4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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縁~えにし (7)選択
(7)選択
 ついに夜になって元服のお式が始まろうとしていたのね・・・。続々参列者が紫宸殿に集まってきて、私は最後のほうに入ってきたの・・・。上座には後二条院の横にもうひとつお席があって、誰が座るんだろうって思ったら、紫宸殿中が騒がしくなって私の本当のお父様後宇治院が入ってきて後二条院の横に座ったのね・・・。育てのお父様は正四位だから群臣の中央くらいに座っておられたけど、私とお母様は後宇治院の側に座ったの。
 みんな着座したのを確認して、誰だかわかんないけど、偉い人が私の宣旨(院政中だから院宣だけど・・・。)について読み上げるの。

「院宣 後宇治院三の宮小夜子姫を本日より三品内親王とする。」

私は後宇治院の元皇后の子だから皇族位の上から三番目の位と内親王の称号を賜ったんだけど、何がなんだかわからないし、周りの人たちは不思議そうにざわついていたわ。後宇治院様は私に真横に座るように言われたから立ち上がって座りなおしたの。そうしたら院様は私の頭を撫でて微笑まれたの。

「今日からあなたは正式な私の娘だよ・・・。」

私は黙ったままで院様の顔を見つめていたんだけど・・・。なんとかそのあと帝の元服式が始まって、さっきとは一変、厳粛なムードになったのよ・・。

帝は禁色の衣装を身に着けて、長い童髪を切りそろえて大人の髪を結って冠をつけられたお姿はますます後宇治院によく似ておられて御式を見て私は感動してしまった・・・。お母様もやはり親なのね・・・。とても喜んで御式を見ていたわ。

いつの間にか私は後宇治院様にもたれかかって私は眠っていたの。やっぱり朝早かったし、ずっと重い衣装で一日いたでしょ。お式は夜行われるしね・・・。あとから聞いたんだけど、後宇治院様が眠っている私をお母様のお泊りになる桐壷まで運んでいただいたらしいの・・・。その夜、眠っている私の横で八年ぶりにお母様と後宇治院様が今後の私についてゆっくりお話になったそうだけど、とりあえずこの私の意見を尊重しようということになったらしいの。

その日の夜、後宇治院様は後二条院様と二条院にて色々お話し合いになったそうよ。 朝早く私は目覚めたのね。横に寝ているはずのお母様は昨夜全然眠れなかった様子で、目覚めた私の顔を見て微笑んだの。

「今日は二条院に行ってあなたのことを話すことになっているの。和気のお父様も同席するわ。」
「院のお父様は?」
「昨日二条院にお泊りだから、二条院におられるわ・・・。」

私は朝餉を食べてお母様と一緒に二条院に行くことになったの。お母様は車の中でずっと溜め息をついて私を見つめているの。

「あなたのお父様はあなたをどうするおつもりかしらね・・・。小夜、きちんとあなたの気持ちを伝えるのですよ。あなたのお父様は信用できない方だから・・・。」
「どうして?とてもいい方だと思うけど?」

お母さまは苦笑してそれ以上のことは言わなかったけれど、きっと話したくないことがいっぱいなのかなってなんとなく思ったの・・・。ほんとにお母様はいろいろな事がありすぎの方だから、きっと話したくないことがいっぱいなんだと思うのよ。

二条院につくとすでにみんな揃っていたの。後二条院様は側にいる侍従まで遠ざけて、私達だけにしたの。身内以外がいなくなったのを確信したら、後二条院様は私にお聞きになったの。

「小夜、小夜はどうしたいのかな?本当のお父上のいる宇治で過ごすのか、それともこのまま下賀茂で過ごすのか・・・。小夜はどちらに行きたい?」
「そうだよ、小夜姫。父はあなたを無理に宇治に連れて行こうと思わない。まずはどうして内親王院宣をしたかわかるかな?」

私はあまりよくわからなかったから首を横に振ったのね。そしたら和気のお父様が言ったの。

「小夜、いいかい。父様はお前を捨てたのではない。お前のことを考えて承諾したのだよ。父様の家柄ではもういくらがんばっても、これ以上は出世しないよ。このままだったらいいところにお嫁にいけない。いいところに行けたとしても、側室だよ。お前には幸せになって欲しいから、内親王院宣に承諾したのだよ・・・。決してお前を嫌いになったわけではないから安心しなさい。だからこれからどちらのお邸で過ごすのかはお前が決めていいんだよ。無理強いなどしないから・・・。」

私は和気のお父様も好きだし、後宇治院のお父様も好き。本当に悩んだんだけど、いい事を思いついて、後二条院様に聞いたのね。

「ねえ後二条院様、私の考えを聞いてくれる?」
「何?いいよ。どうしたいんだね?」
「とてもずるい考えなんだけど・・・。あのね、小夜どちらの家の子にもなるの。」
「どちらにも?」
「うん。小夜ね、たくさん家族が増えて嬉しいの。だって下賀茂のおうちは和気のお父様と、お母様とお兄様と、小夜が住んでいるだけでしょ。小夜にはお爺様がいないから寂しかったんだ。お優しい後二条院様がお爺様なんてとっても嬉しいの。あとね、お父様が二人もいるって素敵じゃない?帝のお兄様や東宮のお兄様・・・。小夜にたくさんの家族が増えたんだもん。だから小夜はどちらのおうちの子にもなるの。そうしたら誰も寂しくなることないし、悲しまないと思うの。」

みんな私のほうを不思議そうに見ていたわ。どういうことかはっきりわからないみたいね・・・。

「だからね、小夜は半月交代で下賀茂と宇治を行ったり来たりするの。そうすればどちらの子にもなれるでしょ。もちろん私がどこかにお嫁入りするまでの話よ。」
「なるほどね・・・。小夜、よく考えたね。さすが私の孫だ。」

後二条院様は私の頭を撫でで微笑まれたの。だって宇治を選んだら和気のお父様とお母様はとっても悲しがることになるでしょ。で、下賀茂に行ったら今度は後宇治院のお父様がお寂しい思いをされるのですもの。交代で行ったり来たりすればいいんじゃないかなって思ったの。変かな???

「本当にいいの?小夜・・・。母様のいる下賀茂にもいてくれるのね・・・。」
「うん。小夜、下賀茂大好きだもん。そして宇治も好きだよ。宇治のお父様、色々案内してね。」
「ああ、宇治にきたときには色々案内するよ。」

お母様は嬉しそうな顔をして涙を流しながら、和気のお父様と見つめ合っていたの。宇治のお父様もすっごく嬉しそうな顔をして、私を見つめてた。

私はこの日から下賀茂と宇治の子になったの。下賀茂ではね、和気のお父様やお母様と薬草園を散歩したり、お父様と鴨川の辺で遊んだりしたの。宇治ではね安子様や宇治のお父様に習字やお歌、琴、香など、色々内親王として必要なことを教わったりしたの。もちろん宇治のお父様と宇治を散策したり川を眺めたりしてたりもしてたわ。

ほんとにどちらの子になってよかったの。もちろんお爺様の後二条院様のところによく遊びにも行ったの。東宮のお兄様のところにも。私は帝のお兄様の妹だからよく節会なんかにも呼ばれたりもしているの。後二条院様と後宇治院様も和解して、今じゃホントに仲のいい親子に戻ったし・・・。私がみんなの縁を結んだのかな?ホントにみんな幸せに暮らしています。
康仁帝の3兄妹

え?私?あれから四年後の十三歳の時に無事に裳着を済ませて、その年の豊明節会で知りあった三歳年上でお爺様の弟宮であられる兵部卿宮様のご次男従五位下侍従であり四品親王輝仁様と婚約したの。もちろん結婚はまだまだ先だけど、まめに文を下さるいい方なのよね。

本当に今充実した毎日を送っています。私、幸せになります!



番外編 縁~えにし   完







一応ひと区切り・・・。
どうなんでしょう・・・。


追伸:左から小夜の兄博仁東宮、小夜、兄の良仁帝です。兄妹でも微妙に顔が違うのわかりますが?帝は父似、東宮と小夜は母似です^^

で、前連載した現代版「優しいキスは放課後に・・・」の続編「うれしはずかし恋愛生活」が始まります。ま、その前にも「IF~もし全部夢だったら」もありますけれど・・・。もうちょっとお付き合いください。
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縁~えにし (6)真実

(6)真実  





 年末で忙しいのと、蘭お姉さまの副臥&入内で大忙しの我が家・・・。相変わらずお父様はおうちにいないし・・・。忙しすぎてあのことなんて忘れてたわ。相変わらず、お父様は私のことをかわいがってくれるし、お母様もいつもどおり・・・。あれって夢かなんかなのかなって思うようになってきたのね・・・。夢であったらいいのになんて思ったこともあったっけ???





 私はというと、きちんとお父様の言うとおり、習字とか黙ってやっていたのよ。でも最近のお父様の口癖は「お前は才能ないなあ・・・。」だもん。もちろんどうしてかなんてわかるでしょ。お父様の子じゃないから・・・。私、医学書を読むよりも物語や和歌集を読んでいるほうが楽しいのよ。この前東宮御所に遊びに行って、東宮様や東宮御所の女房たちに舞とか、お歌とか、お琴とか教えてもらったのね。そしたらみんな飲み込み早いって言ってくれて、嬉しかったなあ・・・。やっぱり私は和気家の人間じゃないんだって思ったの。でもお父様がだいすきだから、ちゃんと医学書なんか引っ張り出してきて読んでみたりするのね。そのおかげかわからないけれど、難しい漢字くらいは読めるようになったわ。





あっという間に年が明けちゃって、私はひとつ歳とって9歳なったの。9歳になったって言っても別に変わったことなんてないけどね・・・。でもお父様なんか、私の将来のことを考えるようになってこの前も女医の養成施設に入れるか悩んでいたのよね。お兄様はもう私の歳でこの施設に入っていたし・・・。元旦早々お父様ったら、出仕前に私の肩に手を置いて言うのね。





「どうしよう・・・。女医として学ばせるのであれば早いほうがいいが・・・いろんな医学生を見てきた父様が見てもお前の才能はこれっぽっちもない・・・。いやいや学ばせるよりも殿上人の姫らしいことをさせたほうがいいのではないかな・・・。でもお前は母様に似てじっとしていられない性質だから姫として部屋に籠もるなど・・・・。」





お父様は溜め息をつきながら出仕して行ったのね。お母様もお父様の言うことにうなずきながら私を見ていたの。





「お母様、小夜、お医師にならないから。小夜には才能がないし・・・。小夜はお姉さまの女童で出仕できないかな・・・。そうしたらいろんなこと勉強できるもん。」


「そうね・・・その方がいいかもしれないわね・・・。右大臣様にお文を書くわ・・・。きっと人手が足りないだろうから、喜ばれるかもしれないわね・・・。ちゃんとお行儀よくできるかしらね・・・。まああなたは東宮御所とか二条院によく出入りをしているから、心配ないと思うけど?」





早速お母様は右大臣様にお文を書いたの。そしたらすぐに返事を持ったお父様が帰ってきたのね。





「右大臣様から直々に小夜を蘭の女童として同行せよといわれたよ。どういうことだ?」


「お父様、小夜が行きたいとお母様に頼んだのよ。小夜はお医師にならないから。宮中で動き回ってお仕事するほうがいいもん。」


「んん・・・。それだけじゃない。後二条院様が小夜を帝の元服式に参列させよと仰せなのだ。詳しい事は当日話すと仰せで、訳がわからん・・・。急いで参内の準備を整えないと・・・。」





この日からお父様は私のことでさらにお忙しくなったのよね・・・。お衣装はすぐにたくさん用意できないから、始めのうちは内大臣様の大姫のお衣装をお下がりしてもらうことになったんだけど・・・。ホントにお母様に礼儀作法とかを突貫工事のように教え込まれて気が付いたらもう一月五日の朝・・・。さすがお母様は長年宮中で生活していたから良く知ってるわ・・・。知らない一面を見てしまったって思ったのよ。(やっぱり宮中では猫を被ってるんだね・・・・。家では結構性格大雑把なのにさ。)





私は一応今年新調してもらった女童装束を着せてもらって、きれいに髪も整えてもらってね、お母様のお部屋に行ったのよ。するとお母様ってやっぱりきれいよね・・・。とっても品のいい唐衣を着て、きれいにお化粧して・・・。三十七歳でいままで六人子供を産んだようには見えないって・・・。ほんとに感心しちゃうよね・・・。やっぱりお父様がとってもお母様を愛しているからなのかな・・・。やっぱり女って愛が大切よね・・・。





まず後宮に入って、お姉さまのいる承香殿に挨拶に行ったの。やっぱりお母様は後宮に入ると、緊張しているのかお淑やかなのよね・・・。おうちでは結構走り回っているのに・・・。やはり熟女っていうのか、いい雰囲気があって、後宮の女官たちが振り返るのよ。やっぱり清涼殿あたりから承香殿西廂が見えるじゃない?その辺りにいたときに清涼殿のほうから視線を感じたのよね・・・。振り返ったら数人の公卿達がお母様を見ていたのよね・・・。私じゃないのは確かよ。だってまだお子ちゃまですもの。





やはりお姉さまのいる承香殿は大忙しだったのよね。昨日こちらに入ったばかりだからかもしれないけれど、お姉さまは大変疲れた様子で座っておられたの。久しぶりにお姉さまにお会いしたんだけど、やっぱり綺麗よねって思ったの。




縁~蘭姫


蘭姉さまのお母様はとても綺麗な姫君だったってお父様は言ってたし、お父様も姿形のいいほうだもん。色白で、すっきりして、ちょっと違った感じのお顔つき(だって宋国と倭国の混血児なんだもの。)がいいように綺麗さを際立たせているのね・・・。蘭姉さまは私の顔を見ると微笑んで、側に呼んでくださったのね。そして私を撫でてくれたの。




ちょうどその頃、紫宸殿で帝の元服による臨時の除目があって、紫宸殿の隣にある御殿だから、結構騒がしかったわ。




除目が終わったのか、その足でお父様はこちらの御殿に来たの。蘭姉さまは大変喜んで満面の笑みでお父様をお迎えになったのよ。お父様は複雑な表情で蘭姉さまの前に座って除目についていったのよ。




「位階は変わっていないが配置換えがあってね・・・。私は宮内卿になったよ・・・。まあ典薬寮は宮内省の管轄だから配慮があっての事だけど・・・。後二条院に伺ったら、これで表立って医師の仕事も出来るでしょうと仰せになった。まあ私は事務的な仕事よりも医師として動き回っているほうが性に合うのだが・・・。」


「泰明、院は他に何か仰せではなかった?」


「彩子、ここではいえない・・・。今から弘徽殿で後二条院からお話があるから、小夜と一緒に行こう。」




お父様は何やら真剣な顔で、私とお母様を連れて弘徽殿にいったの。弘徽殿に入ったら元服式前の帝(実は初めて会うんだ・・・。)と、東宮様、そして後二条院様がお待ちになっていたの。帝はとてもお父様の後宇治院にそっくりで、驚いたけど・・・。帝は私を見るなり、おっしゃるの。




「この子が僕の妹小夜姫だね・・・。お父上やお爺様から聞いたよ。先日八年ぶりに父上と対面してね・・・。色々小夜姫のことは聞いたよ。本当に東宮によく似た姫だ・・・。」


「東宮様に?」




私は東宮様を見たの。東宮様は黙ったまま微笑まれていたの。お母様はなぜか焦った顔をして私を見るのよね。




「母上。」


「はい、帝。」


「この子は本当に母上に似て可愛らしい。すました感じは父上に似ているのかな・・・。そう思わない?東宮。」


「そうですね兄上。」




お母様はさらに慌てて帝に申し上げたの。




「帝、小夜は和気殿の子ですわよ。なに冗談を・・・。」




やっぱり私は後宇治院様の姫なんだわ・・・。お父様は下を向いたまま黙っていたの。私はお母様に私の知っていることを言おうと思ったの。




「お母様、小夜は後宇治院様の姫なんでしょ。なんとなくわかったんだ・・・。隠さなくってもいい。」


「小夜・・・。」




すると後二条院様が話をしだしたの。




「小夜が悟ったのであれば話は早い。まさしく小夜はわが息子後宇治院の子だ。先日小夜に言われて息子に会ったのだが、あの者もそうではないかと言っていたのだ。そうだよね彩子殿。」




お母様はうなだれて頭を縦に振ったの。すると後二条院様はお母様に言ったの。




「先程和気殿にも申し入れ、内々的に承諾を得た。この子の将来を考え、先帝の内親王として院宣する。その方が嫁ぐときもよい家に嫁げるであろう。」




じゃあ私は養女に出されるってこと???そんなのやだ。後宇治院様はだいすきだけど、今のお父様お母様と離れたくないの。やっぱりお母様は悲しそうな顔をするのね・・・。私は悲しくなってせっかくのお衣装が濡れるくらい泣いちゃった。




「お父様!小夜は宇治に行かなきゃいけないの?下賀茂にいたいよ・・・。お父様の側にいたいの。」


「ありがとう小夜。これからのことはまたゆっくりと話そう・・・。とりあえず、今日元服式の前にお前の内親王院宣があるから、お前もお式に呼ばれたのだよ。泣かないでおくれ。父様も悲しくなるよ・・・。この院宣はお前の将来のことを思ってのことだよ。いいね・・・。」




そのあとお父様は何も言わないまま、じっと式が始まるのを待っていたわ。お母様はというと、やはりすごくショックだったようなの・・・。






作者からの一言


イラストは和気泰明と宋国の姫との間に出来た蘭姫。中国系にしようと目を小さめにしました。泰明は目が大きい設定ですので^^;書き分けできていますか?



縁~えにし (5)縁結び

(5)縁結び  


私は後宇治院と共に院の車に乗って、私の家がある下賀茂に向かったの。下賀茂は平安京の北東のはずれにあるでしょ、結構時間がかかるのよね。お忍びとはいえ、先帝が都入りするって言うんで、車には結構護衛が付くのよ。車の中で、院は何か考え事をされていたんだけど、私がじっと見つめると慌てて苦笑されるのよね・・・。





「小夜姫どうかしたのですか?」


「あの、私のような身分でお伺いするのはとても恐れ多いのですが、どうして後二条院様と院は仲が悪いのですか?親子であられるのに・・・。」


「ん?んん・・・。私を嫌うのは父上だけではないのですよ。ほとんどの群臣が私を嫌っていると思う。小夜姫のお父上もそうだよ。本当に帝位についていた頃は皆にひどいことをしてしまっていた。特に父である後二条院、和気殿、そして特に小夜姫のお母上にね・・・。」





詳しく聞きたかったんだけど、後宇治院はそれ以来何もおっしゃらなくなってしまわれたから、私もそれ以上聞かなかったんだ。こんなにお優しい方なのにどうしてみんなが嫌うんだろう・・・。





都に入ったころ、また後宇治院様は話し出されたの。今度はお父様の話・・・。





「本当に和気殿には命を助けていただいた恩があるのに・・・。」





後宇治院様はもともとお体が弱いところがあったらしいのよ。だからみんなに幼い頃から大変大事にされてお育ちになられたそう・・・。特に十歳の頃に最愛のお母様を亡くされて病気がちになったらしくって、どんな典薬寮のお医師様、侍医様が治療してもなかなか治らなくって、典薬寮にお医師として配属されたばかりの二十歳位の時のお父様がなぜか主治医に選ばれてね、色々民間療法とか何とかで見事に治したらしいのよ。お父様がいなかったらこの院様はこの世にいなかったかもしれないって院様は言っておられた。それなのに院様はお父様にとてもひどいことをしたんだって・・・・。そんなことするような人には見えないけど・・・。





「若気の至りではすまない自分勝手なことをしてしまったから皆に退位を迫られたのですよ・・・。もう私はあの時の私ではない・・・。それを皆わかってくれないのだよ。わかってくれるのは私の二歳年上の叔父上、源博雅殿のみ・・・。叔父上は暇を見つけては宇治まで足を延ばしてくれて、話などしてくれるのです。本当に助かります。」





私は考える暇なく、院様に言っていたの。





「後宇治院様はひどい人じゃない!私わかるもの!心の中はホントにあったかい人だって!私も後宇治院様の味方だよ!」





院様は驚いた表情を見せたあと、微笑んで私の頭を撫でられたの・・・。





「ありがとう・・・。本当にありがとう可愛い姫君・・・。私にこのような姫がいれば心強いのだけど・・・。」


「じゃあ院様!今からこの小夜と二条院に行きましょう!きっと後二条院様は話せばわかっていただけます!だって後二条院様は情深い優しい方だもの・・・。小夜が付いてるから!小夜は院様の味方だよ!」





院様はありがとうって微笑まれて私を抱きしめてくれたの。丁度二条大路の入ったところだったから、私は車を止めてもらって飛び降りて院様に言ったの。





「院様、ここで待ってて!小夜、二条院様にお会いしてくるから!いい?」


「小夜姫!勝手に入れないよ!」


「いいの!私後二条院様に可愛がられているからいつも入れてもらえるのよ!」





院様は車の御簾をめくって心配そうに見つめていたの。もちろん二条院は顔パス!にこって笑って「和気小夜で~~~す。」って言ったらすんなり入れてくれるんだ。もちろん後二条院様がそのように衛門の者に言ってくれているからなんだけど・・・。私は仲のいい後二条院の侍従さんに面会を頼んだのね。そしたら丁度公務が一段落したらしくってすんなり合わせて頂いたの。私は後二条院様の部屋に通されていつものように御簾の中に入れてもらって挨拶するんだよ。





「おや?小夜。お父上は先程客人が来るって言うから急いで帰ったよ。入れ違いだね・・・。」


「小夜は後二条院様に御用があってきたの。小夜ね昨日後宇治院様のお邸にお泊りしたのね。」





そういうと、後二条院様のお優しい顔が一変、険しい顔になられたの。ああ拙かったかなって思ったんだけど、やっぱり後宇治院様の誤解を解いて仲のよい親子に戻して差し上げようと思ったから意を決して言ったのね。





「あのね、小夜、後二条院様と後宇治院様が、仲が悪いって、親子なのにおかしいと思うの。昨日安子様に呼ばれて宇治院に遊びにいったの。夕刻、小夜ね、お庭で迷子になってないてたら、後宇治院様が探して助けてくださったのよ。この前初めて会った時も、小夜においしいお菓子をくれたり、楽しいお話を聞かせてくれたりしたの。まあそれだけじゃないんだけど、ホントにお優しい、まるでお父様みたい・・・・・。」





(んんんん?お父様???)





そうよ、後宇治院様の私を見る眼差しはまるでお父様のような優しい眼差しだった・・・。何か引っかかるのはこれだったんだって気づいたのよね。ただの優しい眼差しではなくって、温かくって見守ってくれているような優しい眼差し・・・。うちのお父様やお母様と同じじゃない!





え~~~~~~!





「小夜、どうかしたの?」


「あのね、後二条院様!小夜ってお父様に似てるの?安子様はお父様に似ていないって言うのよ・・・。本当に小夜はお父様とお母様の子なのかな?」


「たぶんそうだろうね・・・。予定よりも二月いや三月早かったと聞いたが、そんなに早く生まれて育つのだろうか・・・。医学のことはよくわからないが、お祝いに行ったときは結構小夜は大きかったからおかしいなって思ったけれど・・・。」





何言ってんのよ!二月三月の早産で生きてる例って今まで見た医学書とかにも載っていなかったわよ!!!私って後宇治院様の姫ってこと???だから後宇治院様は養女のことを切り出したのかな・・・。





「とりあえず後二条院様!小夜のお願い聞いて!表に後宇治院様が待っているの!少しでもあってあげてよ!もう以前の院様じゃないと思う!だって小夜わかるもん!だって小夜、後宇治院様の姫かもしれないんだもん!!!!」





後二条院様は目を見開いて私の顔を見たのよ。そして後宇治院様と面会することをお許しになったの・・・。もちろん私は遅くなるからって、後宇治院様の車にひとり乗せられて、下賀茂のおうちに戻って行ったの。お二人はどんな話をしたかまではわからないけれど、おうちに帰った私は心配していたお父様に抱きしめられて、お父様のお部屋に連れて行かれたの・・・。





「遅かったじゃないか・・・。後宇治院様は一緒じゃないのか?」


「うん。二条院までは一緒だったの。小夜ねどうしても後二条院様と仲直りして欲しかったのよ。だから小夜、後二条院様にお会いして、お二人を引き合わせたのよ。お父様は後宇治院様を誤解しているわ。とっても優しいいい方よ。もう許してさし上げたらいいのに・・・。ねえ、お父様。小夜、後宇治院様のお気持ちがなんとなくわかるの。とってもお優しいけれど、寂しいの。若いときに色々してしまったっておっしゃっていたけど、それはきっとお寂しいからよ。だからお父様、これ以上後宇治院様を憎まないで・・・。」


「小夜・・・。」





気が付くとお母様がお父様の後ろに立っていたのよ。とても悲しい目をしていたの。今までお母様が見せた事のない悲しそうな目・・・。なぜ・・・?もしかして私がお父様の子じゃないかもしれないって気が付いたからかな・・・。





そのあと私は夕餉を食べて早く寝所に入ったの。でも厠に行きたくなってお父様の部屋の近くで聞いてしまったの。お父様とお母様の話を・・・。




縁~彩子&泰明


「泰明・・・。小夜はもしかして気づいたのかしら・・・・。あなたの子じゃないってこと・・・。」




(え~~~~~~~。)




「かも知れないね・・・。あの子は結構勘のいい子だから。あそこまで後宇治院をかばうなんてね・・・。辻褄をあわすために、早産で生まれたと報告したが・・・。やはり無理があった・・・。」


「このまま放っておくべきかしら・・・。」


「ああ、そのほうがいいかも知れない・・・・。きっと本当のことを知るときがくるから・・・。でも、私はあの子を本当の娘と思っているのを忘れないで欲しい。彩子が蘭を自分の子のように可愛がって慈しんでくれたように・・・。いくら憎い後宇治院の姫だとしても・・・。私は彩子を再び和気家に迎えたとき決めたのだから・・・。彩子のおなかの子は私の子として育てようと・・・。だから私はこれから小夜がどう選択しようとも私の娘には変わらない。これからずっと・・・。」


「ええそうね・・・。」




私は真実を知ってしまったの。でも、不思議と冷静にいられたのはなぜだろう・・・。やはりこれが縁というものなのかな・・・。ああやっぱりそうだったって・・・。私はお父様のお部屋を遠ざかって自分の部屋の寝所に入って眠ったの。




縁~えにし (4)呼魂(ここん)

(4)呼魂(ここん)


 私は夢の中で声を聞いたの。とても不思議な感覚。この声を聞いて何か温かいものに包まれているような・・・。懐かしい・・・・そうとしか言いようがなかったの。夢から目覚めようとしているのか、その声ははっきりしてくるの。薄目で声のするほうを見つめると、安子様と後宇治院様がおられたの。御簾越しだったので、私が目覚めたことに気が付かないみたい。私は寝るふりをして話している内容を聞いたの。


「康仁様、小夜姫はほんとに可愛らしい姫君で・・・。」

「そうだね・・・。最愛の彩子殿に似ているだけではない・・・。安子は気が付いたかな・・・。」


(何?あと誰に似ているって言うのさ・・・。)


「まああの和気殿に似ていないのは確かですわね・・・。」


(和気殿って・・・お父様???)


「私が譲位したのは八年前の春だろ・・・。そして泰明殿に彩子殿を返したのも同じ頃。そして生まれたのは霜月末。おかしいと思わないかな・・・。」

「辻褄が合わないってことでしょうか?十月十日って言いますものね・・・。泰明殿が彩子様と密通していたというのであればわかりますが、それはちょっと考えられませんもの・・・。もちろん父院様も・・・。」

「んん・・・。後見になられていた父院でさえ彩子殿の御殿には殿上を許さなかったのだから、あの堅物な泰明殿が密通などありえない。」


(ど、どういうことよ!!!!!)


「たぶんあれは・・・。」


私はつい緊張のあまり物音を立ててしまったの。もちろん私に聞かれてはいけない内容だったらしくそれ以上は話さないで、院は部屋を出て行かれたのよね・・・・。私って馬鹿・・・。 安子様は驚いた様子をこれっぽっちも見せず、にこやかな表情で私のところに来たの。さすが教養高いかたよね・・・。なんて切り替えが早い・・・。


「まあ、小夜ちゃんお目覚めかしら・・・。もう夕刻だから泊まっていきなさいね・・・。先程和気本邸に文を届けさせたから・・・。」

「さっき・・・。」

「何かしら。」


私はなんだかさっきの話を聞くのが急に怖くなって聞くのを辞めたんだけど、安子様の品のある溢れんばかりの笑顔を見るとまあいいかなって思ったりしたのよね・・・。でも今日はどうして後宇治院様は私にお顔を御見せにならないのかしらね・・・。前回はお一人で長々話しておられたくらいの方だったのに・・・。


「あの・・・院様は?」

「お庭だと思うけれど・・・。最近物思いにふけられることが多くてね・・・。」


私はなんだか知らないけれど、居てもたってもいられなくなって、気が付くと庭に下りていたの。無我夢中で院のお姿を探していたのね。


「小夜ちゃん!大切なお衣装が!」


やはりいいおうちの邸の庭ってどうしてこんなに広いのかしら・・・。院を探しているうちに庭木が茂った訳のわからないところに出ちゃって、日も陰ってきたし、もう真っ暗・・・。いくら緑豊かな下賀茂に生まれ育った私だって、こんなに緑の生い茂った知らないお庭で迷って心細いって何の・・・。恐怖のあまり腰が抜けちゃって後から考えたら恥ずかしいんだけど、思いっきり泣き叫んでいたのよね。


「お父様!お母様!小夜おうちに帰りたいよ!」


その場にうずくまってしまって、大声で泣いていたの。小半時ぐらい経ったのかな。松明を持った人影が現れて私を抱きしめてくれたの・・・。


「お父様?」


きっとお父様が迎えに来てくれたんだって思って緊張の糸が切れたのか私はいつの間にか気を失っていたのよね。意識が朦朧としている間ずっと抱きしめられたままだったのか、とても温かい感じして、なんだか不思議と落ち着けたのよね・・・。そのまま温かい胸の中で眠ってしまったわけ・・・。


朝気が付いたら、なんと御帳台の中で寝ていたのよ!!!御帳台よ!!!横には・・・・。


「!きゃ~~~~~~~~~~!」


小夜ああ勘違い 邸中どころか外にまで聞こえるような声で叫んでたわよ・・・。だってだって横には、い、院が・・・・。もちろん私も院も小袖姿よ!小袖姿っていったら下着なの!まだ裳着を済ませていないとはいえ、私も姫よ!いい歳した殿方と同じ布団の中で寝ていたんだから!!!!何このおっさん!いくら最愛か何かわからないけど、元皇后のお母様に似ている私と同じお布団で・・・。へんな趣味してるわ!このロリコン!!!私は座り込んで泣いたのよ!私の初枕(初夜のことね)がお母様の元旦那様だなんて・・・。洒落にもならないわ!!!


私の悲鳴に驚いたのか、院も飛び起きて、周りにいろんな女房や院の従者とか家司とかが集まってきて大騒ぎになったのよね!院と目が合うと、私は無我夢中で院を叩きまくったわ!


「やだやだやだ!!!!」


院は何がなんだかわからない様子で、目を見開いて私を見てるのよね・・・。するとね安子様がすっ飛んできて平然微笑ながらと言うのね・・・。


「院、ですから昨夜お止めくださいと・・・。」

「小夜姫に誤解をされてしまったようだな・・・。ほんとに気の強いところは母君によく似て・・・。安子、引っかかれてしまったよ・・・。」


院は苦笑しながら引っかき傷を触ったのね。結構力任せに叩いたり引っかいたりしたもんだから頬にできた傷から血が出ていたの・・・。まあたいしたことなかったからすぐに血が止まったんだけど・・・・。


「ごめんなさい・・・。」

「こちらこそ驚かせてしまったようだね・・・。いくらこの私でも裳着前の姫を手籠めにするつもりはないよ。昔は若気の至りで色々やってしまったけれど・・・。」


院はね、私に頬にある古傷を見せて言ったのよね。


「これは小夜姫の母君につけられた傷でね・・・。まだ小さいあなたに言うのは控えるけれど、若気の至りで今上帝である良仁を懐妊させてしまったときの傷・・・。」


ちょっと待ってよ・・・無理やりってこと????よくそんなこと裳着前の私にいえるわよね!!!いろんな物語を読んだ私には今上帝とお兄様の歳の差がなんとなくわかったような気がするけど・・・。かの光源氏の君のように父帝(後二条院様のことね)の女御(大和女御と呼ばれていたお母様のこと)に手をつけたって事なのかな????


「昨日庭で小夜姫が泣いているのを見つけてね、かわいそうだと思って抱きしめてやったとたんに倒れたのだよ・・・。そのまま眠ってしまったから、可愛らしい姫の寝顔を眺めながら眠りたくなってね・・・。安子達には反対されたが・・・・。」


院は優しい笑顔で寒いだろうと側にある単をかけてくれてね。院は小袖のまま御帳台を出られて脇息にもたれかかって溜め息をつかれたの。女房は急いで院に上着を羽織らせて朝の支度をしているのよ。


「小夜姫は大きくなったらやはり女医になるのかな・・・。」


院は私に聞いてくるのよ。私はなるのが当たり前だと思っているから、他に何になるかなんて考えたことなかったわよ。(まあ私は姫だから、どっかにお嫁に行くかお婿さんをもらうかしかないけど・・・。)私は黙っていると院は変なことをおっしゃるのよ!


「小夜姫、うちの子になるつもりはない?小夜姫がいてくれたらこの邸もきっと楽しいだろうね・・・。」

「え?」


ここのおうちの養女になれって事???もちろんこのおうちは、古い由緒ある家系(都が飛鳥や斑鳩とかにあった時代以前?かな、昔は結構高位まで登りつめたらしい)だけがとりえのうちと違って、隠居されてるとはいえ皇族中の皇族のお家柄だから、うちと比べていい生活が出来るのは確かだけどね、


私が出て行ってしまったらお父様やお母様はきっと寂しいと思うのよ。それでなくても蘭お姉さまが右大臣家の養女として出て行かれたときはお父様なんて何日も寝食ができなくって、お倒れになる寸前だったんだもの・・・。お父様に可愛がられている私が出て行ってしまったらきっと再起不能になるわねきっと・・・。


「小夜姫には弟や妹はいないの?」


と院は私に詳しく家族構成を聞かれるんだけど、もちろん私には妹も弟もいないわ・・・。


お母様は私を産む時に大変難産で、三日三晩陣痛に苦しんで、やっと生まれても生死をさまよったほどだったって聞いたわ。お父様は大事な節会にも出席せずに、ずっとお母様に治療しながら寄り添って看病していたんだけど、私が生まれたあとも出仕しないでお父様の力を全部出し切って一生懸命治療と看病していたの。命は助かったけれど、お母様は私を産んでから子供の出来ない体になってしまったのよ。だから私には妹や弟はいないの。そんなこと公言できないからいえないけれど・・・。


「いません・・・。」

「そう・・・きっと和気殿は手放さないだろうね・・・。小夜姫がいたら生きる張り合いが出来ると思ったのだが・・・。」


院はとても悲しそうな表情で私を見つめたのね。そんな顔で見つめられたら・・・。ここ最近の帝と違ってホントに4年程しか帝位についていなかった方だからまだ若いしきっとお寂しいんだと思うけどね・・・。


話は変わるけど、やっぱ皇族の朝餉って豪華でいいわね・・・。この院は隠居されていても、亡くなられた祖父院から受け継いだご領地やお妃様がたが有力な貴族出であったから援助もあってこうして優雅な生活をしているのだろうけど・・・。それがなければただの帝位についたことのある宮様で終わっているんだろうな・・・。


院とお妃様たちと一緒に食べた朝餉のおいしいこと・・・。珍しくおかわりまでしてしまったのよね・・・。安子様はたくさん食べる私を見て驚いておられたけど、院は微笑んでずっと私の事を見ておられたの。


「小夜姫、今日は私がお邸まで送ってあげよう・・・。」

「まあ!院。珍しいこと・・・。」


なんと院自ら滅多に宇治を出られないのに私を送ってくださるって・・・。あんなことしてしまったのにホントに恐縮・・・。


「誰か料紙と筆を・・・。誰か手の空いているものをこちらへ・・・。」


院は何かすらすらと立派な御料紙にお書きになって、お邸の従者のものに2通の文を託されたの。


「隆哉、先触れとして二条院と下賀茂の和気邸にこれを・・・。」

「御意。」


えええ!私をお送りになるついでに二条院にも寄るって事???確か後二条院様と後宇治院様の仲は超険悪だって聞いたのに???そういえばお父様は後宇治院様を苦手だって言ってたしな・・・。こんなにお優しくていいかたなのに・・・どうしてだろ・・・。


朝餉を終えた私は安子様の女房が持ってきたお衣装に着替えたの。なんだか安子様のお兄様のとこの姫(安子様の姪ってことね)が着ていたらしいのよ。まあ言うお下がりってやつね・・・。


「よかったわ、ぴったりで・・・。昨日お庭で汚してしまったでしょ。うちには子供がいないからどうしようと思ったのだけど、お兄様のところに連絡して大姫が着ていたものを持ってきていただいたのよ。」

「またお返しに来ないと・・・。こんなにいいものだもの・・・。」


やはり安子様のお兄様も源氏長者のお家柄だけあって姫はいいもの着てるわ・・・。安子様ったらこのお衣装を返さなくていいわっておっしゃるのよ。ほんと太っ腹よね・・・。やはりいい絹使ってるから重いってなんの・・・。重そうにしている私を見て院は笑いをこらえておられたわ・・・。ホントに恥ずかしい・・・。


そんなことをしているうちに隆哉って言う院の従者が早馬で戻ってきて1通の文を渡すのね・・・。そしたら院は溜め息をつかれて言ったの。


「また父上に面会を断られてしまったよ・・・。いつになったらお許しを得られるのだろう・・・。下賀茂の帰りにだめもとで寄ってみるかな・・・。」

「まあ・・・またですか?きっと父院様はお許しになられます。きっと・・・。」

「でも年明けはわが子良仁帝の元服。元服の祝いぐらい・・・。」


ホントに悲しそうな顔をして安子様と話しておられるからなんかあるんだろうなって思うのよね・・・。何で親子が何年もの間、仲良く出来ないのだろう・・・。なんだか私、後二条院と後宇治院の仲を取り持ってあげたくなっちゃったのよ。私っておせっかいかしら・・・。


縁~えにし (3)お迎え

(3)お迎え

あんな事があってからどれくらい経ったかな・・・。年明け早々5日に帝の元服があるってことで、師走に入った途端お父様は一番上の蘭姉さんの副臥役の準備のため、朝早く出て行ったと思ったら、夜遅く帰ってくるようになったのね。お母様も御年十二歳の帝の元服の準備のためになんだか知らないけどよく後二条院様に召されて内裏に参内するんだよね。


まあ、宇治にいる帝のお父様後宇治院様は、だいぶん前に後二条院様のお怒りをかって、絶縁状態だって噂で聞いてまったくと言っていい程宇治から出てこられないそうだから、親代わりとして後二条院様が取り仕切って、加冠役は後二条院様の歳の離れた弟君である内大臣源博雅様がされるって言うしね・・・。もちろん蘭姉さまは摂関家の姫として副臥役をするから、もう都中は祝賀ムードいっぱいってわけ。蘭姉さまは帝よりも三歳年上だからそのまま入内して立后されるんだって。だから下賀茂にあるうちのお邸は朝早くから夜遅くまで両親の不在な事が多いわけ。


お父様はここんとこお忙しいから、いつもがみがみ(一生懸命といっておくわ^^;)と教えてくれる医術の勉強を後回しにしてくれて勉強嫌いの私には嬉しい限り・・・。だって優秀すぎる泰大お兄様といつも比較されるのだもの・・・。たまったもんじゃないわ。宿題として薬草の名前を覚えなさいって言われたけれど、そんなの後回し・・・。毎日家司の子とか、下働きのおうちの子とかと庭を走り回っているの。だって蘭姉さまはおうちを出て行ってしまわれたし、お兄様は毎日出仕してるんだもん。そういえば来年の春、お兄様は元服するって聞いたな・・・。


すると意外なところから御文が届いたのね。もちろんこの私によ。立派な御料紙を品のいい文箱に入れてきたの。誰だと思う?後宇治院様のお妃、安子様からの御文だったの。とてもきれいな筆跡で見とれてしまったわ・・・。安子様は内大臣様の妹君であられるからさすがよね・・・。ということは後二条院様の妹君ってことね?ホント血縁関係って難しいわよね・・・。まあ余談はこれくらいにして、内容はこう・・・。


『小夜姫 随分前になりましたけれど、お約束を覚えていますか?毎日家族が出払ったお邸で一人いるにはお寂しいでしょう。良かったら遊びにいらして。同じ院の妃であられたお母様の姫様だから私たちの子供と同じようなもの・・・。泊まられてもいいですよ。必ずお父様に一言言ってから来なさいね。楽しみに待っていますよ。  安子』


あとから聞いたんだけど、お母様と安子様って、同じ源氏を祖に持つ一族で、亡き安子様のお父様と、私のなくなった大和のお爺様は従兄弟らしいから、なんとなく似てるって・・・。安子様の若くしてなくなったお姉さまは私のお母様になぜか瓜二つだったって言うから不思議よね・・・。まるであの有名な物語のようだわ・・・。


まあ血縁の話はややこしくなるからやめておくこととして、この手紙を珍しく早く帰ってきたお父様に見せたのね。そしたら困ったお顔をされて、お母様にお聞きなさいって言うのよ。お母様に聞いたら、大変疲れているのか内容を十分確かめないでいいわよって言ってくれたの。


「本当にいいの?お母様。」

「いいわよ。ずっと寂しい思いをしていたものね・・・。安子様は同じ先帝の妃同士だったのですが、後宮ではお友達のようにお付き合いをしていたから・・・。もし泊まることになったら必ず連絡するのですよ。」

「はい!じゃあお返事書くね・・・。」


私はあまりきれいな字じゃないけど、一生懸命これ以上はないという字で返事を書いて安子様の文箱にお手紙とお庭に咲いている椿の花を入れて家のものに持って行かせたわ。


小夜正装

するともう次の日の朝早くに宇治からお迎えの車が来たのよね。私は急いで東宮御所や二条院へお使いで行くときに着るとびっきりの汗衫(かざみ)を着て私の女房に髪をきれいに整えてもらって、物忌みもお衣装に合う色のものをつけてもらってね、蘭姉さまが持っていた衵扇(あこめおうぎ)を借りてお迎えの車に乗って出かけたの。


やはりいいおうちの車は違うわ。あまり揺れないし、内装もきれいに装飾してあって、見ているだけでも飽きなかった。 (別にお父様が甲斐性なしというわけではなくって、家柄の違いかな^^;和気家は由緒正しいお医師の家系よ・・・。)


あっという間に後宇治院の御在所である邸に着いたの。着くとたくさんの女房たちがこの私を迎えてくれて、安子様のいるお部屋を案内にされたの。そうしたらね、お部屋いっぱいに貝合わせとか、珍しい絵巻物とかお人形とかがあってびっくりしちゃったわ。


「まあ、小夜ちゃん。この前の姿とは違ってなんて可愛らしいお衣装を着ているの?普段の格好でよろしかったのに・・・。」

「お父様が安子様のところに行くのだからって正装しなさいって・・・。」

「本当に可愛らしくって、色合わせもきちんとしてあるわ。ますます可愛らしくなって」


私はホントここまで褒められたってことないから 相当恥ずかしかったわね・・・。私はお父様に言われた通りきちんと安子様にご招待のお礼を述べて頭を下げたの。そしたら安子様はそこまでしなくてもよろしいのよって大変恐縮されてね・・・。


この前はあまり安子様のお顔を見ることはなかったけれど、今回はまじまじと見る事が出来たの。三十路近くの品のあるお顔は年を重ねられてもやはり高貴なお姫様って感じで、美しいと評判だったという大和生まれ大和育ちのお母様に比べたらやはり育ちが違うって感じだったわ・・・。


まあ私もそんなお母様から生まれたから、都では色々噂にはなっているそうだけど・・・。まだ裳着も済ませてないのにちらほら縁談話が入ってきていてお断りするのが大変だってお父様は嘆いてたのを覚えている。(なんか自慢しちゃったみたいね・・・。)蘭姉さまの養父である東三条様は、私が東宮様と同腹の兄妹でなければ蘭姉さまみたいに養女に迎えて東宮様に入内させるのにって嘆いてたわよ。まあ東宮様とは2歳しか違わないから、いい歳の差かもしれないけど、兄妹じゃね・・・。そりゃ東宮様は利発でお優しくて何でもこなすいい方よ。特にお爺様の後二条院様に手ほどきを受けた龍笛などを演奏されたらもうびっくりするほどすばらしいの。即興で舞いも披露されるし、お歌も完璧。私にとって理想なんだけどね・・・。兄妹じゃなかったら入内を考えたわ。


安子様は私と色々遊びたかったらしくって、あれやこれやと遊び道具を出してきて一緒に遊んでくれるの。ちょっと遊びつかれて、眠たくなってきたから(だって朝がむちゃくちゃ早かったんだもの!)うとうとしてきたら、安子様は私を寝所まで連れて行ってくれてお昼寝させてくれたの。安子様は私を本当の子供のように見つめて私が眠るまで横についてくださったの。


「安子様はどうして私をまるで自分の子供のように可愛がってくださるの?」

「本当は院のお子が欲しかったのだけど、出来なかったのよ。院と私は叔母、甥の関係だけど、院の母君は私の父方のお姉さまだし、父宮は母方の私のお兄さま。あなたのお父様和気殿が言うとおり、血縁が深すぎて子供を諦めたのよ。だから小夜ちゃんがまるで私の子供のように思えてきて・・・。つい可愛がってしまうのですよ。」


(ふ~~~んそういう事があったのか・・・・。だから血縁ってややこしくってわかりづらい・・・。)


いつの間にか私は眠っていたのね。でも私は夢を見ているんだけど、私の側で何か話し声が聞こえるの。


この声は誰?

一人は安子様・・・。

あと一人・・・なんだか聞いているだけで心が温かくなっていく懐かしいような、なんか血が・・・。

この感覚は何?誰???誰なのよ!




縁~えにし (2)気になる発言
 この院ってお寂しいのかな・・・。聞きもしないのに院とお母様の思い出をしゃべり続けているのよね・・・。なんだか苦痛になってきたのだけど、楽しそうに話しているので、まあ聞いておくことにしたのね。でも楽しそうに話されている院なんだけど、お二人のお妃様方は変な顔をしてこそこそ話しているのよね。院の話よりも私はそっちのほうが気になってそっちのほうばかりちらちら見ていたの。

私が一番聞きたいのはそんなどこにでもあるような思い出話じゃなくって・・・なんていうのかな・・・。そうそう今の帝とお兄様の歳のことなんだけどな・・・・。おかしくない?お母様の初めての旦那様は後二条院様でしょ・・・その次がうちのお父様・・・その後がここにいらっしゃる院・・・。そしてまたお父様なの・・・。じゃあ何でお兄様は帝よりも年下な訳???普通ならお兄様のほうが年上のはずなのに・・・。私の頭の中はいろんな憶測がぐるぐる回って処理しきれなくなったのよ。私のようなまだ裳着も迎えてない八歳の姫が聞くような問題ではないような気がしたけど・・・でも何でも知りたい年頃の私にとって気になるのも無理ないかも・・・。
縁2 宇治院

「私の話は面白くなかったのかな・・・・?」

院は苦笑しながら私を見つめたのよね。

「いえ・・・なんだか平凡すぎて・・・申し訳ありません・・・。」

「いいよいいよ。本当に久しぶりの小さなお客様だから・・・。つい話しこんでしまった・・・。ところで小夜は何歳かな?7つ?」

どうして年聞くのよ。これでも私は後二条院の覚えのいい殿上人であるお父様の姫なんだから・・・。

「8歳です。」
「え?」

どうしてそんな驚いた顔をするんだろう。そのあとなんで指折り数えているの???

「いつ生まれたの?」
「霜月の辰の日・・・。ちょうど大新嘗祭があった豊明節会の日と聞きました。」

そしてまた指折り数えているのよね・・・。だからなんだって言うのかしら?それ以上院は私に質問などしなくなってよろよろとしながら部屋を退出していかれたのよね・・・。(変な院・・・。)お妃様方は院を目で追いながら向かい合って苦笑されていたんだけど・・・。お妃様方に色々伺いたい事があったんだけど、帰りの遅い私を心配してお父様が従者を使わせて迎えに来たのよ。

十人並み(ごく普通のお顔^^;)のお妃様の一人が菓子を御料紙に包んで私に持たせて言ったの。

「可愛らしい姫君。またいつでも遊びにいらっしゃい。わたくしたちには子がいないから話し相手になっていただけると嬉しいわ・・・。」
「はい。また遊びに来ます!」

二人のお妃方は微笑んでわざわざうちの車まで送ってくれたの。あれ?お一人のお妃様ってご病気じゃなかったっけ???何の病?まあいっか・・・。お一人お母様によく似たお妃様って誰だろう・・・。その人が安子様なのかな・・・。

おうちに着いたらお父様にすごく怒られたのはいうまでもないわ。だって日が陰りだす一歩手前までお邪魔していたのだから心配するのも無理ないか・・・。でもその心配の仕方気になるのよね・・・。何で涙流すわけ?とって食われるわけではあるまいし・・・。(まあ泣き虫なお父様であるのは確かだけど・・・。)そのあとお母様と何か話しているし・・・。私は院のお邸でもらったお菓子を思い出して、とても立派な御料紙に包まれたお菓子を取り出してひとくち口に入れるとやっぱりおいしかった。隠居生活でもいい生活してるんだね・・・。

夕餉を食べて着替えた後、いつものようにお母様の寝所でいっしょに横になったんだけど、私を寝かしつける(嘘寝してたけど)とお母様はお父様の部屋に行って話の続きをしていたのよね。喧嘩なんかしたことなかったお父様とお母様が声を荒げて喧嘩していたの。やっぱり気になって私はそっとお父様の部屋の前のすのこ縁に座って話を聞いていたの。

「泰明!どうして小夜を後宇治院のもとに行かせたの!」
「彩子、悩んだんだよ。邸の手が足りなくてね・・・。泰大は出仕して留守であったし・・・。宇治に行って欲しいというと小夜は喜んで行ったんだ・・・。」

やはりお父様はお母様に頭が上がらないのよね・・・。もともとお母様とお父様は幼馴染だったけど、お父様はこの前亡くなった大和守をしていたお爺様に仕えていたらしいからかな?ほんとに尻にしかれているお父様・・・。ちょっとかわいそうだけど・・・。和気家の一門が見たらびっくりするわよね・・・。和気家当主なのに・・・。(一門の前では結構威厳があるけど・・・。)

お父様とお母様の喧嘩は結構長かったの。まあ喧嘩といってもお母様が一方的なんだけど・・・。そしたらお母様はこんなことを言ったの。聞き間違いだったらどうしようかと思ったけど・・・。

「泰明!あの子の事がわかればきっとあの人に取り上げられてしまうわ!」

そういうとお母様は珍しく取り乱して泣き出したのよね・・・。ホント、あの院とお母様の間に何かあるんだわ・・・。これ以上隠れて聞くのは心苦しくなったからあのあとすぐに部屋に戻って寝所に入って眠ったの。でも気になってしょうがないじゃない?眠れないなあと思ってごろごろしていたらいつの間にか朝がきてたの。(なんだ寝てたじゃん・・・。)

朝が来るとお父様とお母様は普段どおりだったの。仲睦まじくお父様の黒の束帯を着付けていたのよ。昨日の喧嘩はなんだったのって感じ?いい歳なのにいちゃいちゃしてお母様はお父様の車まで見送って行ったわ・・・。年頃の姫の前なのにさ・・・。(何度も言うけど裳着はまだだけど・・・。最近の女の子はませてるんだから。)

それよりも昨日の院の驚きようといい、お母様の言葉といい、なんか気になるんだよね・・・。


縁~えにし ①昔話
 私の名前は小夜って言います。
縁~小夜

お父様はもともと典薬寮で頭をしていた名医といわれた人なんだけど、元服間際の帝に変わって院政をしている院の覚えがめでたくて、正四位下参議の位を賜ったの。もちろんお父様は医術一筋の人だから、はじめは参議になることをお断りしたそうなのだけど、院がどうしてもって仰せだったらしいので、しょうがなく引き受けたらしいわ。もちろん参議をしながら、うちにたくさん住んでいる医学生を教えたりしているの。(たまにはお医者様らしいこともしているわ。だってなんだかんだ言ってお医師道具は毎日持参している・・・。)

 お母様はとてもややこしいのだけれども、はじめは院の女御をしていたのね。そのあとお父様と結婚して、なぜか院の皇子である先帝の皇后になったの。でも今の帝に譲位された後にまたお父様とお母様は再婚したのよ。だから本当にややこしいのだけれど、院との間に伊勢斎宮になられた宮様と、最近元服されてある醍醐源氏の養子に入られた宮様。先帝の間には今上帝と、東宮様。そしてお父様との間には東宮様より一つ年上のお兄様と私がいるわけ。お母様は帝と東宮様の御生母として公達の人から崇められているみたいだけど、いつもは普通の(もしかしたらそれ以下かも?)殿上人の北の方をしているわ。まあ度々帝や院に召されて参内することはあるけど・・・・。ホントにややこしいとつくづく思うわ。

私には七つ年上の異母姉妹のお姉さまがいるの。お姉さまはなんて言ったかな・・・遠い遠い国の王女様との間に生まれた姫なんだけど、最近お父様のお婆様(私の曾お婆様ね)が摂関家出身の方らしくって、帝の元服の際の副臥に選ばれちゃって、養女としてなんていったかな・・・東三条摂政家?に取られちゃって、お父様もお母様も大変嘆かれたの。お父様の気苦労が増えるってことね・・・。

なんか今日は珍しくお父様は出仕を取りやめになって、薬草庫に籠もったと思ったら、お兄様を呼んでいつものようにお使いを頼もうと思ったみたいなの。お兄様はまだ元服していないけれど、元服前の身でありながら典薬寮に入って典薬助で侍医の大叔父様和気直安様の助手として修行しているんだけど、妹の私が言うのもなんだけど、大叔父様も驚くくらいの腕を持っているらしいわ。(まあお兄様は小さいころから才覚を表して神童なんて騒ぐ馬鹿がいるけど?)もちろん院の覚えもめでたくて、ちょくちょく院政をされている二条院や東宮のおられる東宮御所を出入りしているの。私も何度かついていった事があるから知っているけど、本当に東宮様はお母様に似て可愛らしい顔立ちの宮様なのよね。私よりも二歳年上の十歳になられたの。

まあお兄様のことはこれくらいにして、お父様はお兄様をお呼びになったんだけど、もうすでに出仕してしまっていてね、困り果てたお父様は私に頼んだのよ。

「小夜、お前一人での使いは始めてだが、行けるかな・・・。作法は良く知っているからそれは心配ないが・・・。」




本当にお父様は心配した表情で私に言うのね。それなら頼まなきゃいいじゃんと思ったけど、お使い先に行けるような人達が出払ってしまったようで、しょうがなく私に頼んだみたい。

「お父様が行けばいいじゃない?」

お父様は苦笑して言ったのね。

「今から行ってもらう所は、父は苦手でね・・・。」
「どこに行けばいいの?誰にお渡しするの?」
「宇治にある先帝の後宇治院様のところだよ。お妃安子様のお体の調子が良くないみたいでね、お邸に詰めている女医にこの薬草を渡して欲しいのだよ。はじめていくところだけど大丈夫かな?」

私は喜んだの。別に先帝の邸に行くからじゃなくって、宇治に行きたかったのよね。あの源氏物語とか、いろんな物語の舞台になった宇治よ。一度行ってみたいと思っていたのよ。

「本当に大丈夫かな?まだ八歳なのに・・・。」

お父様は何言っているのかしら。お兄様がこれくらいの時にはガンガン行ってたじゃない。出仕もしてたし・・・。ホントにお父様は心配性・・・。それでよく以前典薬頭をしていたものよね・・・。

お父様は私のためにお父様の車を使わせてくれた。

先帝って言ったら、お母様の前の旦那様よね。二年程しか一緒にいなかったって聞いた事があるけど、それ以外は誰も教えてくれないのよ。でもなんでお兄様より年上の先帝の皇子である帝が生まれたわけ????それがちょっと納得できないんだけど・・・・。まあ私には関係ないし、お使いさえ終わればゆっくり宇治見物でもしようかなって思っているの。

お父様に見送られて宇治に向かったの。結構な距離があるのね・・・。車酔いしちゃった。やっとのことで到着したらもう宇治見物なんていいわって思ったわ。到着して私はすぐ女医を探したんだけど、見つからなくってお邸の人に聞いたらお妃様のお部屋にいるって聞いたのね。急いでお妃様の部屋に行ったら先帝や他のお妃様そして女房達が勢ぞろいしていてびっくりしちゃった・・・。

「おや、可愛らしい子が来たね・・・。誰のお使いかな・・・・。」

私は驚いて言葉が出なくなっていたのよね。まだ三十くらいの院だなんて・・・。(じつはもうちょっと歳とってると思ったんだ・・・。)とても優しい笑顔で話しかけられたんだけど、どうして早々小さな東宮に譲位したのかなって思ったわ。あとこの人がお母様の前の旦那様なんだって・・・・。でもなんとなく引き付けるものがあったのね・・・。その時は気が付かなかったんだけど・・・。院の女房か知らないけれど、私に声をかけて我に返ったのよ。

「あの・・・こちらの女医様に薬草を・・・・。わ、わたし参議和気泰明の娘、小夜と言います。お父様に頼まれてお兄様の代わりにこの薬草を持ってきました・・・。」

院はなんとも言えない表情で私を見たわ。やはり元皇后であるお母様の娘だからかしら・・・。

女医がやってきたから薬草の入った包みを渡して帰ろうとしたんだけど、院が突然言ったの。

「せっかく来たのだから、ゆっくりしていきなさい。誰かに菓子を持ってこさせるから・・・。」

本当に満面の笑みで私に言われるもんだから、恐縮してしまって帰るに帰れなかったわよ・・・。院は私を前に座らせて、女房が持ってきた水菓子やら、見たことのない豪華な菓子を私にくれたの。さすが隠居されているといっても先帝よね・・・。院の顔は二条院におわす後二条院によく似ておられて、私を見て微笑まれるお顔は姿形のいいお父様(昔は結構モテテいたとか・・・お母様が言っていたのよね)がいる私でもドキッとしたわ。

「和気殿の妻は一人しかいないから小夜姫の母君は彩子というのでしょ。」
「はい・・・。私のお母様は彩子って言います。」

私はお母様とこの院の詳しいことを聞きたくってお母様がこの院の皇后だったって言うことを知っているのを隠したわ・・・・。

「彩子殿は元気にしているのかな・・・。」
「はい・・・。」
「小夜はやはり面影が彩子殿に似ている。私に姫宮がいればこういう顔だったのかな・・・。」

私は黙ったまま院の話を聞いたのね。そしたら出るわ出るわ・・・。でも確信はつかめなかったのよね・・・。残念・・・。でもなんか引っかかるのよね・・・。


《作者からの一言》
本編の続編です。
本編で彩子のお腹にいた姫です。
本編をご存知の方はわかりますよね・・・。この小夜は誰の子か・・・。
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さくらと空 
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