりませんが、続々と兵が本能寺周辺に集まっていることは確かであります。しかしこれは戦が始まるときにはありふれたことで・・・・。」
「もういいよ、急いでいるのでしょう。早く行きなさい。」





武士は立ち上がると頭を下げ、再び馬に乗り先を急ぐ。





やはり龍哉の胸騒ぎは収まらないようで、御所に戻った後も、脇息にもたれかかって、考え事をしているのである。

 龍哉のお忍びから数日経とうとしている深夜。龍哉はとてつもない胸騒ぎに襲われ、飛び起きる。





「龍哉様、どうかされましたか?」
「龍磨、今日は何日だ・・・。」
「六月二日未明でございます。あと一刻ほどすれば夜が明けましょう・・・。」





そのあと龍哉は床につき、眠ろうと試みるが、どうしても眠ることが出来ない。もちろんこの感覚は龍哉だけではない。




東宮御所内の麻耶姫、左近衛府にて宿直中の朱央、そして自宅にて就寝中の西斗も同じであった。




龍哉はさっと直衣に着替えると表へ出る。すると南の空は赤く染まっている。これは朝焼けではない。龍哉は宿直中の朱央を呼び、何が起こっているのかと、調べさせた。




この騒ぎに麻耶姫がおきてきて、不安そうな表情で、龍哉に寄り添う。


「東宮様・・・。」
「姫、今朱央に調べさせているから・・・。」
「今夜は新月・・・。私の嫌いな新月・・・・。たくさんの者達が死に、そして魔族が活発に動き回る新月・・・。怖いのです。」


龍哉は不安そうな表情の麻耶姫を抱きしめ慰める。


「大丈夫です。」


泣きたくはないのに涙を流す麻耶姫。

龍哉はじっと赤く染まる空を見つめ、朱央の知らせを待った。

次第に内裏は騒ぎ出し、この騒ぎで西斗が急いで出仕してくる。


「東宮様!こちらに出仕の道中でこの騒ぎの真相を耳にしました!」
と龍哉の前で西斗が申し上げる。
「どうした?何が起こっているというんだ?」
「謀反でございます!本能寺にて謀反でございます!」
元右大臣が滞在していると聞いている本能寺でも謀反。

朱央も龍哉の前にやってきて詳しく申し上げたのである。

 一方本能寺では元右大臣織田殿の家臣、光秀が謀反を起こしていた。もちろん光秀自身これは勅命だと思ってのこと。





「この謀反は勅命である!我が君主信長の首をとれ!!!」





と1万強の兵の陣頭指揮を執る光秀。

百分の一しかいない本能寺の衛兵を蹴散らし、本能寺中心部へ向かう。





「いたぞ!」





その声に光秀は反応し、声のするほうへ向かうが、目にしたものは残忍な光景であった。

信長のいるはずの寝所には数々の兵の遺体・・・。

そして数々の魔物が居座りその中心に信長が立っている。魔物の姿に驚き後ずさり兵たち。


「何をしている!やれ!!!」
光秀の兵は意を決し立ち向かうものの、一人残らず魔物に襲われ食い尽くされていく。

次第に、信長の姿は次第に魔物へと変化していく。


「信長様?????」
光秀は魔王に変化した信長を見て驚き腰を抜かしてしまうのである。


『お前のような雑魚にはようはない!わしの欲しいものは青龍の力のみ!!!』


魔王は爆発音とともに、姿を消す。


魔王が向かうのは・・・・。そう青龍の皇子のいる東宮御所・・・。

四神降臨 第4章 覚醒 総集編2

 未だに自分の力が不思議でしょうがない朱央・・・。朱央は邸に戻り、父である左近衛大将に問う。


「父上、私はあなたの子でしょうか・・・。本日東宮御所にて不思議なことが起こりました。詳しくは申し上げられませんが、私の体が火に包まれたのです。でもちっとも熱くなかったのです。そして東宮様、麻耶様、侍従の安倍西斗と色違いの勾玉を持っております。この勾玉はなんなんですか?」
すると朱央の母君が朱央の前に座り、いうのである。
「朱央、ついにあなたの秘密を話すときがきましたね・・・。殿、いいかしら・・・。話しても・・・。」
大将は頷く。
「私の秘密?母上、どういうことでしょう・・・。」
大将は人払いをして誰もいないことを確認すると母君が言う。
「あれは20年前のことでしょうか・・・。」
結婚し、10年経っても子宝に恵まれなかったこの夫婦。子宝祈願に朱雀の奉られている社に訪れた。この源家は朱雀を祀り、崇めていた。

そしてある夜、正妻の枕元に立つ真っ赤な炎に包まれた鳥。その鳥は人型となり、夢の中でこの正妻に言うのである。
『朝、私の祠の前へ向かいなさい。きっとあなたが欲しがっていたものがある。その者を大切に育てよ。きっとその者はあなた方を助け、一族どころか国の平和と繁栄をもたらすであろう・・・。』
そういうと火に包まれた鳥は姿を消す。正妻は目覚め、夢のお告げどおりに朱雀が祀られている祠に向かう。すると弱々しい赤子の泣き声がするのである。祠の前で置き去りにされている赤子を抱き上げ、あやしてみるとその赤子は泣き止んで笑う。
「もしかして昨日の夢・・・・。このことだったの?」
と正妻は思い、この祠を祭っている神主に夢のことと、朝の出来事を包み隠さず話す。
「ほう・・・夢に火の鳥が・・・・。それはまさしく朱雀・・・。そのお告げどおりになさいませ・・・。その子はきっとお告げのような子に成長するでしょう・・・。」
正妻はその赤子を引き取り、源家の嫡男として育てたのである。

もちろんこれは頭中将、源朱央のことである。
  大将の正妻の話を聞いた朱央は、正妻からあるモノを手渡される。

それは札。

そこにはこう書かれている。


「朱雀第二皇子朱央 ある理由により人間界に放たれし皇子。」
理由は書かれていないものの、朱央は朱雀国の皇子。

何故人間界に放たれたのか・・・。

もちろんそれは魔王が四神の力を集めるために朱雀国を襲ったことによるものであることは明らかである。

もしかしたら唯一の生き残りかもしれない朱雀の皇子朱央。

自分は人間ではないことを知らされた朱央は驚き、そして嘆く。しかし今まで暖かくここまで育ててくれた育ての親に感謝し、次の日、何もなかったかのように東宮御所に出仕する。


 朱央は龍哉に札を渡し、経緯を話す。
「朱央は朱雀の皇子か・・・。僕と同じだね・・・。僕は母は人だけど、父上は青龍だからね。はじめて会った時から朱央に惹かれるモノがあった。それが何だか今までわからなかったんだけど、そういうことだったんだね・・・。覚醒したんだね、朱央は・・・。僕はいつ覚醒するのだろう・・・。覚醒さえすれば、昨日のように龍磨や白老をあんな目にあわせることはなかったし、母も助けることが出来たであろうに・・・・ホント心苦しいよ・・・。」
龍哉は悲しそうな顔をして朱央を見つめる。

あの時もし朱央が覚醒しなかったら、母宮は連れ去られ、魔王に青龍の力を食われていたに違いない。

未だどうして青龍の力を必要としているのかわからない龍哉たち。

もちろん魔王の本性など知らないのである。

  ある寺に訪れる高貴な男たちとある家臣。家臣は高貴な者達が上座に座ると平伏する。

高貴な者とは朝廷側からは関白近衛前久をはじめ五摂家当主、武家側からは羽柴殿、毛利殿、長曾我部殿が集まっている。

目に余る元右大臣織田殿の行いをなんとかしようとするものである。

議論は深夜まで及び、ある決断を下す。ある提案を言い出したのは関白近衛殿。
「明日、本能寺に織田殿は入るといったね・・・。そこで新月の六月二日にそなたに謀反を起こしていただきたい。このままでは朝廷どころか、この国を危うくする人物である。もちろん、織田殿の首をとった暁には、そなたに正式に位を与え、源氏の流れを汲むそなたに征夷大将軍に任命するよう、帝に働きかけよう・・・。もちろん、この謀反に手出しは無用・・・。朝廷としてはそなたに加担しようではないか・・・。」
「そ、そのようなことは・・・。」
すると五摂家のひとつ鷹司卿が言う。
「そなた散々なことをされたと聞きましたよ。このままでいいのですか?あのような魔物のような者を野放しにしておいても・・・。関白殿の言うとおりになさればよろしいものを・・・。末は外祖父になり得る近衛殿ですぞ・・・。」
家臣は首を縦に振るとこの寺を後にした。

そのあと、続けて関白は言う。

「羽柴殿、長曾我部殿、毛利殿、ここからの話は恐れ多くも帝からの言葉と思われよ・・・。」

一同は息を呑み、耳を傾ける。
「謀反の後の処理はあなた方にお任せする。表面上は朝廷として触れたくはないこと故、いいですか・・・・。結果を見てから褒美などを検討するつもりである。わかりましたね・・・。」
武家のものたちは平伏して朝廷側の者達が立ち去るのを待つ。武家の者達は謀反の後のことを話し合うのである。



第4章 覚醒    完

四神降臨 第4章 覚醒 総集編 1

どうにかして青龍寵愛の姫をこの手に・・・・。
あと一神の力をこの体に喰わせれば、このわしは魔の黄龍となる・・・。この世で最強の魔獣族、暗黒黄龍となるのだ・・・。


魔王の正体、それは黒い龍。龍といっても龍王のような姿形はしていない。鱗が生え、玄武から得た強靭な胴体と、白虎の力で得た太い足、朱雀の力で得た翼、そして太く長い首に鋭い目。姿形は西洋龍のようである。もちろんこれは玄武、朱雀、白虎の力を得たことによる姿なのだ。

これまでに玄武、白虎、朱雀の力を体に食わせ、あと一神青龍を残すのみ・・・。

 龍国は四神一、清い気に包まれ、魔王は何度龍国に侵入し、国を滅ぼそうとしたが、成し遂げることが出来なかった。そこで気づいた青龍寵愛の姫宮。姫宮の体内には青龍王の力が蓄積されている。その姫宮を食えば、青龍の力を手に入れたといっても過言ではない。
魔王は人型に戻り、家臣を呼びつける。
「光秀、どうにかして、元斎宮の姫宮をここに連れて参れ・・・。」
「しかし、帝は姫宮様の降嫁をお許しにはなっておりません。」
「本当にお前は使いようのない男よのう・・・。最後の機会を作ってやったものを・・・。京極や武田と同じ目に遭いたい様だ・・・。下がれ!!!」
この無茶苦茶な命令に首を縦に振らない家臣明智光秀・・・。

これまでに色々無理難題を言いつけられ、非難され続けていた。そして朝廷側からも主君の暴君ぶりを改めさせるよう言い渡されている。朝廷と君主との板ばさみ状態・・・。

 五月晴れの暖かな日、東宮御所では、いつものように東宮の周りに侍従2人、頭中将、そして未来の東宮妃、麻耶姫が集まって歓談している。

やっと東宮と麻耶姫の婚儀の日取りが決まり、東宮と麻耶姫は仲睦まじく毎日を過ごしている。

ある一定の距離を保ちつつも、二人は見つめあい、微笑みあう。そして周りに居る者達も2人の関係を微笑ましく見届けている毎日であった。
ここのところ異様な程、物の怪の出現はない。まるで嵐の前の静けさというべきか・・・。白老もこの日は珍しく表のほうで暖かい日差しを浴びて日向ぼっこをしている。
『ふぁー、いい天気だ・・・・。先日までの不安はなんだったのだろうか・・・なあ西斗・・・。』
「そうだね白老。そんなに端近に居て平気なのかい?」
『まあ、わしたち以外の御所の者たちはわしのことをただの犬と思っている節がある。そのほうが気分的に楽でいい・・・。』
白老は大あくびをして西斗に腹を見せる。西斗は白老の腹を撫で、微笑む。傍目から見ると、本当にのどかな昼間。しかしそのような安らぎの時間は長くはなかった・・・。
 白老の耳がぴんと立ち、髭がぴくぴくと動く。そして仁王立ちをすると御所上空を見つめている。先程まで穏やかだった空模様が一変して異様な雲に包まれる。太陽の光がだんだん失われ、辺りは夜のように暗くなった。

 太陽の光が失われ、夜のように暗くなった。白老をはじめ、守護龍・龍磨が表に降りる。異様な雲は徐々に東宮御所に近づいてくる。そして感じる強い邪気。今までの邪気ではないほど強い。白老はその邪気に身震いし、耳を後ろにし、尻尾を丸める。もちろん龍磨も同じように感じている。


「麻耶姫は中に居なさい。」
と龍哉は西斗と朱央を連れ表に出る。西斗は懐から陰陽師の札と剣を、朱央は従者に命じて弓矢と剣を用意し身構える。
「キャー!」
と、龍哉の母宮のいる御殿から聞こえる悲鳴。御殿のほうからある女官が走ってきて龍哉に申し上げる。
「東宮様!物の怪が!!!物の怪が、姫宮様をさらって・・・・。」
「え!母上様を!?」
龍哉たちは急いで母宮のいる御殿に向かう。御殿の屋根には見たことのない黒い獣。黒い獣の背中には気絶した母宮が横たわっていた。黒い獣は龍哉たちを睨みつけると、こういう。
『我は魔王の腹心、魔獣黒狼。魔王の命により、青龍寵愛の姫君を頂いていく。ふふふふ・・・まだ覚醒していないガキどもに我を倒すことなど出来まい。やれるものならやってみろ!受けてたつぞ!』
そういうと黒狼は遠吠えをし、大笑いをする。
「龍磨!変化を許す!」
「御意!」
龍磨は龍に変化し、黒狼に近づき立ち向かうが、跳ね返されてしまう。西斗は札を取り出し、呪文を唱えながら指で何かを書き、黒狼に向かっていう。
『疾風!』
札が消えると同時に突然旋風が起こり、黒狼を包み込む。さらに西斗は白老に札をつけ、呪文を唱え、白老にいう。
「行け!白老!姫宮を助けろ!」
白老は疾風の如く空に舞い上がり、黒狼が包まれている旋風の中に飛び込み、黒狼と戦いつつも、黒狼の背に乗せられている姫宮を助け出すことが出来たのである。
朱央は弓矢を構え黒狼めがけて弓矢を放とうとすると、朱央の体が真っ赤な炎に包まれ、その炎は朱雀の形をして朱央が放った矢と一体化し、黒狼に襲い掛かった。


『ギャ~~~~~~~~~~!!!!』


その矢は見事黒狼の額に命中し、黒狼はもがき苦しみ、炎に包まれる。さらに止めを刺すかのように朱央は叫ぶ。


『烈火!!!』


朱央の指の先から火の鳥・朱雀が飛び出し、猛烈な炎がもがき苦しむ黒狼に襲い掛かり、黒狼は焼き尽くされてしまったのである。


 朱央の胸元に隠されていた赤い勾玉の光が消え、朱央は正気に戻る。そして自分の両手の平を広げ、不思議そうに呟く。


「い、今・・・わたしは何をしたんだろう・・・。」


後ろを振り返ると朱雀の出現に驚く龍磨たち。その側には怪我をし横たわる変化後の龍磨と、式神白老・・・。龍哉は助け出された母宮を抱きかかえ、朱央の事をじっと見ていた。


 東宮の寝殿から飛び出してきた麻耶姫。白老と龍磨の惨状に驚く。怪我をし息絶え絶えの白老と龍磨。麻耶姫はありったけの癒しの力で白老と龍磨を包み込む。徐々に傷口はふさがり、白老と龍磨は意識を取り戻し、龍磨はいつもの人型に戻る。

母宮の御殿は燃え上がり、東宮御所内をはじめ、内裏から消火のための人員が集まり、母宮の御殿を消火する。龍哉の寝殿と離れていたためか、延焼は免れ、母宮の御殿のみ全焼で済んだ。

西斗が気を利かし、陰陽の秘術で東宮御所内の者達の魔族襲来と、龍磨変化などの記憶を消した。記録上では東宮御所内の火災として処理されたのである。


四神降臨 第3章 覚醒の兆し 総集編2

いいか・・・
玄武と青龍の契りを阻止せよ・・・
そしてお前の姿で青龍の皇子を・・・
お前が契れば皇子の力は消滅する・・・
魔王より解き放たれる魔の手。
今日は新月の夜。
龍哉の寝殿に忍び寄る黒い影・・・・。
寝殿中央の御帳台で横になる龍哉。
そして昼夜問わず側に控える守護龍・龍磨。
龍磨はふと表のほうに気がつき、立ち上がる。
扉がカタンと開き、黒い影が入ってくる。
「そこにいるのは誰だ。ここは東宮様の御寝所。限られた女房以外の立ち入りは禁じたはず!」
龍磨は明かりを持って気配のするほうを照らす。明かりに照らされた人影・・・。
「麻耶様????」
その姿は東宮妃になるべき姫君麻耶姫。
御付の者を従えず、先触れの者なしにやってくるなどありえない。しかし姿は麻耶姫。おかしいと思いつつ龍磨は平伏する。
「下がって・・・。東宮様はもう眠ってしまわれたの?」
「はい、すでに御帳台にて・・・。」
「そう・・・。あなたは下がりなさい。私が東宮様の側に・・・。」
「しかし・・・。」
「下がりなさい。私は東宮妃になるのよ!私がこうしてわざわざここに来るということがわからないの?」
仕方なく表に出て外の廊下に座る龍磨。
麻耶姫の姿をした者は龍哉の御帳台に入る。そして小袖姿となり、龍哉の布団の中へ・・・・。龍哉は気がつき、起き上がると顔を真っ赤にして離れる。
「ひ、姫・・・!?」
「同じ御所内にいるのに相手をしてくださらないので寂しいのです・・・。ですから・・・。」
そういうと龍哉の胸元に飛び込む。
そして龍哉にくちづけ・・・。
「いずれ私はあなた様の妻になる身・・・。遅かれ早かれ・・・ですから・・・・龍哉様・・・。」
龍哉はハッとする。
そして自分からその者を引き離すのである。
「麻耶姫じゃないな!麻耶姫は僕の本名を知らない!麻耶姫は僕のことを和仁または東宮と呼ぶ。何者!龍磨!どこだ!曲者だ!」
曲者は龍哉を押し倒す。
龍哉がこの者を引き離そうとしても相当な力。
女の力ではない。
これは魔物か・・・・。
龍磨は急いで寝所に入ってくる。
「龍磨!変化(へんげ)を許す!この者は人ではない!龍磨!」
龍磨は龍に変化(へんげ)する。変化したと同時に龍哉の勾玉が光る。
ギャ~~!!!!
魔物は麻耶姫の姿から鬼の姿になり、御帳台から飛び出し転げまわる。
「龍磨!この物の怪を黄泉へ戻せ!!!」
「御意!」
『結!』
龍磨は魔物の周りに結界を張り、呪文を唱える。龍磨の体は青白く光り、結界は青白い炎に包まれる。
『滅!』
ギャ~~~~~~!
その言葉とともに青白い炎は消え去り、魔物は跡形もなく姿を消す。龍磨は元の人型に戻り、龍哉のもとに駆け寄る。
「龍哉様、お怪我はございませんでしたか?」
「いや・・・。少し引っかかれた程度だ・・・。僕が覚醒さえすれば・・・。あれくらいの魔物を倒すことぐらい・・・。危なかった・・・・。ありがとう龍磨・・・・。」
「いえ、これが私の役目・・・・。しかし、麻耶姫と思い、龍哉様の御寝所に入れてしまった私にも責任が・・・。」
「いいよ・・・実はこの僕もわからなかった・・・。あの魔物が僕の本名を言わなかったらね・・・・。」
一方手下を向かわせた魔王は手下の邪気がなくなったことに気がつき、計画が失敗し、悔しがり暴れまわる。そして次の計画を立て直すのである。
あの魔物の件の後、夜が明け、東宮侍従安倍西斗が出仕してくる。もちろん懐には白老。龍哉は東宮付の女房たちを下がらせ、昨夜の出来事を話す。
「白老。お前の意見が聞きたい。西斗、白老をここに・・・。」「御意。」
西斗は懐から式神白狼を出し、龍哉の前に座らせる。そして昨日のことを詳しく話す。
『なるほど・・・。ついにそのような魔物を使わせましたか・・・。本当に危のうございました。そのまま契りがあったとすれば、龍哉様の力は消滅していたかもしれません・・・。他に何かされませんでしたか?』
「くちづけをされたが・・・。あとは左頬に引っかき傷・・・。」
白老は考えつつ、溜め息をつく。
『多分何もないとは思いますが、肌のふれあいから力を奪ってしまう術があるのも確かなことで・・・。当分様子を見られたほうがよろしいかと・・・。多分守護龍が封じ込めることが出来たくらいの魔物であれば、そう大して力のある魔物ではないでしょうなあ・・・。』
「なあ、白老。麻耶姫に、僕の秘密を話したほうがいいのかなあ・・・。麻耶姫は気がついていないようだけど、姫は玄武を宿っている。そして不思議な力を持っている。また昨日のようなことがあっては困る。」
『はい・・・。その方がいいかもしれません。あの姫も龍哉様、西斗と同じ四神の勾玉を持つ者・・・。特に玄武はこちらにつかないと大変な目に遭うことが・・・。』
「大変な目・・・・?」
『玄武は生と霊を司る神・・・。霊とは死を意味する。玄武の力を持てば、生かすことも絶やすことも容易い事・・・。魔王に玄武が付けばどうなるかお分かりですか?龍哉様・・・。』
龍哉は白老の言葉にハッとする。
魔王に付けば死の神になりえるということに気づいたのである。
龍哉は麻耶姫に四神についてを、そして自分や西斗、龍磨、白老のことを包み隠さず話すことに決めたのである。
「え?どういうことですか?」
と、龍哉の話を聞いた麻耶姫が聞き質す。
「僕は帝の孫ではあるけれど、父は亡き先の東宮ではありません。母は元伊勢斎宮、そして父は龍神なのです。ですから僕は半龍半人。ここにいる侍従、巽龍磨(たつみりゅうま)は人じゃなく、僕を守護する者、守護龍。姫は黒の勾玉をお持ちでしょう・・・。僕は青を、安倍西斗は白を持っています。これは四神に関係する者の証。そして姫は玄武。姫が小さい頃より持っている癒しの力は玄武による力。それだけではありません・・・。使い方を間違えれば、絶命させることもできるらしい。ですから・・・。」
龍哉は急にめまいがし、脇息にもたれかかる。
「龍哉様!」
龍磨がかけより、龍哉の様子を伺う。
『多分昨夜の後遺症が今頃出たのかも知れんな・・・。とりあえず、龍磨、龍哉様を寝所へ・・・。』
と白老が龍磨に指示をする。
「い、犬が・・・こ、言葉を・・・・。」
麻耶姫は白老が話すのを見て絶句するのである。
『し、失礼な。わしはあんな低俗な生き物と一緒にするではない!わしはれっきとした式神、白狼。ここにいる安倍西斗の式神だ。犬ではない!狼だ。あと数百年生きることが出来たら、大神といっても過言ではないが・・・。わしの発祥は大和国三輪山の大神大社。そこで式神として生まれ、代々陰陽師家系安倍家に仕えてきた式神だ。あのような吠えるしか能のない犬と一緒にするな。』
そういうと、白老は歩き出し、龍哉の側で様子を伺う。そして西斗以外で初めて龍哉の側に寄り添い、腰をおろした。
『西斗、龍哉様のご気分がよくなるまでこうしていたい。なんだかこの私でも不安でしょうがない・・・。きっと何かある・・・。何かはわからぬが、大きな邪気が迫っている・・・。西斗、悪いが・・・。』
そういうと、あごを龍哉の胸の辺りに乗せじっと龍哉の眠っている顔を見つめているのである。
 ここ数日、龍哉の体調は思わしくない上、人を寄せ付けようとはしなかった。
帝は心配し、典薬寮の者を御所に向かわせても突っ返す始末。
ごく側近である、龍磨、西斗以外は部屋に入れない。もちろん龍哉の母は心配し、何度足を運んでも会おうともしなかった。
西斗は御所に部屋を借り、泊り込むことにした。そして陰陽寮から数々の資料を持ち込み、調べ物をする。
無論、これは白老の提案である。
龍哉は普通の人ではない。半龍半人なのである。半分龍の為、人間の医師ではなにも出来ないであろうと思ったのである。
「白老・・・。秘術ねぇ・・・。人に対する治癒や魔物に対する撃退なんかはあるけど、龍を治癒したりなんかは・・・・。やはり龍磨を龍国に行かせるしかないのかなあ・・・。どう思う?白老・・・。」
『んん・・・。玄武の姫に頼む手もあるかもしれんが、これは先日の邪気が原因ではないと見た。』
白老は龍磨を呼び、龍国に行かせる。龍磨は龍王の使いを連れ戻ってきた。
「龍哉様、龍国より使いを連れてまいりました。御簾の中に入ってもよろしいでしょうか?」
「許さん!誰であろうと中に入れさせない!」
「しかし!いつまで引き籠っておられるつもりでしょうか!使いの者は父君龍王様より命を受けた龍医師。龍王様もたいそうご心配に・・・。ですから、龍哉様。」
「わかった・・・父上の命であれば仕方がない・・・。いいよ・・・使いの者のみ・・・。」
龍医師は御簾の中に入る。
龍哉は結い髪を下ろし、力なく脇息にもたれかかり、入ってきた龍医師を睨みつける。
その表情は今までの穏やかな龍哉ではない。
荒い息遣いと獣の目。
そして時折顔をしかめる。
しかし感じるのは邪気ではない。
『こ、これは・・・。』
龍医師は龍哉の姿を見てすぐに気づく。
龍医師は龍哉に平伏し、触診をする。
「触るな!体中が痛い!体が引き裂かれそうなほど痛い!そして時折胸がドクンと鳴り意識が遠のく。」
龍医師は龍哉の小袖を脱がせ、全身を診る。
そしてすぐに小袖を着せ、平伏する。
「この僕の体に何が起こっているのか?」
『覚醒の前段階と申しましょうか・・・。龍哉様は半龍半人。すべてが龍族であれば、このようなことは起こらないのですが、やはり半分が人の龍哉様の体の中で、龍と人が争っているのでしょう。背中には龍のうろこがうっすら現れてきております。あともう少し我慢なさいませ。完全に覚醒し、力を制御できるようになれば、苦しさからも解放されるでしょう・・・。龍に覚醒する試練でございます。』
「試練???」
龍医師は平伏し、御簾から出る。
そう龍哉の体の中では急激な変化が起きている。先日の魔族の件で触発されたのであろうか。龍の力が龍哉の体の中で覚醒をしようとしているために起こった体の変化。ますます龍哉の体の痛みは増し、龍哉は今まで体の痛みに我慢していたが我慢も限界に達し、ついに龍哉は奇声を上げる。
その声は御所中に響き渡り、心配した龍哉の母と玄武の姫君麻耶は龍哉の住む御殿に駆け寄る。
「東宮様!」
玄武の姫君麻耶は龍磨の制止を振り切り、龍哉のいる御簾の中へ入る。
覚醒前の痛みに苦しみもがく龍哉の姿に絶句する麻耶姫。痛みが絶頂に達した龍哉は麻耶姫が側にいることさせ気づかない様子でもがいている。
麻耶姫は重い衣を脱ぎ、小袖長袴姿になると、龍哉を抱きしめる。
すると光る麻耶姫の黒の勾玉。
麻耶姫の体は光り、龍哉の体を包み込む。
これが玄武の癒しの力というものか。
次第に龍哉の表情は穏やかになり、痛みが徐々に薄れてくる。
「東宮様・・・。御可哀想・・・。どうしてこのような苦しみを味あわなければならないのでしょうか?」
「麻耶姫・・・?どうしてここに?」
「東宮様の苦しそうな声が聞こえましたので・・・東宮様の命を背き、東宮様の御簾の中へ入ってしまいました・・・。申し訳ありませんでした・・・。」
「いい・・・。なんとも無様な姿を見せてしまったようだね・・・。」
東宮は麻耶姫から離れると顔を赤らめ、微笑む。
その顔を見た麻耶姫も安堵の表情で微笑み返した。
 龍哉が覚醒したのかどうかわからないまま、ただ時間が過ぎる。
 いまだ朗らかな東宮に戻らないことを心配した帝は、豊楽院にて東宮を励ます流鏑馬の宴を催す。小さい頃より武芸に親しんだ龍哉。帝はきっと東宮が元気になるであろうと企画したのである。
帝の横に東宮、そして几帳を隔て、東宮妃となる麻耶姫が控えている。もちろん東宮侍従の龍磨と西斗。母宮まで。
武官文官を問わず、流鏑馬に自信がある者達がたくさん集まり流鏑馬をする。さすが自信のあるモノばかり、次々と見事に決めていく。
その中に一際優れた武官が一人。
馬に乗る姿、矢を放つ姿はまるで鳥が舞うようで会場の人々は魅了される。
龍哉はその武官にひきつけられる。
「主上、あの者は?」
「確か左近衛中将。左大将の嫡男だよ。歳は二十歳。」
帝は左近衛中将を側に呼び、褒美を与える。
「東宮様、はじめてお目にかかります。左近中将源朱央(みなもとすおう)と申します。」
左近中将は東宮に平伏し、褒美を帝の侍従から受け取ると下がっていく。
源朱央を最後に、流鏑馬が終わり、酒宴が行われる。酒と肴が帝より振舞われ、無礼講の宴が始まる。龍哉は源朱央が気になってしょうがない様子で、じっと酒を飲みながら見つめている。それに気がついた帝は龍哉に言う。
「東宮、左近中将がどうかしたのか?もしよければ、お前の蔵人として取り立てることも可能だが・・・。もともとこの中から気に入った者を東宮職として取り立てようと思っていたのだ。武芸に優れた者も必要であろう。」
「はい・・・。そのようにお願いします。」

四神降臨 第3章 覚醒の兆候  総集編1

 この時代、公家、特に皇室は財源が乏しく、帝でさえ後見は大大名という時代である。特に正親町帝はある武将を後ろ盾とし、位に就いていたのも同然であった。

 その武将こそ、「第六天魔王」。この日は東宮の元服祝いに訪れる。

「右大臣殿、殿上にございます。」

「うむ・・・。殿上許す。」

右大臣(魔王)は清涼殿の御簾の前に座り、軽く頭を下げる。右大臣の周りには異様な空気が流れている。
そして少し遅れて東宮である龍哉が殿上してくる。




もちろん横には守護龍龍磨と、白虎の安倍西斗が控える。龍哉は右大臣と目が合い、何故だか知らないが、異様な気分に襲われる。もちろんそれは守護龍龍磨も同じ・・・。

「東宮、御簾の中に入りなさい。」

「はい・・・。」

龍哉は帝の側に座り、帝に挨拶をする。

「帝、あの男は?」

「初めてだね・・・。あの男は右大臣の織田殿だよ。私の後見をしていただいている。滅多に殿上して来ない者でね・・・。私も久しぶりなのだよ。今日は東宮の元服祝いに殿上してきたらしい・・・。」

「そうですか・・・。」

龍哉はじっと右大臣の顔を見つめる。もちろん右大臣(魔王)は自分の邪気を消している。

「東宮和仁様。御目にかかれて光栄でございます。先日は元服おめでとうございました。本日はお祝いのほかに、今後の後見についてのお話を・・・。」

「右大臣殿、後見とは・・・?私のことですか?それとも・・・東宮?」

「もちろんどちらともでございます・・・。」

「東宮は近衛殿が後見すると申し出てくれたよ。先日の元服の折も近衛殿が加冠役を・・・。」

「今の五摂家に何が出来ようか・・・。五摂家いちの財力を誇る関白近衛殿とて・・・わが織田家の財力には到底・・・。」

そういうと右大臣は大きな声で苦笑する。

「ただし、御二人の後見には条件がございます。」

「条件とは?」

「主上の大切にしておられるものを頂きたい・・・。元伊勢斎宮の内親王を・・・。」

そして右大臣の顔色が変わり、甲高い右大臣の声から、一変なんともいえない恐々しい声に変わる。

『青龍、龍王寵愛の姫宮を・・・。ふふふふ・・・・。』

もちろんその声は人間には聞こえない。その声を聞けたのは守護龍龍磨のみ・・・。

すると安倍西斗の胸元に控えている式神が騒ぎ出す。安倍西斗はわけがわからず式神を制止する。制止できずに安倍西斗の前に現れる白狼。この白狼は西斗が生まれた時より仕えている式神。その白狼は右大臣に向かい唸りだす。

「白老!控えよ!恐れ多くもここは主上の御前!白老!」

『西斗、この者・・・。人ではない!』

「何をふざけたことを・・・。白老、お前も年老えたな。どうみても・・・。控えよ!」

白狼は後ろに下がり、西斗の胸元に消えてもまだごそごぞと落ち着かないのである。

右大臣は立ち上がると、帝に言う。

「まあ急ぎませんので、よくお考えの上、ご返答を・・・。三十路の未婚の姫宮を頂きたいというのですから、悪い話ではありませんがね・・・ふふふふ・・・。」

右大臣は東宮侍従の守護龍龍磨、安倍西斗をにらみつけると、清涼殿を後にする。

 東宮御所に戻ってきた龍哉。溜め息をすると脇息にもたれかかって考え込む。


「東宮、申し訳ありませんでした!我が式神白老のあのような勝手な振る舞い・・・。普段はあのような振る舞いをする式神ではありません・・・。」


安倍西斗は平伏し、懐から白狼「白老」を連れ出す。
「白老、東宮に恥をかかせたのですよ。東宮に謝罪を・・・。」
『しかし・・・西斗・・・。本当にあれは人間ではない。今までこのワシが間違ったことがあるか?』
「それは・・・。」


龍磨は白狼に詰め寄る。


「白老!お前もそう感じたか!」
『あぁ・・・。さすが守護龍・・・あれは相当な邪気を持っている。あのような邪気は感じたことはなかった・・・。』
「俺もそうさ・・・。あのような邪気を持つのは・・・・。でもどうして龍哉様の母君を欲しいと言ったのだろう・・・。」
『そういうところまだまだ若いな、守護龍は・・・。母君の体の中には龍王の力が蓄積されているんだよ・・・。まあそのひとつが龍哉様であっても過言ではない・・・。とてつもない邪気を持つものたちは、力を吸収することが可能なものが居る。それを狙っているかも知れんな・・・。』
「龍王に報告したほうがいいものか・・・。このままでは母君が危ない・・・。何かいい手はないものか・・・。」
『ふっ・・・まだまだ本当に甘いな・・・。この若造が・・・。龍王とて、あいつをどうにかできるかどうかさえわからんほどの邪気だ・・・。ワシら式神や守護する者が手出し出るような相手ではないだろうて・・・。きっと帝が承知しないとしても腕づくで龍哉様の母君を奪うであろうな・・・。その時は・・・龍哉様が苦渋の決断をしなければならないことが起こるであろうが・・・。手遅れにならないうちに・・・あと一神を探し出さなければ・・・。』


そういうと白狼は龍哉のほうを見つめ悲しげな顔をするのである。

 都中は右大臣の要求の噂で持ちきりである。


(聞いたか、右大臣殿は元斎宮の姫宮様を御所望だそうだ。)
(聞いた、聞いた・・・。まあ、あの姫宮も三十路になってもいまだ嫁がれていないのだから、良いのではないか?)
(姫宮と引き換えに引き続き帝の後見と、東宮の後見を申し出たそうだよ・・・。)
(東宮の後見は関白近衛殿と聞いていたが?唯一の姫君を東宮に入内させると・・・。副臥役の姫だしなあ・・・。)
関白はゴホンと咳をして殿上し、帝の御前に平伏し、帝に申し上げる。
「右大臣の件、私の耳に入ってまいりました・・・。どうなさるおつもりでしょうか・・・。東宮の後見に関しては当家近衛家だけではなく、他の五摂家、九条、二条、鷹司、一条家が協力し、責任を持ってさせて頂きたいと申し上げましたが・・・。」
「んん・・・わかっておる・・・。しかし・・・私に右大臣殿の後見がなくては東宮に譲位することも出来ない。だが、姫宮をあのような者に与えることなど・・・。」
帝は関白を御簾の中に入れ、小声で話し出す。
「関白は存じておるように、姫宮は東宮の母。しかし、何故あの者はまだ若い姫宮がいるというのに三十路になった姫宮を欲しがるのだろうか・・・。姫宮の妹宮達はみな姫宮に負けず劣らず美しく成長した姫宮たちばかり・・・。それなのにどうして・・・。」
帝は右大臣の要求が不思議でならなかったのだ。もちろん関白も同じなのである。
「関白殿、あなたの東宮後見の話は存続していただきたい。もちろん半年後の姫君入内もそのまま・・・。関白殿・・・。姫宮の件に関してはもう少し考えてみようと思う・・・。麻耶姫のお妃教育・・・頼みましたよ。おお、そうだ。東宮が姫君を気にいったようであるから、佳い日を選んで御所に遊びに行ってはどうか?きっと東宮も喜ぶであろう。東宮妃として決まったも同然なのだから。」
「御意・・・。」
関白は平伏し、近衛家の姫君麻耶姫の入内のための準備を改めて始めたのである。

 帝は右大臣に龍哉の母宮を降嫁させる事を断った。右大臣は怒り、右大臣の位を返上した上で帝にこう申し上げる。


「後悔なさいますな・・・・主上。きっと後からエライ目に遭うであろう・・・。くくくく・・・。ひとまず今回は引き下がろう・・・。」
おとなしく引き下がる右大臣、いや魔王・・・。

 そして迎える近衛家の姫君の入内の日。

この日はいつもの違った空模様。
春の温かい日差しをいっぱいに浴びて、姫君は東宮御所に入内した。都中は久しぶりの豪華な行列に心を和ませる。しかし婚儀は未定。姫君は東宮御所の東側の部屋を与えられ、久しぶりに会う東宮のいる寝殿に挨拶に訪れる。

相変わらず東宮の側には2人の東宮侍従が控え、様子を伺っている。東宮龍哉は上座に座って近衛の姫君を見つめて微笑む。


「お久しぶりでございます。和仁様。関白一の姫、麻耶でございます。」
「姫、よく来てくださいました。まだ婚儀は決まっておりませんが、本日よりこの御所を姫の邸と思って気兼ねなしにすごしたらいい。内裏や後宮と違ってここは堅苦しくないから安心して。」
入内はしても婚儀の日取りはまだ決まっていない。というよりなかなか決まらないのだ。

この入内、表向きは東宮の後見問題に終止符を打つためであるが、裏向きは四神のうちの三神を集めたというべきであろうか・・・。




つづく

四神降臨 第2章 降臨 総集編2
 玄武が宿った姫君は十三歳。関白の姫君として何不自由の無い生活をしている。父、関白の悩みはただひとつ。麻耶姫の不可思議な行動である。

 昼夜問わず、姫君のもとに訪れる生き物たち。そのものたちは皆怪我をしていたり何かを患っている。姫君はそのものたちに手をかざすと、その手から光を放ち、清い光が生き物たちを包み込むと、その生き物たちは健康体になった。

その噂を聞いた都のものたちは関白邸を訪れるのだが、もちろん門衛に断られるのである。

しかし姫君は満月、新月の夜、無意識のうちに邸を抜け出し、そして朝方には戻ってくるという不可思議な行動をするのである。

もちろん関白は使いを出し、姫君が何をしているのか調べさせる。

すると姫君は玄武神社で玄武の舞を舞っている、ただそれだけなのである。朝、目覚めると姫君は覚えているわけはない。

不思議なことに姫君が不可思議な行動を起こした次の日、何かが起こる。

満月の夜はどこかでたくさん様々なものが誕生し、新月の夜はどこかでたくさんの者達が死んでいく。

延暦寺焼き討ちの日も新月の日であった。

「変な噂が流れると、我が姫の縁談がなくなるではないか・・・。」

と関白は嘆くのである。

もちろん関白は由緒ある五摂家のひとつ近衛家である。関白の姫君として生まれたこの麻耶姫を御歳15歳の東宮に入内させようとしているのは明らかなことである。この姫君は東宮の元服の折に、副臥役に選ばれ、何も無かったが、龍哉と共に一夜を明かしたのは言うまでもない・・・。

その時のみ、守護龍龍磨は龍哉の側を離れ、二人に平伏していた。

もちろんそれは青龍の皇子と、玄武の姫君が出会ったことに対する敬意であるのは明らかである。
 白虎が宿った若君も元服を迎える。

小さい頃より陰陽道の道を究め、陰陽道の神童として帝の覚えもめでたい若君へと成長した。

 帝はこの若君に殿上に必要な従五位の位を与え、たいそうかわいがった。もちろんこれは異例中の異例のこと。この若君の父でさえ、従五位。やっとのことで掴んだ位である。その父と同じ従五位という殿上人となった若君は、同じ年の東宮、龍哉にある日はじめて会う。

「陰陽頭嫡男、この度東宮侍従を帝より賜りました安倍西斗にございます。東宮様、何なりとお申し付けください。」

この若君は守護龍龍磨と同じ東宮侍従の位を賜ったのだ。

龍磨はこの若君の胸の辺りに光る白い勾玉に気づき、この若君に対しても平伏するのである。

「あなた様は白虎様であられましたか・・・。」

不思議そうな顔をする若君を見て、龍哉は龍磨に言葉の意味を聞く。

「龍哉様、龍哉様もお持ちでしょう。青い勾玉を・・・。それは以前も申し上げたとおり青龍の証・・・。そして近衛の姫君は黒の勾玉・・・。黒は玄武の証・・・。そしてこの白の勾玉は白虎が宿った証なのです・・・。私は龍哉様のしもべではありますが、四神の証を持つ者にも従わなければなりません。ですから・・・。」

そういうとさらに龍磨は平伏するのである。

 ある全国統一間近の武将のもとに現れる邪気のあるモノ。

武将は腰の刀に手を置き、そのものに立ち向かおうとする。しかし金縛りにあう。

暗い邸の中に光る赤い眼。その目が徐々に武将に近づいてくる。武将は家臣を呼ぼうとしても声が出ない。それどころか、近くに控えていたものたちは倒れていた。

近づく眼は荒い息をたてながらさらに武将に近づく。

心の中で武将は叫ぶ。

(何者?!)

「まあ落ち着け・・・。お前の願いを聞き入れてやろうとしているのだ。」

(ワシの願い???)

「お前は一国の主ではなく様々な神になりたいと言ったな・・・。神の頂点に君臨したいと。その願い、叶えてやろう。ただし・・・・。」

(ただし???)

「その体、この私が喰わせていただく。ただそれだけのこと・・・。」

有無を言わさずその黒い影の赤い眼を持つものは武将の体を喰い尽くす。そしてその黒い影は武将の姿になる。

悪の心で満たされた生身の体・・・。いい体が手に入った・・・。





そういうとニヤリと笑うと何事もなかったかのようにこの先武将を演じるのである。もともとこの武将自体の奇行、悪行の数々・・・。もちろん武将の家臣どもは何が起きようとも気づくはずはない。

そして自らのことを「第六天魔王」名乗ったのである。





第2章 降臨  (完)

四神降臨 第2章 降臨 総集編 1
 すくすくと育っている東宮龍哉。もう5歳となった。笑みの絶えないその表情は帝をはじめ内裏中を和ませる。しかし時折見せる獣のような表情。それに気づいたのはやはり母。

「半龍半人の龍哉・・・。この子の未来はどうなってしまうのだろう・・・。」

と龍哉の母は嘆く。

 時折現れる龍王の使い。龍哉の寝顔を見ると何かを言い残して消えていく。それが何なのかは、龍の言葉であったので理解できなかった。そして龍王の使いに渡されるひとつの勾玉。龍哉の首にかけまた消えていく。気になった母は陰陽頭に真意を相談する。

「姫宮様。東宮の力に相当なものを感じます。東宮の力、封印したほうがよいかもしれません・・・。まだ東宮は幼子・・・。力の加減が出来ない恐れがございます。爆発的な力が出てしまった場合、この都は無事ではないでしょう。」

母は承諾し、龍哉の力を封印する。

陰陽頭は紙に何かを書くと、龍哉の胸元に置く。そして呪文を・・・。

「封・・・。」

しかし封印の呪文は破られ、龍哉の胸元に置かれた封印呪文の紙は宙に浮き、燃えてしまう。そして龍哉の胸元に掛けられた青い勾玉が青白く光る。

「どうして封印できないのだ・・・。」

後ろに忍び寄る気配。

『龍哉の力、封印は許さん・・・。』

声の主は龍王龍希。

龍王は眠っている龍哉を抱きしめ、続けていう。


『龍哉の力を封印すれば、四神は集まらぬ・・・。龍哉は四神降臨の鍵となる。そして・・・最後の五神目・・・。黄龍を復活させなければ、乱れは収まらない・・・。あなた方が立ち向かう敵は、黄龍なくては倒せまい・・・。この青龍最強の力を持つ私であっても・・・。その敵がどのようなものであるのか、そしてどのような力があるのか・・・。想像不可能な敵・・・。』

龍哉の母は龍王に近づく。龍王は微笑み、龍哉を龍哉の母に返す。

『姫宮。よい子を産んでくれたね。この龍哉は私にとっても大事な子。この龍哉の力は私以上・・・。この子なくして青龍の繁栄はない。それどころか消滅しまうかもしれない。ですから姫宮、龍哉が覚醒するまで、頼みましたよ・・・。龍哉には守護龍をつけておこうと思う。きっと何か助けにはなると思うが・・・。』

そういうと龍王は龍哉の母の頬に手を延ばし、名残惜しそうな顔をして光と共に消えていくのである。

  龍哉に守護龍がつけられた。

どんな龍かと思えば童子姿の小さな子。

龍哉と変わらないような背格好。

皆は目を疑った。

このようなかわいらしい童子姿のものに何が出来ようか・・・。

「もしかして俺のこと疑っていない?俺の名は守護龍・小龍。れっきとした守護龍族の一員さ。でもまだ一人前じゃないけどね。でも守護龍たるもの、ご主人様を守るのは当たり前!俺はきっと主、龍哉様をお守りするんだ!下級物の怪ぐらいならなんとかなるよ。だから任せてよ!ま、普段は龍哉様の子守でも遊び相手でも何でもする。よろしく!」

そういうとちょこんと座って無邪気は表情で笑うのである。

「小龍といったわね・・・。もう夜は遅いわ・・・眠ったらどう?」

「とんでもない!守護龍はなんどきとも主人の側を離れません!眠らなくても大丈夫な一族なのです!ですから、俺は龍哉様の側にずっとついていますから。」

本当に無邪気な顔で笑う小龍を見て、龍哉の母は微笑み、龍哉の部屋を後にしたのである。

 もちろんこの時から守護龍・小龍は龍哉の側をなんどきとも離れず、龍哉の覚醒するその時まで、守護する者として仕えていく事になるのである。

「小龍という言い方はいいにくいわね。何かいい名前はないかしら・・・。宮中で生活するとなると、龍の身分を隠さなければなりませんからね・・・。」

と龍哉の母が言う。

「俺は主人である龍哉様に決めて欲しい。それが慣例だからね。「小龍」って名は仮の名だから・・・。」

この小さき守護龍はじっと眠っている龍哉の側に座り、眠っている龍哉の顔を眺めている。いつの間にか朝が訪れ、龍哉は目覚める。側にいる年格好が似ている童子を見て、飛び起きる。

「ねぇ、母様。この子は誰?」

母宮は龍哉に優しく微笑みながら言う。

「龍哉の父君様がおつかわしになった友ですよ・・・。仲良くなさいね・・・。」

「うん・・・。名前は?」

「龍哉がお付けなさい。」

龍哉は悩みながらもこの童子に名前を付ける。

「龍磨。」

そういうと龍哉は笑いながら龍磨を見つめた。

「東宮様、お目覚めでございますか?主上がこちらに・・・。」

「お爺様が?」

帝がたくさんの供の者を連れて東宮御所の龍哉の御在所にやってきたのである。そして龍哉の元気そうな表情を見て微笑んだ。帝は童子に気付きいう。

「おや、見慣れない子がいるね?姫宮、誰かな?」

「お父様、龍哉の遊び相手に呼び寄せた龍磨でございます。」

「うむ・・・。よさそうな子だね・・・。」

龍磨はむくれた顔をして言う。

「このおっさん誰?」

母宮は焦って龍磨に言う。

「龍磨、なんて恐れ多いことを・・・。この方は龍哉の祖父宮。そして帝であられますよ。」

「そんなの関係ないや。俺はさ、龍哉様のみ主人だ。帝であろうと神であろうと関係ない。俺は龍哉様とともに生きるんだから・・・。で、おっさんはいくつだ?」

帝は意外な言動をする龍磨に興味を示す。

「ほう面白い童子だ・・・。気に入った。私は四十八歳だ。」

「なあんだ俺より年下かあ・・・。俺は六十三だよ。」

「六十三????そのようには見えないが・・・。」

「龍族は人間よりも十倍遅く時が流れる。龍王は三百歳。ということは人間で言えば三十歳かな・・・。まあ、龍哉様は半龍半人だから、ちょっと成長の仕方は違うと思うけどね・・・。龍族でも前代未聞だよ。ホントに・・・。」

本当に無邪気な表情で帝と会話する龍磨。

周りの者たちはハラハラしながら、龍磨の言動を気にしたのである。

 あと一神の予言のみが式神により書き出されないまま、さらに年月が経つ。
龍哉は十五歳となり、元服を迎える。

戦国の世ではある武将が全国統一間近・・・。

相変わらず側に控える守護龍龍磨。

龍磨も元服を迎え、帝より東宮侍従の位を授かる。人間界にいる龍磨は成長が早い。もう青年の姿になっている。やはり龍の世界と人間の世界では時の流れが違うようだ。

この年月の間に、龍哉はこの龍磨に助けられ、そして龍哉は自分の力を感じることが出来るようになってきたが、完全な覚醒はしていない。

そして未だに混乱し続ける国・・・。

 あと一神・・・。

朱雀についての予言がない・・・。

玄武の予言以来まったくというほど四神に関しての予言が無いのである。

予言を疑いだした帝・・・。

帝は陰陽頭安倍を呼び出し、問い詰める。

「国はますます荒れてきている。数年前の延暦寺の焼き討ち・・・。あの焼き討ちでどれほどのものたちが死んでしまったか・・・。このままではこの国は・・・。どうなってしまうのだろう・・・。」

安倍は黙ったまま平伏したままである。

あと一神・・・朱雀はどうなっているのか・・・。

もしかしたらもうすでに朱雀がいるのかもしれない。

どこにいる。朱雀よ!

四神降臨 第1章 予言  総集編(2)
 龍の国。たくさんの龍たちがこの龍王に仕えている。もちろん普段は人型。見た目はホント人と同じ。姫宮が育った人間界と同じような生活をしているのである。

姫宮と龍王はその日から毎日会い、いつの間にか2人の間には愛が芽生えていた。姫宮は一身に寵愛を受け、幸せに暮らしていたのだ。

しかし龍王には正妻がいる。そして龍王の子供たちまで・・・。もちろん正妻は人間である姫宮が気に入らない。正妻からの嫌がらせに耐えながら龍王の愛を信じ、過ごしていた。そしておなかの中には竜王との愛の結晶が・・・。

「龍希さま、私、懐妊をしました・・・。龍希さまとの子を・・・。」

「そう・・・。姫、あなたはここにいてはいけない・・・。ここにいてはあなたが辛い目にあう。人間界にお帰りなさい。待っている人がいる。そしておなかの子は人間界に必要不可欠な子になるであろう・・・。」

「龍希さま・・・。どうして?どうして辛いの?」

「私も辛いのです。あなたのほうが先に死んでしまう・・・。私の歳を知っていますか?私は三百歳。しかしまだまだ若い。そして人間であるあなたがここにいるために、歪みが生じてくるのです。ですから・・・。お帰りなさい。これを差し上げます。きっと何かの役に立つから・・・。」

龍王は姫宮に水晶の玉を渡し、姫を人間界に送り届ける。

そして姫宮にお別れのくちづけ・・・。

「きっとお腹の御子があなたやいろいろな人々を助けてくれるでしょう・・・。それがこのお腹の子の使命だから・・・。」

そういうと龍王は光に包まれ、消えていったのである。

 姫宮の言葉を聞いた帝は言葉を失った。信じようと思ってもそのようなことがあるのかと思ったのである。しかしこの姫宮は昔から嘘などつくような姫宮ではなかったので、信じようと思ったのである。





 殺せ・・・

殺せ・・・

青龍の子を殺せ・・・

青龍の子を抹殺せよ





人には聞こえない物の怪の声・・・。夜毎ますます物の怪どもが青龍の子の出現におびえそして暴れまわる。

一方青龍の子を懐妊中の姫宮は後宮にて龍王にもらった水晶を眺めながら、毎日を過ごす。時折元気に動くお腹の子を慈しみながら・・・。この水晶の周りは空気が違う。爽やかな空気に満ちている。自然と姫宮の周りに人が集まり、姫宮のいる御殿のみが和やかな雰囲気で時が過ぎていく。






見つけた見つけた青龍の子

殺せ

殺せ

母子共々殺せ

四神集まる前に母子共々抹殺せよ





低俗物の怪が荒い息をたてながら、姫宮のいる御殿に近づく。物の怪どもは御殿を覆い尽くす。

陰陽師、近衛の者が物の怪を退治しようと挑むが、数が多すぎて歯が立たない。

怯える姫宮。

姫宮は龍王の水晶を取り出し、願をかける。

すると眩い光があたりに満ち、低俗物の怪は苦しみ転げまわり、一瞬のうちに消滅したのである。

姫宮は意識を失い倒れる。大切な水晶を抱えながら・・・。

 春の日差しが感じられる頃、姫宮は産気づき元気な皇子を産む。見た目は普通の男の子。この皇子の産声は都中に一時的な安泰をもたらせた。命を狙う物の怪たちは皇子の誕生を恐れ、息を潜める。

 名前は「龍哉」。

帝は待望の皇子の誕生に、大喜びし、帝の養子に迎える。なぜなら年が明けた頃、病で臥せっていた東宮が息を引き取り、東宮は空席になっていた。帝にはもう東宮になるべき皇子が居ない。帝は意を決し、父が龍王かどうか確かではないこの皇子を東宮とするために帝の養子としたのである。生後すぐに龍哉は東宮の宣旨を受け、東宮となる。

 そして皇籍にこう書かれる。名は和仁親王。父は亡き東宮誠仁親王。母は藤原晴子と・・・。

「姫宮、すまないね・・・。姫宮の子として東宮には立てられないのだよ・・・。亡きお前の兄宮と東宮妃の子として・・・。我慢をしておくれ・・・。」

もちろん姫宮はわかっていた。父が誰とも知れないこの若宮が東宮になれるわけではない。たとえこの若宮が龍王の子であっても・・・。




 青龍の皇子が生まれた年の秋、ある邸にも若君が生まれる。陰陽頭安倍家の待望の男児。しっかりとした顔立ち、そして凛々しい顔立ちは陰陽頭を喜ばせる。

 若君の名は「安倍西斗」。

この名前は陰陽道の占いにより決められた。

 この若君が生後2ヶ月ごろのことである。父である陰陽頭は自室で書き物をしている。するとふっと明かりが消える。何か引き付けられる様に若君のいる部屋へ向かう。





グルルルル・・・・





眠っている若君の上に覆いかぶさる白い獣・・・。

父の目にはこの若君が噛み殺されようとしているように見えた。

陰陽頭は式神を使い、その獣に立ち向かうも見事に敗れる。

しかし白い獣はこちらを見つめるも、一行に襲う気配がない。

それどころかさらに白い光を放ち、若君の頬をなめたあと、若君の体内に消えていった。

「あの獣は一体・・・。」

陰陽頭は若君に駆け寄る。そして抱き上げると、今まで若君がつけていなかったものに気がつく。

「これは・・・?」

若君の首には白い勾玉がかけられていたのだ。その勾玉は清い光を放ち、若君を包み込んでいる。

「あれはもしや・・・。白虎・・・?何故うちの嫡男に・・・・。」

自室に戻ると紙にこう書かれている。




『青龍にひきつけられし白虎、選ばれし幼きものに宿る。』




また神の声を書き記す式神の仕業か・・・。




 「父上見て!」

四つになった若君は父である陰陽頭のほうに近寄り自慢げにある岩を指差す。

「父上、いくよ。」

指を指した大きな岩がひとりでに動き、若君の指差すほうに飛んでいく。

「父上すごいでしょ。式神を使わないで出来るんだ。どうして僕だけなの?父上は式神にさせるよね・・・。」

「そうだね・・・。西斗だけだね・・・。でもその力はやたら使うものではないよ・・・。いいかい・・・使うべき時のみ使うんだ・・・。私が式神を使う時みたいにね・・・。」

「うん・・・。」

陰陽頭である父はわが子の内に秘めた力に気づいていた。

それはとてつもない力に違いない・・・。

わが子の力を使うべき時まで封印することに決める。

それがいい事なのか、反対に悪いことなのか・・・。

それはその時が来なければわからないであろう・・・。

子守代わりの式神と遊んでいる若君を見て陰陽頭は苦悩の表情を見せた。




『泉の湧き出(いずる)側。玄武の選ばれし幼き姫君に宿る。

     その者、生と霊を兼ね備える姫君なり。』




ある冬の日、神の声を書き記す式神によって知らされる。陰陽頭はいつものように中務省に報告する。中務卿宮は首をかしげ、考える。

「湧き水の出る泉?その近くにいるという姫とは・・・。」

「たったひとつ都にございます。」

「どこ?」

「清水が湧き出る泉を持つ邸が・・・。何度か清水を頂きに参ったことが・・・。それは五摂家近衛殿の一条邸・・・。」

「そういえば近衛殿には御歳三歳の姫君がいたね・・・。確か・・・。麻耶姫。これで三神揃ったわけか・・・。あと一神。」

「いえ、陰陽道では五行・・・。言い伝えでは四神揃った後に四神の長、黄龍が現われ乱れを封じ込めると・・・。」

一方近衛家一条邸。

近衛家唯一の姫君麻耶姫が庭先で遊んでいる。まだ幼き三歳の麻耶姫。小春日和の温かい日差しを受けて、伸び伸びと育っている。可愛らしいその姫君は清水が湧き出る泉の側で遊んでいた。ふとした拍子にその姫君は泉の中に落ちてしまった。

「キャ~~麻耶様!!!」

着ている着物が水分を吸いずんずん重くなる。そしておぼれる姫君・・・。そして沈んでいったのである。お付きの者たちや警備の者たちは姫君を助けようと必死になるが見つからず諦めかけた頃、泉が光り気を失った姫君が現れる。獣の背中に乗せられた姫君。その獣の姿はこの世のものとは思えないものであった。亀のようであり蛇のようである。その獣は姫君をそっと地面に寝かすと、姫君の顔を覗き込んだ。





ゴ~~~~~~~~~~~~





獣はなんとも言えない声で吠える。そして姫君の体の中へ消えていくのである。そして姫君の胸には黒の勾玉。この不思議な現象に驚く邸の者たち。姫君の父、関白は姫君に駆け寄り姫君を抱く。

「麻耶!」

冷たくなった体が徐々に温かくなり、顔色がよくなってくる。姫君は気がつき、何がなんだかわからない表情で父君にしがみついた。

「父さま・・・。」

「今の獣はなんだったのか・・・。あれはもしや・・・。」

関白は玄武神社の祠に使いを出し、あれはもしや玄武ではないかと、真意を確かめる。

 従者が持ち帰ったお札に書かれた玄武の絵はまさしく先ほど姫君の体内に消えていった獣そのものであった・・・。







第1章 予言  完


四神降臨 第1章 予言  総集編(1)
 時は戦乱絶えない日本。武士が台頭し、日本統一を目指す武士達が全国で戦をしている。もうこの頃の帝は形ばかりの帝であった。
 戦乱の日本を鎮めるために、正親町帝は一番かわいがっていた女二の宮を伊勢斎宮とした。しかしその斎宮は伊勢へ向かう途中の鈴鹿山脈の峠で戦に巻き込まれて行方不明となった。
 斎宮が行方不明となって1年が経ち、唯一の東宮が病に倒れた。そして都中の民達が原因不明の病でバタバタと倒れていったのである。都中はなんともいえない空気に包まれ、夜毎物の怪が大路をうろつく。もちろん都のものたちは都を怖がり、出て行こうとするものもいる始末。検非違使の者達も怖がり、都の警備が疎かになっている。帝は何とかならないものかと神仏に祈願したが、いっこうに良くもならず、気が滅入ってしまい、帝自身も寝込みがちになった。

 ある日、床に臥している帝の前に、中務卿宮が現れる。
「主上、陰陽寮からこのような書状が届いております。」
「んん・・・。」

帝は侍従から書状を受け取り読み出す。

『春、花が咲く頃現われし皇子。国を助けるべき神を呼び寄せる。国乱れし時に表れし四神なり。』
「四神・・・?」
「主上、どうかなされましたか?」
「中務卿宮・・・四神とは?」
「四神とは四方を守っております、神と聞いております。青龍、玄武、白虎、朱雀・・・。」

帝は考え込むと中務卿宮に言う。

「陰陽頭安倍をこちらへ・・・。」
「御意・・・。」

帝は考えながら、清涼殿の東庭に陰陽頭を呼びつける。


陰陽頭は平伏し、帝の言葉を待った。

「陰陽頭殿、先程のこの書状の意味を問いたい。」
「御意・・・。私もよく存じ上げませんが、朝急に筆が動き出し紙にこのようなものが書かれていたのでございます。私の式神に神の言葉を伝える役目のものがございます。多分その式神の力かと・・・。」
「春・・・あと半年先だな・・・。どのような皇子が現れるというのだ。そして四神とどのように関わるのだろうか・・・。」

帝はこの予言のおかげか、気力を取り戻したのである。




 あの予言から半月後のこと、帝にある報告が入る。
「申し上げます。」
「んん・・・。」
「大津、瀬田の唐橋あたりで伊勢斎宮と思われし姫君が発見されました。」
「何!?女二の宮が???」
「ただいま斎宮様の乳母君が大津へ向かって確認をしております。」
「おお!そうか!!!女二の宮であれば、すぐにでもこちらに連れてまいれ!!」
「御意!」

伊勢斎宮とは一年前に戦乱に巻き込まれ、行方知れずになった帝最愛の姫宮である。この報告に帝は心を躍らせ、伊勢斎宮の乳母君の報告を心待ちにする。そして帝は眠れないまま朝を迎える。この日はなんといい空をしているのか。いつもはどんよりとした曇り空であったが、この日に限っては快晴であった。朝の四方拝を済ませると、昼の御座に座り、伊勢斎宮の乳母からの知らせを待った。ほんの一刻がなんと長いことか・・・。帝は立ち上がると、清涼殿内をうろうろするのである。

「主上・・・落ち着きなされませ。きっと見つかったのはわが姫宮怜子に違いありませんわ。」

と、帝の正室が帝の申し上げる。

「しかしもし姫宮であれば、今までどこに居ったというのだ?無事であろうか・・・。」

その時、早馬で清涼殿に使いが来る。帝は御簾から飛び出し、使いの者に問いただす。

「瀬田で見つかった姫はわが姫宮であったか?どうした早く申せ!」
「御意・・・。確かに伊勢斎宮様でございました・・・・ただ・・・。」
「ただ?何だ?」
「身重なのでございます。」
「姫が身重だと?」
「はい、確かに・・・。」
「とりあえず姫宮をここに連れてまいれ・・・。いいな、早く!」
「御意!」

帝にとって姫宮が身重であることに関してはどうでもよかったのである。ただ早く最愛の姫宮をこの目で見たい。この腕に抱きたいと思って使者をせかしたのである。
 冷静になった帝は疑問に思う。
姫宮のお腹の子の父は誰であるかということを・・・。



 大津の瀬田から姫宮が戻ってきた。姫宮は痩せているわけでもなく今までと同じ美しい姫のままであった。姫宮は清涼殿の御簾の前に座り、頭を下げる。何も話そうとしない姫宮を見て、帝は御簾から飛び出し、姫宮を抱きしめた。

「お父様・・・?」
「姫宮・・・今までどこの居ったのか?」
「それは・・・。私にもよくわかりません・・・。」

また姫宮は黙り込んだ。帝は姫宮を御簾の中に入れ、母君と対面させる。

「まあ、怜子。元気そうで何よりでした・・・。懐妊されていると聞きましたが?」
「はい・・・。春ごろ生まれるかと・・・。」
「お相手は?」

姫宮は黙り込み下を向く。すると帝が言う。

「下々のわけのわからないものであろう・・・。」
「いえ!お父様、違います。このお腹の子の父君は・・・。お父様もお母様も、きっと信じていただけないと思います。私もはじめは理解できなかったのです。でもその方は私を大切にしてくださって、ご寵愛くださいました。」

姫宮はお腹の子の父について話し出す。



 1年前、鈴鹿山脈の峠で姫宮達一行はある残党に襲われた。
お付きの者達が切り殺されていく中、姫は輿の中でいつ自分が見つかり辱めにあうのかと怖がりながら、守り刀を握り締め、震えていた。もちろん見つかればただではすまないであろう。きっと連れて行かれて辱めにあうのはわかっている。そうなった時には自害しようと思ったのである。しかし、輿の外から手が伸び、姫宮の腕を掴まれ外に引っ張り出されようとした瞬間、雷鳴が轟き、残党に降り注いだ。もちろん残党は倒れ、姫宮のみが助かった。 姫宮の視線の先には若い男の姿・・・。その男は光を放ち、姫宮のほうを見つめていた。姫宮は引き寄せられるようにその男の元へ近づく。

「あなたが助けてくださったのですか?」
「はい・・・。危ないところでした・・・。」
「わたくしは今上帝の二の姫宮斎宮怜子と申します。あなたは?」
「私は龍王龍希。あなたのような人間ではございません。」
「龍希さま?」
「ここにいては危ない。とりあえず私の国へ参りましょう。」

姫宮と竜王は眩い光に包まれ姿が消える。
深く木の生い茂る樹海の中。姫宮は龍王に部屋を与えられ、当分お世話になることになった。







総集編その2へ続く
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さくらと空 
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