4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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ドリーム・クエスト  (14-2)奈良&京都旅行

 俺の妻彩子は悩んでいたんや。「究極の選択!」って。家からむっちゃ近いAか、行きなれたFか・・・。悩み悩んだ末、彩子はな、ぜひ来て欲しいと熱意を感じたFTVに返事を出した。俺もそっちのほうが彩子のキャラが生かせるんじゃないかなって思ったんや。バラエティーやスポーツ関係をしたいって言っていたしね・・・。何度も彩夏時代にFTVには出ていたから慣れているって言うし・・・。


 よっしゃ、決まったんやから、弐條や総理と相談して休みをもらったんや。彩子の内々定祝いもかねての旅行。地元にいる私設秘書にいろいろ手配してもらって、週末を入れた3泊4日+α。


 秘書はハイヤーを手配しようと思ったんやけど、断ってレンタカーを借りることになった。二人でいろいろ行くつもりやったんやけど、何かあったらいけないって言うから、この秘書が運転手兼ねてついてくるんやもんな・・・。ま、急に仕事関係とかで用事が出来た時に役に立つからいいかな・・・。でも二人っきりにはなれないやん。


 11月初旬。俺たちはついたらすぐ、墓参りをするので、きちんとスーツを着ている。(もちろん胸には国会議員バッチ)昼過ぎ、伊丹空港に降り立って、到着口から出ると、地元事務所のスタッフ達が出迎えてくれた。もちろん彼らは選挙の際に団結した同年代のスタッフ。


「和気さん、お帰りなさい!さ、こっちにレンタカーを用意していますから。」


スタッフの道明寺君は俺と彩子の荷物を持ち、用意したレンタカーのところまで案内するんや。結構な高級車クラスの車を用意してくれたんやな・・・。


「こんなええ車じゃなくったってええのに・・・。」

「いえいえ、和気さんは代議士ですから・・・。セルシオくらい乗らないと・・・。」


黒のセルシオ。黒光りしてるわ。運転手は地元私設秘書をしてくれている、中学・高校時代の同級生そして親友。電話ではよく話すんやけど、直で会うのは久しぶりや。もちろん運転は上手い。安心して任せる事が出来る。


「おう!久しぶり、二階堂。元気にしてたか?」

「ホント久しぶりやな。始めまして奥様。いろいろ和気から聞いていますよ。」


彩子は珍しく下を向いていた。


「すまんなあ二階堂。彼女おるんやろ、週末付き合わせてしまって・・・。」

「ええよ、和気のためやったらな。その代わり高いで。手当て増やせよな。」

「何言ってんねん。お前の分も宿代と食事代出したるんやから我慢せい。」


俺は二階堂に俺名義のETCカードを渡して、駐車場代とかの諸経費を渡しておく。


「二階堂、経費残ったら小遣いにしたらええわ。さ、今日から4日間頼んだで。」

「了解!さ、イコか。」


ほんまにこいつの運転は上手い。なぜって??こいつは大阪大学大学院を出てたのにさ、不況のあおりで、タクシーの会社に勤めとったんや。一時ハイヤーも運転しとったから、うまいんやで。道も良くしっとる。選挙の際に、こいつは当選したら雇ってくれって言ったから、私設秘書として雇ったんや。やっぱり頭ええから、きちんと仕事はしてくれるやつ。もうちょっと給料上げてやりたいけどな、俺もまだ1年生議員や。ま、補佐官になって議員給料少し上がったんやけど・・・。ホンマやりくりは大変や。


 大和郡山にある小さなお寺に着く。ここはうちの超遠縁に当たる半井さん宅。もともとうちは室町時代に、和気から半井に改姓したんやけど、明治ごろになって和気姓に戻した経緯があるんや。何でか知らんけど。ここの半井さんは代々奈良に平城京があった時代から墓守をしてくれている家系。もちろん直系であるうちの家系と代々交流がある。


 俺がここに訪れるのは何年ぶりか・・・。そうそう・・・東大に受かった時以来?もう十年近く?前もって、調べて電話しておいたから、住職が出迎えてくれた。二階堂が用意してくれていたお供え物を本堂に供えて、ご本尊に拝む。そして和気家代々の古い墓にお参りし、俺の代議士、そして補佐官就任、そして彩子と入籍したことを墓前に報告する。


墓参り終了後、住職と話す。


「本当にお久しぶりですね。泰明君は。お父様は彼岸に来られました。」

「本当ですね・・・。ずっと東京にいたもので、本当でしたら去年の選挙前にこちらへ訪れたかったのですが、バタバタしておりまして・・・。」

「遅れましたが、選挙のご当選と、内閣補佐官就任おめでとうございました。よくテレビで拝見しておりますよ。本当に泰明君はしっかりされて・・・。安堵しましたよ。ご兄弟の中で、一番のやんちゃで、お父様は手を焼いておられた。ところで、そちらは?」

「妻の彩子です。今年の初めに入籍いたしまして。」


彩子はきちんと住職に挨拶をしたんや。さすがに彩子・・・。


「いいお嬢さんを奥様に・・・。でも先日お父様は何も・・・。」

「実は両親には許しを得ていないのです。ですから・・・。入籍のみなのですよ・・・。とくに母がね・・・。」


住職は苦笑してたよ。住職は母さんが俺を一番可愛がっているのを知っているからね・・・。


この寺を出ると、もういい時間・・・。宿泊先の奈良ホテルにチェックインする。まあ俺らの新婚旅行も兼ねてるからな、いい部屋を取った。スイートはもったいないから、デラックスツインで・・・。二階堂はシングル。二階堂がチェックインをするって言ったけど、俺がすることになった。予約入れたん俺やしな・・・。俺は宿泊名簿に名前と職業などを書き込んでフロントに渡す。


「和気泰明様、デラックスツインが1室、シングル1室でお間違えありませんか?」

「はい、それで・・・。」


フロントで鍵とクーポン類を受け取り、ボーイの案内で部屋に入る。やはりここのホテルはいい部屋だ。何度か墓参りの帰りに泊まった事がある。彩子は窓から見える奈良公園を眺めながら喜んでいた。さあここからは自由時間。二階堂はせっせと車をきれいに拭いていた。そういうところはホントにマメ。車が好きなんだあいつはな。すると二階堂は誰かと話している。すると電話がかかる。二階堂からだ。このしゃべり方は仕事関係やな・・・。


『和気さん、面会したいという方が・・・・。』

「誰?」

『党奈良県連の代表者がお見えですけれど?いかがいたしましょう。』

「じゃあ、下のティーラウンジで話を・・・。」

『はいそのように・・・。』


せっかく着替えて彩子と出かけようと思ったのにさ・・・・。何で関係ない県連が来るんや?いくら補佐官いうても一年生議員の俺・・・。何か内閣に直訴か?なんだかんだ言ってもおれは内閣広報補佐官やし・・・それよりなんで俺がここにいるに知ってるんやろか?疑問だ・・・。もう一度、議員バッチつきのスーツ着て、プライベートではかけないめがねをかけてる。


「彩子、ちょっと待ててな・・・。話してくるから・・・。」

「うん・・・。早くね・・・。」

「ああ・・・・。」


俺は下に降りて、二階堂を探す。二階堂は県連代表者はじめ数人を連れてロビーで待っていた。とりあえずラウンジに行って、名刺交換。特にこれといって話はなく、ただのご挨拶。


「実はプライベートの旅行でして・・・。どうして私がここにいる事がわかったのですか?」


そういえば、ここの選挙区は伯父さんの選挙区やった・・・。伯父さんは文科相。だから挨拶に来たのか・・・。なるほどね・・・。きっと伯父さんがうちの秘書に宿泊先の連絡先とかを聞きだしたんやな・・・。そうやな・・・俺は将来伯父さんの後継者やからな・・・・今の選挙区から鞍替えして、ここに来るかも知れんのやった・・・。なんでもない話をして、お茶代払って帰っていったけどな・・・。ホンマいらん時間使ってもうたな・・・。あーあ、もう暗くなってきてしもうたやんか・・・。明日はゆっくりさせてくれるんやろな・・・。明日は明日香とかあっちのほうまで足延ばそうと思ってたんやけどな・・・。明日はゆっくりして奈良見物か・・・。まあええか。


「二階堂、明日はチェックアウトギリギリまでゆっくりさせてな。」

「わかってるって。まあいう新婚旅行みたいなもんやもんな・・・。俺もゆっくりさせてもらうよ。じゃ、部屋戻るわ。何かあったら電話くれ。」

「おう。」


ロビー階のエレベーターの前で別れ、俺は部屋に戻ったんや。彩子は疲れたんかな・・・。ベッドの上で寝てたんや。俺は大事なスーツをハンガーにかけてから寝ている彩子の唇にキスしたんや。彩子は驚いて起きたんや。


「あ、びっくりした!」

「ただいま彩子。遅くなってごめんな・・・。県連の人が挨拶に来ただけやから・・・。」


俺は今日彩子が危険日やないの知ってるから、そのまま彩子といちゃつく。だってさ、麻布の家じゃ、俺はマスオサン状態やから、彩子とゆっくりいちゃつくことって出来んやろ。その上、彩子が就職活動してたからお預けくらってたしな・・・。環境も違うし、まあいう新婚旅行や。夕飯の時間を忘れていちゃついてたんやな・・・。


次の日、朝早く目が覚めてしまったから、朝靄の中を彩子と散歩する。遠くで鹿を呼ぶホルンの音。鹿のえさの時間や。このホルンの音を聞いて山から鹿が下りてくる。その風景を見て俺たちは微笑み和んでいたんや。ホンマにこんなに外でゆっくりできるんは久しぶりというかはじめてかもしれん。ホンマたくさんの鹿・・・。ここまでいると可愛いなんて思わんと怖いわあ・・・。


「和気さん・・・。」

「なに?彩子。」


彩子はなんか戸惑った表情で俺を見るんや。なんなんやろ・・・。彩子は俺と向かい合ってたち、俺の両手を握り締めて言うんや。


「和気さん、また彩子タレント業はじめていい?」

「え?」


なんてこと言うんや。引退しても北野彩夏の人気は根強い。そんなことは知っている。今年の春に引退宣言して、この半年、徐々に復帰の声が高まっているのは確かや。昨年の学園祭行脚で、彩子は華やかなカリスマモデルイメージから清楚なイメージに転換してからさらに人気が上がって、CM中心のタレントをしとった。人気絶頂の時に引退したもんやから・・・。ホテルに戻って彩子から詳しい事情を聞いたんや。


「ここ最近、事務所からしつこく連絡があって・・・。もちろん彩子がFTVに内々定をもらっていること承知のうえよ。FTVも承知しているって・・・。」

「え?そこまで話し進んでるんか?で、何すんねん!」

「CMだよ。新年度からのキャンペーンなんだって・・・。事務所が断ったらしいんだけど、どうしても北野彩夏じゃないとだめだって航空会社の人が・・・。FTVに入社するまでの間の契約だから・・・。和気さん、だめかな・・・。」


約束が違う!この前事務所にきっぱり言ったはずや。


「彩子は・・・やってみたいの!」


わかってるよ・・・。いちばんCMの仕事が生き生きしているくらい・・・。引退前最後のデジカメのCMはすごく良かった・・・。北野彩夏がCMに出ると何でも売れるって言うのはよく聞く話・・・。もちろんOKするしかないやろ・・・。もちろん俺との入籍は内緒の話・・・。また始まるんか・・・。2人の関係を隠す生活が・・・。もちろん俺が結婚しているこのも世間では知られていないのは確かやけど・・・。また議員宿舎に移るかな・・・。


「いいよ。彩子の好きにしたらいいけど、ちゃんと大学の単位は取れよ。」

「うん!」


まあ彩子は大分単位をとってるもんな・・・。四年で楽できるくらいの単位は取れる予定やし・・・。なんだかんだ言って彩子は要領がいいから、いい成績で単位をとっているんやもん。


俺たちは二階堂と一緒に朝食を食べる。


「二階堂、日程中いっぱい2人の写真を撮ってくれへんかな・・・。」

「おう。了解。どうしたんや、朝から暗いで。泰明らしくない。」

「ん?ちょっと、いろいろあってな。」

なら公園
チェックアウトを済ませ、駐車場にある車に荷物を積んでから奈良公園を歩き回る。さすがに紅葉がきれいだ。俺と彩子はラフな格好で歩き回る。(もちろんめがねはなし!)その後ろをスーツを着た秘書の二階堂がカメラ片手についてくる異様な感じや。二階堂はもちろん仕事中みたいなもんやから、IDカードを胸ポケットに忍ばせ、胸には党のバッチを付けている。二階堂は東大寺のチケットを購入してくると、俺たちに渡す。いろいろなところで彩子と記念撮影をした。もちろん二階堂は楽しそうなスナップ写真も撮ってくれた。ホントに二階堂に来てもらって助かったな。ほかの秘書じゃここまでしてもらわれへん。


「和気、そろそろならを発たないと・・・。」

「もうそんな時間?」


ホテルの駐車場に戻り、車に乗る。国道24号線から京阪和道に入って、宇治方面に入る。京都市内に入り、京都駅上のホテルにチェックイン。時期的にいい部屋しか空いていなくって、セミスイートを・・・。二階堂は実家が近いので、実家に泊まることになる。実は俺は京都には詳しいんや。中学から進学校で有名な洛南に行ってたしな。通うの大変やったから、親戚んちに下宿してたけど。もう京都市内は庭。中学から一緒に二階堂と遊びまくってたんや。


次の日、朝起きて、スーツに着替える。今日は氏寺神護寺に行く予定。ここは和気家の祖の墓がある。霊園には代々うちの墓もある。ここにくるとなんだか落ち着くんだよね・・・。やはり縁があるんやろか・・・。あまり前世とかそんなものは信じないほうやけど、やはりここにくると信じたくなるような事が何度も感じた事があった。まあそれがなんなのかはわからないけれど・・・。懐かしい感じって言うんやろか・・・。寺参りを済ませ、墓参りをする。きちんと先祖にいろいろ報告をする。彩子もきちんと手を合わせ、何かを願っているんやろうか・・・。ふと彩子が俺に言うんや。


「一時期ね、前世占いって流行ったことあるでしょ。彩子占ってもらった事があるんだ。大昔彩子はお姫様だったんだって。いろいろ苦労した・・・。最後はお医師様と結婚して幸せになったって・・・。ホントかな。」


そういえば10年程前に流行ったよな。そういえば俺も見てもらったな・・・。


「和気さんも見てもらったことある?」

「ん?」


すると二階堂が口を挟む。


「和気は前世もその前もずっと医師だったらしいよ。今現世は医者じゃないけどな・・・。代々和気家に生まれ変わってるってよ。」


そういえばそんなこといわれてたんや。別に占い師に家系が医者やって言ってなかったのに、ずばりあなたの家系は医者でしょからはじまり、特に俺は何代も何代も優秀な医師として生まれ変わってるって・・・。ということは彩子と会っているかもしれない?ま、そんなことは信じない性質だから・・・。それなら何で今の俺は医者ではないんやろ。前世を否定したかったから?決められたような道筋を嫌った?だから医者を辞めたのか?10年前の高校時代の気持ちなんておぼえていやしない。そんな話をしていたからか、夜変な夢見たやんか。ホンマ相当昔の時代・・・。


まあ気にしない・・。寝起きが悪かった・・・・。


「大丈夫?結構うなされてたよ。」

「変な夢見たんや・・・あんなはっきりした夢は初めてや・・・。」

「和気さんらしくないね・・・。」


彩子は俺の汗を拭いてくれた。前世の夢?そんなの信じない。


いろいろ京都観光をして、夕方の新幹線で東京に戻る。二階堂は新幹線のホームまで荷物を持って見送ってくれたんや。


「二階堂、気をつけてな。またこっちに遊びに来いよ。」

「おう!俺も楽しかったよ。地元のことは任せておけ。そうそう、これ読んどけ。和気、忘れもんないか?」

「もしあったら議員会館のほうに送ってくれ。ほんま4日間ありがとう。」


二階堂は紙袋に入った週刊誌や新聞を渡す。そしてのぞみが見えなくなるまで見送ってくれたんや。






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ドリーム・クエスト (14-1)内々定!~どこにすればいい???

 大阪から帰ってきて何日たったのかな・・・。もう返事の期限がとっくに過ぎたFと、A、そしてテレビAから返事があった。ってことはTとMはだめだったってことね・・・。よく考えるとテレビAとAって同じ系列局。TとMもそう・・・。ということはやはりその局のイメージに合うか合わないか、なのかな・・・。FとテレビTに関しては取締役面接がありますって言われた。Aか・・・。在阪局なのよな・・・。一応内々定ってことを知らされた。


「A放送受かったん?すごいやん。おめでとう!」


もう寝る前の和気さんはすごく喜んでくれた。大阪か・・・。


「和気さん、まだFTVとテレビAの最終面接が・・・。」

「気軽に受けて来いよ。とりあえず、ひとつは内々定もらったんやし・・・。いつや?今度の面接は?」

「明日と明後日・・・。出来ればこっちの局に行きたいな・・・。」

「何でや?」

「だって大阪勤務だったら、和気さんと別居だよ。」

「あ!!!!そうや~~~~~!だめやだめ!大阪は地元やからえっかなって思ったんやけどそうや、俺はなかなか地元に帰られんのやった!!!!」


今頃気づいたんだね・・・和気さん・・・・。


「じゃあ、俺が明日と明後日の面接受かるようにおまじないをしたる。」


和気さんは彩子をそっと押し倒して久しぶりに・・・。ずっと彩子は就職活動の疲れから、ベッドに入ると和気さんとの夜の夫婦生活をする前に寝ちゃってたんだもん・・・。やっぱり大学行きながらの就職活動って疲れるよね・・・。和気さんは私にパワーをいっぱいくれた。そういえば和気さんと付き合うようになってからだもんね、何事にも上手く行くようになったのは・・・。和気さんは彩子を抱きながら言ったの。


「就職活動終わったら、旅行に行かへん?」

「旅行?」

「遠くにはいけないけれど、休みを取っていこうや。」

「どこ?」

「京都と奈良・・・。彩子と結婚してお盆に墓参りに行こうと思ってたんやけどな、夏にいろいろあったやん。行けんかったやろ。だから俺らの入籍報告もかねて墓参りに行こうや。」

「でもなんで京都と奈良?」

「あのな、うちの和気家の発祥は岡山の和気町なんやけどな、奈良にも小さいながらむっちゃ古いお墓があるしな、京都高雄の神護寺はうちの氏寺なんや。先祖代々のお墓がある。観光半分お参り半分かな・・・。いいやろ。」


ふうん・・・すごく古い家系だって知っていたけどね・・・。まあうちも平安時代中期ぐらいからのおうちだし・・・。よくわかんないけど・・・。がんばって和気さんと旅行に行くんだ。久しぶりだよね・・・和気さんと一緒に泊まりで出かけるって・・・。


次の日さあ!最終面接。もう早く決めて和気さんと旅行に行くんだ。朝早く起きて!気合入れて、きちんと髪とお化粧を清楚に・・・印象よく整えて・・・。さあお台場!FTV!なんと面接は4人男一人に女三人・・・。男の子ってこの前声をかけてきたうちの一人・・・。ああ、いやだな・・・。もしここ通ったら一緒に仕事するのか・・・。


柳生弘
「やあ、また会ったね。俺たち縁がありそうだ。俺の名前は柳生弘(やぎゅうひろむ)よろしく。」


(ないない・・・。)


彩子はしつこい男が嫌い!ま、和気さんと比べてスタイルいいし、テレビ向きって感じだけどね・・・。彩子はホントにこんな男嫌い。


「和気彩子さんどうぞ。」


え?今日は彩子からなの?中に入ると社長さんとか、ずらっと取締役ばかり並んでいる。彩子お得意の業務用スマイルで面接開始よ。もちろんモデル時代に鍛えた綺麗に見える座り方で座って・・・。和気さん、彩子、がんばるからね。前の面接と違って和やかなのは気のせいなのかな・・・。聞かれたことにすらすら微笑みながら答えるの。聞いた話によると、ここで内々定がいただけるか、即わかるみたい。さあ!そろそろ結果が・・・。


「ところで、和気さんはほかにどこか内々定をもらっているの?」

「はい・・・。一応大阪のA放送に・・・。」

「そう、ではそちらをすぐに断ってもらってもいいでしょうか。ぜひうちに来ていただきたい人材です。」

「え?」

「和気さんは、こういう世界に慣れていますからね。即戦力としてきていただきたいくらいです。話題性もあるし・・・。で、まだどこか受けるのですか?」

「はい・・・。あとTVAを・・・。」

「そうですか。では内々定を出しますので、結果が出次第、よく考えて返事をください。まあうちとしては条件面は考慮させていただきますが。」


封筒に入った書類を渡され、彩子は面接室を出たの。もちろん中身は内々定の書類と、これからのことについて書かれた紙。


彩子はね、きちんと挨拶をして局を出たの。足取り軽やか・・・。ついスキップなんかでちゃったりしてね・・・。朝、和気さんは結果出たら早く連絡ちょうだいって言ってたけど、内緒にして驚かせてやるんだ。明日はテレビAか・・・。通勤はこっちのほうが近いんだよね・・・。

「ちょっと待ってよ!和気さん!」


あああのしつこい男か・・・。彩子は溜め息をついて振り返ったのよ。


「俺も内々定もらったよ。ほら!」


見たくもない。


「ちょっとお茶でもしない?」


もちろん丁重にお断り。早く帰って夕飯の買い物に行かなきゃ。すると和気さんからの電話。


『もしもし?彩子?どうやった?』

「内緒。で、何?」

『今日さ、飲み会が入ってな。夜いらんわ。で、どうだったの?』

「和気さん、早く帰ってきたら教えてあげるよ。」

『え~~~~!じゃあ断って早く帰るわあ。ちゃんと夕飯作っといてな。』

「わかったよ。早く帰ってきてよ。超特急で。仕事残ったら弐條のお兄さんに任せてさ。」

『あいよ。弐條に任せて帰るわあ・・・。』


私はニコニコがおで電話を切ると、まだあの男がしつこく側にいるの。


「ねえ誰から電話?」

「家の人。家族から。ごめんね、早く帰って夕飯の支度しないといけないから。」


彩子は走ってその男から逃げたわよ。今日はこれから大学ないから、東京臨海高速鉄道東京テレポートから大崎まで出て恵比寿、そして東京メトロの広尾まで帰ってくる。上手くいったら30分ちょっとか・・・。買い物を済ませてやっとのことで家に戻ってきたの。ああ、もう5時か・・・。6時には和気さん帰って来るよ・・・。さっさと着替えてお化粧を落としたあと、急いで夕飯の支度。パパももう帰ってくるんだよね・・・。


「ただいま・・・。」


あ!何でこんなに早く帰ってくるのよ。和気さんはもう!


パパがいない時は決まって和気さんは彩子にただいまのキスをしてくるの。今日は何?ぎゅっと抱きしめられて、濃厚なキス・・・。いつもは頬か軽く唇に・・・。


「どうやった?今日さ昼から仕事どころじゃなかったんや・・・。」

「ん?うかったよ。ぜひ来て欲しいって・・・。明日は朝日だけど?」

「良かったやん!明日もガンバレや。A放送はどうするんや?」

「大阪は別居になるから断るよ。和気さんはなしてよ・・・。ご飯作れないよ。」

「あ、ごめんごめん・・・。」


パパは思ったよりも帰ってくるのが遅そうだったから、先に2人で食事を済ませたの。もちろん今日の出来事はすべて話したの。あの男のこともね。和気さんは笑っていたけど。


「じゃ、休みを調整しておくよ。こういう時は広報担当が2人って楽だね・・・。」

「うん。楽しみにしているね。」


和気さんと2人で仲良く後片付けをしたの。パパは結局10時過ぎに帰ってきた。


次の日は自転車でも行けるテレビA。ここは淡々と面接が終わって、普通に内々定をもらった。Fほど、熱意は感じられない。今日のうちにA放送はお断りの電話を入れておいたし、後は熱意のあるFか、家から近く通勤楽々のテレビA・・・。このふたつからひとつ決めないと・・・。ああ悩んじゃうわ。早く返事を出さないと失礼に当たるし。本当に贅沢な悩み・・・・。あ、Fを選ぶとあの男がついてくる可能性大!いやだな・・・勘違い男っぽいしね・・・。く~~~~~~究極の選択だわね!



ドリーム・クエスト  (13)彩子アナウンサー就職活動開始!

 彩子はアナウンサーになるのが夢なのよ。アナウンサーになるためにはもう3年生のころから就職活動をする必要があるの。特にキー局はね。もちろんキー局をはじめ関西のテレビ局に履歴書を送ったわよ。彩子が今年の春までタレント業していたことに影響はあるのかな?それとも和気さんと入籍していることももしかしてある?別に既婚者はだめってかかれていないでしょ。応募したっていいじゃん。


11社履歴書送って、返事があったのはやはり民放10社・・・。とりあえず説明会を兼ねた一次試験を受けることになったの。履歴書の段階で随分落とされるって聞いたわ。すべて日にちがばらばらだったのが天の助け、また在阪テレビ局のうち、東京支社があるところは東京で試験をさせてくれた。


1次試験のほとんどは筆記・・・。小論文を書かせるところがあったり、一般常識のところ・・・いろいろバリエーションがある。一応10社受ける。返事は半分の5社・・・。関西が2社に東京が3社。ここまでで結構絞られるらしいんだけど・・・。はっきりした数はよくわからない。


和気さんはここまで残った彩子を褒めてくれたの。すごいすごいって・・・。


「で、彩子はアナウンサーになって何やりたいんや?」

「スポーツアナとか、バラエティーとか・・・。いろいろたくさん人と出会えるところがいいな・・・。」

「そういえば伊藤さんの奥さん東京放送の女子アナやったな・・・。で、どこが残ってんの?」

「東京がT、テレA、Fテレビ。関西がMとAなの・・・。」

「かたよとんな・・・。まあFテレビが彩子を残す理由がわかるけど・・・。いつやねん。2次は・・・。」


ホント明日から毎日のように2次面接・・・。これさえ通れば内定ほぼ確定かもしれない。会社によってはこのあと取締役との面接があるらしいけれど・・・。ああまだ卒業まで1年半もあるのにな・・・。


彩子はきちんとリクルートスーツを着て、長い髪の毛を清楚にまとめる。お化粧も印象よく・・・。和気さんは補佐官になってから毎日朝から晩まで忙しそうに家を出て行く。


「彩子、がんばってこいや。応援してるしな。」

「うんがんばるね・・・。」


彩子はパパと和気さんを送り出して今日の面接先お台場に向かう。ゆりかもめを降りて、有名な社屋を目指して歩く。数人のリクルートスーツを着た学生が通り過ぎていく。ああ、緊張・・・。彩子はここには北野彩夏として何度か来た事がある。今回は違うもんな・・・。彩子は嘘つくのが嫌いだから、きちんと履歴書に高校時代からこの春までモデルをやっていたことと、今年のお正月に和気さんと入籍したことも書いた。それを知った上でここまで通ったんだから別に構わないってことよね・・・。


さあ面接会場。男5人の女7人・・・。ここから何人採用されるんだろう。みんな彩子よりも優れているように見える。彩子を見て何か話している男子学生。指定された控え室の椅子に座り、呼ばれるのを待つ。私は最後かな・・・「わ」だから・・・。


「つぎ、和気彩子さんどうぞ。」

「はい!」


彩子は深呼吸をして緊張をほぐす。別に緊張は苦手ではないよ。こういうのはなれているんだし・・・。何度もオーデション受けたことあるし・・・。人前に立つのは好きなほう。


面接会場の前に立ちドアをたたく。返事があり中に入ると、ずらっと並ぶ面接官。人事関係の人もいるんだろうけれど、有名なアナウンサーもいる。


「和気彩子と申します。」


彩子はきちんと挨拶をして椅子に座る。もちろんモデル経験のある彩子は椅子に座るのも綺麗に座れるもん。一番綺麗に見える座り方って言うのを心得ているしね・・・。そしてきちんとした姿勢。これが大事。マニュアル通りの志望理由やらを聞かれ、難なく話す。するとひとりの面接官であるアナウンサーが話しかける。


「和気彩子さん、あなたどこかでみたことがある顔だけど?」


あ、きたきたって感じ・・・。もちろんこのアナウンサーとは一度だけ番組で一緒になった事がある。


「この春まで、モデルやタレントをしておりました。」

「ほう・・・。芸名は。」

「北野彩夏です。」

「ああ、あの子ね・・・。」

「その節は大変お世話になりました。いい経験をさせていただき、感謝しております。」

「で、どうしてやめてしまったのですか?」

「はい、どうしても夢でしたアナウンサーになるため、そして学業優先にしたかったからなのです。」

「そう・・・。」


面接官は何かこそこそ話しながら、ついに和気さんとのことを聞いてくる。


「今年に1月に入籍をされているみたいですね・・・。ご主人の和気泰明さんは何を・・・。」


(そこの履歴書に書いているじゃない・・・。聞きたいの?)


「主人の和気は、衆議院議員をしておりまして、現在内閣広報担当補佐官をしております。」

「どうして入籍を?もしかして子供がいるとかではないみたいだけど?」

「はい、主人の仕事の都合といいますか・・・。」

「代議士の妻としてやっていったほうがいいんじゃないですか?」

「いいえ、主人も私の夢を理解してくれています。そしていろいろと協力も・・・。」

「はいわかりました。結果は通過者のみお知らせした頃に・・・。いいですよ。」


彩子はきちんと挨拶をして面接室を出たの。ああ、だめかな・・・。そうよね・・・代議士の妻は大変だもの・・・。特にまた何年かしたら選挙もある。でも本当は内緒にしないといけない内容を夢のために言っているの。マスコミに和気さんとのことをさらけ出しているんだよ・・・。それなりの覚悟をしてきているんだから・・・。


彩子は社屋を出ると和気さんに電話をする。


『彩子?どうだった?』

「だめかも・・・。いろいろ和気さんのことも聞かれたから・・・。」

『そっか・・・。でもきっとどこの会社でも聞かれるわ。どっか引っかかればいいな。じゃ俺はまだ仕事中やから、きるわな。』

「うん。」


ドリーム12
駅まで歩いて数分。改札口前で一緒に面接を受けた男の子たちに声をかけられる。


「あの、君は北野彩夏でしょ。きっとそうだよ。」

「いえ違います。すみません急いでいるので・・・。」


そうよ彩子は今から大学に行かないといけないのよ。新橋駅までしつこく聞いてくる。


「ごめんなさい。本当に・・・。今から大学があるから・・・。」

「どこ?」

「東大です。」


彩子はもう我慢できなくて、新橋からタクシーに乗って大学に行ったのよ。もう要らないお金を使ってしまったわ・・・。和気さんに言って臨時のお小遣いをもらわなきゃ。大阪に面接も行かないといけないのに・・・。ま、日にちが続いているから、何往復もしなくていいし、お婆ちゃんの家に泊まるからいいんだけど・・・。


TもTVAも同じようなことを聞かれた。やっぱり彩子の芸歴と旦那様、和気さんの事が気になるみたいね・・・。彩子はこれでも帰国子女でバイリンガルなのに・・・。そういうところは見てくれない。もっぱら芸歴と和気さんのことばかり。そして決まって同じ試験を受けた男子学生が彩子に声をかけてくる。今日のTVAの時は最悪。写メまで撮られた。


実は彩子、去年末までにいろいろ写真集(グラビア写真ではないよ・・・和気さんに怒られたもんね・・・。)とかカレンダーを発売したり、ブログなんかもやってたりしたの。公式ブログはやめちゃったけれど、匿名で別のブログサイトで日記風のブログを書いている。ま、和気さんのこととかは書かないけれどね・・・。写真集とかはまだまだ人気があって、オークションサイトでは結構な値段がついていると聞いた事がある。だって彩子はもう引退した身。写真集は廃盤にしてもらっているし・・・。あ、そういえばモデル仲間三人でCDも出したよね・・・。その印税が少しだけど未だに入ってくる。公式ブログは更新していないにも関わらず、毎日相当のアクセスがあるみたいで、事務所も削除したくても削除できない状態・・・。この前も元マネージャーさんから電話があって、ちょこっとでいいから復帰できないかなって言われたの。それだけFANの要望が多いらしいのよ。でもきっぱり和気さんに変わってもらって断った。彩子はよく街で声をかけられるんだけど、いつも他人の空似の振りしてる。


そろそろFテレから結果が来そうなものだけど・・・・。やっぱりだめだったのかな・・・。ドラマもそこだったのよね・・・。さあ、次は関西ローカル・・・。


運よく面接は週末だった。やはりローカルよね・・・。もうだいぶんこの段階で絞られてる。数が少ない。ああ懐かしい関西のノリ・・・。普段は標準語をしゃべる彩子もつい面接で関西のイントネーションになってしまった・・・。もちろん家では和気さんが関西弁でしょ。つい自宅では関西のイントネーションになる。やばいな・・・。やはりここでも同じことを聞かれる。でもさすが地元・・・。和気家の知名度は高い。まあそれが合否につながるってことはないけれど・・・。でもこっちに決めたらホントに和気さんと別居だよね・・・。毎日補佐官で朝から晩まで官邸にいるんだから・・・。こういうことを聞かれたもの事実。適当に答えておいたけれど・・・。


彩子は最後の面接があったMを出ると、ロフトの前で和気さんが待っていてくれたの。


「あれ?和気さん。わざわざどうしたの?」

「ん?ちょっと心配になってな・・・。無料航空券を使ってきてしまったんや。プライベートで使うのはどうかと思ったんやけどな・・・。使えるときに使っとかな・・・。」


そう国会議員には月4往復の無料の航空券がある。和気さん自身補佐官という仕事柄、地元には帰れないでしょ。総理の地方の公務についていくぐらいだから・・・。ま、弐條のお兄さんは電車事故の後遺症で電車に長時間乗れないって事があるから、飛行機以外で行く地方はみんな和気さんが行くことになっているのよね・・・。


「実家にいったの?」

「ん?いいや・・・。行ってないというか行けないんよな・・・。母さんが今かんかんに怒ってるんや・・・・。勝手に入籍したから・・・。親戚一同に彩子が芸能人やってたことばれたしな。地元のことは地元にいる秘書や事務所の人に頼んでるんや。今の仕事じゃなかなか帰れんやろ・・・。」

「そっか・・・。」

「特に敏明がもうカンカンなんやって・・・。あいつ彩夏のファンやったしな・・・。俺が彩子を独り占めしてるからおこっとる。父さんは別にいいとは言ってるんだけどな。母さんが一番厄介だ・・・。」


彩子と和気さんはね、そのままJRに乗って(和気さんはタダ・・・。)新大阪から、新幹線に乗って帰るの。だって和気さんは明日仕事でしょ。普段のスーツじゃないし、議員バッチもつけていないから、駅員さんに国会議員の乗車証を見せた時に変な顔をされたんだよね・・・。まあ滅多に国会議員がこんなもの関西で使わないから、どうしたらいいのかわからないのかもしれない。


帰りの新幹線ももちろん和気さんはグリーン車。混んでいるとはいえ、なぜか2席だけ残っている。噂で聞いた国会議員席。マジであるんだって思ったよ・・・。窓口で乗車証を見せて、彩子の分だけ代金を支払い、彩子の分だけ乗車券を受け取る。。


「すごいな・・・噂はホンマやったんや・・・。この夕方の時間ってグリーンでも満席になるんやけどな・・・・。」


感心している場合じゃないでしょ。彩子の座席番号を見ながら席を探すと、やはりあった!出口近くに・・・。ホントに満席なのにここだけ・・・。和気さんと彩子はそこに座って車掌さんの改札を待つ。ホントにドキドキもの・・・。ついに来た来た車掌さん。和気さんは彩子の分の乗車券と、パスケースに入っている国会議員乗車証を車掌さんに見せる。


「これ、いけるよね?」

「はい、もちろん。ご苦労様です。」


彩子はリクルートスーツ着ているから和気さんの秘書に見えるかな?和気さんは弐條さんと共に政界のプリンスとか貴公子とか言われてマスコミにも顔を知られているから、もしかして顔パスできるかもしれないけど・・・。でも言っちゃ悪いけど、和気さんはプリンスとか貴公子ってがらじゃ・・・・。顔は普通だし・・・。


和気さんはパーサーに毛布を借りて彩子の膝にかけてくれた。そして彩子の手をずっと握っていてくれたの。もちろん見えないように毛布をかけた状態で・・・。やっぱり和気さんの大きくて暖かい手・・・。和気さんの手ってグローブみたいで厚い手・・・。ホントに和気さんと手をつなぐとホッとするんだよね・・・。彩子はね、疲れと緊張からか、すぐに寝てしまったの。ああどこかの局に引っかからないかな・・・。来週いっぱい待ってこなかったらもうだめだよね・・・。彩子は携帯とにらめっこする日々を過ごすのよ・・・。携帯に出れないときは留守電に入れておいてくれるって聞いたし・・・・。ああ、どうなるんだろう・・・。ドキドキ・・・。



ドリーム・クエスト (12)PKO派遣先からお兄ちゃんが帰ってきた!



明るい 兄迷彩服
 待ちに待った8月、お兄ちゃんがPKO派遣から帰ってくる。あたしのお兄ちゃんは第一陣の後方支援部隊の隊長として派遣されたんだけど、いろいろニュースで見ていて大変そうだった。案の定怪我人、病人が出た。ま、死者が出なかったのが不幸中の幸いだったかもしれない。どこの部隊に怪我人とかが出たかは知らないけれどきっとお兄ちゃんはけろっとした顔で戻ってくるに違いない!


  帰還日の当日、あたしは美月さんと静ちゃんを連れて朝霞駐屯地に向かう。雅和さんも来る予定だったんだけど、内閣補佐官に抜擢されたおかげで、忙しすぎて来れなくなった。ほんと平日は朝早くから夜遅くまで働きづめ・・・。また倒れないか心配なんだけど、和気さんと一緒の担当だから何とかなるかな・・・。


「美月さん、やっと帰ってくるね・・・。」


「はい。静は博雅さんのこと覚えているかしら?」


「大丈夫よきっと。早く着かないかな・・・。」


もちろんパパは立川飛行場まで迎えに行っている。自衛隊トップの幕僚長のパパは朝から落ち着きがなかった。先日は第2陣の中部方面の派遣部隊を見送ったばかり・・・。本当に複雑な心境のパパ。来年3月の誕生日には還暦を迎えて退職なの。


もう立川には着いている時間・・・美月さんは緊張した表情で腕時計を見つめていた。あたしは愚図る静ちゃんを抱っこしながら、立川からのバスを待った。 一時間ほど待ったのかな・・・パパの乗った公用車を先頭に続々とバスが入ってくる。まずは普通連隊、通信部隊やら様々な部隊が入ってくる。そして最後は後方支援部隊。美月さんは身を乗り出して降りてくる自衛官の顔を一人一人確認する。なかなかでてこない。そして最後のバスが止まる。先に到着した連隊はもう家族と再会している。パパは自衛官一人一人に握手をして無事帰還を祝う。最後のバスの本当に最後・・・お兄ちゃんが降りてきた。


パパとお兄ちゃんは男同士で抱き合う。パパは溢れんばかりの涙をこらえながらずっとおにいちゃんを抱きしめていた。


ドリーム 博雅迷彩
「父さん!約束どおり、俺の連隊誰一人けが人、病人は出しませんでした!」


「よくやった!よくやった・・・。よく無事に帰ってきた・・・。」


お兄ちゃんはいきなり後方支援部隊のみんなに取り囲まれ、胴上げをされる。この派遣で以前ばらばらだった部隊内が一気に団結したようだ。お兄ちゃんの解散命令で、部隊のみんなは家族のもとに散っていく。


お兄ちゃんは再びパパと握手をすると、美月さんのもとにやってきた。遠目ではわからなかったけれど、お兄ちゃんは相当苦労したのか、痩せている。静ちゃんはお兄ちゃんの顔を見るとてを伸ばし、抱っこをせがむ。


「パパ!あっこ(だっこ)!」

お兄ちゃんは微笑みながら静ちゃんを抱っこするの。


「いい子にしてた?静。」


「うん。」


「ただいま美月・・・。」


お兄ちゃんは美月さんを引き寄せて抱きしめる。


「博雅さん。あのね・・・。」


「何?」


「今ね、妊娠5ヶ月なの。」


「え?美月・・・。」


あたしも知らなかったわよ。二人目を妊娠???


「そっか!もう当分こういうことはないから、安心して。」


「はい。」


本当に和やかな雰囲気・・・。いい夫婦って感じ?パパもお兄ちゃん夫婦を見て微笑んでいた。


「綾乃、昨日新防衛大臣と話したんだが、PKO派遣はいま派遣されている部隊で終わるらしいよ。派遣先も落ち着いてきたことだし、これ以上血税を使う必要はないと総理が判断したらしい・・・。博雅はいい働きをしたと、派遣部隊長も言っていたよ。的確な判断はこの私に似たのかな・・・。」


「お兄ちゃんはこの派遣で成長したのかな?」


「もちろん。いい働きをしたよ。そしてさっき見ただろ、連隊が本当に団結していたんだから・・・。一番若い連隊長なのにね・・・。」


もちろんお兄ちゃんは大変評価されて、出世街道をまっしぐら確定になりました。


もちろん当分の間、東部方面隊後方支援部隊長をするんだけどね・・・。


もうお兄ちゃんを悪く言う部下はいなくなったのよ。



ドリーム・クエスト  (11)鍋島内閣の異変

 夏に入り、国会はないので、暇な日々を過ごす。国会のないときは衆議院議員会館の事務所で雑用をこなしたり、常任委員会のための資料集め。僕自身地元選挙区というのを持たないから、結構暇なのだ。もちろん7月の夏休みの一番混まない時期に家族旅行を計画している。といっても僕の生まれ育った芦屋や神戸方面に行くんだけど・・・。うちの爺ちゃんに雅と彬を見せないといけないし、もちろん関西にいるうちの親戚にもお披露目しないといけないんだよね・・・。


 僕の叔父さんは先日の参議院議員選挙に落選して、地元で次の選挙のための活動をしている。今度の知事選挙にでも出ようかなとも言っていたよ。今はうちの党は支持率最低だからね・・・。40%を行ったり来たりしている。叔父さんは父さん同様にいい人なんだけど、時期が悪かったんだろう。多分こんな時に僕が出たら落選していただろう。


「雅和さん、芦屋、久しぶりだね・・・。」


「んん・・・。」


僕と綾乃たちは芦屋のおじいちゃんにうちの子供たちを見せるために、僕の芦屋の実家に向かった。今日は総勢40人ほどの親戚が集まって僕たち家族を迎えてくれる。もちろん父さんもこの芦屋の自宅に戻っている。おじいちゃんは曾孫を見ると大変喜んで、可愛がってくれる。雅は1歳2ヶ月なのにもうしっかりと歩く。彬はやっと歩くようになった。二人のかわいらしい表情に周りの人たちは和んでいるんだ。


「雅孝はまだ結婚しないのかね。」


と爺ちゃんが言う。まあ兄さんもいい歳だしな・・・。もう29か・・・。兄さんは順調に文科省の課長クラスになっている。


「いい子がいないんだよね・・・。雅和がうらやましいよ、こんなに綺麗で性格のいい子と結婚しているんだしね・・・。」


兄さんは今度厚生労働省出向になるらしくって、いつ文科省に戻ってこれるかわからないらしい。


「保育所は厚生労働省管轄だろ、そういう関係の仕事をするんだよ。」


兄さんは幼稚園関係の仕事をしている。よくはわからないんだけどね・・・。ホントに同じ東京にいながら会うことがなかったんだよね・・・。兄さんは結構昔はモテテモテテ学生時代は何股していたことか・・・。ホントに落ち着きすぎだよ。親戚の中には縁談をするのが大好きな人も多いから、きっと何件か見合いを持ってくるんだろうね・・・。 案の定、見合い話が・・・。やっぱり兄さんが来ることを聞きつけた親戚の誰かが、風呂敷いっぱいの見合い写真と釣書を兄さんに渡していた。みんなどこかのお嬢さんが多いらしいけど・・・。


父さんの携帯がなり、みんなのいる部屋を出て行く。何かあったのか?少しすると父さんが僕を呼ぶ。


「雅和、ちょっと来なさい。」


父さんに書斎に招き入れられ、父さんと話をはじめる。


「鍋島が倒れた。やはりこの時が来たんだよ。」


「え!?」


父さんは官邸にスパイらしき人がいる。父さんが手塩をかけて育てた職員などである。随時何かあれば父さんの携帯に電話が入ってくるようだ。そういえば父さんは以前鍋島さんには時間がないって言ってたよね・・・。もしかしてこのことか・・・。鍋島総理は官邸での会議中に倒れ、救急車は呼ばずに裏からワンボックスで運ばれた。こういう場合は結構様態がやばい。公式発表にもいろいろあって、検査入院はたいしたことなく、過労のために入院は少しやばい。そして危篤状態のときは特別の公式発表の言い方がある。たいてい持病の悪化だとか、風邪をこじらせたとか・・・いろいろ言い方があるが、こういう時は死に至らないような病名を発表する。多分父さんの言い方では最後の言い方になるだろう。


「鍋島君は癌なんだよ。肺がん。総裁選挙の前に発覚してね、最後の情けで、うちの派閥が当選させてやったようなものだ・・・。もともと無理難題を言うような鍋島君ではないよ。多分焦りすぎたんだろうね・・・。今は危篤状態だから・・・。」


父さんは東京に戻る準備をする。


「さあ、これで復党できるよ。私達6人が離党したのは鍋島君に反旗を翻したのではないよ。鍋島君のやりたいようにさせてやっただけ・・・。私たち6人がいると邪魔になるからね・・・。鍋島君の側近官房長官の松平君は私の息のかかった人物だから・・・。今日の情報も松平君からだ。」


父さんは橘さんを呼んで、飛行機の手配をさせる。


「雅和は落ち着いたら党のほうに来なさい。まだまだ首を突っ込む時じゃないからね・・・。」


父さんは伊丹空港発の夕方の便で羽田に向かった。もちろん夕方のニュースで鍋島総理が緊急入院というニュースが流れる。もちろん予想されたとおり、肺炎による入院となっている。ということは危ないってことだ・・・。


爺ちゃんはニュースを見ながら、溜め息をつく。もちろん爺ちゃんは未だに党員だ。もちろん父さんから総理の事を聞いているようである。形式上では父さんたちは党議員の要望で復党することになっている。それもこの夕方、急に復党届けを出している。もちろん父さんの場合は、公設秘書に頼んでいるんだろう。父さんは羽田空港に付くとその足で鍋島氏の入院している病院にお見舞いに行く。そして多分この先のことを鍋島派の人たちと話すのかな。


次の日、党から総理代行が発表される。父さんの右腕、藤原さんだ。


内閣はもちろん大変混乱している。前々から内々的に知っているとはいえ、急に倒れたからね・・・。そしてその日のうちに鍋島総理の言葉として、藤原さんがそのまま内閣総理大臣に就任したのだ。内閣の再編成も行われる。父さんが総理をしていた時と同じように派閥がまんべんなく編成されている。僕はまだ下っ端だから関係ないと思いつつ・・・・父さんから送られてきた組閣内容のFAXを見て驚いた。


何で僕と和気さんの名前が入っているんだろう・・・。


広報担当補佐官だ。普通定員1名のところ、若手だからか2名。


僕の留学経験と、官邸での下積みを評価されたんだろうか。和気さんの場合は関西人気質の話術がある。ユーモアがあり、人をひきつける魅力がある。もちろん英語も堪能だ。官邸でも3年働いたキャリアもあるし弁護士の資格もある。


もちろんすぐに東京に戻るように言われる。僕は綾乃たちを神戸のおばあさんの家に預けて、何とか最終便の飛行機を押さえて東京に戻る。 自宅に戻り、指示されたとおりの服を父さんが用意してくれた。明日は組閣発表後、大臣たちとは別に補佐官は国会の階段にて記念撮影があるんだ。補佐官は総勢5名。僕と和気さん以外はベテラン・・・。和気さんと僕は大変恐縮して、夜遅くまで電話していたのは言うまでもない。


『なあ弐條、いいんかな・・・こんな役目頂いて・・・。』


「ホントびっくりしたよね・・・。で、明日はやはり礼装だろ?」


『んん・・・伯父さんに用意してもらったよ・・・。』


いくら内閣補佐官とはいえ、こういう時はモーニングを着用する。ああこれから忙しいんだろうな・・・。何でまだ下っ端の僕らを採用するのかな・・・。客寄せパンダとは言われたくないな・・・。


僕達はいつもどおりに地下鉄に乗って議員会館の自室に入る。和気さんと僕は国会の席が隣な上に部屋も隣だ。部屋に入ると私設秘書(父さんの私設秘書に来てもらっているんだよね)が用意されたモーニングを僕に渡してくれた。


「何時からかな?」


「写真撮影は4時ごろと伺っております。それまでに内閣の承認式などが・・・。」


僕は自室に入ると用意されたモーニングを着てみる。今着ておかないと、もしサイズが合わなかったら大変だからね・・・。ま、ぴったりでよかったけど・・・。和気さんは幸せ太りかわからないけど、少しきつかったようだが何とか入ったみたいだ。

ドリーム 11和気&雅和
一通り国会にて儀礼が終わる。即議員会館に戻り着替えを済ますと、和気さんと共に議事堂に戻る。そして議事堂内階段にて恒例の記念撮影。新総理藤原氏の周りにベテラン補佐官3名、官房副長官2名、一番後ろに和気さんと僕が並ぶ。ま、大臣クラスは父さんの時のような組閣で見栄えはしないんだけど、やはり和気さんと僕の超若手が入るサプライズ人事となった。


いろいろ賛否両論はあるんだけど、まあ、広報戦略とか考えるのが得意分野だからいいかもしれない。もちろん僕は藤原総理が官房長官時代に公設秘書として広報担当もしていたから、まったく初めてではない。和気さんは私設秘書だったけれど、自他共に認める優秀な秘書だったしね・・・。公設秘書並の仕事はしていたよね・・・。二人で力を合わせてやるしかないんだろうけど・・・。


この内閣人事が発表された次の日、鍋島元総理は息を引き取った。このことで、今まで通りの党に戻ったのは言うまでもないけど。相変わらず父さんは派閥の筆頭として、藤原総理の補佐をしている。


どうなるんだろうね・・・。和気さんもやはり僕と同じ考えをしていたらしい・・・。












ドリーム・クエスト  (10)病み上がりの混乱とPKO派遣

 僕は朝、目覚めて電話をかける。


「和気さん、今日から一緒に行きませんか?」


もちろん今日から東京メトロで行くことにしたから、近所に住んでいる和気さんと行くことにしたんだ。和気さんは毎日メトロ通勤。広尾駅から霞が関まで出て、乗り換えの後、永田町に向かう。一人で行くよりも仲のいい和気さんと行くほうがいい。


「あれ?綾乃、新聞は?」


「今日は休刊日よ。」


そうだ今日は休刊日だったんだよね・・・。駅で買うしかないかな・・・。


僕は綾乃の作った朝ごはんをしっかり食べて、身支度を整える。きちんと綾乃はスーツをクリーニングに出してくれていたみたい。きっちりとアイロンがかかった、スーツに袖を通し、綾乃は代議士のバッチをつけてくれる。


「いってらっしゃい。お薬きちんと持った?乗車証は?」


「うん、行ってくるよ。」


僕は結婚して三年だけど、まだまだ新婚みたいに出勤前のキスは欠かせない。綾乃の頬にいってきますのキスをして綾乃からカバンを受け取って、家を出る。そして歩いて数分の広尾駅改札前で、和気さんが待っていてくれる。


「おはようございます。」


「弐條大丈夫?」


「ええ、まあ・・・。これから薬を飲まないといけないのですが・・・。」


2人で乗車証を駅員に見せ、中に入る。そしてちょうどホームに入ってきた電車の飛び乗る。ラッシュにもまれながらも、何とか霞ヶ関に着く。


「弐條、ここから歩こう・・・。いろいろ話したい事があるし・・・。電車苦手だろ・・・。」


「そうですね・・・。」


霞ヶ関から地上に出て、永田町方面に向かって歩いた。


「なあ、弐條、どうするんや・・・。」


「え?何がですか?」


「何がって・・・。お前のお父さんをはじめ、うちの伯父さん、前官房長官の藤原さんとか、前内閣で、弐條派のメンバー6人が離党したんだよ。これからももっと増えるかもしれない。伯父さんは俺には残れって言うんだけど・・・。このままじゃ弐條派は解散だよ・・・。」


そんなの聞き初めだった・・・。強行採決による対抗措置だという。もちろん美月さんのお父さんである前防衛大臣も・・・。知らなかったよ・・・。同じ派閥の和気さんが悩んでいるんだから、僕はどうすればいいんだろうか・・・。もちろんうちの父さんのことだから、今は残れというんだろうな・・・。


 議事堂内に入ると、やはり大騒ぎ・・・。僕もマスコミに取り囲まれ、離党するかそのままいるのか聞かれる。そんなこといわれたって、さっき聞いたところなのにわかるかい・・・。まあこういうことは父さんに理由を聞いてから決めることにして・・・。


綾乃ったらそんなこと一言も言っていなかった・・・。


昼休み、父さんに呼ばれて近所のホテルの個室で昼食を摂りながら話を聞く。案の定父さんはまだ今の段階で離党しなくていいと言った。


「雅和、突然なことで悪かったね・・・。綾乃さんにくち止めしたのもこの私だ。実はいろいろ計画があってね・・・。派閥6人のほかにも離党したいというものも出てきているが、お前と同様に留まって貰っている状態だ。」


「計画って?」


「今は言えんが、ま、鍋島君の先は短いんだよ。だからあいつは実績を作りたいがために焦っているんだ・・・。」


「短い?」


父さんはそれ以上は話さなかったけれど、父さんに従えば間違いないだろうから、従うことにしたんだ。そしてこの日の帰ろうとすると、党本部から呼び出され、どうするのかと聞かれたことは言うまでもない。とりあえずいるとは言ったけどね・・・。造反組の息子だから、追い出されるのかなって思ったけれど、あっち側にも残って欲しいといわれたからなんとも複雑な気分だよ・・・。もちろん弐條派は大混乱。やめるやめないでおおもめだったんだけど、うちの父さんがとどまってもらうよう説得した。もちろん何かやるのではないかという期待感は党内であるのは確かだ。


 何とか6人と離党だけで済み、国会内は平穏無事のように感じられる。父さんは裏で何を計画しているんだか・・・・。もう年度末・・・来年度の予算編成も終わり、あと3ヶ月で会期も終わる。


PKO問題以来平穏すぎて、暖かくなってきているからか、そこら中で歳いった代議士達がうたた寝をするんだよね・・・。一番前に陣取っている新人議員は眠たくても寝れるわけない。隣同士の僕と和気さんは眠気さましに足を蹴ってみたり、手をつねってみたりして半分遊んでいる。そして先輩に怒られる。


(もちろんその先輩は居眠りしているくせに・・・。)


2月はじめの混乱が嘘のようだ・・・。


 4月にはいるとPKO派遣部隊が編成される。第一陣は東部方面が担当するようで、各連隊から決められた数だけ派遣されることになった。もちろん綾乃のお兄さんは自ら志願して、後方支援部隊連隊長として派遣が決まった。


(もちろん立場上断れなしね・・・今年初めに謹慎処分受けてしまったし・・・。)


そして訓練を受けた上、月末に派遣されることになった。もちろん陸自のトップである、綾乃のお父さんは複雑な気持ちで送り出すことになる。お父さんも若いころ、一度派遣されて様々な困難があったそうだから、本当なら行かせたくなかったそうだ。しかし陸上幕僚長の息子だからって特別待遇はありえないもんなあ・・・。


 3月にお兄さんは美月さんの実家に移ってきたばかりの出来事だから、美月さんも相当ショックを受けているようなんだ・・・。もちろん自衛官の妻だからいつかは覚悟しないといけないこと・・・。そういうように美月さんのお父さんは慰めたそうだ・・・。


 ホントに源家はお兄さんの派遣準備で忙しい。というより混乱している。 お兄さんが富士山の近くになる演習所から帰ってくると、数日休みを取って、南麻布のマンションにやってきた。もちろん親族一同が集まってまあいう壮行会かな・・・。もちろん神戸から綾乃のおばあちゃんもやってきている。おばあちゃんと会うのは三年ぶりだ。もちろん我が家の双子を見るのもはじめて。そしてお兄さんのところの静ちゃんも・・・。あと半月で三人は1歳になる。もちろん同じ誕生日。お兄さんは静ちゃんの1歳の誕生日を一緒に祝う事が出来ないので、今日一緒に祝うことになった。


綾乃と彩ちゃん、美月さんとで、料理を作り、リビングに折りたたみの机を持ってきて、僕と和気さんとでセットした。おばあちゃんとお兄さんそしてお父さんはうちの雅と彬、そして静ちゃんをあやしながら、時間をつぶしていた。彬はまだ歩かないが、雅と静ちゃんは最近歩くようになって、それを見て綾乃のお父さんは顔が緩む。


本当に彬はマイペースだ。二人が歩こうが何しようが、ひとりでお気に入りの電車のおもちゃを握り締めて遊んでいる。多分雅は綾乃に似て、彬は僕なのかな・・・。僕は小さい頃からひとつのものに執着して、じっと遊んでいたらしいからね・・・。


 わいわいがやがや言いながら、楽しい時間を過ごした。源家は随分家族が増えたよね・・・。三人兄妹に配偶者がいて、お兄さんのところと僕のところにあわせて三人の子供が出来た。一気に6人増えたんだもんね・・・。あと数年したら和気さん所にも何人か子供が出来るだろうし・・・。ホントに鼠算方式だね・・・。


「さ、そろそろ帰るよ・・・。」


「博雅、明日も休みだろ?」


「んん・・・。家族で二泊三日の旅行に行くんだ。今度いつ行けるかわからないだろ。」


お兄さんは美月さんのご両親と一緒に温泉旅行に行くらしい。新婚旅行以外は仕事上旅行に行けていないのは事実・・・。ああそういえばうちは新婚旅行さえ行っていないな・・・。綾乃が大学卒業したら行くつもりだったのに、雅と彬が生まれたから行っていないな・・・。和気さんところはどうするんだろう・・・。今のところ入籍したことは公にしていないからね・・・。そういえばワシントンのホストファミリーに結婚の連絡さえしていないな。ま、もう少し子供たちが大きくなったら行こうかな・・・。


 数日後、お兄さんは美月さんと一緒に我が家に訪れて、楽しそうに旅行の話をしてくれた。美月さんも、何とか覚悟を決めたようで、和やかな雰囲気で楽しそうに話しているのを見て、安堵したんだ。本当にこの僕の力のなさのせいで、離れ離れになる家族が多いのは確かだ。


派遣期間は三ヵ月。特に一陣であるお兄さんは何もないところからのスタートなので、きっと仕事は大変だと思う。次の派遣部隊のための準備といっても過言ではないと思う。実際に難民救済に入るのは準備が整ってからだろうね・・・。


お兄さんは明日から駐屯地に入って最終準備に入る。もちろん機材の準備だけではない。何があるかわからないので、ワクチン注射など、体も万全な準備が必要だと聞いた。派遣まであと10日・・・。義理の兄弟である僕でさえ不安でたまらないのに、綾乃や、お父さん、彩ちゃん、そして美月さんはきっともっと不安なんだろうな・・・。


 派遣の数日前、朝霞駐屯地で壮行会が行われた。派遣隊員の家族が招待され、いろいろな式典が行われる。もちろんお兄さんの父であり、陸上自衛隊トップ陸上幕僚長も出席して、訓示を述べ、派遣部隊の部隊長に部隊旗を手渡す。その後、派遣隊員と家族の記念撮影・・・。そして家族と当分の別れ・・・。


お兄さんは美月さんと静ちゃんの側に行き、静ちゃんを抱き上げ、美月さんと共に抱きしめる。静ちゃんはお兄さんの頬を触ったり、PKO部隊の帽子を触ったりする。


「パ・・・パ・・・・?」


「静!今パパって言ったか?美月、確かに言ったよな。静が俺のことをパパって・・・。」


「はい。」


いままであまり言葉らしい言葉を話さなかった静ちゃんははじめてお兄さんをパパといったらしい。


お兄さんは大変喜んでさらに静ちゃんを抱きしめた。


お父さんがやってきてお兄さんの肩を叩き言った。


「博雅、お前には部下が100人いる。必ず全員何事もなくここに連れて帰って来い。いいな。後方支援部隊長として的確な判断をしなさい。間違った判断は災難を招く。いいな。」


「はい!全員何事もなく連れて帰ってまいります。」


お兄さんは静ちゃんを美月さんに預け、お父さんに向け、敬礼をする。


もちろん実の父ではあるが、陸自の最高幹部。お兄さんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。僕はずっと綾乃と見ていたんだけど、綾乃もお兄さんが大好きだから、この光景を見て、僕の胸の中で泣き出す。

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「綾乃、弐條君。美月と静のことよろしくお願いします。弐條君はこの件に関して元総理と共にいろいろ動いてくれたらしいけれど・・・。弐條君のお父さんにもよろしく言ってくれ。きっと8月には無事に帰ってくるから・・・。頼んだよ。弐條君。」


「はい、おにいさん。」


「お兄ちゃん、ちゃんと怪我ひとつしないで帰ってきてよ!」


「わかってるよ。綾乃。きっと部下みんな何事もなく帰れるようにがんばるよ。」


本当に何事もなく帰ってくるといいんだけど・・・。


派遣先はまだ内乱の耐えない国。


いくら比較的安全な地域とはいえ、無事に帰る事が出来るかの保証はない。


お兄さんはこの駐屯地で出国までの数日間、最終調整をし、駐屯地に残る自衛官に見送られて元気よく旅立って行った。














ドリーム・クエスト (9)国会議事堂内で倒れる!!!

 雅和さんは朝からなんとも言えない表情で、いっぱい資料をかかえて国会内で行われる防衛関連の常任委員会臨時会議に出席するために朝早く出かけた。もしかしたら夜遅くなるかもしれないからと、あたしが議事堂横の衆議院用通用門まで送ったの・・・。


「いってらっしゃい。」


「ありがとう綾乃・・・。終わったらまた迎えに来てよ。電話するからさ。」


「うん。あまり根をつめないようにね。雅和さんは・・・。」


「わかっているよ。もう時間だから・・・じゃあ。」


雅和さんは慌てて通用門で身分証明書を見せ、荷物のチェックを受けると議事堂内に入っていく。


あたしは久しぶりに代官山にある美月さんのご実家に雅と彬を連れて遊びに行ったの。美月さんとお兄ちゃんの愛娘「静」ちゃんはうちの双子ちゃんと同じお誕生日。美月さんによく似たくりくりおめめの可愛い女の子なんだけど、ここのところ2,3ヶ月はこの代官山にいるので、結構じいじばあばに甘やかされている。結構頑固な正確なのか、離乳食も気に入らないと食べなかったり、夜鳴きがひどかったりして、美月さんはノイローゼ気味になった。まあそれだけじゃないんだけど・・・。官舎生活って大変なんだよね・・・。あたしも経験あるからわかるもの・・・。お付き合いが大変なのよね・・・。だから余計にダウンしてしまったんだろうな・・・。


「綾乃さん、雅ちゃん大きいわね・・・。うちに静よりも大きいわ・・・。」


「ホントに普通の月齢のこよりも大きいのよ。その反面彬は小さくって・・・。」


「でも彬君はハンサムじゃない。雅ちゃんも可愛いし・・・。きっと美男美女の姉弟になるわよ。」


「静ちゃんもおめめが大きくって可愛いわよ。」


ランチを食べながら、いろいろ育児の話とか、世間話とかを話していた。もちろんこうしていると、美月さんはノイローゼ気味には見えない。


「今度ここにお兄ちゃんが住むってね・・・。」


「うん、博雅さんがわたしのパパの提案を受け入れてくれて・・・。」


「でもうちのパパはお兄ちゃんは源家の者だからって言ってたわよ。」


もちろん一人っ子の美月さんのお父さんとしてはお兄ちゃんに養子に入ってもらいたいんだろうけど・・・。それは無理よね・・・。


「ねえ綾乃さん。最近彩子ちゃんが結婚したって本当?」


「うん。入籍だけだけどね・・・。うちの旦那様の同僚議員の和気さんとね。和気さんったら、南麻布のあたしの実家に住んでいるんだから・・・。ホントになじんじゃってね・・・。パパも気さくな和気さんを気に入ったみたいよ。同じ関西人気質だし・・・。」


「うらやましいわ。博雅さんも私のパパと仲良くやってくれるかな・・・。」


「大丈夫よ。お兄ちゃんは結構世渡り上手だし・・・。」


するとあたしの携帯が鳴る。珍しく雅和さんのお父さんからだ。


「もしもし、綾乃です。」


「綾乃さんか。雅和が・・・雅和が・・・倒れたんだ・・・議事堂内で・・・早く病院へ・・・。」


あたしは驚いて、光子さんに雅と彬を預けて以前からお世話になっている病院に向かった。

ドリーム雅和倒れる
雅和さんは常任委員会中に急に気分が悪いと訴えて、医務室に向かう途中に倒れて意識を失ったらしいの。雅和さんの秘書があわてて救急車を呼び、主治医のいる病院へ搬送された。もう国会議事堂内は大騒ぎだったらしい・・・。だって雅和さんは史上最年少当選で、将来を期待されている新人代議士・・・。国会議事堂にいた代議士をはじめ、いろんな職員が集まってきて、大騒ぎしたもんだから、マスコミも気づいてニュースになったのは言うまでもないの。今はもう意識を取り戻し、精密検査のため1週間ほど入院となった。


「多分これはあの事故の後遺症による発作みたいなものでしょうか・・・。あれから3年半経ったのですが、稀にこういうケースが報告されています。もう一度検査をしようと思います。何か引き金になるような出来事は?」


「ちょっと難題な会議があると聞いていました。もしかしたら・・・。」


同じ派閥で、会議に出ていた先輩議員は会議中のことを事細かく教えてくれた。


やはり常任委員会は白熱して、雅和さんも意見をバンバン言ったらしいの。そしたら下っ端議員だからか、鍋島派の先輩議員さんたちに集中攻撃されて、一区切りつき、昼休みという時に頭が痛い、気分が悪いといって倒れたらしいの・・・。雅和さんらしいといえばそうかもしれない・・・。でも頭に爆弾をかかえてるんだから、根を積めないでって・・・朝言ったところなのに・・・。もしかしてまた記憶は・・・?


「雅和さん、あれほど言ったじゃない。」


「そうだね、綾乃・・・。」


「どう?どこか痛い?」


「そうだね・・・頭痛がひどいかも・・・。」


ああ良かった。あたしのこと忘れなかった・・・。もちろん雅や彬のことも・・・。ひとまず安心だけど、今回のことで、徹底的に精密検査をしてもらうことになったの・・・。


結局精密検査の結果、軽い癲癇(てんかん)と意識障害いう結果が出たの。急激なストレスが原因というの。これからは通院と発作止めの薬を服用しないといけないことになったってわけ・・・。別に薬を飲まないと死んでしまうということはないけれど、これ以上ひどくならないようにということもあるかもしれない。結果が出たといってもまだまだわからない病。とりあえず経過観察も行うのよ。


「ついでにこの申請もしておいて下さい。」


あたしは先生に紙を渡される。「自立支援医療(精神医療)」の申請用紙・・・。これからいろいろと高い治療が予想されるからという先生の配慮。雅和さんの収入の場合は、1割負担のつき2万円までの負担。


無事に退院したあたし達は、部屋に戻っていろいろ話したの。


「綾乃。これから地下鉄で国会に行くよ。運転している時に発作が起きたらやばいでしょ。」


「でも・・・電車は怖いんでしょ。」


「ま、何とかなるよ。毎日綾乃に送り迎えしてもらうわけにもいかないし、ガソリン代の節約にもなるでしょ。」


もちろん国会議員は飛行機(月4往復まで)もJRも地下鉄も無料のパスがある。ちょっと優遇されすぎではないかな?と思いながらも、これなら交通費もかからないよね・・・。多分雅和さんはこれからたくさんかかるであろう医療費を心配して、電車で行くって言ってくれているんだろうな・・・。


結局雅和さんの意見も空しく、雅和さんがお休みを頂いている間の国会で、PKO派遣問題は可決してしまった・・・。


「本当にこの僕は要領が悪いよね・・・。」


「そんなことないよ・・・。また何とかなるってば・・・。明日から再登院でしょ。遅刻しちゃいけないから早く休まないとね・・・。」


「んん・・・・。」


雅和さんは早めの夕飯を摂ると、お風呂に入ってすぐに眠ってしまった。


もちろん国会内は大騒ぎなの。そしてあたしの実家、源家も・・・。


雅和さんには入院中言っていなかった事がある。もちろん新聞さえ見せなかった。きっと明日国会に登院したら驚くんだろうな・・・。今寝室で気持ちよさそうに寝ている雅和さんの寝顔を見ると、いえないまま・・・。言ったらまた倒れちゃうんだろうか・・・。



ドリーム・クエスト (8) 兄・源二等陸佐の謹慎とPKO派遣

 年が明けて、あたしと雅和さんの子供、雅と彬は随分大きくなったの。もう8ヶ月。小さく生まれたなんて信じられないくらい。特に雅はもともと大きく生まれたから、彬よりも一回り大きいのよね。よく食べて飲むし・・・。そういうところはあたし似(?)なのかもしれない。彬はよく風邪引いて目が離せない事があるけど、まあ大きな病気はしていないの。


 雅和さんも1年生代議士として、がんばってるんだ。この前もお父さんの派閥の新年会があって、私も行ってきたの。本当に先輩議員さんに可愛がられているみたいで安心しちゃった。ホントは心配だったの。いやいや比例代表で出馬して、当選しちゃったもんだから・・・。


 所属常任委員も、防衛関係だから、うちのパパとも気があって、いろいろああでもないこうでもないって楽しそうに話しているわ。パパは陸上自衛隊のトップだけど、もうすぐ定年・・・。あと1年で退職しちゃうのよね・・・。早いわ・・・。


 最近お兄ちゃんは朝霞駐屯地の東部方面第一師団に転勤になって、昇進試験をいい成績で合格。2等陸佐の昇進しました。今は官舎住まいしているらしいけどね・・・。


 あたしは雅と彬を連れて実家に遊びに行ったの。パパもすごく喜んでくれて、一日中ふたりと遊んでくれてたの。ホント爺馬鹿なんだから・・・。するとお兄ちゃんが血相を変えて実家の帰ってきたの。

明るい 兄迷彩服
 「親父・・・。俺とんでもないことをしてしまった・・・。」


真面目で仕事熱心なことで有名なお兄ちゃんが何したんだろう。お兄ちゃんはパパと向かい合って、話し出した。私も気になって、一緒に来ていた雅和さんに雅と彬を任せて、話を聞いたの。


「傷害事件を起こしてしまった・・・。」


パパは驚いてもう一度詳しく聞くの。


「部下を殴って怪我させてしまった・・・。ついカッとなって・・・。怪我はたいしたことなかったんだけど・・・。」


ホントいつも冷静で、部下を殴ったことのないおにいちゃんが・・・きっと何かあったのに違いない。 お兄ちゃんは十月の転勤で第一師団に入って、後方支援連隊長の役を頂いたらしくって、一生懸命がんばっていたらしいのよ。お兄ちゃんはまだ30代前半でしょ。やっぱり部下は年上が多いわけ・・・。防大卒業10年で2等陸佐だから、いろいろ悪く言う部下も多いらしくって、特に関西出身で、父親は陸自トップ、奥さんは前防衛大臣のお嬢さんだからね。だから昇進についていろいろ噂があるのよ。パパになんとかしてもらっただの、奥さんの実家に頼み込んだだの・・・。ここまではよく言われることだから我慢できたらしいけど、ついに言ってはいけない事を言った部下がいて、カッとして殴ったらしい。それは奥さんのこと。仲はいいんだけどね、美月さんは最近育児ノイローゼ気味で、実家に帰っているの。特に今官舎に住んでるでしょ。いろいろ憶測が出てきて、美月さんについて、いろいろ悪いことを言ったらしいのよ。あることないこと言うもんだからお兄ちゃんはキレて、言った部下を引っ張り出して思いっきり殴ったらしいの。まあ怪我は全治半月ぐらいで済んだらしいんだけど、連隊中大騒ぎになって、上官にたいそう叱られたらしいのよ・・・。


「まあ殴った俺も悪いけれど、いったやつも悪い!聞いてくれよ、親父。俺は謹慎の上に減給3ヶ月だ。言ったやつは謹慎だけだったのに・・・。」


「まあ、昔と違ってそういうのは厳しくなったからな・・・。私が若いころはしょっちゅう上官に殴られ蹴られしたもんだ・・・。しょうがないじゃないか・・・。ゆっくりこれからのことを考えなさい。」


お兄ちゃんも災難だったね・・・。


「親父、この前、美月のご両親と話し合ったんだけど、代官山の美月の実家で同居しようかと思うんだ・・・。美月は一人娘だろ。育児も実家のほうが落ち着いてできるだろうし・・・。どうかな・・・。」


「まあ、そういうことは二人で決めることだと思うよ。彩子だって和気君がここに住んでくれているから、私が留守の時は安心だし・・・。美月さんが安心して生活する事が出来るなら、美月さんの実家に同居するのもいいかな・・・。ただし、博雅は源家の跡継ぎだ。そのことは頭に入れておいて欲しい。」


「わかっているよ。落ち着いたらまた別居するつもりだし、このままだと美月はだめになってしまうと思うんだよ・・・。やはり美月には官舎住まいは無理だったんだよ・・・。」


お兄ちゃんは謹慎が解かれ次第、官舎をでて、代官山の美月さんの実家に引越しすることになったの。ホントおにいちゃんも大変だよね・・・。


お兄ちゃんの話に一段落つくと、雅和さんが、パパに話しかける。そして同僚代議士の和気さんも同じ輪に入る。あたしは男4人の話に耳を傾けて見るの。


「お父さん・・・昨日僕の所属する常任委員の臨時会議があったのです。国連からPKOの派遣依頼が来ているようです・・・。」


「んん・・・。チラッとは聞いている。週明けには陸海空の幕僚長が集まって会議が入っているんだ。多分東部方面が中心に派遣されるだろうね・・・。」


お兄ちゃんは後方支援部隊だから、PKO派遣が決まるときっと、連隊長だから派遣されるんだろうな・・・。お兄ちゃんは雅和さんとパパの話に耳を傾けながら、したをむいている。


お兄ちゃんは初めての海外派遣となるんだろう・・・。どこに派遣されるんだろう・・・。中東?アフリカ?東南アジア?それとも・・・・?今東アジアの某国の国民は難民状態だと聞く。もしかしてそういうところに行くのかな・・・。


「まあ、父の時代はこういうことは断固して反対していたんですが、今の首相である鍋島氏はこういうことには積極的な方だから・・・。きっと決まると思うんです。」


和気さんはこの話にはじめて口を出す。


「別にPKO派遣の件は法律的にも今のところ違憲ではない。国際的にもこの国からPKOを出さないといけないだろうね・・・・。去年の中東の不和の時、結局出さなかったわけだし・・・。今回はしょうがないだろう・・・。でもあの国に行くんだろ・・・。近くて遠いあの国に・・・。何があるかわからないのは確かだな・・・。あの周辺国家は日本の自衛隊に反感を持つものが多いと聞く。」


「お父さん、お兄さん、何とか常任委員で意見を言ってみますが、僕はまだ素人同然の扱いですので、通らないと思います。委員会の大半の同じ党の人は、この僕と派閥の違う鍋島派ですし・・・。なんだかんだ言って、弐條派と鍋島派は同じ党の中であって犬猿の仲といっても過言ではない・・・。両方とも同じくらい大きな派閥・・・。総裁選挙はちょっとの差で負けてしまったけれど・・・。」


「弐條なんとかしないといけないよね・・・。鍋島さんが総理になってから、支持率が下がり続けている。このままでは政権交代もありえるかもしれない。多分内閣不信任案も提出されるかもしれない。うちの党の分裂もありえる。ホントに難しいところだ・・・。次の総理は藤原副総理か、弐條前総理になってもらったほうがいいんではないかな・・・。」


ホントに難しすぎて、訳のわからない内容になってくる。今の防衛大臣は鍋島派。雅和さんのお父さんが総理をしていた時はいろいろな派閥からまんべんなく内閣を決めていたんだけど、今回は違うらしい・・・。雅和さんのお父さんは前総理として、顧問をしているんだけど、何も聞き入れてはくれないというのよね・・・。ホント鍋島総理が好き勝手にやっているって感じかな・・・。時代劇で言う悪代官?それとも悪役の家老? 明日も臨時で雅和さんは常任委員会に出席するそう・・・。パパも出来る限りのことはすると言っていたんだけど、どうなるんだろう・・・。


もしお兄ちゃんが派遣されることになったら余計に美月さんはかわいそうだよ・・・。でも上官の命令は守らなければならないからしょうがないのかな・・・。 この事がまたあたしの家庭に嵐をもたらすことになるんだけど・・・。



ドリーム・クエスト (7)突然の入籍
 12月末、仕事納めの日がきたんや。去年は官邸秘書仲間「永田町同盟」の忘年会やってけど、今年は若手代議士連中が集まって忘年会なんや。この日は与党も野党も関係あらへん。羽目をはずさん程度にドンチャン騒ぎするんや。下は弐條の25歳、上は無所属の伊藤さんの35歳。総勢10人。皆1年生代議士連中。そこは参議院の若手議員三人も加わって総勢13人となったんやけど、先日、幹事の民主党の伊達さんがえらい提案をしよった。

「まあまあ皆さん。忘年会は同伴忘年会にしましょう!」

「え?同伴忘年会?なんやそれ、伊達さん。」

「男ばっかりじゃ面白くないからさ、彼女や奥さん同伴はどうかと思ってね。女がいないやつはいないか?」

皆誰となし、彼女や奥さんはいるようや。伊達さんはこんなこともいいよる。

「何で同伴やねんて・・・。宴会に女連れてくるってどうやねん。」

「聞いたよ、和気君。和気君の彼女はすごく綺麗だそうじゃないか?弐條君の奥さんも綺麗らしいし、みんな見たいと思わないか?」

「そうだそうだ。たまには妻をこういうところに呼ぶのもいいかもしれませんよね。」

「ちょっと待ってや!弐條はどない思うねん?」

「ん?面白そうだね。たまにはこういうのもいいんじゃないかな。うちの奥さんもたまには息抜きさせてやりたいし・・・。」

俺は弐條を引っ張って耳元で話んや。

「あのなあ弐條。俺の彼女は超有名タレントなんやで。ばれたらどうすんねん。」

「あ、そうだね・・・。でも伊達さんの彼女は女優さんだよ。伊藤さんの奥さんはアナウンサーだしね・・・。結構有名人ばかりだよ。あとモデルとか、グラビアアイドルとか・・・。結構代議士の娘さんと結婚している人も多いしね。うちの奥さんみたいに特別国家公務員のお嬢さんとか。」

そうだよな・・・。なんだかんだ言って、彩子も弐條の奥さんの妹だから・・・。お父さんは陸上自衛隊のナンバー1だし・・・。でも彩子はタレントだぞ!ほんまなんか合コンのようやわ・・・。

「伊達さん。きちんとした店なんでしょうね?」

「和気君。ちゃんとプライバシーの守れる個室のあるそして裏口のある赤坂のお店を予約したから、安心したらいい。」

そんなこんなで、赤坂の某お店での同伴忘年会。いるわいるわ。みたことのある女ばっかりや。伊達さんの彼女って今一番売れている女優、若宮綾やんか。あのグラビアアイドルも・・・。伊藤さんの奥さんはTBSの中堅女子アナやし。彩子は遅い・・・。そういえば仕事っていってたもんな・・・。ああ携帯や・・・。

『和気さん、今ね紀尾井町の赤プリ前なの。どの店かな?』

「今迎えに行ったるわ。赤プリ近くの橋の上で待っとき。今行ったるから。」

俺は走って5分のところにある紀尾井町の橋に向かう。あ!何や仕事のままで来たんかいな・・・。

「ごめん和気さん。着替える暇なかったの・・・。このままでいいかな・・・。」

「ん?んん・・・。結構知ってる顔ぶれだから・・・。」

「え?」

「女優とかモデルとか女子アナとがいっぱいやで。はよいこ。」

俺は彩子の手を引いて、店に向かう。

「すんません。遅れて・・・さ、はじめましょか?」

俺は彩子と共に中に入る。

「あ!彩夏!」

「美咲ちゃん、凛ちゃん、優華ちゃん!久しぶり!」

この三人はモデル仲間らしい。

「え~!彩夏ちゃんの彼氏ってこの人だったの?期待しすぎたわよ。」

「もう、凛ちゃん。すごくいい人なんだから。」

なんだかモデル組四人で盛り上がっている。ホント華やかな団体様やな。カリスマモデルばっかり4人も揃って。その上にこれまたグラビアアイドルも加わるんや。

「あ、綾香ちゃん、久しぶり!」

「北野さん、ホントね。」

みんな20歳の子達やから、すごくそこだけで盛り上がっている。

「和気君、やるな!あの北野彩夏が彼女なんてな!驚いたよ。確かに綺麗な彼女だ。いつから付き合っているんだ?」

「もうすぐで1年かな・・・。あの子が売れる前から付き合っています・・・。」

モデル4人に、グラビアアイドル、女子アナ、女優。来ている女の子の半分は有名人やんか・・・。なんて華やかな忘年会何やろな・・・。弐條の奥さんは政治家のお嬢妻連中と話しているし・・・。ひとり女優の若宮綾は機嫌悪そうに伊達さんと話している。そしてついには怒って帰っていったんだよ。伊藤さんの奥さんも局でまだ仕事があるからと早々退席。

「伊達さんの彼女どうしたんですか?」

「ああ、ちょっと北野彩夏が可愛いといったら怒ってしまったんだよ。もともと綾は北野彩夏が嫌いらしい。この前のドラマも北野彩夏に主役格を盗られたって怒ってたしね・・・。」

ああそういうことね・・・・。まあこの女が、北野彩夏がこの俺と付き合っているということをばらす張本人になるわけやけど・・・。ホンマ芸能界って所は怖いもんやな・・・。  

最近俺の周りは騒がしいんや。何や・・・。俺の後ろをちょろちょろしとる。俺は彩子のマンションに行こうと思ったんやけど、広尾駅を降りて、麻布に向かわず、広尾のほうへ向かう。行き先はもちろん弐條の家や。突然の俺の訪問に弐條は驚いていたんやけど、俺の顔を見て何も言わずに入れてくれたんや。

「弐條、俺の周りに誰かついとる。彩子は何もいってなかったか?」

「ああ・・・彩ちゃんも同じことを言っていたよ。」

「そうやろ・・・ばれたかな・・・。」

「ああ、どうする?」

「言ったほうが楽かな・・・。彩子は反対されるようなら引退するとまでいっていたんや。でも楽しそうに仕事している彩子を見たら、やめろとは言えんやろ・・・。」

「とりあえず、会わないほうがいいかもしれないな・・・。僕からも彩ちゃんに言っておくよ。」

とりあえず、彩子と俺は会わんことにしたんや。

案の定このことは伯父である平官房長官の耳に入ってきたんや。もちろん正月早々から呼び出しなんや。

「泰明、お前に婚約者がいることは聞いたいたが、その婚約者が、あの北野彩夏というじゃないか・・・。国会議員たるもの、ちゃらちゃらしたタレントと付き合うとは・・・。」

「しかし伯父さん!ホントはあんな子じゃないんです。あれは事務所が決めた芸風なんです。伯父さん、一度会ってみて下さい。きっと気に入ってくれます。彩子はちゃんと東大に通って単位もきちんととっていますし。」

伯父さんは俺の話など聞いてはくれんかった。それどころか、どこからか縁談を持ち込んできたんや。もちろん相手はこの国で一番の企業の令嬢やった。この勢いやったらきっといやいや結婚させられるやろう。俺は意を決して彩子と弐條の家で会うことにしたんや。

俺は彩子の前に座って土下座をする。

「彩子!お願いや!芸能界やめてくれんか?やめんいうんやったら別れなあかんのや。」

彩子はちゃんとわきまえているんや。

「和気さん、わかったよ。彩子もうやめる。彩子は和気さんといたいもん。和気さんがやめろって言うんならやめるってこの前言ったよね・・・。彩子はもう芸能界に未練はないよ・・・。」

彩子は泣いていたんやけど、俺の気持ちをきちんとわかってくれている。

「じゃ、彩子今から事務所行って話してくるね・・・。」

「じゃ、おれは伯父さんからの縁談を断ってくる・・・。」

「え?和気さん?縁談?」

「うん、伯父さんが彩子との結婚に反対してね・・・。縁談を持ってきたんだ・・・。きちんと断ってくるから・・・。」

そして俺は彩子に渡していなかった婚約指輪を渡したんや・・・。

「そんないいもんやないけど、代議士になって初めての給料で買ったんや。あと・・・いきなりでなんやけど・・・。」

俺は胸のポケットから紙切れを取り出したんや。

「今すぐ結婚しよう・・・。な、いいやろ。入籍だけでええから・・・。もちろん大学行ってもええし、もちろん俺が学費だしたるから・・・。今すぐ一緒になろ。」

彩子は悩んだ末、婚姻届にサインしてくれたんや。もちろん俺らはすぐに港区役所に出しにいったんや。まあ、事後報告でみんなには悪かったと思ってるんやけど、きちんと伯父さんにも、彩子のお父さんにも僕らが入籍したことを伝えたんや。彩子のお父さんにえらい怒られて、殺されるかと思ったんやけど・・・。

条件として俺はマスオサン状態になることになったんや。俺は議員宿舎を出て、彩子の南麻布の自宅に入るってことや。ま、彩子と一緒になれるんやからそれくらい我慢せんとあかんわな。彩子は今入っているスケジュールをこなしたあと、芸能界引退っていうことになったんや。一番の売れっ子が突然引退したことで、えらい騒ぎになったんやけど、「学業に専念する。」ってことで何とか収まったんや。ま、源彩子から和気彩子になったんやけどな・・・。もちろん俺が学費も生活費も負担してるんや。(家賃がかからんって言うのはいいけどな・・・。)

彩子の夢、アナウンサーになるって言うのはまだ諦めてないんや。というより、俺ら二人三脚で夢を叶える事にしたんやで。周りのみんなは俺らのこと美女と野獣やというけどな・・・。がんばるわな。

ドリーム・クエスト (6) 北野彩夏、大学祭の爆弾発言

 俺は金曜日から実家に戻っているんや。なぜって?衆議院当選後、臨時国会も終わり、当選お礼を兼ねた後援会の親睦会が日曜日にあるんだよね・・・。


これが終わると、常任委員会が待っている。俺は弁護士の資格を持っているので、法務委員会に入れられてしまった。父さんには厚生労働委員会に入れといわれたんだけどな・・・。弐條は義理のお父さんが自衛隊だからか、なぜか安全保障委員会に入れられたらしい・・・。まあ最近自衛隊が軍隊なのか、自衛軍なのかなんかでごたついているからなり手が少ない。こういうところは新人議員が穴埋めするんや。一番新人代議士仲間で仲のいい俺らやから、一緒の委員になりたかったんやけどな・・・。まあしょうがないわ・・・。


国会の席順も新人若手やから、与党の一番前。となりは弐條やったから救われたけどな・・・。一番前はいやや。先輩代議士からちゃちゃをいれられたり、怒鳴られたり気を使うんや。


そういえば弐條のやつ、史上最年少当選や。25歳の誕生日に当選やからな・・・。それも当時総理大臣やった弐條常康氏の次男やから超話題になりよった。ま、将来義理の兄弟になるわけやし、仲良くしとこ。


まあこんなことはいいとして、代議士になって初の帰郷や。親戚一同みんなでえらい迎えてくれてな、こんな人おったっけ?という人まで出てくる。国会議員ってこんなもんかな・・・。あれほど俺のことを出来損ないの息子やってけなしてた親父が自慢の息子やと言いふらしているんやもんな・・・・。和気家から国会議員が出よったってな。まあうちは代々古くは平安時代以前から医師をしている名家や。それも直系やからな・・・親父の医師のプライドは超高いんや。あの東京で有名な医師一家丹波家とうちは代々ライバルらしいわ。西の和気家、東の丹波家ってね・・・。うちはずっと京都の御所一本でお仕えしてたしな、あっちは武家、それも江戸幕府。そういうところがいがみ合う原因かもしれん。ま、俺は和気家らしくない政治家肌やから、関係ないわあ。


「彩子さんは親睦会に来ないのかしら?!」


とうちの母さんがいいよる。ま、婚約者として来るのが当然やていうのが母さんの言いたいことかも知れへんが、母さんはまだ俺と彩子のことを認めたがってないからな、何かにつけて文句いうんや。俺は腹たって、言ってやったんや。


「わかったよ!呼んでやるよ!ええんやなほんまに。母さん、連れてきたら許してくれるんやな!」


そうや、彩子は大阪にいるって言うても、仕事できてるんやったわ・・・。夜宝塚ホテルまで来れるんやろか・・・。着るもんあるやろか・・・。俺は早速彩子に電話をするんや。


『え?行かないとだめなの?まあなんとかするね・・・。月曜日は授業が休講でよかったけど・・・。何着ようかな・・・。』


「ドレス系とかないのん?お姉さんに借りたら?だいたい体形一緒ちゃうん?」


『うん、だいたいね・・・。まあお姉ちゃんに相談してみる。あとマネージャーに言わないと・・・。学祭のあと帰る予定だったから・・・。』


「そうだよ、お姉さんは政治関係のパーティーの先輩だからいろいろ聞いたらいいよ。」


『うん、そうだね・・・。もちろん彩子の格好でいいんだよね・・・。』


「そうや・・・。まだうちの家族にいっとらんし・・・。」


ああほんまに有名タレントをこっそり彼女にしているってのも辛いもんあるわあ・・・。それも弟の敏明は北野彩夏の大ファンやし・・・。すごい日曜日を楽しみにしてるんや。


「泰明にいも行くやろ!彩夏ちゃん来るんやで!トークショーは朝11時から講堂やで。」


「ああ、行くつもりにはしているよ。入れるかな・・・。」


「さあな・・・。みんな楽しみにしてるんや。彩夏ちゃんを生で見られるんやもんな・・・。」


ホンマたのしそうやわ・・・。どんなトークショーになるやら・・・。彩子はほんとの彩子を知ってもらうんだって言ってたんやけどなあ・・・。


当日親睦会の会場は僕の公設秘書2名(恥ずかしながら、公費で雇っているんだ)に頼んで、朝9時に会場へ向かう。さすがに開場前からすごい人!まあチケットは彩子からもらっていたからいいんやけど・・・。ま、たくさんもらったから、敏明にもやってけどな・・・。敏明のやつ「何でこんなに持ってんねん」って驚いたんやけど、俺にはコネがあるって言ってやったさ。さすが国会議員って珍しく尊敬の目で見てくれたんや。


ま、開場後、俺は恥ずかしいから、中段の端っこに座ってチラシとかを見てたんや。やはり人気タレントのトークショーや。すぐに満員になった。司会者が出てきて、流行の服とヘアメイクをした彩子(いや北野彩夏)が出てくるとみんな大騒ぎ。


「皆さんおはようで、いいのかな?北野彩夏です。今日はよろしくお願いします。」


彩子よりもトーンは高いな・・・。久しぶりだな・・・生「北野彩夏」。やっぱしスタイルいいよな・・・。椅子に座るのも綺麗な座り方ってのをマスターしているから、すごく綺麗なんやわ。もちろん姿勢もええし・・・。


司会者とともに質疑応答風にトークショーが始まる。やっぱり彩子は仕事の顔になっているよ。彩子と同一人物には思えへんな・・・。


1時間ほどのトークが終わると、待ちに待った、質問コーナーや。そりゃみんな聞きたいことばかりだ、大騒ぎや。彩子は深呼吸をして質問に答えていく。まあはじめは仕事の話から始まって、だんだんプライベートな話になっていく。


『そのプロポーションを保つ秘訣は?』


「やはり、女性は愛が必要だと思います。だから私もこうして保たれるのかな?」


(その愛は俺の愛や・・・。)


『出身地は?』


「実は関西なんですよ。中学まで、父の都合で海外にいましたが、中学から大学までずっと、神戸にいたんです。」


『学生なんですか?失礼ですがどこの?』


「え?言うんですか?赤い門で有名な大学の文Ⅰに在籍しています。」


会場はどの大学かわかるから、おお~~~~~~って反応するんや。


『好きな異性のタイプって?』


「そうですね・・・。誠実で、優しくて、教養のある人かな・・・。顔にはこだわりません。あと、がっしりタイプで、包容力のある人かな・・・。」

ドリーム 和気照れる
彩子は僕のほうを見つめていうんや。そして僕に向かって微笑む。俺に向かってだよな・・・。


『好きな人っているんですか?』


彩子が答えようとすると、マネージャーからのNG 指令・・・。でも彩子は無視して話し出す。


「いますよ。すごくいい恋愛をしています。公にできるものならしたいんだけど。彼に迷惑がかかるのでここで言うのはやめておこうかなって思います。ね!」


彩子よ!この俺に手を振るのはやめてくれ・・・。彼氏がここにいるのばればれやんか・・・。マネージャーは慌てて彩子を引っ張って会場を後にするんや。会場は北野彩夏の彼が誰かと騒ぎ出したんや。俺は恥ずかしくなって講堂をさっさと出た。彩子から電話がかかる。


『和気さん今どこ?彩子着替えたから今から会える?』


「ん?んん・・・。今駐車場におるよ。」


『え~~~もう帰っちゃうの?』


俺は駐車場で彩子を待った。彩子は大きなカバンを持ってニコニコしながらやってくる。もちろん今は彩夏じゃなく、彩子だ。


「和気さん、待った?」


「んん・・・ちょっとね・・・。」


「今からどこへ行くの?ねえ。」


「ま、彩子の宿泊先を押さえよう・・・。今夜遅くなるから・・・。着替えるところもいるやろ。俺も着替えなあかんしな・・・。」


俺はホテルで準備している秘書に頼んで部屋を取ってもらったんや。まあ何とかダブルルームが取れて、車に乗って親睦会の行われるホテルに向かう。吹田から車で30分かかるかかからへんか。ホテルに着くと、車を預けてロビーへ。ロビーでは俺の秘書がルームキーを持って待ち構えているんや。俺は彩子の手を引いてルームキーを受け取る。


「時間が来たら呼びにきて。それ以外は取次ぎしないでくれないかな・・・。」


「はい、かしこまりました。」


俺は部屋に入ると彩子を抱きしめる。彩子はキスを求めてくるので、キスをする。


「和気さんごめんね・・・。あんなこと言って・・・。マネージャーさんに怒られちゃった・・・。」


「いいよ、ほんまのこといっただけやろ。でもあそこで手を振らんでも・・・。」


「だって和気さんが見えたからついね・・・。」


親睦会開始まであと3時間・・・。彩子は今日着る服を取り出して、クローゼットにかけるんや。


「どんな髪形がいいかな・・・。メイクもきちんとしないとね・・・。和気さんきちんとスーツ持ってきたの?」


「んん・・・。」


「めがねは?議員バッチは?」


「ちゃんと持ってきているよ。それよりも・・・。」


俺は彩子をベッドに座らせ、ゆっくり話す。


「和気さんは、彩子がいいの?それとも北野彩夏がいい?」


「ん?どっちも好きだよ。どちらも彩子なんだから。」


「もう彩子は芸能界に未練はないよ。今日のことで、和気さんが迷惑かかるのなら今のお仕事やめるし、この前もね、事務所にグラビアのお仕事やめるっていってきたから。もう前みたいな撮影はしないよ。だから和気さんは彩子のことだけ見ていてね。」


「ああ、わかってる。」


「じゃ、今日の親睦会で彩子が彩夏だってバレるかも知れないよ。いいかな・・・。」


「んん・・・いずれわかることだし・・・。まあ、弟の敏明は驚くやろうけど・・・。」


親睦会が始まる2時間前、彩子は準備を始める。お姉さんに借りてきたと思われる清楚なドレスというかワンピースというかそんなんを着て、ヘアメイクも自分でする。カバンからいろいろな道具を出して、なれた様子。さすがモデル。あっという間にできあがりって感じ。出来上がった感じは彩子と彩夏の中間ぐらい・・・。俺はさすがに見惚れてしまったんやな・・・。ホンマ綺麗やもん・・・。


「和気さん、おかしくないかな・・・。」


おかしいどころか完璧やん。俺は慌てて自分の身支度をするんや。最近買ったスーツにネクタイをする。すると彩子が議員バッチをつけてくれた。そして俺はトレードマークのめがねをかける。グッドタイミングで、秘書が迎えに来る。


「さあ、行こう・・・。ほんまにばれるかもしれないけどいいんやな?」


「んん・・・。いいよ。彩子は彩子だから。」


俺たちは宴会場に向かう。宴会場前には開始30分前にも関わらず、続々と後援会の人達が集まっている。そういえば今日弐條も呼んだんやった・・・。大親友やしな。ほんまは弐條のお父さんを呼びたかったんやけど、お忙しい人やから、代理人としてきてもらうことに。もちろん奥さん同伴。やっぱ奥さん半年前に双子を出産したなんて信じられんスタイルの良さやな・・・。弐條も相変わらずカッコええし。ほんま周りから見たら理想的な夫婦像やて・・・。あ、ぼおっとしてる場合やない。俺が主役なんや。挨拶回りにいかなあかんて・・・。


「彩子、お姉さんと一緒におればいいわあ。」


「うん。」


俺は出席者一人一人に挨拶している。彩子は楽しそうに弐條夫婦と話しているんや。立食形式の親睦会。もちろん会費制。司会者によって親睦会は進められる。俺も弐條も挨拶を済まし、親睦会開始や。すると母さんが俺の前にやってくるんや。


「彩子さんは来てないの?」


「おるよ。弐條君のとこや。待っててやつれてくるから。」


俺は弐條のとこ行ってな、彩子を引っ張ってくる。


「ほら母さん、彩子や。」


「お久しぶりです。お母様。」


母さんはなんともいえない顔で離れていくんや。親父は綺麗なカッコの彩子を見て、喜ぶんや。


「さすが未来の代議士夫人。泰明とお似合いやわ。早く一緒になって、父さんを安心させてくれ。早く孫も見たいしな・・・。」


「父さん!まだ俺たちは結婚できんわ。」


「学生結婚でもいいやろ。なあ彩子さん。」


彩子は真っ赤な顔をして、下を向いてたんや。少しすると、学祭の片づけの後遅れてやってきた弟の敏明が入ってきて叫ぶ。


「あ~!何でこんなとこに北野彩夏がいるんや!」


みんな注目の的や。なんやなんやって人が集まってくるんや。ああ・・・ばれてまうやんか・・・。


「何でにいの側に彩夏ちゃんが・・・・。」


「ちょっとこい!」


俺は敏明を引っ張って、会場から出る。


「うるさい!静かにしろ!」


「何で彩夏ちゃんがにいの横におるんや。」


「あの子は俺の婚約者の彩子や。」


「あれはまさしく彩夏ちゃんや!」


しょうがない・・・こいつにだけはばらすか・・・。


「そうや。北野彩夏や。彩子の芸名は北野彩夏や。彩子が売れる前から付きあっとるんや。いいか内緒や。特に母さんにはな!」


「嘘や!何でさえない泰明にいの彼女が彩夏ちゃんなんや・・・。嘘やって言ってくれ・・・。」


「嘘やない。後で彩子に聞いたらええ。ええか、他人の空似や。そう思っとけ。」


敏明は相当ショックやったんやろな。あれから口も聞いてくれへん。まあその場は何とか他人の空似ってことで収まったけど・・・。弐條のやつ、むっちゃ笑いをこらえとった・・・。


まあ北野彩夏の学祭での爆弾発言は次の日えらい騒ぎになって、北野彩夏の恋人探しが始まったのは言うまでもない。世間では北野彩子の彼氏=イケメンと勘違いしてくれているおかげで、俺は論外扱いになっとる。ま、早瀬裕也ちゃうかって噂も流れたけどな・・・。


弟といえば、いまだ信じられんとか、にいとは絶交やとかわけのわからんこと言ってるけどな、ほっといたらええし・・・。


まあ、源彩子も、北野彩夏も俺のもんって言うことで・・・。


めでたしめでたし(?)



ドリーム・クエスト (5) 北野彩夏の決意

 私は北野彩夏。今をときめくカリスマモデルといわれてるんだけど、これは本当の自分じゃない。事務所が決めたイメージってこと。私の本名は源彩子。お姉ちゃんは弐條雅和っていう新人代議士の奥さんをしている。パパは陸上自衛隊勤務で、この夏また昇進しちゃって、幕僚監部幕僚長という陸上自衛隊のトップになっちゃいました。これは陸上自衛隊のナンバー1(防衛省大臣は除く、いわゆる制服族ね)。最近孫が一気に三人も出来ちゃって、以前の厳格なパパじゃなくなったのよね・・・。だから彩子は芸能界にいられるってわけ。


 彩子にはちゃんとした恋人がいるの。お姉ちゃんの旦那様の同僚代議士、和気泰明さん。彩子よりも6歳年上だけど、真面目で、彩子のことだけ愛してくれるごく普通の人。この前の8月末に、彩子は仕事上のストレスで、和気さんを困らせてしまったんだけど、和気さんは反対に彩子を励ましてくれて、こうして9月以降も仕事をしているの。これからは少しずつでも北野彩夏を源彩子に変えていくつもり。そうじゃないと、体がもたないの。今は女優もしながら毎日を楽しく過ごしているところ。学業は優先にしないとパパに怒られちゃうから大学にもきちんと通っているよ。もちろん源彩子としてね。


 彩子と和気さんはいつも彩子の自宅で会うの。和気さんの家は赤坂の議員宿舎だから彩子から遊びに行けるわけないでしょ。だからパパのいない時を狙って会っていたりなんかしてる。まあパパに公認の仲だからこそこそする必要はないんだけど、やっぱり面と向かっていちゃいちゃはできないでしょ。だからパパがいない時。平日は今臨時国会中で和気さんはお仕事だから、会うのはもっぱら週末。でも彩子の仕事も入ったりするから会えない日が多いのも確かだけど。事務所の人は彩子と和気さんが付き合っていることは知っているけれど、仕事柄内緒。早く公にしたいんだけどな・・・。


「彩子、今度いつ会えるんかな・・・。」


「来週は撮影が入っているの・・・。だからごめんね・・。」


「ええよ、こうやって会えただけでも嬉しいんや。」

ドリーム 和気&彩子2
休みの日、彩子は和気さんに抱かれながら、ゆっくりしている事が多いかな・・・。和気さんも公の人になっちゃったからね・・・。デートって無理。2人で一日中いちゃいちゃしている事が一番の彩子のストレス発散。一番彩子に戻れる時なんだ。


「じゃ、彩子帰るよ。明日は早いんやった・・・。」


そういって和気さんは彩子にキスして身なりを整えると赤坂の議員宿舎に戻っていくの。決しておねえちゃんの旦那様のようにかっこいいことはいえないけど、包容力があって、すっごく優しいから大好き。


彩子は最近モデルからタレントに転向したの。最近グラビアも撮ることになって、彩子の載る雑誌を見て和気さんはやきもち焼くんだよ。そういうところがとても和気さんの可愛いところ。和気さんがとても彩子のこと愛してくれるから、彩子は綺麗なままでいられるんだと思う。彩子が和気さんとお付き合いしてからだもん。こうして注目されだしたのは。愛が女を綺麗にするってホントだね。今までいろんな男の子と付き合ったことあるけど、こんなに幸せな気分になった事がなかったのよね。うふふ・・・。


 みんな彩子のプライベートは知らないの。ただ発表してないんだもん。北野彩夏は今時の女の子のイメージで服装やヘアメイクをしているんだけど、本当の彩子は正反対なの。普段はホントに最低限のメイクしかしないし、服はオーソドックスなお嬢様スタイル。大学に行っても、だれも彩子が北野彩夏ということなんて知らない。知っているのは彩子のすごい親友の一部だけ。和気さんの家族もそう。彩子がタレントやっているなんて知らないよ。もし知ったら破談になっちゃうのかな・・・。お堅い家みたいだから・・・。


 もうそろそろ学園祭の季節。今年は初めて学祭めぐりをするの。トークショーがメインなんだけど、ファッション系の学校では彩子がモデルとして出演したりするよ。ああまた和気さんと会えない日が続くんだよね・・・。大学もあまりいけないしね・・・。


 さあ来週末阪大医学部の学祭「中之島祭」・・・。和気さんの弟さんが通っている阪大医学部。前日には前入りするから、大変よ・・・。打ち合わせもあるし・・・。一応和気さんには彩子のスケジュール渡してあるんだ・・・。いけたら来てねって・・・。


「え、来週大阪なん?奇遇やな。俺も来週金曜から月曜まで地元に帰るんや。後援会の親睦会があってな。阪大吹田キャンパスやろ、行ったるわあ。」


「ホント?」


「おう!俺も一応北野彩夏のファンやしな。もちろん一番彩子が好きやで。」


「もう!和気さんたら・・・。」


 やったあ、和気さんに会えるんだ・・・。事務所にはプライベートのことを話すなって言われているけど、彩子はうそが嫌いなの。彩子はきちんとみんなに本当の彩子を知ってもらいたいの。


「和気さんは彩子のこと好きなんでしょ。もし和気さんと彩子が付き合っている事が公になっても構わない?和気さんと北野彩夏が付き合っているって知られても大丈夫?」


「なにいってるん?俺は彩子が彩子らしくすることには反対はしないやん。別に不倫とかじゃないんやから、構わんよ。公になったも構わん。もし公になって、彩子が困ることになるんやったら、芸能界をさっぱりやめて、俺のとこに来たらええやん。がんばってアナウンサーになるんやろ。夢をおわなあかんで、な、彩子。」


 こういうところが和気さんのいいところ。いつも彩子のことを考えて、意見を言ってくれるの。はじめは勘違いして優柔不断だってけんかしたことあったんだけど、彩子の意見を一番に聞いてくれるその優しさが大好きなんだ。彩子は本当の彩子をみんなに見てもらいたいの。もしそれがだめなら芸能界なんて引退よ。未練はないんだから・・・。


「ところでこの写真はなんや?こういうポーズは俺の前だけにしてくれへん?」


ああ、男性雑誌の袋とじね・・・。あれは彩子も恥ずかしかった。際どい水着で・・・。いかにも挑発してるってやつ?やきもち焼いてる?


「彩子は和気さんだけのものだよ。」


和気さんは真っ赤な顔をして彩子を抱いてくれたの。


「そうやな。こうして彩子の体全部見る事が出来るのは俺だけや。」


そうよ。彩子の生まれたままの姿を見せるのは今は和気さんだけだよ。ああ恥ずかしい・・・。


ドリーム・クエスト (4)和気泰明の選挙と恋愛

 ああ!俺はどうして承諾してしまったんやろか・・・。出馬するつもりはなかったんや!俺はやはり頼まれると嫌といえない性格。


まあ両親は喜んでくれたし、後援会も早速作ってくれて、会員もすごい勢いで増えているんや。党の県本部も驚いている。


やはり親父の顔は広かった・・・。兵庫県の医師会もバックについてくれるんや。その代わり、医療改革をマニフェストに入れないといけない・・・。まあ一応マニフェストは医療改革、少子化対策、学校教育改革、そして年金改革を入れようと考えている。ありふれたといえばありふれた内容かもしれんが・・・。ま、党から派遣された担当者というか指導者に相談しながらこなしているんや。今まで3年間伯父さんについて学んできたことを発揮するようにがんばっているんやけど・・・。ホントにバックアップが増えてきた。まだ公示されていないのに当確予想が出ているのは言うまでもないんやけどな。


そういえば、秘書辞めてこっちに来る前、彩子ちゃんに会った。彩子ちゃんはすごく寂しそうにしていたんだよね・・・。でも当選したら東京の議員宿舎に移るから、それまでの我慢ということで・・・。落選した時は僕の持っている資格、弁護士として再出発するしかない。ま、一応弁護士会に登録のみはしてあるから、なろうと思えばなれる。どこかの弁護士事務所に入って修業しなおさなあかんやろけど・・・。彩子ちゃんは待っていてくれるって約束をしてくれた。


夏休みには会いに来てくれるとも・・・。その日が待ち遠しい。彩子ちゃんもそうやけど、選挙に出る以上は異性関係は白紙または極秘にして欲しいともいわれたんや。党としては独身でクリーンなイメージで売りたいみたいや。


弐條なんか比例代表の名簿順位を5位にされて困ってたんや。大体東京都の場合は平均7,8人が当選するからな・・・。もしかしたら今の最高の党支持率のせいで、10人全員当選ってこともあるかもしれん。俺の比例順位8番は微妙だね・・・。まあ結果がでんとわからんけどな。あとひと月と思うと、緊張するわあ・・・。


田村さんのとこは結構激戦区やから大変そうやわ。比例にもいれとらへんらしいし。俺はあの人好かんから、落ちてくれると嬉しいわあ・・・。(あかんあかん。こう言ったらあかんわ。) ま、前、俺の彩子ちゃんを短期間でも誘惑して盗ったわけやから一生許さん。


 そういう彩子ちゃんは夏休みに入って、カリスマモデル北野彩夏として活躍している。最近メディアにようさん出て、もうモデルというよりタレントさんやわ。写真集出すとか出さんとか噂されているんやけど、彩子ちゃんは嫌がってるんや。事務所としてはこれから先女優として売っていきたいらしいんやけど、彩子ちゃんはアナウンサーになるのが夢って聞いたからな。大学卒業を機に芸能界を引退して、どっかのテレビ局に就職したいんちゃう?まあ応援してやりたいとは思うんよ。でもそうなると結婚は遠のいていくわけやし・・・。まあ俺が30までに結婚できたらええかな・・・って言ってもあと4年やんか!


最近の俺の携帯の待ち受けは誰やと思う?北野彩夏や。それも俺だけの写真なんやで。待ち受けサイトでダウンロードしたんやなくって、こっちに来る前に一回だけ俺の前でなってもらったんを携帯のカメラで撮ったベスト写真。誰も持っていない俺だけの北野彩夏や。弟にこの前欲しいっていわれてもやらんかったわ。もちろんどっかのサイトで見つけてダウンロードしたってごまかしといたけどな。もちろん教えろってうるさかったけど・・・。


やっぱ俺の前の表情は週刊誌やらとはちがうんや。どの週刊誌やファッション誌の北野彩夏よりもだんぜん可愛いんやから。なんかあの時はコスプレしてるようで変な感じやったけど、燃えたのは確かや。北野彩夏は俺のもんやって感じで、源彩子と北野彩夏を独り占めしたって感じ。こんな贅沢なことはないな・・・。


まあ惚気話はこれくらいにしてな、これからは選挙に集中しないといけないのは確かや。弐條のように結果を待つだけってことはないしな。選挙区内を走り回らんと。若さをアピールするために自転車で走れと党本部に言われた時はさすがにわろたわ。まあがんばってみるわな。


彩子ちゃんは秋のドラマに向けて今撮影中って聞いたんや。フジテレビの月9。見ないといかんなあ・・・って言うよりそういうのって恋愛ものが多いやん。キスシーンとかもあるんかい?珍しく夜彩子ちゃんから電話がかかって来た。


『和気さん今大丈夫?』


「ん?ええけど?どうしたん?」


『あのね彩子、明日キスシーンが入っているの・・・。』


「ええ!!だれと?」


『知らないかな?今すごく売れている早瀬裕也って・・・。』


早瀬裕也といえば、今すごく売れているイケメン俳優。この早瀬が出るドラマの視聴率はすごいらしくって、彩子ちゃんがこのドラマに出るのも、この男のリクエストだったらしい・・・。腹立つわ!俺の彩子だぞ。


「近所なら今すぐ会いにいってやりたいけどな・・・ごめんな・・・。」


『ううん・・・いいの。和気さんと話ができてうれしかったな。選挙がんばってね・・・。』


「うん。がんばるよ。当選したらまた・・・。」


『また電話していいかな?』


「この時間帯ならいいよ。俺も彩子ちゃんの声が聞けて嬉しかったから・・・。彩子、愛してるよ・・・。」


『うん、彩子も和気さんのこと愛してるよ。おやすみなさい。』


そっかキスシーンか・・・ということはベッドシーンもあるんやろか・・・ちょっと嫉妬・・・。早瀬に彩子ちゃんを盗られんようにせなあかんなあ・・・。


 8月13日、選挙活動の開始や!まず選管に出馬届けを出して番号をもらう。やった!1番や!これで選挙ポスターは掲示板1のところに貼れるんや。先手必勝(?)スタッフで手分けして宝塚、川西、猪名川町といった選挙区をめぐって選挙ポスターを選挙掲示板に貼りまくった。選挙ポスターもいい写真を撮ってもらって、いい出来だ。この俺がかっこよく見えるのはなぜだろうか?俺のトレードマークのめがねがいいなあ・・・。ま、めがねかけるんは仕事中だけやけど・・・。普段はあまりかけないというかコンタクトなんやって・・・。この際コンタクトにしよっかなって選対の人に相談したら、やはりめがねかけんと俺の顔に特徴がないいうて、却下されたんや。ほんまにごく普通のそこら中に溢れているような顔やからなあ・・・。


彩子ちゃんはこんな俺のどこに惚れたんやろか・・・。ほんま弐條のような顔に生まれたかったわあ・・・。身長も175ぐらいやし、がっしりタイプ。まあこのがっしりさは学生時代柔道してたからなんやけど・・・。別に太っとんとちゃうで。骨太の筋肉質。もしかしてそこが良かったんやろか・・・。でも弐條の身長180越え、モデル並みの体形には憧れる。あれでよく走り回ったりして体力が持つなあと思ったりするんや。結構脱いだら筋肉質やったりしてなあ・・・。


まあ今日から選挙活動開始やから、がんばるで。 遠方は車スタッフに任せて、超地元の宝塚市内の市街地や住宅地は自転車で選挙活動や!走るで。何人かでチーム組んで・・・。うちの選挙区はうちの党ひとり勝ちのところやから、立候補者は三人。形式上は三つ巴ってやつや。与党のうちの党と、野党第一党の民主党、そして無所属。まあ無所属の人には悪いけどな、表面上民主党の候補の人と一騎打ちになっとるけど・・・。


この民主党の候補はなんと若い女!俺が26やからか、きっと俺とやりあうつもりで出してきたんやな。なんと同じ年の甲南女子大出のお嬢やったりする。もちろん出身は神戸なんやけど、お父さんが参議院の議員さんやて。対抗馬としてこの選挙区に来たわけやな。まあ綺麗なお嬢やけど、どうかなって感じや。


この前選管いった時もばったり会ってな、「よろしく」って微笑んでたわ。普通の男ならついていくかも知れんけど、俺には彩子ちゃんがいるんや。彩子ちゃんのほうがなんぼ綺麗か。お色気戦略かよ!エロ親父の有権者を取り込もうって魂胆見え見えや!


選挙運動中も何度もすれ違ったけど、ほんまミニスカートなんか穿きやがって・・・。汗だくの俺を見てイヤーな目で見やがる。この前もふん!とかいいやがった!お前なんかに興味なんかないわ。可愛いともおもわへんって。この厚化粧女!覚えとけよ!一回泣かしたるわ!もちろん程ほどにしといたるけどな!俺は一生懸命彩子ちゃんのため(?)にがんばってるんや!当選して彩子ちゃんとの遠恋を解消するんやから!大差で勝って泣かしたるわ!


いろいろ俺の粗捜ししてるみたいやな・・・最近怪しい人が選挙事務所当たりをうろうろしとる。 投票日は明後日。明日最後の選挙運動だ。夜8時までが選挙運動時間。やっと事務所に帰ってきて、お茶を飲みながらくつろいでいた時、突然俺の携帯がなる。あ、彩子ちゃんからだ!


『今大丈夫?』


「いいよ。何?」


『この週末そっちに行けるよ。行ってもいいかな・・・。』


「え?昼間は事務所にはいないよ・・・。これくらいの時間ならならいるけどな・・・。どうしたん?」


『会いたいの・・・。和気さんに会いたいの・・・。』


「俺もそうだけど・・・。でも選挙終わるまで会えないんや・・・。」


『遠目でいいから・・・。和気さんの顔見たら元気になりそうな気がするの・・・。』


「なにかあったんか?」


『疲れたの・・・。北野彩夏はもういやなの・・・。本当の彩子じゃないもん。』


「わかった、明日の夜会おうか・・・。」


きっと何かあったのに違いない。ほんまにそうや、彩子ちゃんは北野彩夏じゃないんや。仕事が忙しすぎる上に、この俺に会えないから?それは言い過ぎかもしれないんやど、ここ最近夏休みをいいことに仕事ばっかりだというメール。最近お父さんも怒り出したというんや。はじめはバイト感覚でやっていた仕事やもんな。


ほんま俺は次の日、選挙運動最終日を終えてから会うことにしたんや。 朝8時から最後のお願いということで、選挙区内を車で回ったり、駅前で演説したり、あっという間に運動終了の夜8時。スタッフと明日の最終確認をして、彩子ちゃんに電話をかけようとすると、彩子ちゃんから電話がかかる。


「今どこにいるの?」


『すぐそこ・・・。』


俺は携帯を切って、事務所を出ると、彩子ちゃんの姿を探したんや。


「彩子!」


「和気さん!」

ドリーム 和気&彩子
俺は一目を気にせず、彩子ちゃんを抱きしめていた。彩子ちゃんは僕の胸の中で泣くんや。党の選対担当者は驚いて事務所を飛び出し、俺らを引き離すんや。


「和気さん!こんなところで何してるんですか!」


「俺の婚約者や!婚約者が悩んでるんや!」


「だからといって、このようなところで!」


担当者と俺は彩子ちゃんの前でごたついているのを見ていうんや。


「ごめんなさい!彩子のせいで・・・。ごめんなさい!」


彩子は走って俺の前から姿を消すんや。そのあと何度携帯に電話をかけても出ないどころか、電源を切っているんや。俺は事務所で選対担当者を怒鳴りつけたんや。


「もし、彩子になんかあったら、お前のせいや!悩み悩んで意を決して東京からここまで来たんや!もう選挙なんてどうでもええ!俺は彩子を探す!」


ほんま事務所のスタッフは普段温厚な俺が立腹している姿を見て驚いていたのは言うまでもないんや。俺は弐條に電話して神戸の実家の電話番号を教えてもらったり、地元で行きそうなところを教えてもらったんやけど、なかなかみつからないんや。どこに行ったんや・・・。


心配やないか!


俺は知り合ったときに彩子ちゃんが言ってたことを思い出したんや。


『彩子ね、ポルトバザールから見える明石海峡大橋が大好きなんだ・・・。とっても大きくて夜景がとても綺麗なんだよ。』


そうだ!垂水に行ってみよう!明石海峡大橋だ!俺は車を飛ばして神戸市垂水区にあるポルトバザールへ・・・。ここはアウトレットショップがあるところなんやけど、そこから見える明石海峡大橋がむっちゃ綺麗なんや。そういえば前、選挙終わってこっちに帰って来たら一度行こうなって約束してたんや・・・。


時間は22時半。一応駐車場はあいていた。路駐はあかんやろ。駐車場に止めて彩子ちゃんを探したんや。


「彩子・・・彩子・・・。」


やはり土曜日の夜だ。カップルばかり・・・。薄暗いここはやはり目の悪い僕にとって苦手や。やはりここやなかったんやって思ってたらいたいた!


「彩子!そこにいるの彩子やろ!」


やっぱり彩子やった。じっと端のほうで海と橋を見ながら泣いてたんや。俺の声に彩子は気がついて振りかえったんや。


「和気さん!」


ホンマに俺らはドラマのような再会をして俺は彩子を抱きしめたんや。


「ごめん彩子・・・俺が悪かったんや。もう離さへん・・・。」


「彩子が突然事務所の前に行ったから悪いの。ごめんなさい・・・。」


俺は彩子にキスをした。ほんまに長い長いキスやったわ・・・。


気が付いたらもう12時を過ぎてたんや。ああ、駐車場閉鎖・・・。結局俺たちは朝までいろいろ寄り添い話しながら駐車場が開くのを待った。


ああ良かった・・・彩子はなんともなくって・・・。それだけが心配やった・・・。


彩子の悩みの原因はやはり自分とは違う人格をずっと演じなければならないというストレスと、それを発散するための俺がいなかったということやった・・・。


「なあ彩子。自分を出したらええやん。それがだめなんやったら、もうやめたらええ。彩子は彩子らしくするのが一番やん。」


「和気さん・・・。」


彩子ちゃんはすごく清々しい顔をして俺を見つめてくれたんや。


夜が明けて、6時、やっと駐車場が開いた。俺はとりあえず宝塚の選挙事務所に向かう。昨夜取り乱したことを詫びないといかんやろ。


今日は投票日や。昨日の俺の行動が、吉と出るか凶と出るか・・・。


選挙事務所に付くと、数人が泊まり込んでいた様子。帰ってきた俺を見て安心した表情で見つめるスタッフ・・・。中には彩子ちゃんのお姉さんがいたんだ。彩子ちゃんのお姉さんは彩子ちゃんを見るなり詰め寄るんや。


「おねえちゃん・・・。」


「彩子、あんた何してたの!和気さんに迷惑かけて!和気さんだけじゃないわ!後援会の人たちも選挙事務所のみんな心配していたんだから!それでよく政治家と結婚しようと思ったわね!」


「ごめんなさい!彩子、和気さんに会いたかったから・・・・。でもどうしてお姉ちゃんがここにいるの?」


「あたしは雅和さんのお父さんのお手伝いで芦屋の選挙事務所にいるの!お父さんはこっちにこれないでしょ。奥さまもいないし。弐條家の嫁として地元のお手伝いをするのは当然のことよ!うちの旦那様はじっと待っているだけでしょ。本当なら彩子はここにいてお手伝いしないといけない立場なのに・・・。まあ、見つかって安心したわ・・・。雅和さんもすごく心配してたんだから・・・。和気さんごめんなさい・・・。本当に馬鹿な妹で・・・。」


お姉さんは俺と事務所のスタッフに深々と頭を下げて、彩子と共に芦屋に戻って行った。俺もスタッフたちに深々と頭を下げ誤る。


「良かったですね・・・。彼女が無事見つかって・・・。」


「そうよ。和気さんにあんな綺麗な彼女がいたなんて・・・。」


「ま、俺らは和気さんの味方だし・・・。」


ホンマこの数ヶ月で団結力ができたんやなあ・・・。ホンマ感謝せなあかんわ・・・。


この後、家に着替えに戻って、ゆっくり風呂に入ってから再び事務所へ・・・。あああとは結果を待つのみ・・・。昨日寝てないから、裏の仮眠室で、昼過ぎまで寝てたんや・・・。ちょっと遅い昼食をとってな、身なりを整えた。


夕方あたりになると、一部の報道陣が集まってくる。情報収集をしているスタッフから出口調査の結果が順次入ってくる。いい感じかもしれない。伯父さんの七光りか、それとも党のおかげか、俺の活動のおかげか・・・。どうだろうね・・・。


投票時間が終わった。ああドキドキするわあ・・・。東大の合格発表のとき以来やん・・・。某国営テレビの出口調査ではうちの党の圧勝!さてここはどうだろう・・・。続々と後援会のひとたちや俺の家族が入ってくる。俺は中央の椅子に座って開票速報を見ているんや。もちろん真っ先に決まるのは党首弐條常康氏。もちろん小選挙区で当確で圧勝している。さすがやなあ・・・。出来るもんならもう一期党首やって欲しいわあ・・・。でももうこれ以上出来ひんからな・・・。


うちはどうや・・・。まだ開票率は一桁・・・。各開票所にいかせているスタッフから続々と票数が入り、ホワイトボードに女性スタッフが書き込んでいく。思ったよりも苦戦・・・。やはり昨日の事が響いたのか?それともあの厚化粧の女のお色気戦略か・・・。


しかし、うちの地域が開票されるにつれて、差がついてくる。そして無所属の候補者も票を伸ばす。やっと当確が出たのは夜11時をまわっていたんや・・・。


やった!初当選!


もちろん続々と比例代表の当選者も決まっていく。東京都ブロックの弐條ももちろん10時ごろには当確が出ていた。


「万歳!万歳!・・・・」


地方テレビ局だけやけど、ばっちりテレビに当選風景が映っていたんや。もちろん彩子ちゃんからお祝いメールが届いていたし、続々と元秘書仲間や同級生、弐條からお祝いの電話が入る。ほんま当確から当選になったときはどっと疲れが来たんや・・・。


で、あの田村・・・。そう俺の大っ嫌いな田村やけど・・・。最後までもつれにもつれてほんの1000票差位で見事落選。ざまあ見ろ!今度は来年の参議院選挙に出るってよ!もうやめれば?って感じや。ああこれであの嫌味な田村の顔を見なくていいと思ったらすっきりしたわあ。


あの厚化粧女ときたら、結局最下位落選で、泣いて泣いて!せっかくの化粧がぼろぼろで、放送コードギリギリって感じで映ってやがった!ざまあみやがれ。


せっせと足で稼いだんやから。圧勝!ほんまに良かったわあ・・・これで彩子との遠恋はなくなったんやもん。よしとしよう・・・。






【作者からの一言】


これから和気と雅和の代議士生活が始まります。


あくまでもこれは恋愛モノです。


堅苦しい政治小説ではありませんし、フィクションですよ^^;


ドリーム・クエスト (3) ええ!!!うそだろ???

 梅雨の最中、総選挙の日程が決まる。なんと投票日は運命のいたずらか、僕の誕生日・・・。8月25日の日曜日だ。


おいちょっと待て!って感じ。


僕はその日に25歳になる。ということは・・・。衆議院に立候補できるのは投票日に満25歳以上であること。ということは僕は対象になってしまう。

ドリーム 和気&雅和
もちろん案の定、党の選挙対策本部に呼び出されるのだ。もちろん和気さんも同時に・・・。


「さ、2人とも座って・・・。」


選挙対策本部長はニコニコしながら僕と和気さんを応接室のソファーに座らせる。やばい・・・。出馬要請だ・・・。いつもと違ってお茶とお茶菓子を出される。僕と和気さんは苦笑してわかりきった本部長の話を聞くことにした。


「さて、お2人には出馬をしていただきたい。和気君の地元兵庫6区はうちの党の天下。今の斉藤代議士が政界引退をするからそこに入っていただきたい。まあ和気君の実家は地元でも有名な家だからきっと当選確実だ。そして、弐條君。」


「ぼ、僕はだめです!兵庫7区は父の選挙区ですし!」


「弐條君は小選挙区ではないよ。東京都の比例代表の名簿に入っていただきたい。どうだろ・・・。」


「うちの場合は・・・妻が最近子供を出産しまして、まだ子供達が入院しているものですから・・・。」


「いやあ、比例だから選挙運動はしなくていいんだよ。和気君、できる限りバックアップするので、検討してくれないか?」


本部長は詳しい説明をした。もちろん新人としてあの田村さんも出るとのこと・・・。断りたくても断りきれず、ふたりとも承諾。


僕の場合はいいんだけど、和気さんの場合は今から準備をしないと間に合わない。もちろん6月末付で、内閣官房副長官平氏の私設秘書を退職して、地元に戻って選挙準備にかかる。まあ和気さんの実家の場合、顔が広いから、後援会などすぐに準備できるんだろうな・・・。党本部も県の党事務所のほうもバックアップするらしいから何とかなるだろうけど・・・。しかし彩ちゃんとの遠距離恋愛が始まるのはいうまでもない。


僕は家に帰ると、綾乃に出馬の件を言う。


「え?何それ!」


「だから、僕は出馬することになったの!」


「わかっているわよ。」


僕は選挙の公示日である8月13日まで仕事をする。その後は一応休職ということにしておいて、当選したら、今の仕事を退職し、だめなら復職という形にしてもらったんだけど・・・。


本当に僕は断りたかった・・・。父さんも困った顔をしていたんだよね・・・。ホントに数合わせって言うか・・・。今の党は若返りをスローガンに掲げているみたいで、新人を20代30代で固めるらしい・・・。もちろんある一定の年齢の代議士さんにはやめていただいているようだ。


その代表格が僕と和気さん、そして田村さんだ。本当に困ったもんだ・・・。出馬なんてまだまだ先だって思っていたけれど・・・。


「明日は雅と彬が退院するのよ。わかってる?」


「あ、そうだったね・・・。」


そういえば明日お子ちゃま達が退院してくるんだった。ほんと出馬の件で頭がいっぱいになってしまって、明日休みを取って雅と彬を迎えに行くことを忘れていたよ・・・。だからかな・・・綾乃の機嫌が悪いのは・・・。光子さんが僕が苦笑しているのを見て微笑んでいた。


 次の日僕と綾乃はちびたちを迎えにいく。きちんとプリウスの後部座席には買ったばかりのベビーシートをふたつ取り付ける。ちびたちは2500gを超え、生まれたときに比べると、はっきりした顔になった。僕達はNICUの看護師さんに御礼をして、僕は雅を、綾乃は彬を抱いて、看護師さんたちと記念撮影をした。そしてキャリーに2人を乗せて入院費用を精算して帰路につく。


「綾乃、今日から育児大変だろうけど、がんばってよ。」


「うん、がんばるよ。ま、光子さんがついているから、安心かな・・・。いつお父さんに見せに行くの?」


「そうだな・・・今晩あたり行くかな・・・。連絡しておくよ。」


結局その日の晩、公邸に雅と彬を連れて行ったんだけどね・・・。もちろん父さんはもう嬉しくて嬉しくて、交互に二人を抱いて、何か話しかける。光子さんはその光景を見て微笑んでいる。


「雅のほうが重くないか?彬は雅和のこれくらいの時によく似ている。可愛いな・・・。」


ホントに爺馬鹿・・・。特にうちには女の子がいないから雅を離そうとしない。雅はおなかが空いたのか、大きな声で泣き出した。


「綾乃さん雅が・・・。」


綾乃は雅を受け取って、哺乳瓶でミルクを与える。それにつられてか、彬も泣き出す。まあ光子さんが彬の世話をしてくれて、助かった・・・。


僕と父さんは別室に移って、これからのことを話す。


「父さん、本当に勝手に決めてしまい、すみませんでした。」


「前々からこのことは聞いていたが、選挙日が予想よりも遅くなってしまったからね・・・。偶然にもお前の誕生日が投票日とは・・・。まあ比例代表だから待っているだけでいいし・・・。多分順位も下のほうにするだろうね・・・。形だけと聞いたよ。」


父さんは小選挙区でも立候補するんだけど、比例代表全国区でも党首として名簿順位1位で登録される。東京都ブロックの場合は、平均10人ぐらいだからきっと僕は最後に登録されるだろう・・・。


総選挙まであとひと月、全国の比例名簿の案が上がってくる。もちろん僕も東京都の名簿に入っているんだけど、ちょっと待て!10人中5番目じゃないか・・・。話が違うぞ!これじゃあ形だけじゃないじゃないか・・・。もちろん父さんも驚いてたけれど、やはり人選の問題上このような順位になったと聞いた。一応和気さんも近畿ブロックの比例代表として8番目あたりに入っていた。田村さんは?小選挙区1本らしい・・・。


和気さんは私設秘書を退職して、地元兵庫県宝塚で選挙の準備を整えている。先日もメールで事務所を建てたと報告があった。毎日いろいろ選挙区内を走り回っているようで、大変そう。もちろん彩ちゃんと会えるわけもなく、寂しい思いをしていると書いてあった。


投票まであとひと月、僕の運命は?そして和気さんの結果はどうなってしまうんだろう・・・。問題は父さんだよね・・・。父さんには奥さんがいないから、爺ちゃんが選挙区内を行脚して選挙活動をしないといけない。もし綾乃に子供がいなかったら頼むんだけど・・・。






【作者からの一言】


ついに雅和に出馬要請が・・・。まだまだって思っていたのに・・・。苦悩の続く雅和君でした^^;


ドリーム・クエスト (2) 和気君地元に里帰り

 「和気さん。彩子には夢があるの。」


俺の彼女、源彩子ちゃんが言うんや。実は彼女、大学生の傍ら、人気カリスマモデル兼タレント。モデルは高校時代からやっていたそうやけど、ここ最近(はっきり言って俺と付き合いだした頃やろか・・・。)人気が出てきてな、ファッション雑誌に取り上げられるようになったんや。もちろん芸名っていうのがあって、北野彩夏って言う。


ホンマにこんなさえない俺が独り占めしてもいいんやろかって時折思うんや。もちろん彩子ちゃんは事務所に俺の存在を隠すように言われているんやけど、彩子ちゃんは俺のことをすごく想ってくれていて、今度僕の家族に挨拶に来ることになったんや。


「夢?なんやそれ・・・。」


彩子ちゃんはいつものようにベッドのなかで俺に抱かれながら微笑む。


「彩子はアナウンサーになりたいの。」


「へえ・・・アナウンサーねえ・・・。え?!」


アナウンサーになるって言うんやったらもっともっと俺らの結婚が延びるってことやろ!!!俺としては彩子ちゃんが大学卒業後すぐにでも結婚しようと思っていたんやけどね・・・。最低あと5年は出来ないかもしれないって事やろ?!焦るあせる・・・。


「もちろん和気さんとは結婚するよ。でも彩子はおねえちゃんと違って、早くに結婚したくないし、仕事もしたいの。」


彩子ちゃんは俺にキスをしてベッドから出る。


「彩子は結婚しても仕事はするの。いいでしょ、和気さん。」


彩子ちゃんはキャリアウーマンタイプなんやなあ・・・。感心している場合やないやんか!


彩子ちゃんはシャワーを浴びて服に着替えてるんや。


ここは大阪梅田にある外資系の超高級ホテルザリッツカールトンの一室。今日ここのレストランで俺の両親と会う約束をしているんや。彩子ちゃんは仕事中の北野彩夏とまったく見た目は違う。ほんまにはじめ同一人物かと疑ったぐらいや。仕事中は今流行のヘアメイクに服を着てポーズを撮っているけれど、普段は清楚な神戸スタイルにまとめる。神戸のお嬢って感じや。きっとこれならうちの両親も認めてくれるんやないかな・・・。ほんまにこのギャップがたまらなかったりするんやけど・・・。まあ当分は両親に内緒ということで・・・。(笑)


俺はちょっとショックを受けながら、ベッドから出てシャワー浴びてスーツに着替えたんや。着替え終わった頃には、彩子ちゃんは準備完了って感じで、いつものお淑やかタイプの彩子ちゃんになっていた。やっぱし可愛いなあって思いながら俺は眺めてた。


これなら誰も「北野彩夏」と同一人物やなんて思わないやろう。


「和気さん、おなか空いたね・・・。」


「うんそうやな・・・。」


俺たちはチェックインのあと今の時間までいちゃいちゃしてたりなんかしたけど・・・。昼が軽すぎたのかほんまにおなかすいたんや。予約時間は6時から、フランス料理ラ・ベの個室で・・・。今日は両親のほかに兄貴や姉貴も弟も来る。うちは家族の連帯感が強いのが特徴で、このおかげで、何度彼女に逃げられたことか・・・。(そういう子に限って玉の輿狙いやからまあいいけどな。) 彩子ちゃんはうまくやってくれるんやろかな・・・・。ま、彩子ちゃんのお姉ちゃんが結構世渡り上手で、あの華麗なる一族、弐條家でよくやってるから上手くやっていけると思うんやけどな・・・。


エレベーターで5階まで降りて、ラ・ベへ・・・。ここのホテルは結構うちの御用達。兄貴も姉貴もここで挙式したし、事あるごとにここで食事したりしているんや。特にここのフランス料理はお気に入りで、ザガットというレストランガイドの京阪神版でもいつも上位を占めているしな。


「和気ですけど・・・。」


「お連れ様はもうお待ちでございます。」


個室に通されると相変わらず5人の顔ぶれ。普通なら引くよなあ・・・。でも彩子ちゃんはやっぱり違ったんや。きちんと俺の家族の前で挨拶をしてとびっきりの顔で微笑んでいる。やはりきちんとお父さんのしつけがよかったんやろうな・・・。やはり彩子ちゃんも世渡り上手だよ・・・。


「まあ座りなさい。」


親父の一言に緊張しながら座ったんやけど、平然としてるんや、彩子ちゃんは。食事も始まっても初体面なのに楽しそうに話している。


「そうか、お父さんとお兄さんは自衛官幹部かね。お姉さんはあの弐條家に嫁いだとは・・・。」


親父はえらい気に入った様子で話しているんや。特に親父は彩子ちゃんの才色兼備なところが気に入ったらしい。まあ家柄もいいしな・・・。彩子ちゃんの家は神戸での名家のひとつだし・・・。


母さんは俺が可愛いてしょうがないからな、こんな可愛い相手が出来て相当嫉妬していると聞いた。はよう子離れせんとあかんわ・・・うちの母さんは・・・。兄貴も姉貴もまんざらではないらしい。手ごたえはいい。


「いつ結婚するんだい。泰明。」


「まだまだ先だよ。彩子が大学出ないといけないしな。働きたいっていっとるし。あと5年は先かな・・・。」


「で、泰明はいつこっちに帰ってくるんや。今度の総選挙に出るんか?」


「いや出ない。まだまだだよ。」


「じゃ、来年の市議会議員選挙に出たらどうか?地方からはじめてもいいと思うぞ。母さんも寂しいといっているんだ。早くこっちに帰って来い。」


「考えとくわあ・・・。でも今の仕事今が一番楽しいしな・・・。」


まあこんな話は顔を合わすたびにするんやけどなあ・・・。あれほど俺を出来そこないといっていた親父が最近可愛がってくれる。多分母さんの入れ知恵だろうけど・・・。 まあ何とかお食事会を済ませた。まあ感触はよかったと思うな・・・。うんうん。


そのあと梅田の街に出かけたんや。まあ今日は土曜日だから、映画館はレイトショーをしている。まあなんとなくやっている映画館のペアシートに座って、じっと映画を見ていたんや・・・。よく映画の前にCMがあるやん。あれになんと彩子ちゃんいや北野彩夏が出ているんだ!知らなかったよ。化粧品のCMまで出ているんやもん・・・。焦って焦って映画どころじゃなかったのはいうまでもないやん。最近よくテレビにも出るようになったんかい・・・・。同じカリスマモデルの蝦ちゃんとか優ちゃんとかも目じゃないやん。ほんまいいんかなこんな子と結婚して・・・。ファンに殺されそう・・・。俺のようなさえない男が相手やなんて誰も予想できないやろな・・・。


次の日、彩子ちゃんは神戸のおばあちゃんのところへ行くって言って、別れたんや。もちろん俺は宝塚の実家にいったわけなんやけど、えらい昨日のことで親父が褒めてくれてな。ホンマ驚いたわ。でも母さんは相変わらず機嫌悪そうやったけど。


「泰明にい。泰明にいの彼女どっかでみたことあるんやけど・・・。」


「だれに?」


「似てないか?北野彩夏に。」


俺は思いっきりドキッとしてもうた。


「ここに北野彩夏がいるわけないやん。他人の空似や空似。」


やっぱ彩子ちゃんと同じ年代の弟は結構鋭い。鋭すぎる。

ドリーム 北野彩夏
「なあ敏明、ああいうのがいいわけ?」


「そりゃそうだろ!北野彩夏ちゃんって俺らの年代の憧れなんだぜ。泰明にいはああいうこは好きじゃないんだろうけど?まあにいは昨日の彩子さんのほうがお似合いさ。でも北野彩夏って結構私生活は謎なんだぜ。本名や出身地も公にしてないし。ミステリアスなところがいいんだよな・・・。阪大医学部の学祭に呼ぶように今交渉中らしいけど・・・。一度でいいから会ってみたいよな。」


昨日会ったっちゅうねん。まあ北野彩夏には彼氏がいないことになっているから内緒。きっと驚くやろな・・・俺の彼女が北野彩夏なんだからな・・・。


「ほんと今回のCMいいよな・・・。あの唇でキスされたら俺は何にもいらね~。」


「はははは・・・・。(いつもキスされてる俺は幸せものやな・・・。)」


秋には女優としてデビューするらしいけど。そんなこと聞いてないよ・・・。


あまりこれから会えなくなるってことか・・・。


彩子ちゃんがそんなすごい子だと思わんかった・・・。


今やっと自分がえらいことをしていると気がついたのはいうまでもないわ・・・。




【作者からの一言】


和気君の里帰り編です。


イラストも使いまわしさせていただきます。


ラブラブな2人に立ちふさがるお母様。お母様は彩子が気に入らないのです。だって自分の知らないところで彼女作って、結婚の約束まで・・・。結構ずっと嫌味たらたら言うんです。お母様。



ドリーム・クエスト (1)4人5脚!

 僕の名前は弐條雅和。24歳。現在官房長官の公設秘書歴2年。父さんは戦後最年少で、史上最高支持率の内閣総理大臣。任期はあと4ヶ月・・・。





高3のときの遅い初恋を成就させて今も寄り添っている妻の綾乃は、予定日よりも一月半早く5月に可愛い双子の子供たちを産んでくれた。第1子長女の雅(みやび)と第2子長男の彬(あきら)。綾乃の大学で、漢字の第一人者の教授に名づけてもらったんだ。今はまだ2人ともちっちゃいから、NICU(新生児集中治療室)に入ったままなのだ。

親ばかNICU前


 子供達が誕生後、1日有休をもらったんだけど、子供達の面会時間ずっと、NICUのガラス窓にへばりついて、小さな我が子たちを眺めていたのは言うまでもない。看護師さんたちは僕に気を使って、一番近くに保育器に入った雅と彬をつれてきてくれて、治療を行っている。黄疸はでているけれど、今のところなんともないと小児科の主治医が言ってくれた。小さいながらミルクもいっぱい飲んでくれて、安心。2人とも小さな口を大きく開けてあくびをしたり、小さなもみじのような手を口に運んで吸ってみたりと、一日中見ていても飽きないくらいだ。時折目を開けて僕のほうを見ているような気がするんだけど、まだはっきり見えてはいないって聞いたから、気のせいかな・・・。本当に僕は親ばかなんだなってつくづく思う。





もちろん父さんも同じ。暇さえあれば、この初孫たちを見に来る。今日なんて昼ご飯も食べずに、昼休みにやってきて、僕と一緒に並んで雅と彬を眺めていたんだ。もちろん綾乃のお父さん(陸上自衛隊東部方面総監部総監なのだ)も仕事を終えると朝霞駐屯地から急いでやってきて三人の初孫(ひとりは綾乃のお兄さんの長女。)を時間ギリギリまで眺めている。ホントみんな爺馬鹿だ・・・。もちろん首相官邸や国会そして朝霞駐屯地でもお祝いムードであったのはいうまでもないけど・・・。





 さて、雅と彬が生まれて初めての出勤日。いつものように僕は党本部の駐車場に車を止めて、議員会館によってから官邸に向かう。面識のない人たちまで、この僕にお祝いの言葉をかけてくれる。まあ今日は5月3日の祭日。普段よりも人は少ない。でも何人かはいることはいる。大体は下っ端の者だけど・・・。





僕は昨日撮った、雅と彬の写真をデスクマットの間に挟んで、休んでいた間の仕事の処理を始める。





「弐條!おめでとう。」


「あ、和気さん。」


「ホント無事に生まれてよかったな・・・。あのさ、仕事が終わったらみんなで飲み会しようってことになってさ、どうかな?」





結構官邸内の若い秘書や内閣官房職員連中は飲み会が好きだ。ことあるごとにいろんな理由をつけて宴会をする。今日はまさしく僕に子供が生まれたお祝いの宴会らしい。終わったらさっさと病院に行こうって思っていたんだけどな。まあ今日くらいいいかな・・・。





仕事のあと、僕らは当直の職員を残して赤坂に繰り出す。いろいろバタバタして、ここに来るのも年末の忘年会以来だ。





今日は居酒屋。ホント同年代の20代ばっかりの宴会。秘書、職員合わせて10人ちょっと。結構なかのいい人たちばかり。既婚、独身は半々位かな・・・。わいわいがやがやうるさいくらいだ。まあ僕は帰り車だから、悪いけれどアルコールは控えさせていただいた。やっぱり飲酒運転はいけないからね・・・。





 そういえば内閣府に新人さんが入ってきて、官邸に出入りするメンバーが増えたんだ。今まで結構僕は新人格だったけれど、そろそろ中堅に近くなってきたのかな・・・。この春から、数人の秘書官が入ってきたし。




家族計画 雅和1あれ、途中から5人ほど休みの人達が合流してる。誰か呼んだのかな・・・。その中の数人の女性職員が、僕のそばに寄ってきて、いろいろ話し出したんだ。





「弐條さん、もうパパになっちゃったんですね・・・。すごく残念です・・・。」


「そうそう!ちょっと狙ってたんですけど・・・。」





何言ってんだろ、この子たちは。酔った勢いでいろいろ僕に言ってくるんだけど、僕は聞いてるふり・・・。まあ綾乃が妊娠中をいいことにいろいろ言い寄ってくる女性職員は大勢いたが、もちろん丁重にお断りをしていたんだよね・・・。この子達も同じなんだろう・・・。僕は愛人なんて持つつもりはない。ほんとに。





さあ始まって90分。お開きの時間だ。幹事の和気さんはみんなから会費を徴収している。





「和気さん、僕も・・・。」


「いい、今日は弐條のお祝いなんだから。あ、これ、みんなからね。」





和気さんは僕に大きな紙袋に入ったものを渡した。





「なんですか?これ。」


「あ、それね、みんなからの出産祝い。少しずつ出しあって買ったんだよ。雅ちゃんと彬君にね・・・。」


「ありがとうございます。」





僕は和気さんを車に乗せて、赤坂を出た。





「弐條。明日彩子ちゃんと一緒に見舞いに行くよ。彩子ちゃんのお兄さんのところも同じ日に生まれたんだってね・・・。明日双子ちゃんを見られるかな・・・。」





和気さんは綾乃の妹彩子ちゃんとお付き合いをしている。最近何とか彩ちゃんのお父さんにお許しをもらったらしい・・・。この週末、実家のある兵庫県宝塚市に戻って、実家の両親に彩ちゃんを紹介するって・・・。うまく行けばいいね・・・。でもまだ彩ちゃんは大学2年生だから、結婚はまだまだ先なんだろうけれど・・・。





本当に最近幸せそうで、ますます仕事に専念している和気さん。僕が綾乃と結婚した当時と同じだよね・・・。やはり守るものができるとがんばってしまうのが男ってことかな・・・。





僕もさらに2人の子供が出来て、もっとがんばらないといけないんだもの・・・。4人家族。4人5脚で。




【作者からの一言】


アメブロのhappyquestメンバールーム『創作広場』で発表しているものの本編です。ですから題名はほぼ同じです。私の別名がhappyquest-naoという名前です。どちらも私の自作小説ですので、よろしくお願いします。


また長々始まってしまっています。まだ書いています。終わりません。いつまで続くんだろう・・・。主人公が総理大臣になるまで?いつのことやら・・・。




ちょっと体調が悪く、イラストもバランスが・・・。書き直そうと思ってもだめです・・・。またいずれ・・・。


新シリーズのお知らせ
明るい家族計画の続編です。

では登場人物を・・・。




明るい 雅和出張


弐條雅和【主人公】




24歳の内閣官房長官公設秘書。まだまだ新米。


父は内閣総理大臣。


初恋の綾乃と結婚し双子の子供が誕生。




性格は真面目だけれど、ちょっと抜けたところが・・・。


子供が生まれたことを機にしっかり仕事をしています。




21歳の時に成田エクスプレスの事故に遭い、生死をさまよったが無事生還。しかし精神的障害があり、未だ電車に乗るのが怖い。そして・・・。










家族計画 和気


和気泰明【主人公2】




25歳、内閣官房副長官の甥っ子で、私設秘書。


雅和と同期の秘書。


弁護士資格あり。


実家は関西で有名な医師一家。


関西人気質で、節約家庶民的。


彼女は弐條雅和の義理の妹、源彩子。




まじめ。仕事中はめがねをかけるが、プライベートはコンタクト。




普段は関西弁だが、仕事中は標準語。








明るい 綾乃と雪


弐條綾乃【主人公3】


雅和の奥様。22歳。


双子のママ。


ちょっぴりドンくさくって、いろいろ事件を起こしたりするんだけど・・・。


何とか雅和が恥ずかしくないように努力している。




今回はあまり出てこないかも?


















ドリーム 北野彩夏
源 彩子(北野彩夏)【主人公4】


綾乃の妹 19歳 大学生兼実は人気タレント北野彩夏。


普段はお嬢様風の彩子だが、仕事になると華やか系の女の子になる。




和気さん大好きの女の子。


綾乃がのんびり屋さんに対し、彩子はしっかりしていて周りの雰囲気を盛り上げるタイプ。




将来の夢はアナウンサー




芸風と現実の自分に悩む。














主人公は4人という邪道な内容・・・。日記調のものなので・・・。後半は和気君と彩子の話が多いかもしれません。


とりあえず、代議士編です。暗いイメージの政治小説ではありません。あくまでも恋愛モノで、フィクションです。


設定も無茶苦茶ですが・・・。





朧月夜の恋~さくらの木の下で  (9)さくらと共に・・・【完結】

 無事に将直さんは日本に帰ってきてくれたの。とても苦労したみたい・・・。とても痩せてしまって、こっちに帰ってきてひと月くらいちょっと表情に生気がなかった。私は精一杯の愛で、将直さんを慰め、助けてあげたの。するといつもの明るくて優しくて爽やかな将直さんに戻ったの。将直さんは海外での生活のことを詳しく話さないけれど、きっといろいろ大変だったのかなって思った。そして将直さんは昇進して一等陸佐になったの。

朧月夜9
 そして博雅は防衛大学校に首席合格。はれて幹部自衛官への道を踏み出したの。防大は全寮制・・・。私は将直さんが非番の日、博雅を連れて、必要なものを買いに行ったり、いろいろ忙しい日々を過ごしたの。




 最近ちょっと体調が悪いのよね・・・。きっと風邪なんだわ。それとも更年期障害かしら・・・。もう私もいい歳だもの・・・。




 この日は博雅の入校式。私はとびっきりの着物を着てみんなで防大前で記念撮影。将直さんは防大の防衛学の教官としてこの春から派遣されたの。私たちも防大近くの官舎に引っ越してきた。博雅は入校式のあと私に笑顔で行って来ますと敬礼。これから近くに住むって言っても博雅は学校内の宿舎だし、週末にのみ私たちと会うことが出来るの。本当にここ数年で博雅は大人になってひとり立ちしていく。私は今まで博雅の子育ての苦労が一瞬でとんでいったような気がしたの。ホントにいい子に育ってくれた。親孝行のいい子に・・・。




 私は数日後、体調の悪さから病院に行ったの。すると先生は将直さんを呼んで何か話しているのよ。そして即入院。




「将直さん。どうして入院を?」


「ん?子宮筋腫だって・・・。手術しないといけないらしいから、即入院になったんだよ。綾子、いい休みをもらったと思ってゆっくりしたらいいよ・・・。」




なんか将直さんの態度がおかしいの。将直さんは嘘が苦手な人・・・。すぐ顔に出てしまうのよ。もう20年も一緒にいるのよ。それくらいわかる。




きっと何か重病なんだわ・・・。筋腫くらいで即入院だなんてありえない。




「将直さん、何か隠していない?はっきり言って・・・。嘘ついているんでしょ。もしかして私、癌???」




すると将直さんは重い口を開いたの。




「じゃあはっきり言うよ。綾子が言うように癌だったんだよ・・・。それも・・・末期の・・・。」


「え?」


「先生に余命1年といわれてしまった。でもこれは何もしなかったときのことだから・・・。治療すれば延ばすことが出来るって・・・。」


「でも死んじゃうのは確かなんでしょ。まだ私には小さな娘たちがいるのよ。」


「でもしょうがないんだ。全身に転移している可能性があるんだから・・・。だから今度手術して少しでも悪いものを採って、抗がん剤で治療を・・・。綾子、がんばろう・・・。少しでも子供たちのために長生きできるように・・・。」




私は決意したの。まだ小さな娘たち、そして博雅のためにも少しでも長く生きることができるように・・・。




もちろん子供たちには私の病名は言わなかった。私は副作用に襲われながら一生懸命生きる努力をしたの。いい新薬が出来たと聞くといろいろ試したりもした。神戸から将直さんのお母様も私の看病のために出てきてくださって・・・。みんな一丸となって私が少しでも長生きできるように、がんばったの。




 外にはさくらが見える。綺麗なさくら・・・。まるで将直さんと出会った頃と同じような綺麗なさくら・・・。もうこのころの私は頭を動かすことも精一杯で、綺麗なさくらを眺めるのも大変だった。毎日のようにお見舞いに来てくれる娘たち。週末になるとやってきてくれる博雅。そして出来る限りそばにいてくれる将直さんとお母様。ホントに感謝しなきゃ。




 ひにひに弱くなっていくのが自分でもわかる。もうそろそろだめなのかな・・・。このさくらが全部散れば私はきっとこの世からいなくなる。そう私は感じたの。頑固だったけど私を愛してくれた仙台の父、そして私のよい理解者だった母。いつも優しかったお兄ちゃん。そして心から私の幸せを願ってくれていた弐條常康さん・・・。会いたいよ・・・。




 私はふと目が覚めた。外はなんともいえない朧月夜。そして春の嵐。このままではさくらが散ってしまう。側には将直さんそして子供たち。私は目を閉じた。生まれて物心がついたころから今までの思い出が走馬灯のように浮かんでは消え浮かんでは消える・・・。そして遠くから聞こえる私を呼ぶ声・・・・。私はすべての苦痛から解放され、気がつくと仙台の実家にいた。いつもどおり頑固な父と父を支える母。私は父と母の体を触ろうとしたんだけど、触れない・・・。そして次はお兄ちゃんの部屋?幸せそうに奥さんと微笑んでいる。そして最後は・・・遅くまで官邸で仕事をしている常康さん・・・。常康さんはふと私のほうを見つめて言う・・・。




「綾子さん?そんなはずは・・・。官邸にいるわけないよな・・・。」




私はそっと彼の机にさくらの花びらを少し置いておいたの。私は会いたい人みんなに会えた。




きっとこれは神様の仕業?ご褒美なのかな・・・。




 私は朧月夜、さくらの花びらと共に永遠の旅に旅立った。ありがとう将直さん。ありがとう子供たち、そして私を愛してくれた人たち・・・。きっと私は生まれ変わって戻ってくる。そう私の大好きなさくらと共に・・・・。




(完)


朧月夜の恋~さくらの木の下で  (8)18年ぶりの再会

 綾乃が生まれて3年後に次女彩子が神戸で生まれたの。さらに数年後、将直さんはPKOで海外派遣。1年は帰ってこない。育ち盛りの三人の子供をかかえ、東京の官舎で過ごしていた。




 「母さん、親父がいない間、俺が母さんたちを守るから安心してよ。」




と、高校2年生になった博雅。今、将直さんのように防衛大学校に入り幹部自衛官になるため、博雅は一生懸命受験勉強中。本当に将直さんが海外派遣されてから急に頼もしくなった博雅。8歳の綾乃と5歳の彩子を大変可愛がってくれて、本当に私は助かったの。




「母さん、今日誕生日だよね。俺バイト代出たからさ、みんなで食事に行こうよ。ランチバイキングくらいならいけると思うけど・・・。」


「博雅、その気持ちだけで嬉しいわ・・・。じゃ、私が出してあげるから久しぶりにいいところに行こうね。」




私たちは赤坂プリンスにランチに出かけたの。私はお気に入りのスーツを着て私の運転する車に乗って紀尾井町の赤坂プリンスへ・・・。ここは何度か官舎のお友達と来たことがあるの。




博雅は2人の妹の手を引き、最上階のレストランへ・・・。2人の娘はお行儀良く楽しそうに食事。博雅も、満足そうにしている私を見て将直さんと同じ微笑で私を見つめてくれたの。ここに将直さんがいればよかったなって思いながら家族四人で楽しく食事。




「母さん、おいしかったね・・・。親父が帰ってきたらまた来ようよ。」


「そうね。みんなで食べに来ましょ。」


「ねえママ、ケーキは?今日ママと彩子のお誕生日でしょ。綾乃とおにいちゃんで2人のケーキ買うの!」


「彩子はイチゴのケーキがいい!!」


「じゃ、ホテルのケーキ屋さんで買って帰ろうか・・・。」




私は会計を済まし、ロビーに降りる。

朧月夜8


すると前から黒尽くめの集団・・・。足早にこちらのほうに向かってくる。中には懐かしい顔が・・・。私は気づかれないように横を通り過ぎようとしたんだけど・・・。




「綾子さん???覚えていますか?弐條です。弐條常康です。」




もちろん覚えているわ・・・。


私の元婚約者・・・。


弐條常康さん・・・。


今は若き官房副長官・・・。




私は博雅に言うの・・・。




「博雅、妹たちを連れてケーキでも買ってきたら?」


「うん、車の鍵ちょうだい。ケーキ買ったら車で待ってるからさ。」




私は博雅に鍵を渡したの。




「綾子さんのお子さん?」


「はい・・・。」




弐條さんは側にいる秘書に何か言って私にこういったの。




「ちょっとお茶しませんか?いろいろ話したいことがありますし・・・。」


「はい・・・。」




私と弐條さんはホテル内の喫茶室でお茶をしたの。




「綾子さん、元気そうで何よりです。」


「弐條さんも・・・。」


「相変わらずお綺麗ですね・・・。きっと旦那さんが大事にしてくださっているのでしょうね・・・。今はどちらに?」


「目黒の自衛隊官舎に・・・。」


「やはり自衛隊の方とご結婚されたのですね・・・。あの時私は驚きましたが、綾子さんが駆け落ちしていただいたおかげで、私も好きな人と結婚できました。丁度私もあの頃好きな人が出来ましてね・・・。数年後あなたのように妻を連れて海外へ・・・。」


「そう・・・今は?」


「数年前、妻が他界しました。今13歳と10歳の息子がいますが、実家の芦屋に住まわせているんですよ。私と住んでも世話をすることが出来ないから・・・。ご主人は何を?」


「今はPKOとして海外派遣中です。あと半年で帰ってくるといいんですが・・・。」


「そうですか・・・大変ですね・・・お子さん3人連れて・・・。きっと半年すれば帰ってきます。それまで我慢を・・・。あ、今お兄様がこちらにいらっしゃいますよ。よろしければお呼びいたしましょうか?」


「いいえ・・・。私は藤原家を裏切った娘ですから・・・。お兄様と顔を合わせることなんて出来ません。」


「そうですか・・・。でもよかった、こうして幸せそうな家庭を持っておられる綾子さんにあえて・・・。では私は時間がありませんので・・・。」




弐條さんは伝票を持って会計を済ませ、小走りでホテルを出て行ったの・・・。




相変わらず、優しい眼差しで、変わらない表情の弐條さん・・・。ちょっと嬉しかったかな・・・。18年経って、いい歳した2人の再会・・・。




ほんの少しの時間だったけれど、昔を思い出して懐かしい思いだったの。




昔と同じように接してくれてありがとう弐條さん・・・。


私はあなたのやさしさを忘れない・・・。


立派な政治家になってね・・・。






【作者からの一言】


この弐條常康さん。本編の主人公弐條雅和君のお父様です。そしてこの7年後に8歳だった綾乃は、総理大臣になったこの弐條常康さんと再会するわけです。しかし、彼は綾乃が綾子さんの娘と気づいていません。ただ似ているなって感じかな・・・。綾乃の母が綾子であると知るのはさらに8年後・・・。そして綾子の夫将直と子供たちは綾子の父と会い、将直は今までの事を詫びるわけなのです。そして仲直り・・・。これは本編「ドリームクエスト【本編】」に更新予定ですが、まだまだ先。




次は完結です・・・。綾子はどうなるのか????泣いてしまうかもしれません・・・。書きながら泣いていた私^^;おかしいかしら?



朧月夜の恋~さくらの木の下で (6)家族三人の生活&(7)10年ぶりの帰郷

(6)家族三人の生活


 春、将直さんは無事幹部学校を首席で卒業したの。


次の派遣先は彼の実家がある兵庫県の中部方面隊。そこの第3師団の中隊長として働くことになりました。もちろん住まいは官舎。




将直さんは彼の実家に私を連れてご両親を紹介してくださったの。神戸北野にある古い素敵な洋館。将直さんのご両親は私を快く迎えてくださって、まるで私を娘のように可愛がってくださったの。将直さんは一人っ子・・・。突然連れて帰ってきた妻であるのに、お母様は嫌な顔ひとつせず・・・。




そして私のおなかの中には将直さんとの愛の結晶・・・。もう随分大きくなって、臨月に入っていたのね・・・。私は兵庫県川西市にある自衛隊阪神病院で可愛い将直さんによく似た男の子を産みました。名前は博雅。将直さんのお母様はわざわざ私のために神戸から出てこられて、私の身の回りの世話をしてくださったの・・・。本当に感謝で・・・。そして私にこういってくださったの。




「綾子さん、あなたたちはまだ結婚式をしていないらしいわね・・・。博雅ちゃんが少し大きくなったら、写真だけでもいいから撮りなさいね・・・。きっといい思い出になるから・・・。」


「お母様・・・。」




私たち夫婦は博雅が少し大きくなった頃、将直さんのご両親のご好意で、写真だけ撮ることにしたの。


朧月夜6


私はお母様が用意してくださったドレスを着て、将直さんは礼装制服。博雅は可愛い赤ちゃん用のタキシードを着て三人で記念撮影・・・。実はその写真をこっそり焼き増しして仙台の母に送ったの。一言手紙を添えて・・・。




『お母様。私は母親になりました。将直さんによく似た男の子、『博雅』といいます。先日将直さんのご両親のご好意で結婚写真だけ撮りました。本当に彼のご両親は私のことを本当の娘のようにかわいがってくださり、幸せです。だからお母様、私のことは心配いりませんので、ご安心ください。 綾子』




もちろん住所は書かなかったけれど、きっと私のことを心配していると思ったの。でも本当に幸せなの。




このときから私はことあるごとに博雅の写真を母に送っていたの。もちろん返事はないけれど、きっと母はこの手紙を見て安心してくれていると思うの。




 ある日私は新聞で元婚約者弐條常康さんの衆議院議員選挙当選の記事をみた。側には奥様かな・・・。とても幸せそうな顔をして万歳をしている写真・・・。そして小さな男の子を抱っこして・・・。幸せなんだ・・・。よかった・・・。私は心に痞えていたものが綺麗さっぱりなくなったの・・・。






(7)10年ぶりの帰郷




 将直さんと出逢って11年後の春、私は彼の転勤で仙台に戻ってきた。




丁度将直さんと駆け落ちした日、同じ官舎に戻ってきたの。




あの時二人だった家族が4人家族になったの。この年の1月に生まれたばかりの綾乃。綾乃は私によく似た可愛い女の子。博雅は9歳になってこの春から仙台の小学校4年生。やんちゃだけどとても思いやりがあって、妹の綾乃をとても可愛がってミルクを与えたり、おしめを換えてくれたりしてとてもいいお兄ちゃんになりました。




 博雅の初登校日、私は綾乃をベビーカーに乗せて博雅の小学校へ・・・。通学路の途中には私の実家・・・。そして思い出のさくらの木・・・。博雅は新しい学校に喜びながら私の前を歩くの。




「お母さん!ここの家でっかいね!!」


「そうね・・・。」


「どんな人が住んでるんだろ!うちの官舎と大違いだよね。」




ここは私の実家・・・。このあたりでも一番大きな家。家の端から端まで100m以上あるかしら・・・。正門を通り過ぎた頃、門が開き黒塗りの大きな車が出てきたの。そして私たちの横を通り過ぎた。ああ、あれはお兄ちゃん・・・。お兄ちゃんも代議士になったのよね・・・。優しかったお兄ちゃん。元気そうでなんとなく嬉しかった・・・。




 博雅を学校まで送ったあと、私は綾乃を連れて思い出のさくらの木下へ・・・。ベンチに腰掛けて、綾乃をあやしたの。ほんとここだけ変わらない。ここだけ時が止まったよう・・・。もう10年経っているのに将直さんと出会った夜のことをつい昨日のように感じるの。綾乃はつい涙を流してしまった私を見て不思議そうに眺めている。この10年、幸せだったけれど、それ以上にいろいろ苦労もしたわ。何度実家に帰ろうとしたか・・・・。でもいつも将直さんが助けてくれて、我慢できた。




「綾乃、帰りましょ。」




私は綾乃をベビーカーに乗せて帰路につく。知っている人に会ったらどうしよう・・・。10年経っても私のことを連れ戻すのかな・・・。きっと父はいまだ許してくれていないだろう・・・。だって父の期待を裏切った娘だもの・・・。




 綾乃が生まれてすぐの頃、将直さんは私にこう言ったの。




「綾子、もう10年経ったよね・・・。そろそろ綾子の実家にご挨拶に行ったらどうかな・・・。綾子、私は知っているよ。時折綾子は私に隠れて泣いていることを・・・。結婚してすぐから・・・。やっぱり仙台に帰りたいんじゃないの?もし、仙台に転勤になったら、綾子の実家にこの結婚の許しをもらいに行こう。もう遅いかもしれないけれど・・・。」


「いいのよ・・・きっと父はあなたに会ってくれないわ。私だってそう・・・。親不孝な娘だもの・・・。婚約者がいたのにも関わらずあなたと駆け落ちして・・・。」




あのあとこっちに転勤になった時は驚いたの。もしかして将直さんが希望を出してくれたのかな・・・。少しでも実家の近くに住めるようにかな・・・。そして思い出のさくら・・・。

朧月夜7


 あれから何度将直さんとこのさくらの下に来て実家に行こうとしたか・・・。


でもできなかったのよ。


やっぱり親の反対を押し切って駆け落ちした罪悪感からかしら・・・。


行こう行こうと何度もここに来たけれど、結局実家に行くことができず、また転勤・・・。


後ろ髪を引かれる思いで仙台を離れたの。

























朧月夜の恋~さくらの木の下で (5)源綾子になる日
「荷物をほとんど送ってしまって・・・何もありませんが・・・。」

彼が私を部屋に招きいれてくれたの。彼は私に温かいホットレモネードを作ってくれて一緒に飲んだの・・・。甘酸っぱくって暖かくって・・・。あんなに冷え切っていたからだがポカポカ・・・。

「明日東京についたら、綾子さんのものを買いに行きましょう。安月給の私ですからいいものは買って差し上げられませんが・・・。」
「はい・・・。」

彼は微笑んで私を抱きしめるの。その夜、私は同じ布団の中で、彼に腕枕をされながら眠ったの。とても暖かくって私は緊張してなかなか眠れなかったけれど、とても幸せな気分で、朝を迎えたの・・・。もちろん彼は相当疲れていたのね・・・。布団に入るなりすぐに寝てしまったんだもの・・・。はじめて見る彼の寝顔・・・。

「おはよう綾子さん・・・。」

とても清々しい顔で目覚める彼・・・。私は真っ赤な顔をして彼を見つめたの。

「こんなものしかありませんが・・・。」

彼は食パンをトースターで焼いて、コーヒーを入れてくれたの。ただのパンとコーヒーがこんなにおいしいなんて・・・。

「東京の官舎に着いたら、二人で役所に行きましょう。そのあと綾子さんのものと生活用品を買いに・・・。」

ホントにほんの30分のことなのに何時間もいるような感じがして・・・。彼の微笑む顔を見ながら食べる朝食。幸せって感じで・・・。

このあと私と彼は最後の引越しの準備。彼の車に荷物を積み込んでそして官舎の人にご挨拶。彼は私のことをきちんと彼の妻として紹介してくれたの。私もきちんとご挨拶をして一緒に車に乗り込み、東京へ・・・。初めて彼の運転する車に乗った私・・・。緊張してしまったの。途中私の家の前を通った・・・。もう帰る事のない私が生まれ育ったお家・・・。ホント涙が溢れてきたの。

「大丈夫?」

彼は私にハンカチを手渡してくれて、私は涙を拭いたの。 

東京に着くと丁度彼の荷物が着いていた。2DKのお部屋。今まで住んでいた家と違って狭いけれど、二人で新生活をするには丁度いい大きさ。車の荷物を仲良く運んで、官舎の人にご挨拶。

「目黒の幹部学校に入ることになりこちらに越してきました源です。うちの家内です。まだ結婚したばかりで何もわからない家内ですが、お世話になります。よろしくお願いします。」

と、近所の1軒1軒ご挨拶。皆さんは温かく迎えてくださって何とかやっていけそうな感じ・・・。

「綾子さん。困ったことがあればちゃんと相談してください・・。もう夫婦なのですから・・・。」

ホントに彼は優しくて安心感がある人・・・この人となら寄り添っていけると感じたの。 

私たちは婚姻届と転入届を区役所に提出したの。きちんと受理されて私たちは夫婦となったの・・・。

私の父に反対され、駆け落ち同然でやってきた東京・・・。東京は、元婚約者の常康さんに会うために何度か来たことがある程度・・・。高度成長真っ盛りの東京に私は驚きながら、何とか彼との新婚生活をこなして行ったの。 

風の噂で、私が駆け落ちしたことを知って、父はショックのあまり寝込んでしまったって聞いたの・・・。そして嫁ぐ予定だった弐條家に謝って父が誇りにしていた官房長官の職を自ら辞退したらしいの・・・。

朧月夜の恋~さくらの木の下で (4) 父の激怒と駆け落ち
 あれから半月・・・。私は彼と会っていない・・・。実は彼との密会が近所の噂になってついに父の耳に入ってしまったの。もちろん父は激怒して、私を部屋から出してくれなくなった。きっと彼はずっと私が来るのを待っているかもしれない・・・。 

「綾子さん、ちょっといいかしら?」

私の一番の理解者の母が私を心配して部屋に入ってきたの。今日から父は東京に行って不在。父が不在の時だからこそ、母はこうして私のところに来てくれたのだろう。

「綾子さんはその人が好きなのね・・・。わかるわ。私も好きな人がいたのにあなたのお父さんと結婚したのだから・・・。いい恋をしていたのね・・・。春からずっと綾子さんは幸せそうで・・・はつらつとしていたのだもの・・・。いいたいことを言いなさい。お父さんには言わないから・・・。」

私は母に出会いからプロポーズまですべてを話したの。母はすごく同情してくれて・・・。

「綾子さん、行きなさい・・・。そのほうが幸せになるでしょうね・・・。いろいろ苦労はするかもしれないけれど、好きな人と一緒にいるのが一番だと思うわ。」

そういうと母は、私に私名義の通帳と印鑑を渡して言ったの。

「あなたはずっと箱入り娘として育ってきたから、本当に大変だと思うわ。困ったことがあればお使いなさい。もし辛くなったらいつでも帰っていらっしゃい。私はいつもあなたの味方だから・・・。」

私は母に感謝して、最低限の荷物を持っていつものあのさくらの木の下へ・・・。

例のさくらはつぼみが膨らみ、つぼみの先はもうピンクがかっている。

私はいつものベンチに座り、彼を待つ。いつもの時間になっても彼は来ない・・・。ここ半月ここに来なかったから・・・彼はきっと私のこと・・・。

私はずっと彼を待っていた。

ここに来た時、東の空に昇り始めた大きな満月が、気がつくと南の天高く輝いていた。

春はそこまでといってもまだ冷える仙台・・・。

寒さに震えながらついうとうとしてしまったの・・・。すると誰かが私の肩にコートを被せたの・・・。

「風邪引きますよ。綾子さん・・・。」
「源さん・・・。」

相変わらずの爽やかな微笑で、私を見つめる彼・・・。私は彼の顔を見て一気に涙が流れ出した。そして私は源さんの胸の中に飛び込んだ・・・。

「すみません・・・。引継ぎの残業がありまして・・・。このような夜中まで待っていてくれたのですか?」
「はい・・・。」

大きな荷物を持った私を見て彼は言ったの。

「もしかして家を出てきたのですか?」
「はい・・・父があなたとの関係を反対したので・・・。でも私はあなたが必要だから・・・。私も一緒に東京へ連れて行ってください。」
「ホントにいいのですか?」
「はい!」

彼は満面の笑みで私を見つめると、私の荷物を自転車の籠に乗せて一緒に歩いて彼の住む官舎へ向かったの・・・。

お父様・・・ごめんなさい・・・。
ホントに親不孝者の娘・・・。
きっとお父様は私を勘当するわね・・・。

そして今まで婚約者として接していただいた弐條常康さん・・・ごめんなさい・・・。

朧月夜の恋~さくらの木の下で (3) 父がいないのをいい事に・・・
 私の父は1年の大半を東京で過ごしているの。だから父のいない時はある程度は自由が利くの。母も私が窮屈な生活をしていることくらい知っているわ。私の母は一番理解してくれているの。 
 私はずっと彼が私のお邸の前を通って通勤することくらい知っていたの。毎日私の乗っている車と彼の自転車がすれ違うのだから・・・。彼は私のことに気がつかないのか勤め先に急いで自転車をこいでいたの。何度彼に声をかけようかと思ったか・・・。でもそれは出来ないでしょ。彼は私がここの娘だって知らないの。 
 あのさくらの木はもう葉桜になっていたの。平日の夜、ここは私たちの安らぎの場になる。私は彼の肩にもたれて夜空を眺める、それが私の安らぎだった・・・。
「今度の週末、休みを取りました・・・。どこかに行きませんか?」
「え?」
「実はこの春こちらにきたばかりで、仙台のことをもうひとつ知りません・・・。案内してください。」
私は出来そうもない約束をしてしまった・・・。週末、父が帰ってくるかもしれない・・・。でも私は彼のお誘いを受け入れたの。運よく父は帰ってこなかったから、何とか理由をつけて邸を出る事が出来た。 
 私はとびっきりのワンピースを着て、待ち合わせのさくらの木・・・。繁華街にでたら二人で映画を見たり、ショッピングしたり、お食事したり、今までしたことのないことをたくさんしたの。生まれて初めての楽しい体験・・・。ホントにこのまま時間が止まってくれたらいいな、なんて思ったの。 
 ある日彼は真剣な顔をして私にいったの。もうこんなお付き合いをして10ヶ月・・・。
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「あの、綾子さん。ご両親に会わせていただけませんか?」
「え?」
無理よそんな・・・。どうして?
「あの、綾子さん。この私と結婚してくださいませんか?春から私は東京に行くことになったのです。」
「東京?」
「ええ、東京にある幹部学校に入ることになったのです。だから・・・。だから私と一緒に東京に行きませんか?」
「きっと父も母もあなたと会ってくださらないわ・・・。だって私・・・。」
彼は溜め息をついて私に言ったの・・・。
「そうですよね・・・いきなりのプロポーズに驚かれたのでしょう・・・。まだ綾子さんはお若いし・・・。私が焦りすぎたのでしょう・・・。3月末までこちらにいますので、それまでのお返事をください。じゃあ、帰ります。」
彼は私を抱きしめ、頬にキスをすると、いつものように自転車に乗り、帰路へついた。
きっと父は会ってくれない。それどころかこうして婚約者のいる私がほかの男の人と・・・。

でも私は・・・彼が好きだから・・・。
彼といれば幸せだから・・・。


朧月夜の恋~さくらの木の下で (2)朧月夜の君との恋のはじまり
将直「あなたはさくらの精ですか・・・?」
私の後ろで声がする・・・。私は声のするほうを振り返る。そこには自転車を支えながら立っている制服姿の男の人・・・。この制服って・・・・ここから1キロくらい先にある自衛隊の・・・。
「すみません・・・ついあなたを見惚れてしまいました・・・。着物姿でさくらを見つめているあなたの姿を見て・・・・ついさくらの精がいると・・・。勘違いですね・・・。」
私は彼の言葉につい噴出し、微笑んだの。そうしたら彼も微笑み返してくれたの。すごく素敵な微笑み・・・。私は胸の辺りが熱くなって・・・。これが初恋なのかしら・・・。私と彼は側にあるベンチに腰掛けて、一緒に綺麗なさくらを眺めたの。

「あ、そろそろ帰らないと・・・家の者が心配を・・・。」
「明日もここで会えますか?」
「会えるといいですね・・・。」

私は彼の名前を聞かないまま彼と別れたの。次の日もまた次の日も、同じ時間にいろいろ話しながらさくらを見つめる楽しい時間・・・。このとき私は本当の自分のような気がしたの・・・。毎日の窮屈で堅苦しい生活を忘れる事が出来る・・・。こんな気持ち初めて・・・。ホントにこれが初恋なんだ・・・。

すると彼は私を抱きしめて、くちづけを・・・・。私のはじめての・・・。

「すみません・・・。私はこうしてあなたと会って、あなたを好きになってしまったようです。よろしければ私とお付き合いしてくれませんか?」

私には婚約者がいるの・・・・なんていえなかった・・・。私はこの人が好き・・・。好きで好きで・・・。彼のことで頭がいっぱい・・・。

「はい・・・。」

私はつい・・・。承諾の返事を・・・。

私ははじめて彼の名札に気がついた。制服につけられた名札を・・・。

「陸上自衛隊東北方面総監部 源」

源さんっていうんだ・・・。

「名前はなんというのですか?私は源将直(みなもとまさなお)と言います。」
「私は・・・藤原綾子です・・・。」
「綾子さんか、いい名前だ・・・。またここで会いましょう・・・。」

そういうと彼は満面の笑みで再び私の唇にくちづけを・・・。そして自転車に乗って自宅へ戻っていったの・・・。

初めてのくちづけの感触・・・。部屋に帰るとベッドに潜り込んで顔を真っ赤にして夕食も食べずに眠ってしまった・・・。彼に抱きしめられた感覚・・・。夢にまで彼が出てきた・・・。

ああ、私は彼が好き・・・。

【作者からの一言】

綾子のしてはいけない恋のはじまりです。今まで婚約者と結婚するために育てられていた綾子は20歳にして初めてのキスを・・・。実は婚約者とも、手さえ握ったことのない古風な女性なのです。この話は1970年代後半の話です・・・。

これが綾子の幸せの始まりであり、苦難の始まりなのです。

朧月夜の恋~さくらの木の下で (1)さくらさくら・・・
 私は退屈だった。毎日が窮屈で・・・。

 父は仙台でも有名な代議士で、私の家系自体が政治家ばかり・・・。そのおかげで私は生まれてすぐに婚約者が決められ、その人と結婚するために堅苦しい生活をさせられている。小さい頃から、茶道、華道から始まり、着付けや日舞、政治家の娘、そして政治一家に嫁ぐ娘として教育されていた。ずっと小さなころからお嬢様学校で、毎日車での送り迎え。私の友達といったらみんな父から与えられたようなお嬢様ばかり。清く正しく美しくって感じで・・・。学校のみんなが好きな人ができても私はそんなことは許されなかったの。それどころか出会いさえない。

 私の近くにいる異性と言えば、父と、二つ年上の兄、そして婚約者のひとつ年上の弐條常康さん。常康さんのお父様は総理大臣。私の父と元戦友で、あちらの家庭も代々ずっと政治家筋。親同士で勝手に私と常康さんを婚約させたのね。そのほうが都合がいいから・・・。

 常康さんはとてもいい方よ。今は慶應義塾大学に通いながら、お父様の後継者になるために学んでいる。誠実でおやさしいし、そしてお顔も整っているの。この人と結婚するのが当たり前だと思っていたから、ときめくっていう感情なんてないのよね・・・。この人と会うと言っても私は仙台で、彼は東京に住んでいるから、年に数回ほど・・・。

 今日は私の誕生日。今日から私は20歳。父は家に政治・経財界で有名な人たちをたくさん呼んで、私のための誕生日パーティー。もちろんこの日のために常康さんもご招待。私の誕生日だと言ってもまるで懇親会のようで、主役の私は蚊帳の外。はじめのうちは私にいろいろ話しかけていただけるんだけど、すぐに父と何か話すの・・・。

「綾子さんは二十歳になり、本当にお綺麗なご令嬢になられましたね。」
「そうだろ、私の自慢の娘だ。今すぐにでも弐條家に嫁がせてもいいくらいだよ。しかし今はまだ大学生だからね・・・。大学卒業と同時に嫁がせる予定なのですよ。常康君も理想的な後継者になるだろうしな。お似合いだろ、うちの娘と常康君は。」

本当にみんなと同じことばかり・・・。私は父の政治の道具にしかないの。

「綾子さん・・・。」
「常康さん・・・。」
「今日のお着物、似合っていてよかった・・・。」

そうこの着物は常康さんが私の20歳のお祝いにくださった白地にさくらの模様が散りばめられた上品な振袖・・・。本当に私の生まれた春の花、さくら・・・。そして私の大好きなさくら・・・。きっとそれを知っていて常康さんが選んでくださったんだと思うの。

「綾子さん、今日はもう帰らなければならないのです・・・。すみません、もう少しゆっくりしていこうと思ったのですが、明日大事な用事が入ったので・・・。」
「そうですか・・・。」

今日はこちらに泊まっていかれるって父が言っていたから、ゆっくりお話でもしようと思っていたの。いつも常康さんが話してくださる東京のお話が、楽しみでたまらなかったのに・・・。

ますますこのパーティーがつまらなくって、退屈・・・。

私は常康さんを玄関前の車まで見送ったの。

「綾子さん、また来ますね・・・。今度東京に遊びに来てください。うちの両親が会いたいと・・・。」
「はい・・・また・・・。」

私は常康さんの車をお辞儀して見送ったあと、その足で邸を抜け出したの。

もう日が陰っていて、辺りは暗い。今日は満月なんだけど、うす曇の朧月夜・・・。

着物姿のままでトボトボと近所にある大きなさくらの木へ・・・。私はここのさくらが大好き。よく邸を抜け出してさくらを眺めるの。

4月に入ってやっと咲いた仙台のさくら・・・。
満開とはいえないけれど、朧月夜に照らされたさくらがとても綺麗で・・・時間を忘れてじっと私は見つめていた・・・。
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ここのところよく邸を抜け出して眺めているのよね・・・。
何度見ても飽きないのよ、このさくら・・・。

「あなたはさくらの精ですか・・・?」

(つづく・・・)


【作者からの一言】

これはずっと連載していたものの番外編です。実は一番初めにサイトで発表した平安小説の50章あたりで頭中将源将直と、皇后藤原綾子のしてはならない恋を書いたのです。もちろん2人の間には綾乃姫という姫が生まれ、雅和帝に入内します。2人が最後、別れ際に交わした言葉、「来世は必ず一緒になりましょう・・・。」という言葉・・・。それが現代版の流れであり、そしてこの話は来世である1000年後に出会った2人を書いたものです。平安版も、現代版も、実はつながっているんです。本編主人公弐條雅和と源綾乃の出会いも、和気泰明と源彩子の出会いも・・・。今書いている本編のひとコマに和気泰明が和気家の菩提寺神護寺にお参りにいった際に変に懐かしい感覚に襲われ、昔の夢を見てしまう・・・という場面が出てきます。ですから平安版=現世、現代版=来世という感じなんです・・・・。

もろネタバレですね・・・。

明るい家族計画 (12)妊婦生活~もうすぐ編 パパママ記念日 2 【シリーズ完結】

 陣痛ってうつるのかな?美月さんは5月1日朝に無事可愛い女の子が生まれたのよ。3400gの大きいけど結構可愛い女の子らしい。


  あたしのパパは初孫の誕生にすごく喜んじゃって、特に女の子でしょ。お兄ちゃんは前の日、陣痛が始まったって聞いて、夕方の飛行機で東京に来て、何とか立会い出産できたらしいのよね・・・。ホントお兄ちゃんは珍しく男泣きして、可愛い娘を抱いたって言うわ。もちろんその後あたしのお見舞いに来てくれて、励ましてくれたんだ。


 あたしは美月さんが出産を終えて安心したのかな・・・。お昼あたりから、本陣痛が始まってしまって、何しても陣痛を抑える事が出来なくなってしまってね・・・。先生は官邸にいる雅和さんを呼んでくれたの。

「弐條さん、もう出産準備に入りますから、着替えてくださいね・・・。」


あたしは出産用の服に着替えて、雅和さんも白衣を着たの。先生と看護師さんは陣痛止めの点滴をはずしてブドウ糖液の入った点滴に変えたのね。するとやはり陣痛が急に進んじゃって、陣痛が始まって5時間で生まれたの。スピード出産。 生まれたのは2100gの女の子と、1950gの男の子。33週での出産でした。


やはり小さく生まれたからあたしが顔を少し見るとすぐにNICU(新生児集中治療室)に運ばれていってしまったの。まだ小さいから、呼吸とか弱くってどうなるかと思ったらしいんだけど、何とか元気に生きてる。無事に生まれて、雅和さんはすごく喜んでいた。パパったらすごく喜んじゃってね・・・。だってそうでしょ。1日に孫が三人も生まれたんだから・・・。雅和さんのお父さんも何とか間に合って、あたし達の可愛いベビーちゃんずに会えたのよ。ま、初孫だもんね・・・。それも雅和さんの後継者となるべき男の子が一人いたもんだから、ホントに喜んじゃって・・・。


 どちらのベビーちゃんもすごく雅和さんに似ていて、かわいい顔してるのよね・・・。小さく生まれたのに全然サル顔してないの。ホントに親ばかかもしれないけれど・・・・。今までの入院生活の大変さ、出産の苦しみなんて一発で吹き飛んでしまったわ!


 名前?もちろん決まったわ。大学の教授がつけてくれたの。長女は雅(みやび)。意味は奥床しく気品溢れるさま。淑やかに振る舞い、見目好いさま。久しく変わらないさま。平常心をよく保つさま。風流な心を持ち、大らかなさま。などの意味がある。まあ雅和さんの雅って訳だけど・・・。長男は彬(あきら)。意味は外見と内容が程よく調和したさま。外観と才能が釣り合いよく兼ね備わったさま。美しさが鮮やかに現れたさま。技能がよく具わったさま。などという意味・・・。ホントにいい名前だよね・・・。弐條雅と弐條彬。うんうん。可愛いかも・・・。でもなんで男の子と女の子って知っているわけ?


「綾乃、実はね。こっそり先生に教えてもらっていたんだよ。」


「なんだ・・・。知ってたのか・・・。」


「綾乃、本当にお疲れさん。これで好きなもの食べる事が出来るね。」


そういうと、雅和さんはあたしの好きなケーキを買ってきてくれたの。多分あたしが出産後疲れきって一時間ほど寝てたときにわざわざ買ってきてくれたんだと思う。

明るい パパママ記念日「5月1日。もうひとつ僕らの記念日が出来たね。雅と彬の誕生日であることは確かだけど、綾乃がママになった記念日だよ。さあこのケーキでお祝いしようよ。」


「うん!雅和さんも今日パパ記念日だね。もうパパなんだからしっかりしないとね。」


「そうだね。」


あたしと雅和さんはひとつのケーキにろうそくを1本立てて、二人で火を消した。そして仲良く食べて、パパママ記念日をお祝いしたの。


 ああ今日からあたし達は親になったんだね・・・。


雅、彬。これからもパパとママをよろしくね。元気に大きく育ってね。


これはあなたたちのパパとママからの願いだよ。


早くおうちに帰れますように・・・。





(完)






【作者からの一言】


とりあえずこのシリーズは完結しました。


次は弐條雅和、和気泰明が中心の代議士編が始まります。これはいまだに完結していないので、長々だらだらだと思いますが、お付き合いください。


まあその前に恋愛物をひとつ入れちゃおっかな・・・。アメブロの某ブログで別名で書いているものです。

Wiiを開封!!
元旦に並ばずかえたWii・・・。
実は今日初めて開封しました。
だって長女の宿題がまだだったので・・・。
まだ買った本人の私は設定だけで触っていません^^;

何かお勧めのソフトがあれば教えてください。
ちなみにうちは「はじめて~」と「Wiiスポーツ」を持っています。


明るい家族計画 (12)妊婦生活~もうすぐ編 パパママ記念日 1

 ああ、あたしは籠の鳥・・・。もう外は桜が散ってしまった。もうここに入院して2ヶ月が過ぎてしまった。相変わらず、トイレ以外は安静の日々・・・。トイレの時も、看護婦さんに頼んで車椅子で連れて行ってもらうのよ。もちろんトイレつきの個室なのに・・・。まあ旦那様が来てくれている時とか、光子さんが付き添ってくれている時なんかは頼んじゃうけど・・・。


 予定日までまだ2ヶ月ある。出来るだけおなかの中にいたほうがいいっていうから、最大限のお薬を使って陣痛を抑えているって感じ。このお薬って、筋肉を緩めるお薬だから、産後はリハビリしないといけないって聞いた事がある。


  まだあたしは8ヶ月半ば・・・。赤ちゃんたちは毎日元気に動き回っているんだけど、最近おなかがパンパンに張って痛いって何の・・・。夜も寝る事が出来ないくらいよ・・・。上向いて寝ることが出来ないから抱き枕を抱いて横になって寝ると楽。でもね、どちらかの子があたしのわき腹を蹴る!痛いから寝返りをすると違う子が蹴るって感じで熟睡も出来やしない・・・。


  あたしの義理のお姉さん美月さんは、臨月に入っていつ生まれてきてもいいらしい。検診の度にあたしの病室にやってきて、いろいろ話して帰っていくの。よく差し入れをしてくれるんだけど、あたしの場合、多胎妊娠でしょ。妊娠中毒症になりやすいらしくって、入院食以外はNG。大好きなケーキもアイスもお預け・・・。

「綾乃さん、ホントに大きなおなかね・・・。すごいすごい・・・。ここに二人も入っているんだもの・・・。信じられないわ・・・。私おなかに一人いるだけでも苦しいのに・・・。」


「美月さんはもうすぐ予定日ですよね?お兄ちゃんはこれないのかな?」


「博雅さんはきっと来てくださらないわ。いろいろ忙しいのですもの・・・。でも生まれたら休みを取って来て下さるっていっていたし・・・。早く生まれて博雅さんに会いたいわ。」


「で、美月さんは性別聞いたの?」


「ええ・・・。やっぱり準備のために必要でしょ。」


  お兄ちゃんのところは女の子らしい。きっと美月さんのことだからフリフリのベビー服とか買ってるんだろうな・・・。女の子かあ・・・きっと可愛いだろうね・・・。うちの子たちはどっちかな?


 本当に幸せそうな顔をして微笑む美月さん・・・。だいぶんママの顔になったよね・・・。あたしもそうかな?


 うちの旦那様も、少しずつ赤ちゃんたちのために忙しいのに準備してくれている。この前も、ベビーベットを2台注文して組み立てたって言ってたのよね・・・。あと双子ちゃん用のベビーカーも買ったって・・・。光代さんはベビー服を揃えてくれているみたいだし・・・。あ、カーシート買わないとね。赤ちゃんたち部屋は南向きの一番日の当たる部屋。今まで旦那様が勉強部屋や書斎にしていた部屋を改装して、可愛らしい感じの部屋にしてくれたらしいの。どんな子が生まれるのかなって楽しみ・・・。


 あたしの旦那様は必ず立会いするぞって気合入っているし、最近なんか、週末この病室に泊まってくれるの。一晩中手を握ってくれて、あたしは週末が楽しみでしょうがないのよね・・・。


 ああ、もうゴールデンウィーク間近・・・。アレ?美月さん、生まれたのかなって・・・。予定日は4月18日って聞いてたのに・・・?もう10日過ぎてる・・・。すると最近毎日のように検診に来ているらしくって、顔を出してくれるのよね・・・。


 「まだ生まれないのよ。軽い陣痛は来ているみたいなんだけど、なかなか進まなくって・・・。あと4日陣痛がなかったら帝王切開だって言われちゃったのよ・・・。」


 ホント大変そう・・・。予想体重は3000越しちゃって、多分骨盤の小さそうな美月さんは帝王切開かもしれないね・・・。もう42週だから、そろそろ出さないといけないといわれたらしいのよ。


明るい 励まし


 あたしはやっと9ヵ月半。あと半月で薬をやめて陣痛が来るのを待つって先生は言ってくれた。あと半月の辛抱なんだね。でも最近夜になると、陣痛みたいなものが来て、毎晩のように陣痛の監視装置をつけれてるのよ。確かに陣痛の軽いのは来ているらしくって、雅和さんは先生に呼ばれて、そろそろって言われたらしい。


 朝の検診も最近辛くなって、もう嫌って感じ。早く出してって言いたいわよ。ホントに最近特に辛くなって、雅和さんの前では泣いてしまうの。雅和さんも「赤ちゃんが少しでも大きく生まれないと大変だよ。」って言って慰めてくれるんだけど・・・。でももう限界!











明るい家族計画 (11)彩ちゃんの浮気?

 6月中旬に終わる通常国会の後、任期満了による総選挙が7月中旬に行われる予定。今はまだ4月に入ったばかりだけど、水面下では党の公認や推薦のための選考が始まっている。もちろん比例代表の名簿作りも・・・。官邸内でも、総選挙の話題で盛り上がっている。一応父さんも選挙に出る。もちろん僕の上司である官房長官も・・・。僕?まだまだ修業の身。まだ父さんも健在だし、同じ選挙区ではね・・・。父さんが政界引退するまではこのままのような気がするんだよね・・・。まあそれまでに下積みとして地方議員でもいいんだけど・・・。ま、僕にとって出馬というものはまだまだ先のことと思っているんだ。


 もうこの頃になると、マスコミも誰が出馬するのかなんて特集を組んでいろいろやっている。もちろん父さんは兵庫県芦屋市の小選挙区で出馬予定。選挙前から当確といわれている。官房長官もお膝元の仙台から出馬だろう。また仙台に行ったり来たりの生活が始まるのだろうか・・・。来月中旬にはうちのちびたちが生まれる予定なのにさ・・・。これなら立会いできないかもしれないよ・・・。うううう・・・。

明るい 雅和出張
 今日は久しぶりの仙台出張。まあ綾乃も安定してきたし、仕事だからいってらっしゃいって送り出してくれたんだよ。


今日は朝早く、東北新幹線に乗って、仙台に向かう。もちろんけっして1両目には乗らない。もちろんど真ん中。グリーン車でも構わない。いつものようにホームでお茶やお弁当を買い込み、新幹線に乗り込むんだけど、ふとキオスクの雑誌に目が行く。やはりこの時期総選挙の記事が多く、僕は週刊誌を買って、新幹線に乗る。 『総選挙!出馬が予想される新人候補特集。~政界サラブレッドからタレントまで一挙公開!』 というような内容。面白そうと思って買って、朝ごはんのお弁当を食べながら見る。


載ってる・・・。与党や野党を問わず総勢100人ほど?もちろん僕が所属する与党のページへ・・・。載ってる!どこでもらってきたんだって言うような身分証明の写真。党から流出か?もちろんスナップのような写真もあるけれど、うちのはみんな証明写真。ああこの人?あの人?とか思いながら見入っていた。


さて次は政界サラブレッドね・・・。やはり田村さん出てる。え?和気さんも?そして・・・・。 『弐條雅和 慶大法卒 現在官房長官公設秘書 いわずと知れた現首相次男。既婚・・・・』 はははは・・・僕の写真までばっちり載ってる・・・。


でもよく考えてみてよ。選挙の予定は7月。僕の誕生日は8月末だよ。実は満25歳になっていないから立候補できないんだけどな・・・・。まあ国会が延びて7月までずれ込んだらわからないけれど・・・。ちゃんと調べてる?和気さん、出ないっていってたのに・・・。結構いい加減な記事だなあ・・・。でもこの和気さんの写真。めがねかけてて、普段は童顔の人なんだけど、すごく老けて見えてる。真面目な秘書って感じに写ってるんだよね・・・。まあ証明写真だから仕方ないか。まあこの雑誌は記念に取っておこう。


その時携帯が鳴る。なんてタイムリーなんだ・・・。和気さんからだ。


『もしもし!弐條か???』


「なんですか?和気さん珍しい・・・。あ、雑誌見ました?」


『見た見た・・・。今はそれどころじゃない!どうしよう・・・。』


「なんかあったんですか?」


『田村にやられた!』


「田村さんが?どうかしたのですか?」


『彩子ちゃんを盗られた!どうしたらいい?』


え!彩ちゃんを?まあ普通田村さんのようなイケメンでエリートだったら誰だってついて行くよな・・・。


(綾乃は興味なさそうだったけど・・・。)


悪いけど、和気さんの顔はホントそこら中にいる顔だし、まあ和気さんの売りは実家が医者一家、東大卒、真面目、優しい。ってくらいだからね・・・。彩ちゃん、やってくれるよな・・・。彩ちゃんは綾乃と違って昔からおませさんで、中学時代からずっと彼氏の途切れることはなくって、何人もの彼氏がいたんだよね・・・。女版響貴って感じで。あれ程和気さんとラブラブだったのに・・・。彩ちゃんはやっぱりそういう子なんだね・・・。でも相手が田村さんとは・・・・。


明るい 田村
田村さんって結構秘書仲間でも有名なプレイボーイ。噂では結構代議士夫人やその秘書たちの奥さん、そして婚約者、彼女と浮名を流している。その噂から僕は綾乃が被害にあわないかと、冷や冷やしているんだよ・・・。そんなことばかり考えている間に、和気さんが被害に遭うなんてね・・・。かわいそうだよ・・・。一番心配なのは彩ちゃんが田村さんに捨てられないかなんだけど・・・。まあいう女の使い捨て?彩ちゃんは僕の義理の妹だからね・・・。まあ僕は様子を見ることにして・・・。彩ちゃんがね・・・。


僕は仙台に泊まるつもりでいたんだけど、さっさと仕事を済ませて最終の新幹線で帰ってきた。そして和気さんと連絡を取り、和気さんのマンションに赴く。和気さんは相当うなだれていて、僕がついた頃には食卓に空の缶ビールが何本も並べられていた。


「和気さん・・・。」


「やはりやられちゃったよな・・・。この前ばったり広尾で会ってね・・・。一緒に食事をしたのがまずかった・・・。俺の彩子を返せ!」


和気さんの顔に似合わず大泣きしている姿を見て、僕は和気さんがかわいそうでならなかった。


「あまり飲むと明日に響きますよ。」


「もう明日は無断欠勤だ!官邸なんかに行きたくないよ!田村の馬鹿やろう!」


やはり次の日、和気さんは無断欠勤。相当ショックだったんだね・・・。こんなことは一度もなかったっていうから、伯父さんの官房副長官も心配していたんだ。まあ官房副長官は理由を知らないわけなんだけど・・・。僕も辛いよ。毎日あの田村さんの顔を合わすわけだから。


すれ違った田村さんはいつものように平静を保っていたんだけど、ホント仕事から一歩離れると性格が180度変わる男だ。油断大敵。でも官邸の職員や内閣府の職員、そして議員会館にも付き合っている人がいるという噂・・・。何股しているんだろこの男は。綾乃一筋の僕には信じられないよ・・・。


結局1週間和気さんは無断欠勤してしまって、官房副長官は官邸内で一番の仲良しの僕を呼んで、理由を聞くんだよね・・・。言えないじゃない?秘書同士のもつれなんだから・・・。それも女関係。特に官房副長官と副総理は相当仲が悪いからね・・・。官房副長官は優秀な甥っ子の和気さんが可愛くてしょうがないので、きっと副総理と喧嘩沙汰になるんだろうと思う。


しょうがなく、僕は自宅に彩ちゃんと和気さんを呼んで話をさせることにしたんだ。 僕は綾乃のお見舞いを済ませた後、自宅に彩ちゃんと和気さんを呼んで、話をさせる。


和気さんは落ち着かない様子でぷかぷかとタバコをふかしながら、彩ちゃんの顔さえ見ようとはしない。彩ちゃんもうつむいたままで、沈黙の時間が・・・。


「で、二人は別れたの?どうなの?和気さんもこれ以上欠勤したらクビですよ。」


まだ2人は黙っている。


「彩ちゃん、田村さんはやめておいたほうがいい。傷つく前に別れたら?僕が知っているだけでも3人は女がいるね・・・。」


「お兄ちゃん、知ってるよ・・・。田村さんがいっぱい彼女がいることぐらい・・・。」


「で、二人は別れたわけ?」


すると2人は同時に首を横に振る。別れ話さえしてないってわけね・・・。


「和気さんはいつも優柔不断だから・・・私我慢できなかったの。私優柔不断な人って好きじゃない・・・。」


「俺は別に優柔不断なわけやないわ!ただ俺は彩子ちゃんの意思を尊重しようと思っただけや!」


「だって和気さんはいつも私に好きにしたらいいって・・・。自分の意見を言わないじゃない。」


「そりゃ俺が彩ちゃんの意向を無視して引っ張っていってやってもええがな。でもそれはあかんと思ったからやで。いくら好きにしてええっていうても、あの田村さんと浮気することないやろ!」


「だって和気さんが・・・。私のこと本当に大事にしてくれているのか心配になって・・・。」


「大事に決まってるやろ!だから彩子ちゃんの意見を尊重してたんや・・・・。自由にさせてやろうと思ったんや。」


ああ・・・二人は誤解してたんだね・・・。行き違いってやつか・・・。結局彩ちゃんは和気さんに当て付けでちょっと付き合ったっていうけど・・・。もう別に会っていないとも・・・。彩ちゃんって・・・。本当に今時の子だよ・・・。和気さんの気を引くために浮気ってねえ・・・。訳わからん領域だ・・・。まあとりあえず仲直りってことで。握手握手・・・ふぅ・・・。

「あのな、彩子ちゃん。今度の夏休み、うちの両親と会ってくれへんかな・・・。彩子ちゃんを紹介したいんや。」


「え?」


和気さんは顔を真っ赤にして僕のいる前で言うんだよね・・・。


「あのな、彩子ちゃん。僕と結婚前提のお付き合いをして欲しいんや・・・。もちろん、君を幸せにしたる。ずっと幸せにしたるから。ええかな・・・。」


おお!!プロポーズ!やるな、和気さん。彩子ちゃんと言うと・・・。


「待ってたよ、その言葉を・・・。ずっと待ってたんだから・・・。」


結局2人は結婚前提で付き合うことになって、もちろんあの怖い彩ちゃんのお父さんに怒鳴られながら、毎日家に通ったってさ。あの和気さんが彩ちゃんに誠意を見せたってことね・・・。


 ところで和気さんは噂どおりに出馬するんだろうか・・・。うん、そこが疑問だ・・・。 まあ、和気さんは大学在学中に司法試験に合格しているから、代議士にならなくったって食べていけるし、安心といえば安心かな・・・。


どうなるんだろうねこの2人。


ひとまず、彩ちゃんの浮気問題は解決・・・。嫌になっちゃうなあもう!!


明るい家族計画 (10)妊夫日記~妻の入院編

 昼食後の昼下がり、何で今年の国会は平穏なんだろう・・・。やはり自衛隊海外派遣がなくなったから?予算委員会類も平穏無事・・・。やはりうちの父さんのおかげかな・・・。今年の9月で任期切れっていうのが惜しいぐらいだよね・・・。

明るい 雅和居眠り
 僕は官邸の官房長官執務室前のデスクに座って、のんびり国会が終了するのを待つのだろう・・・。ここ2、3日は急な国会への呼び出しはない・・・。ああ、綾乃の愛妻弁当をおなかいっぱい食べて眠くなっちゃったな・・・。ここにいるのは僕だけだからちょっと寝ちゃおっかな・・・。



なんてデスクマットにはさんでいる愛しいわが子たちの超音波写真を眺めながらウトウトする・・・。こんな平穏な日が毎日続けばいいな・・・。


 昨日の検診では主治医が綾乃は順調って太鼓判を押してくれた。管理入院も当分なさそうだと・・・。2人とも逆子じゃないから、このままだったら僕はもちろん出産の立会いをするんだ。この前も両親学級も行ったし、立会い出産の講習会も予約済み・・・。僕のお子ちゃまたちも順調に同じように大きくなってきているしね・・・。


 この前はこっそり主治医の先生を呼び止めて、性別を聞いたんだ。もちろん綾乃に内緒で。そしたら予想通りだったんだよね・・・。僕には一度に息子と娘が出来るんだ。もちろん父さんには報告済み・・・。


ホント今日のような小春日和は眠気を誘う・・・。


すると僕の眠気を飛ばすような携帯電話の呼び出し音。相手は綾乃の携帯。


「もしもし綾乃?」


でもかかってきたのは綾乃じゃなかった。


『大変でございます!雅和様!若奥様が急に!早く病院のほうにおいでくださいませ!』


光子さんからかかってきたんだ・・・。僕は驚いて、議員会館にいるほかの私設秘書と連絡を取り代わってもらって、病院に急いだ。 光子さんはロビーでおどおどしながら僕の到着を待っていた。僕は急いで来たからか、首に身分証明書をぶら下げたままで、カバンも持たずに病院に着いた。


「若奥様がいきなりおなかが痛いといわれてお倒れになられたのです。裏の公園にいたからよかったのですが・・・。」


「で、綾乃の具合は?」


「早産は免れたそうですが、このまま管理入院に入られて、当分の間絶対安静と・・・。」


「昨日あれほど順調といわれたのに?」


僕は綾乃が入院している病室に入ると、綾乃は点滴されて眠っている。主治医の先生も首をかしげているんだ。まあ多胎妊娠はいろいろリスクがあるから、急変する事があるっておっしゃってたけど。とりあえず今は点滴で陣痛を抑えているらしい。


「まだお子様たち23週。まだ1000gありませんので、危ないところでした。今のところ薬で安定していますが、薬を最大限に使っても陣痛がはじまる場合は、帝王切開にて出産を検討しないといけないかもしれません。その場合、大学病院のほうへ・・・。」


「はい・・・。わかりました。」


僕は綾乃が目覚めるまで手を握り締め、溜め息をつく。


僕の妹のように生まれてすぐに死んでしまったら・・・。僕は母さんが父さんの選挙運動中の心労で予定日よりも2ヶ月早く生まれてきた。僕の場合は2000g超えていたので助かったが、妹は1000gちょっとしかなく、当時の医学では助からなかったんだよね・・・。それも僕の場合は何も障害がなくすくすくと育ったこと自体奇跡だった。だから早産の危険性は良く知っている。特にまだ綾乃は早すぎる。


そして任期満了による総選挙がこの7月末に控えている。そろそろ僕は官房長官の公設秘書として選挙準備に当たらなければならない。毎日こうしている事が出来ないのは残念だ・・・。 綾乃は目覚めるなり、僕にこういった。


「雅和さんの嘘つき!大嫌い!ここから出て行って!」


え?なんで?多分切迫早産で気が立っているんだろうか・・・。しょうがなく綾乃のいうとおり部屋を出た。


「弐條!嫁さん大丈夫か?」


和気さんが僕のカバンを持って見舞いに来てくれた。


「和気さん・・・今のところ落ち着きましたが・・・。切迫早産で、薬で陣痛を抑えているらしいのです。最悪の場合・・・。」


「だからリスクが高いって・・・。ま、今の医学だったら1000なくても生きる確率あるし、今安定しているのなら大丈夫じゃないかな・・・。ま、わからない事があれば聞いてくれよ。少しくらいなら知識があるから・・・。弐條、カバン忘れてただろ。」


「あ、ありがとうございます。」


「いいよ、総理すごく心配していたよ。今度週末にでも見舞いに来るって・・・。」


「そう・・・すみませんでした・・・。」


「いいよ。彩子ちゃんも心配していたよ。」


「そう、彩ちゃんが・・・。」


「気を落とすなよ。お前がしっかりしないといけないんだよ。父親だろ。」


本当に和気さんはいつも親身になってくれて助かる。今まで綾乃のためにあれがいいこれがいいといって僕に渡してくれるんだもん・・・。ホントに僕が今しっかりしないとね・・・。


 僕は綾乃が落ち着いたのを見計らって再び部屋に入って綾乃と会う。


「雅和さん・・・さっきはごめんなさい・・・。ひどいこと言っちゃった・・・。」


「ん?いいよ。綾乃は元気な赤ちゃんたちが生まれるようにゆっくりしてなよ。僕が出来るだけ側にいてあげるから・・・。」


「いつ家に帰れる?」


「生まれるまでこのままだって・・・。」


「そう・・・。寂しいな・・・。3ヶ月以上もこのままか・・・。」


「綾乃のおなかには赤ちゃんたちがいるじゃないか。ね、もうそろそろ僕も赤ちゃんを迎える準備をしておくからさ。名前もそろそろ決めよう。ね。」


「うん・・・。」


僕は面会時間ギリギリまで綾乃の側にいたんだ。綾乃は僕に何かいいたげな顔で、僕の顔を時折見つめてたけれど、溜め息をついて目を閉じる。


もう何日も仕事が終わるとすぐにこちらにやってきて一緒に過ごした。この日は見慣れない花が飾ってあった。


「あれ、誰か見舞いに来たの?」


「うん。田村さんが来たんだよ。秘書仲間なんでしょ。」


「田村さんが?」


明るい 田村
田村さんといえば、30歳ハーフのイケメン公設秘書。綾乃によると、面会時間すぐに来て、30分くらい話をして帰って行ったらしい。そういえば田村さんは3時ごろ官邸を出て行った。


「田村さんってかっこいい人ね。ハーフなんだって?」


「え?かっこいい?」


何で綾乃は楽しそうに話すんだろ・・・。もしかして?


「でも、雅和さんのほうがかっこいいよ。」


綾乃は微笑んで顔を赤らめる。


次の日もまた次の日も田村さんはやってきて何か話して帰るらしい。 今日はなぜか時間が一緒になった。


「田村さん、毎日綾乃のお見舞いありがとうございます。」


「いや。別に構わないよ。」


僕は田村さんを談話室に連れ込んでコーヒーをご馳走する。何で関係ないのに毎日見舞いに来るんだろう・・・。それを問いただすためにこうして2人きりになる。


「田村さん、毎日来ていただくのはありがたいのですが、どうしてですか?身内でもないのに・・・。」


「別に・・・・俺の家は元麻布。ホントにすぐそこだから。」


「でもおかしいですよ。わざわざ昼間に官邸を抜け出して・・・。」


「まあ、暇つぶしだよ。未来のファーストレディーにご挨拶しておくのもいいだろう。」


暇つぶしに訪れるほどのことかな・・・。もしかして以前問題になった丹波みたいなこと考えていないだろうな・・・。考えすぎかもしれないけれど・・・。まあ僕は丁寧にお礼を言って綾乃の部屋に戻る。まあそれ以来田村さんは来なかったけれど・・・。


入院中何事もなく、春。僕は慶應まで綾乃の卒業証書を受け取りに行った。大学のみんなは綾乃のことをすごく心配してくれていて、みんなでお見舞いに来てくれたんだ。それも卒業式の格好のまんまで。綾乃もすごく喜んで、涙ぐんでいたよ。ゼミの教授も来てくれて、ホント和やかな時間を過ごせたんだ。教授は綾乃の子供の名前を考えてやるっていってくれてね、僕はお願いすることにした。結構この教授はそういう方面にも精通している教授。きっといい名前をつけてくれるんだろう。一応性別を伝えておいたけどね・・・。


本当に綾乃は時折僕の顔を見ると溜め息をつく。


「綾乃、最近変だよ。何かいいたいことあったらいってごらんよ。」


「ん?いい・・・。」


「ほら、いってごらんよ。言いたい事いわないと、体の良くないよ・・・。」


「ホントにいい?」


「うん・・・。いってごらん。」


「あのね・・・。事故に遭った年の秋、土御門さんと会っていたんでしょ・・・。それもほぼ毎日・・・。あたしが大学行っているときに、部屋に入れて・・・。」


「え?」


「そうなんでしょ。本人から直接聞いたんだから・・・。」


「ん?んん・・・ごめんな・・・今まで黙ってて・・・。」


「まああの時はあたしのこと忘れてたからいいんだけど。」


それ以上何も言わなかったんだけど、まだ何かありそうだ。


「まだあるんじゃないの?いってごらんよ・・・。」


「あのね・・・それでね・・・土御門さんは妊娠したって・・・。捨てられたっていうの・・・。それであたし・・・急におなかが痛くなって・・・。」


え!!!そんなこと知らない!


もしかしてそれが原因の心労で切迫早産になったのか?


僕は家に帰ると桜ちゃんの携帯に電話をかけてみる。良かった、携帯番号変わっていなかった!


「本当なのか!」


『何が?』


「綾乃に言ったんだろ!僕らの関係のこと!」


『言ったわよ!だから何?!』


「妊娠したって本当なのか?!」


『なにいってんのよ。するわけないじゃない。からかっただけよ。幸せそうな顔しているから!』


「いい加減にしろ!君のせいで綾乃は・・・綾乃は入院してるんだぞ!僕の子供、死にかけたんだぞ!もちろん綾乃だって!いい加減にしろ!もう君とは会わないし、街で会っても声をかけるな!いいか!」


やっぱりもう許せない!僕はもう土御門家と縁を切るんだ!



明るい家族計画 (9)妊婦生活~旦那様の過去編 2

 本を読み始めて5分ぐらいしたころかな、急にマックスがうなりだして、吠えるの。こんなことって珍しい・・・。滅多に吠えないのに・・・。


「マックス、うるさいよ。どうしたの?赤ちゃん達がびっくりするよ・・・。」


マックスはいくらなだめても吠えるのをやめないから、マックスの視線の先をあたしは見つめた。するとそこには土御門桜!


「あら、まだその犬生きてたの?お久しぶりね、源さん、いえ、弐條さんね、もう・・・。」


「何か用?」


「最近あまり見かけないと思ったらこんなところでのんびり?幸せそうね。」


桜はあたしのお腹をみていやそうな顔をした。


「まあ、妊娠中?うらやましい、雅和さんの子供を妊娠できて、さぞかしお幸せでしょうね。」


「そうよ。この中には雅和さんの子供がいるの。だから何?」


マックスはさらに興奮して、桜をあたしに近づけないようにしているの。何かあるのかな・・・。


「あなたはいいわよね。雅和さんの子供を妊娠して産む事が出来て!私は雅和さんの子供を妊娠したのに捨てられたんだから!」


「え?どういうこと?」


あたしは何か聴き間違いだと思ったの・・・。そんなことってある?どうして雅和さんと桜が?雅和さんは桜を嫌っていたはずよ。


「あなたは知らないでしょうね。2年前の秋よ。雅和さんが事故に遭った年の秋。私と雅和さんはあなたが大学いっている間に会っていたのよ。もちろんあのマンションで。ひと月の短い間だったけど、私と雅和さんは寝室で愛し合った仲なんだから!それでいきなり別れを切り出されて、そのまま・・・気がついたら私は妊娠してたのよ。もちろん堕胎させてしまったけれど・・・。」


ということは何?雅和さんがあたしの記憶がないときに桜と付き合ってたってこと?いくら記憶がなかったといってもあたしという婚約者がいたのに・・・。桜も桜よ・・・。わかってて、雅和さんに近づいたんだわ・・・。


「絶対私はあなたのことを許さないから!どうしてあなただけ幸せな生活しているのよ!大好きな人の子供を妊娠して、難なく産ませてもらえるあなたを許さないんだから!」


そういうと桜は泣きながらあたしの前を去っていく。あたしは相当ショックを受けた。いつも愛し合っていた寝室で、雅和さんと桜が愛し合って、それも子供が出来ていたなんて・・・。


 すると急におなかが痛くなって、それに気づいたマックスは光子さんを探しにいってくれた。光子さんはちょうど買い物を済ませたようで、マックスが走ってくることに気がつき驚いて、マックスがあたしにところに光子さんを連れてきてくれた。


「若奥様!どうかされたのですか?」


「急におなかが・・・。痛くなって・・・。」


あたしは痛さのあまり気を失って、倒れてしまったの。 光子さんはすぐに愛育病院に連絡して即入院。そして絶対安静になった。

明るい 雅和泣く
 気が付くと個室の病室・・・。側には雅和さんがあたしの手を握って目覚めるのを待っていてくれた。あたしは無意識に雅和さんの手を振りはなしたの。


「雅和さんの嘘つき!大嫌い!ここから出て行って!」


雅和さんは何がなんだかわからない様子でとりあえず部屋を出て行ったの。


何とか早産の危機は免れたんだけど、もう当分退院はなし。今度病院を出るときは赤ちゃんを産んでからということになったの。


毎日たくさんの早産防止の点滴をする入院生活が始まることになったの。


 雅和さんは毎日仕事を早めに切り上げて、面会時間終了ギリギリまで付き添ってくれる。


「ホント、助かってよかったよ・・・。このままだったら綾乃も赤ちゃんたちも危険だったんだよ・・・。さあ、僕が側にいてあげるから、ゆっくりお休みよ。何があったか知らないけれど、僕は側にいる事が出来るギリギリまでいてあげるからね・・・・。」


そんな優しい言葉をかけないでよ・・・。


もちろん雅和さんの過去のことは許すつもりだけど・・・。


だってあたしだって一度だけ浮気したんだし・・・。


でもショックはショック・・・。


相手が桜っていうのが一番嫌なの。


多分雅和さんは桜の妊娠堕胎のことは知らないんだろうな・・・。


知らせたほうがいい?


知らせたら雅和さんは桜のことをどう思うのかな・・・。


やっぱり責任とって何か行動を起こすのかな・・・。


あたしはすごく心配だよ・・・。


あの桜だけは許さないんだから!!!

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さくらと空 
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