4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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四神降臨 復活編 第8章 覚醒 (4) 戸惑い
 龍哉様は色々と思うことを話してくださった。そのすべてがうなずける内容であった。そしてその内容は今まで私が疑問に思っていたことすべて納得させる内容。ただ一つだけ、なぜ黒龍は神獣から魔獣となったのか、それだけは解決できなかったのだが・・・。

「あと青龍だけだね、覚醒していないのは・・・・。しかしこの青龍もいずれ覚醒する。竜哉という少年は自分の立場にいまだ戸惑っている。自分の立場がはっきりわかったときに一気に覚醒するであろう。そして青龍が覚醒した時に四神が降臨する。そして四神に関わる者のいずれかが生贄となり、黄龍を降臨させるだろう。それが誰であるかまではこの私にはわからないが・・・。」

ということは先の戦いのように青龍が生贄になるとは限らないというのか?
すると生贄は誰なのであろうか?
そして竜哉様が戸惑っていると?

いつの間にか麻耶姫様も西斗も消え、竜哉様も普段の表情になっていた。もちろん竜哉様に今話していたことの記憶はほとんどなかった。

 四神のうち、朱雀、白虎、玄武は覚醒しているという。後は青龍。先の戦いでもそうであった。最後の覚醒したのは青龍である龍哉様。最後の青龍が覚醒しない限り、四神は降臨しない。四神が降臨しない限り、黄龍は降臨しないのだ。竜哉様、何を戸惑っておられるのか?あなたの力が覚醒しない限り、この世界は・・・。この世界はどうなるのかお分かりにならないのか?
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四神降臨 復活編 第8章 覚醒 (3) 再会
 「あの・・・もう一人の自分が出たいって言うんだけど・・・。」

と、麻沙耶君が言った。麻沙耶君は気を集中し、フウッと息を吐く。すると麻沙耶君の体から人影が出てくる。その人影は麻沙耶君の横に座り、お辞儀をする。その人とは麻耶姫様である。麻耶姫様は竜哉様をじっと見つめている。竜哉様はこの現象に驚いた様子で、麻耶姫を見つめていた。すると麻耶姫様は口を開く。

「お久しぶりでございます。龍哉様。」

麻耶姫様は微笑む。

「僕は龍哉じゃない。竜哉なんだけど・・・。」

麻耶姫様は竜哉様の目の前に座りなおす。

「竜哉君、あなたは気がついているはずです。あなたの中のもう一人の自分を・・・。そして力を・・・。認めたくないだけではなくて?」
「え?」

そしてフッと麻耶姫の横に現れる陰陽師の姿。その姿はまさしく白虎に関わる者・安倍西斗である。祠の端に控えていた白狼はフッと立ち上がり、安倍西斗の前に平伏す。西斗は白狼を撫で、微笑む。

「お久しぶりでございます。とてもお会いしとうございました。後陽成院様。そして麻耶姫様。」

私もその輪に加わる。先の四神に関わる者の再会というべきか・・・。すると竜哉様の表情が柔らかになる。これはまさしく龍哉様がよくしておられた表情。やさしく微笑む表情は我等をよく和ませて頂いた。

「皆のもの、久しぶりですね。朱央・・・。お前はここまでよく四神に関わるものを集めてくれた。この竜哉という少年を通して見せていただいたよ。そして龍磨に白狼、よく復活を遂げた。さて、黒龍のことだけれども・・・。ここのところおとなしいと思われていたが、徐々にではあるが、魔の気が増加しているのがわかるか?朱央・・・。」

そういえばそうである。黒龍の気というよりも魔族の気がこの日本を包み込んで来ている。

「そしてここのところの天変地異・・・。原因はわかっている。それは清い気で包まれていたこの日本に魔の気が増大してきたことによる歪み・・・。魔の気を払拭さえすれば、収まると思うのだが。」

龍哉様は何もかも知っているというのか?

四神降臨 復活編 第8章 覚醒 (2)ある人
 紫苑は朱雀に覚醒してからというもの学校には行っていない。というか、学校の生徒たちは私たち以外紫苑の存在を忘れ去っていた。もっぱらいつものメンバーが集まるのはこの朱雀神社の祠となっている。

紫苑は神職の衣に身を包み、笑顔でメンバーを受け入れる。特に麻沙耶君は紫苑と会うために毎日のように訪れているのだ。何をしているかって?もちろん四神についての話もするが、関するもの4人のうち、3人は受験生だろ?勉強道具を広げて受験勉強。特にもうすぐ期末試験になるのだから・・・。

 ある休日、麻沙耶君がふと話をする。
「最近、僕の中のもう一人と向かい合って話をするんだ。色々昔の事について聞いたよ。以前はもう一人の自分は僕の体から出てくることはなかったんだけど、最近は僕の意志でも出て来てくれることが出来るようになったんだ。昨日だって夜中話した。どうしても彼女はある人に伝えたいことがあるんだって・・・。」

はじめ私は、麻沙耶君は何を言っているのかと理解できなかった。もう一人の自分?彼女?話を聞いているうちにフッと気を感じ気がつく。そう麻耶姫の事であるのだと。

「そういえば、俺、よく夢を見るよ。ある陰陽師の夢を・・・。色々その人は俺に秘術を教えてくれた。そして秘術の書かれた書物のありかも教えてくれたんだ。安倍家筆頭の父さんでさえ知らなかった書物の存在。それを読み返してみたんだけど・・・。そして一度試してみたんだ。」

聖斗君は秘術を使って前世の自分を呼び出したらしい。そして自分はこのあとどうすればいいのかなどを聞いたらしいのだ。前世とは安倍西斗・・・。まさしく白虎に関わる者。安倍西斗もある方に会いたいと最後に言い残して体内へ消えていったという。

ある人とは・・・?たぶん龍哉様ではないか?

四神降臨 復活編 第8章 覚醒 (1)源~みなもと
 あの日からいつものメンバーに紫苑と麻沙耶君が加わった。これで四神に関わる者が揃ったということだ。私はこれからこの4人を導かないといけない。これから黒龍はどのように我らに挑むというのか?前回、黒龍は四神のうち三神を喰らい魔王となった。今回はどう動くというのか?どんな力があるというのか・・・。

「あの・・・僕の情報が役に立つかわからないけれど・・・。」

と、紫苑が私に言う。紫苑は私の住む神社の厄介になっている。そして紫苑を完全浄化するために、祠で寝起きしている。ずいぶん表情も豊かになり、朱雀の気も増して来ている。まだ朱雀変化は出来ないが、時間の問題であると思う。紫苑の情報・・・黒龍の事か?

「僕の育ての母、黒龍妃は黒龍王復活前に言っていたことを思い出して・・・。」
「言っていたこと?」
「日本海溝周辺で起こっている不明事件・・・俺は黒龍王復活のためであると・・・。」

今まで日本海溝周辺で起こった行方不明事件のリストを見てみる。天然ガス、原油などを積んだタンカー、貨物輸送機、米軍の最新ステルス戦闘機、そして核燃料を積んだ米軍潜水艦・・・。もしかしてそれらを吸収したのか?天変地異との関係は?どうして黒龍は神獣から魔獣となったのだ?疑問ばかり浮かんでくる。

「兄さん、もし、核を力の源にしたらどうなるの?核って相当な力があるんでしょ?」
「んん・・・。専門外でよくわからないが・・・。大きな街一つは吹っ飛ぶだろうね・・・。それ以上かもしれないな。そうなると黄龍の力で封印できるかどうか・・・。黄龍の力がどれほどのものかは出現しないとわからない。前出現時は黒龍を簡単に封印していたが・・・。」
「どうやって黄龍が出現するの?四神が集まっただけじゃだめなんでしょ?」
「そうだね。あの時は青龍の皇子であった龍哉様が生贄となり、黄龍を降臨させた。今回もそういうパターンになるのだと思う。」

紫苑は難しそうな顔をして考え込む。本当にこの私もどのような闘いになるのか想像が出来ない。

四神降臨 復活編 第7章 救出 (3)癒しの力
 紫苑は襲い掛かる魔獣をすべて倒し、荒い息づかいで膝を付く。麻沙耶は紫苑に詰め寄る。

「紫苑君!!!どうしてここまで僕のために・・・。」

紫苑は痛みに耐えながらも微笑む。

「それは僕は麻沙耶が好きだから・・・。麻沙耶を愛しているから・・・。」
「でも僕たちは男同士だよ。そんなの無理だ。」
「無理じゃない・・・。僕は男なんかじゃない。本当は女らしい・・・。黒龍の術で・・・男に変えられ利用されていたんだ。麻沙耶・・・よかった無事で・・・。」

そういうと紫苑は気を失う。

「紫苑!!!」

麻沙耶は紫苑を抱きしめ泣き叫ぶと、玄武のオーラに包まれるのである。すると見る見るうちに紫苑の体にあった傷が消えていく。

「え?」
「麻沙耶、それがあなたの玄武の力・・・。玄武の癒しの力よ。よかった・・・。破壊の力の覚醒を阻止できた・・・。」
「ところであなたは・・・?」
「私は近衛麻耶。もう一人のあなたよ。ずっとあなたの中で生きてきた。そしてあなたを支えてきた。あなたがいくらいじめられても我慢できたのは私がいたからかもしれないわね。あなたがなよなよしているだけの男の子だったら、もうこの世にはいなかったかもしれないわね・・・。麻沙耶。あなたは他の四神の仲間と手をとり、世を乱す黒龍を倒してちょうだい。もうあなたは弱くない。もともとあなたは弱くなんかなかった。私があなたの中にずっといる限り・・・。」

すると女性の姿は麻沙耶の体内へ消える。

「んん・・・。」

紫苑が目を覚まし、起き上がる。

「おはよう紫苑君。って言ってもまだ夜だけどね。」

紫苑はその言葉に噴出す。

「麻沙耶。僕は朱央先生と暮らす。先生は僕の兄さんなんだ。僕はもう黒龍と縁を切る。だから麻沙耶。もう黒龍のところには行かないよね。約束してくれる?」

麻沙耶は微笑む。

「うん。僕はもう行かないよ。僕は紫苑君が大好きだから。ずっと一緒にいたいから。」

二人はキスを交わす。約束のキスを・・・。

四神降臨 復活編 第7章 救出 (2阻止
 黒龍の巣窟迄あと少しというところで麻沙耶は立ち止まる。そして前方を見つめた。そこには手を広げ、これより先に行かすまいとする女性の姿。

「麻沙耶・・・行っちゃだめ・・・・。行ったらあなたは・・・・破壊の神になってしまう。」
「え?誰なの?」

と麻沙耶は問いかける。

「麻沙耶!こんな女の言うこと聞く必要はない!さあいこ!」

魔獣は麻沙耶をぐいっと引っ張る。この力は尋常ではない。

「痛いよ!紫苑君!!!」
「いいから早く来い!!」
「辞めてよ!痛い!」

麻沙耶は力いっぱい魔獣の手を振り放した。するとまた前には人影が・・・。

「麻沙耶!行くな!!!僕はここにいる!そいつは僕じゃない!!!」

街頭の明かりに照らされて浮かび上がる紫苑の姿。麻沙耶は混乱し、その場に座り込む。その隙に女性が麻沙耶に抱きつく。

「だめよ、麻沙耶。麻沙耶は間違ったことをしているの。元の麻沙耶に戻って頂戴・・・。優しい麻沙耶に・・・。」

その女性は精一杯の癒しの力で麻沙耶の結界を張る。すると魔獣は元の姿に変化する。そして紫苑に襲い掛かる。

「紫龍!裏切ったな!!!」
「僕は黒龍の皇子じゃない!!!烈火!!!!」

紫苑の掌から、強烈な火が飛び出す。

「ぎゃ!!!!」

魔獣は火に包まれ、あっという間に灰になってしまったのだ。するとたくさんの魔獣が襲い掛かる。

「うわーーーーー!!!!」

と紫苑が叫ぶと、強烈な光りと共に紫苑は火に包まれ、襲い掛かる魔獣を次々と倒していった。

「麻沙耶、よく見なさい!あの魔獣は黒龍の手下なのよ!あなたもああいう者の手下になりたいの?!麻沙耶は平和が大好きなはずよ。私はあなたの中で共にずっと平和を願っていた。お願い、元に戻って・・・麻沙耶。紫苑はあなたのために戦っているのよ。朱雀に関わる者として・・・。あなたは玄武に関わる者・・・。他の青龍、白虎に関わる者と共に黒龍を倒して、平和を取り戻してちょうだい!」

麻沙耶は何も言わないままじっと紫苑を見つめていた。

四神降臨 復活編 第7章 救出 (1)黒龍
「何?紫苑が帰ってこないと!!!」
「はい・・・今魔獣に探させております・・・。もしかして紫苑は・・・。」

黒龍王が鎮座する間に現れる一体の魔獣。その魔獣は息絶え絶えで黒龍王の前に現れる。

「朱雀が・・・・。朱雀にかかわる者が・・・・現れました・・・・・・。」

そういうと息絶え、粉々に消え去る。黒龍王は床を強く叩き、いう。

「しまった!!!紫苑が覚醒したか!!!あれほど赤子の時に抹殺せよといったものを!!!」
「黒龍王様。しかし、玄武は黒龍の手の中に・・・。玄武に関わる者の体から『生』を追い出したではありませんか・・・。まもなく『霊』の神として覚醒するでしょう。」
「んん・・・そうだな・・・。魔獣に命じ、玄武をこちらに・・・。」

黒龍王は顔をしかめ考え込む。それを見た黒龍妃は怯える。黒龍王は魔獣を呼び、玄武を呼び出そうとする。この魔獣は紫苑に変化し、麻沙耶のいる近衛家に忍び込む。麻沙耶は自室のベッドで体の痛みに苦しんでいるのである。

「麻沙耶・・・。」

麻沙耶はその声に反応し、痛みに耐えながらも起き上がる。

「紫苑君・・・・?」

魔獣は麻沙耶に近づき、手を握り微笑む。

「麻沙耶・・・。苦しい?」
「どうしてここにいるの?」
「僕は麻沙耶が心配でたまらないから・・・。あのさ、麻沙耶を楽にしてあげるって母さんがいってたから・・・。迎えに来たんだ。さ、行こうよ。」

麻沙耶は頷き、着替え始める。そしてそっと自宅を抜け出した。麻沙耶はこの魔獣を紫苑と信じ、手をぎゅっと握って魔獣と共に暗い夜道を歩き出す。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (9)朱雀覚醒
 気が付くと僕の後ろに同じ気を持った人が立つ。振り返るとそこには歴史の非常勤講師・・・確か源朱央先生。いつの間にここへきたのか?座り込んでいる僕に手を差し伸べて微笑む。

「覚醒したね・・・紫苑。」
「え?」
「私は朱雀の皇子。君の双子の兄だよ。私の妹、紫苑よ。」
「でも僕は男だよ?」
「今の姿は術によるもの。黒龍王が倒れれば、元の姿に戻ることが出来るという・・・。ほら、これは紫苑の母君から預かったもの・・・。そしてこれを・・・。」

兄という朱央先生は僕に赤紫の石と、赤勾玉を大事そうに胸元から取り出し、手渡す。そのうち赤い勾玉は眩く光ると宙に浮き、僕に吸収される。

「やはり紫苑が今回の朱雀に関するものであったか・・・。」
「朱雀に関するもの?」

朱雀に関するものとは四神の一つ朱雀を呼び出すことが出来るという者。魔王を倒すことが出来るのは黄龍のみ。黄龍を呼び出すためには四神の力が必要だという。その一神が僕なの?もちろん兄という朱央先生は頷く。そして僕にもう黒龍に近づくなというんだ。近づくと何をされるかわからないというんだけど・・・。

僕は今日から朱央先生の自宅、朱雀神社にお世話になることになった。
本当にこれでいいの?
黒龍の皇子として生きてきた僕は、本当にこれでいいの?
でも体の奥底から湧き出る力・・・。
これは龍族のものではない。それだけははっきりいえる。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (8)真実
「紫苑君、あなたは間違ったことをしているの。私の癒しの力と、先ほど飲んだ聖水・・・。あなたは黒龍の皇子じゃない。あなたは操られているだけ・・・。私があなたの苦しみを開放してあげる。だから安心して・・・。かわいそうな紫苑君・・・。」

僕は母さんにもこんなことされたことはなかった。これが本当の心の暖かさ?僕が黒龍の皇子じゃないってどういうこと?

「あなたは誰?」
「私は麻沙耶の中に住んでいたの。でも黒龍に追い出されてしまった。私は生の力の源・・・。私はあの子の本当の姿。あの子の前世、玄武に関わる者・・・。近衛麻耶。いい?本当の黒龍の惨さを見せてあげる。」

この女性は僕の額と彼女の額を合わせて映像を見せる。

僕が父と信じていた黒龍王・・・。三神を喰らい、魔王となった・・・。そして人々を苦しめ、町をむちゃくちゃにし、そして・・・そして・・・最後の一神まで喰らおうとした・・・。人々が死に、そして苦しむ姿・・・。本当に無残な姿・・・。そういうことを行っていたのは父と思っていた黒龍王。そしてその残忍な魔王を封じ込めたのは黄龍・・・。あれほど憎いと思っていた黄龍は・・・黄龍は人々を救った?そして現れた鳳凰・・・。黄龍と鳳凰は人々に平和をもたらしたのか?

 女性が額を離す。

「紫苑君・・・あなたは朱雀。本当は朱雀の姫君。まもなくあなたは覚醒するわ・・・。お願いがあるの・・・。麻沙耶を助けて。助けることが出来るのはあなただけ・・・。このままじゃ麻沙耶はだめになってしまうわ・・・。」
「だめになる?」
「ええ、あの子は今、霊の神として覚醒しようとしている。霊の神は何かご存知?霊の神は死の神、そして破壊の神・・・。魔王の黒龍に付いてしまったら・・・。あなたならわかるでしょ?」

わかる・・・。黒龍に死と破壊の神が付いてしまったら・・・この世は破滅する。死の世界になる・・・。でもどうしたら助けることが出来る?僕は女性に聞いてみる。

「あなたには麻沙耶に対する愛がある。あなたは姫君。あの子を想う事はおかしくない。あの子に愛情を・・・。精一杯の愛の力を注いであげて。そうしたらきっとあの子は元に戻るわ・・・。」
「でも・・・。」
「安心して、私が協力する。私も早くあの子の体に戻らないと・・・消滅してしまうのだから・・・。ほら・・・紫苑。あなたの体から朱雀のオーラが・・・。」

僕は赤いオーラに包まれる。そして僕の体の奥底には真っ赤な火の力・・・。これが朱雀の力なのか?

四神降臨 復活編 第6章 朱雀  (7)聖水
 最近麻沙耶の体調が思わしくないらしい。毎日僕は麻沙耶を迎えに行くんだけど、母親が出てきて心配そうに言うんだ。

「ごめんなさいね黒田君。麻沙耶ったら今朝も頭が痛いとか言って起きてこないのよ。熱測ってみたら微熱だし・・・。病院へ行くように行っても嫌がるのよ。受験生だというのに・・・だめねえ・・・。このままだとそのまま上の大学かしら・・・。ホントごめんなさい。毎日迎えにきてくれているのに・・・。」
「いえ。」

麻沙耶は僕の自宅へ遊びに来るたびに体調が悪くなっている。どうしてなんだろう・・・。僕は大丈夫なのに・・・。

僕は受験生のための特別授業を終えると家路に着く。もう夕方に近い。でも夏だからまだまだ明るいのだけれど・・・。途中一人になる道があるんだけど、そこに見慣れた人物が立っていた。

「麻沙耶・・・。体調・・・。」

麻沙耶はいつもの微笑で僕に近づいてくる。

「僕、大丈夫だよ。どうしても紫苑君の顔が見たくなって、家を抜け出してきたんだ。」

本当に麻沙耶のかわいい清々しい顔・・・。久しぶりに見たような気がする。

「のど渇いてない?今日ね、おいしい水をこっそり汲んできたんだ。すごくおいしい水。これを飲んだら僕元気になったんだ。最近紫苑君、元気が無いだろ?飲んでみたら?」
「麻沙耶。」

麻沙耶は飲んで飲んでと、僕に薦める。麻沙耶が薦めるものならきっと大丈夫だ・・・。僕は麻沙耶に薦めされるまま、その水を瓶からぐいっと飲み干した。麻沙耶は微笑んで僕を見つめている。

「どう?紫苑君。おいしいでしょ。・・・・・体の中から悪いものが出ていく感じかしら?」

え?声が・・・急に・・・。
ふと麻沙耶のほうを見る。するとさっきまで微笑んでいた麻沙耶が・・・。
誰?この女性は誰?

僕は体中に痛みを感じ崩れ落ちる。すると僕を暖かく包み込むような感覚・・・。こんな感覚ははじめてだ。そして体の痛みがふっと消える。
さっきの女性が僕を抱きしめ涙を流している。どうして泣くの?この女の人は誰?

四神降臨 復活編 第6章 朱雀  (6)姫君
(6)姫君

 私は人間界でのいつもの生活へ戻る。龍希様からいただいた聖水を小さなビンに入れ持ち歩く。本当に授業以外は接点のない紫苑君と近衛君。呼べば史学準備室に来るかもしれないが、先日の事があり、敬遠されているのは確かな話・・・。しかしまず紫苑君にかけられた黒龍の結界を解かなければ何も始まらない。本当にこの聖水が役に立つんだろうか?勿論みんなで集まり論議するが、なかなかいい方法が見つからない。私はいつものように自分の祠で考え込む。ここは私の気の源というか、ここにいれば私は落ち着く。考え込むうちに夜になっていた。すると私の後ろで人の気配がする。

「亜樹か?夕飯はいらない・・・・少し考えさせてくれ。」

でも何も反応は無い。気を集中してみると亜樹の気ではない・・・これは・・・。これはもしかして・・・。私は振り返る。そこには人影。

「朱央様・・・。」

そこに立っていたのはある女性・・・。その顔はまさしく・・・玄武の姫君、近衛麻耶姫様。麻耶姫様は私の側に近寄ると座り頭を深々と下げる。

「麻耶姫様・・・。」

麻耶姫様は涙を流し私に詫びを入れる。

「申し訳ありません・・・。私のもう一つの姿・・・・麻沙耶が・・・。麻沙耶が・・・魔王、黒龍の封印を解いてしまいました・・・。私というものが側にいながら・・・。あの子の憎しみ悲しみの心が、私の力を超えてしまったようです・・・。」
「え?黒龍が復活したと?どうしてそのような・・・。」

麻耶姫様は詳しい経緯を話す。玄武に関する者麻沙耶君は黒龍の水晶玉に心の闇をぶつけたというのか?でもどうして麻耶姫様がここに?それを私は姫様に問う。

「それは・・・黒龍の力で、生の力の源である私を追い出したのです。ですからあの子の体には霊の力のみが残っています。今は何とか覚醒をしておりませんから、黒の勾玉のおかげで平静を保っておりますが、このまま黒龍の側にいると霊の力が覚醒を・・・。そうしないと四神が・・・四神が揃いません。私・・・私が責任を持って阻止します。ですので、朱央様が悩んでおられる聖水の件、私に任せていただけないでしょうか?」

麻耶姫様が?麻耶姫様がどうするというのだ?
でもしかし・・・。
黒龍が復活したとなると、早く紫苑君を黒龍の呪縛から解き放たないと・・・。紫苑君がいればきっと麻沙耶君は、こちらに付くに違いない。

私は麻耶姫様に聖水を託した。きっと麻耶姫様なら・・・玄武の姫君、麻耶姫様ならやり遂げてくださる。あの方の心は正義の心。何が起きようとも揺るがされない強い心をお持ちの方・・・。任せよう・・・。紫苑君の事も麻沙耶君の事も・・・。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀  (5)龍族の秘術
 私は青龍国へ向かった。はじめ朱雀の皇子である私を衛兵たちは追い返そうとしたが、赤の勾玉を見せると、衛兵たちは頭を下げ、青龍王龍希様の前へ案内した。

「お久しぶりです、龍希様。」
「ああ、朱雀の皇子。今日は何か?」
「実は龍族に伝わる秘術はないかと伺いに参ったのです。」
「秘術?」

私は龍希様に色々話し、聞いてみたのだ。すると龍希様は顔を曇らせていうのだ。

「性を変える術はあるにはある。しかしそれは禁じられた秘術でね・・・。術を掛けられた者の体には相当負担がかかると聞いた。そしてその秘術はまさしく黒龍のみ使う秘術。」
「解くことはできないのですか?」
「できないことはないが・・・。まずは黒龍の呪縛からその少年を引き離さないといけないよ。早く術を解かないと命に関わるかもしれん。そうだ、気休めにしかならないと思うが、これを渡しておこう。」

と、龍希様はつぼに入ったものを渡す。

「これは青龍の聖水だ。邪悪なものを払拭してくれる。この聖水をその少年に飲ませると、邪悪な結界を払拭できるかもしれない。一度試してみたらいい。」
「ありがとうございます。一度試してみます。」
「んん・・・。」

私はその聖水の入ったつぼを大事に抱え、人間界へ戻る。本当にこの聖水が結界を取り除くことができるのかどうかはやってみないとわからないが、やってみる価値はあるのかもしれないのだ。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (4) 朱雀の印
 朱雀の印とは口ではよく表せないのであるが、とても綺麗な宝石のようなもの。生まれた時に抱いた状態で生まれてくる。朱雀それぞれの色と形があり、私の場合は朱色である。だから朱央と名づけたらしい。そして紫苑は赤紫色の石。とても綺麗な赤紫。高貴な色で光り輝いている。まるでこの前あの少年紫苑君の心の奥底の清い心そのものだった。このことで私は紫苑君が私の妹ではないかと憶測する。しかしどうして男の子として育っているのか?それだけが疑問だった。しかしどうすれば紫苑を助けることができるのだろうか?あのまま黒龍の側にいたら、きっと紫苑はだめになってしまう。祠で私は紫苑の朱雀の印を見つめ、考え込んだ。

「朱雀様。どうかしたんですか?」

と亜樹が声をかけてきた。

「なんでもありません。ちょっと気になる少年がいてね。知ってるかい?3年生にいる黒田紫苑君を・・・。」
「はい。結構女の子に人気あるんですよね。何か?」
「あの少年は人 じゃない。」
「人じゃない???では?」
「朱雀かもしれないんだ・・・。それだけじゃない。もしかしたらこの私の双子の妹・・・。でもどうして少年なんだ?」

めずらしく悩む私を見てか、亜樹は私に言ったのだ。

「もしかしたらそういう術があるのかもしれませんね、朱雀様。何ていうのかなあ・・・操り人形というか・・・。亜樹はそういうことあまり知らない・・・。そういう秘術があるのかもしれません。」

そうだ・・・。龍族の筆頭である青龍王龍希様なら、龍族に伝わる秘術を知っているのかもしれないのだ・・・。龍が操る術の事なら、龍希様に一度お会いして聞いてみるのも手・・・。早速私はすぐに青龍国へ向かった。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀  (3)朱雀の国
 私は休日、祠にこもり考え事を一日中していた。どうすれば紫苑君の心の闇、邪悪な気を取り除き、そして心の奥底の清い心、朱雀の気を引き出すことができるのだろうか。私はふと思い出し、私の生まれ故郷である朱雀国へ行ってみることにした。久しぶりに訪れる朱雀国。まだまだ再建途中ではあるが、父である朱雀王は人間界に住む私を快く迎えてくれた。

「父上、私は人間界で不思議な少年に出会いました。」
「不思議な少年?」

私は父にことの一部始終を話した。すると父は言葉を失ったのだ。それっきり話をしない父は私にあるものを渡したのだ。それはある札。人間界で言う命名札というべきか。そこにはこう書かれている。

『第二皇子 朱央  第二姫皇子 紫苑』

と。
私の妹の名前、それは紫苑というのである。母は黒龍族に捕まった少しの間、ずっと紫苑を抱き『紫苑、紫苑』と声をかけていた。しかしある日紫苑は取り上げられ、そして母は黒龍王に朱雀の力を吸収するために喰われたのだ。母は紫苑が処分されているものと思い込んでいた。もしそれがわが妹、紫苑であれば、どうして黒龍の側にいるというのだ?そしてどうして男の子として育っているのだ?

 母は私が人間界に戻る間際、あるものを手渡す。それは朱雀のしるし。朱雀のものが必ず持っているというあるもの。そのあるものを私は大切に抱き、人間界へ戻ったのである。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (2) 心の奥底
 ある日、紫苑君が史学準備室にやってきた。もちろん私が呼んだ。

「失礼します。なんですか?源先生。」
「資料作成を手伝って欲しいと思ってね・・・。」

これは口実である。こうでもしないと彼はここへ来ない。もちろん側には玄武に関わるものの近衛君。本当に不思議な気を持つ少年、紫苑君。色々な気が混じっているというのか。私は作業を指示し、いつものメンバーに加え、紫苑君と近衛君とともに資料を作成する。作業をしつつも、紫苑君の気を探ってみるが、強烈は気で跳ね返される。おかしい。そのあと、急激な邪悪な気に襲われ、私は気を失いそうになった。この気は・・・。黒龍!まるで私に紫苑君を探らせないように結界を張っているかのようであった。

「紫苑君、君にはお父さんがいないようだね。」
「いえ、最近父は帰ってきたんです。」

私は色々聞いてみるのだけれど、紫苑君はわからないの一点張り。物心つく前から彼の父は側にいなかったらしいので、知らないという。ただ、ずっと家の中にいて、母親と何か話しているだけで、そして滅多に彼の前に現れないらしい。現れたとしてもいつも紫苑君をにらみつけ、一言も口を利かないらしいのだ。

しかし近衛君の印象は正反対。やさしい印象で、近衛君をかわいがり、色々と相談に乗ってくれるいい人らしい。

 するとまた私は紫苑君の気を感じる。まただ。近衛君と目を合わし、話しているときには必ず感じるのだ。その時を狙って私は気を探ってみる。すると彼の心の中に入ることができた。近衛君の玄武の力が、紫苑君の閉ざされた心を開いているようだ。私自身心に入ることができるといっても、はっきり映像として感じるのではない。気として感じるのである。彼の心の奥底は清い気で満たされている。しかし核心に入ろうとすると、いきなり邪悪な気で閉ざされてしまったのだ。私はこの行いのせいかは知らないが、大変疲れてしまった。でもあの心の奥底の気はまさしく朱雀の気。私と同じ・・・。まったく同じ。

四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (1) 静寂
 おかしい、最近何も起こらない。魔物の出現も、頻発していた天変地異までも・・・。おかしすぎる。気を集中させても何も感じない。毎日が淡々と過ぎていく。そのせいであろうか、私の持っている赤の勾玉は静まったまま。

いつものように史学準備室に集まるメンバー。しかし玄武である近衛君はいっこうにに我等と交わろうとはしない。今まで青龍である竜哉様を慕ってよく側にいたものだが・・・。それどころか、不思議な気を持つ少年黒田紫苑君の側にいることが多い。

紫苑君と一緒にいるようになってから、彼はとても明るくなった。私は人の心を見る能力があるのだが、以前彼の心は憎しみ、悲しみでいっぱいだった。それがどうだろう。最近は清々しい心である。きっと黒の勾玉のおかげではないかと思うのだが、少し気になることがある。紫苑君は例の黒龍を崇める新興宗教団体に出入りしているというのだ。もちろん近衛君も・・・。ここの宗教、御神体といわれる水晶に相談するだけで、気が清々しくなるという。それはそれでいいと思うのだが、黒龍が絡んでいるということからか気になってしょうがないのだ。

 私は近衛君や紫苑君の日本史の授業も担当している。淡々と過ぎていく授業。相変わらず仲のいい二人。席が隣同士ということもあるのだろう。しかしふとした拍子に紫苑君の今まで感じたことのない気を感じてしまう。なんというのかわからないのだが、時折私と同じような気が感じられるのだ。

それは朱雀の気。私はなぜこのような気が感じられるのかが疑問だった。

 朱雀王族で今人間界にいるのはこの私だけ。王族だけではない。朱雀といわれるものは人間界に私しかいないのだ。以前、黒龍が朱雀国を襲った際に、王族、朱雀国民のほとんどが殺されてしまった経緯がある。何とか難を逃れた朱雀王、朱雀東宮、朱雀妃、そして一部の朱雀国の者たちで朱雀国を再建してきた。その者達以外に朱雀は存在しないと思われている。というより存在しない。

 以前のことだが、私の母、朱雀王妃に私には双子の妹がいると聞かされたことがある。朱雀というものは生まれるとき必ず雄と雌の双子だという。妹は母と一緒に連れ去られ、その後行方がわからないというのである。もしかして紫苑君は?しかし紫苑君は男だ。妹であるはずはない。きっと気のせいに違いないのである。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (8) 復活
「ふ、うまくやったものだな・・・。」
「これはこれは、黒龍王様。お帰りなさいませ。」

麻沙耶が去ったあと、一人の男が現れる。これはまさしく黄龍に封印された黒龍王の人型の男。麻沙耶の悲しみ恨み憎しみの心のおかげで封印が完全に解かれたのだ。黒龍王は、黒龍妃の前に座り、密談をする。

「さすが、玄武の力は相当なもの。この私でも解くことができなかった最後の封印を見事解いてくれた。あの少年、確かにあの時の玄武の姫君の転生した姿。今思うだけでも憎たらしいあの小娘。まあいい・・・。紫龍、いや紫苑に例の事ばらしてはならぬぞ・・・。私が封印される前に紫苑の本当の力を封印しているからいいものを、真実の姿を知った時にはわが黒龍族は再び危機にさらされる。」
「わかっておりますとも・・・。いまだ一神、現れておりませんわ。」
「んん・・・。例の朱雀の皇子、今回は関わるものではなかったようだな。」

もちろんこの話は誰にも聞こえない心の声。もちろん別室にいる紫龍いや紫苑には聞こえない。

「ということはわかるか?黒龍妃よ・・・。」
「はい・・・決して紫苑をあちら側につかせてはいけないということでしょうか?」
「そういうこと・・・。今のところ玄武もわれらの手の内にある。この玄武を霊の神として覚醒させ、こちらにつけさえすれば、四神降臨はぜず、そしてにっくき黄龍も降臨しまい。あと紫苑の事だが・・・。例の事に気がついた場合、私はあいつを喰う。喰らって朱雀覚醒を食い止めなければならんのう・・・・。あいつと赤の勾玉が出会う前に処分することにはなるとは思うが・・・・。本当にお前の母心というもののおかげで、こういうことになるとは思わなかったが・・・・。」
「わかっております。私が責任を持って気がつかせないようにいたします。」

この夜、密談は長く続く。もちろん紫苑はこの内容をまったく知らないのである。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (7) 恨み、悲しみ、憎しみの力
 信者たちは帰っていき、僕は紫苑君のお母さんと話をする。信者さんたちの言うようにホント優しそうな人。紫苑君のお母さんは用事があると部屋を出て行く。すると紫苑君は僕の前に座って真剣な顔で言うんだ。

「麻沙耶。やっぱりさ、僕たちは友達のほうがいいと思うんだ。」
「え?」
「僕さ、気がついたんだ。僕は麻沙耶のこと恋愛感情じゃなくて、純粋に友達として好きなんだって・・・。だっておかしいじゃん。男が男を好きになるって!変だよ。腐ってる。」

腐ってるって?だって僕は紫苑君のことが好きで、紫苑君も僕のことが好きだから・・・この前キスしたんでしょ?そんなそんな・・・。やっと僕は心が通じ合える男の子とめぐり合えたと思えたのに・・・。僕は・・・。

もちろん僕はその場に泣き崩れた。すると、紫苑君のお母さんが部屋に入ってきたんだ。

「紫苑、麻沙耶君に何かひどいことを言ったの?とてもいい子なのに!ゆっくり話を聞いてあげるわ。紫苑、あなたは自分の部屋の入っていなさい。」
「はい・・・。」

紫苑君は部屋を出て行った。僕は紫苑君のお母さんに誘導されるまま、言いたいことを相談した。もちろん紫苑君のお母さんは優しい表情ですべてを受け止めてくれたんだ。そして僕に水晶玉を手渡し言うんだ。

「この水晶玉は、麻沙耶君の嫌なこと、苦しいこと、悲しいこと、すべて心の闇になることを吸ってくれます。麻沙耶君。この水晶玉を抱きしめて、願いを掛けて御覧なさい。そうすれば心は清々しくなるから・・・・。」

僕は言われるまま、今まで男として生まれてきて悔しかったこと、悲しかったこと、さまざまないじめに対する恨み、憎しみをこの水晶玉にぶつけたんだ。するとこの水晶玉は眩く光り、ふっと消えてしまったんだ。

「え?」
「どう?少しは心の闇がなくなったかしら?」
「そういえば・・・。でも水晶は?」
「いいのです。あなたのおかげで救われたものがおりますからね・・・。気にしないで。そうそう、紫苑には私からきつく叱っておくわ。だからもう泣かないで、いつまでも紫苑のお友達でいてあげてね。きっと一晩ゆっくり眠ったら、あなたは生まれ変わったように気分がいいはずよ。」

僕は紫苑君のお母さんの話を信じ、紫苑君の家を後にする。また悩み事があれば、ここに相談に来よう。そうすればきっと嫌なことを忘れられる・・・。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (6) 復活の儀式
(6) 復活の儀式

「紫龍。もうそろそろ、玄武をここにつれておいで・・・・。そしてこの黒龍王の水晶に玄武の憎しみの力を封じ込めるのです。そうすればきっと黒龍王は復活するわ・・・。」
「憎しみ?どうして憎しみが必要なのですか?」
「黙りなさい。あなたは私の言うことさえ聞いていればいいことなのよ。ここへ連れてきて、この水晶の前であなたは玄武を裏切るのです。そうすればきっとあなたへの憎しみ、悲しみがこの水晶へ吸い込まれる。」

裏切る?そんなことなんかできないよ・・・・。

麻沙耶は僕の大事な友達。友達を裏切ることなんてできないよ・・・・。でも父を復活させるため、必要不可欠なことらしいけれど、どうして憎しみの力が必要なのだろう。

もちろん僕は母の言われたとおりに次の日自宅という名のこの儀式が行われる間へ麻沙耶を連れて行く。麻沙耶は異様な雰囲気におどおどしていた。そりゃそうだろ?大きな神殿がある家なんてそう多くはないはず。麻沙耶は信者さんと話している。

「黒龍はねえ、海の神なのだよ。最近、海産物が減少したり、特に海難事故が多いだろ?私たちは黒龍さんを祭って、そういうのがなくなるのを願っているんだよ。決してこの宗教は怪しいものじゃない。教祖様もお優しいし、祈るたびに心の闇が消えていくようだ・・・。」

実は信者の体内中に眠る憎しみ、悲しみなどといった心の闇を父の水晶が吸い取ってそれを餌にしているようなものらしいけれど、そのためか、心に悩みを持つ人たちが最近よくここに訪れるようになったんだよね。それがいいことをしているのか、悪いことをしているのか、この僕には判別できない。母がすることすべてが黒龍族にとって善。そして絶対的。僕が麻沙耶を裏切ったところでどうやって味方につけるというんだ?きっと母には策があるのだろうけれど、わからないよそんなの・・・。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (5) 誘惑2
「今度一緒に勉強しようよ。」

と紫苑君に誘われたんだ。ちょうどお母さんが紫苑君を家へ上がってもらいなさいって言うもんだから、僕の家で勉強することになったんだ。

初めて友達というものを家に上げる。もちろん母さんは大喜びで、朝からケーキなんか焼いて準備していた。僕も好きな紫苑君が家に、そして僕の部屋に入るってことで、昨日は緊張して眠れなかった。

「麻沙耶。黒田君が来たわよ。」

と言うから僕は急いで玄関へ行った。僕は早速部屋へ案内をする。

「やっぱりいいとこのお坊ちゃんだよね。でかい家。うちなんかちっちゃいよ。」
「そんなことないよ。ただ古いって言うだけの家だから。さ、勉強しよ。」

僕と紫苑君は並んでお互いわからないところを教えあったり、お母さんが用意したお茶とケーキを食べたりして過ごしたんだ。ホント楽しい時間。もし僕が女の子だったら・・・即ここで告白するんだけどね・・・。きっと男の僕が紫苑君に告白したとしても相手にされないだろうな・・・。紫苑君はスポーツ万能で、成績優秀。そして女の子に人気がある。そんな紫苑君が僕に気があるなんて思えないよ。この前のかわいいだってきっと社交辞令だよね・・・。

「なあ、麻沙耶。」
「何?紫苑君。」
「お前、僕の事好きなのか?」
「え?」

そういうと紫苑君はいきなり僕を押し倒してキスしてきた。ちょっと待ってよ!!!心の準備が・・・。

「僕さ、男同士の恋愛ってどういうもんか知らないけど、麻沙耶のことが好きだよ。そこらじゅうにいる女よりもかわいいしさ。麻沙耶といると安心するっと言うかさ。おかしいかな・・・?男が男を好きになるって・・・。」
「そ、そんなことはないよ。僕も紫苑君が好きだから・・・。」

そういうとまたキス・・・。

それ以上のこと?ないよ。でも、この日から、僕と紫苑君は友達以上の関係で、表向きは普通の友達を演じているけれど、二人きりになると、手をつないで、時々キスしちゃったりなんかしてさ。恋人同士って感じで・・・。僕が女ならおかしくないんだけど・・・・。でもこれは真実の愛じゃないんだよね・・・。真実の愛じゃ。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (4) 苦悩
 僕は麻沙耶に優しくすればするほど、自己嫌悪に陥る。麻沙耶は僕を信用し、そして慕ってくれている。初めてできた友達、麻沙耶。とても純粋で、心に裏表のない男の子。

 僕は500年ほど前に黒龍王の皇子として生まれ、母上以外誰とも触れ合うことなく今まで生きていた。そして当たり前のように黄龍が憎い、青龍が憎いと教え込まれ、封印された父、黒龍王復活のために生きてきたようなものだった。もちろんどうして父が黄龍に封印されてしまったのか、そこまで黄龍や青龍を憎むのかはわからない。同じ龍族であるのに、疑問さえ感じなかった。しかし麻沙耶と過ごす毎に、その疑問がわいてくる。僕のしていることは本当にいいことなのかと。

「紫龍。ずいぶんと玄武はお前を信用してきたみたいね。そろそろ、黒龍王復活のための行動を起こしなさい。玄武を味方につけなさい。いいわね。」
「はい、母上・・・。」

僕は母にこの疑問をぶつけることはできなかった。ぶつけてしまえば母はきっと悲しむ。父である黒龍王を復活させるためにしょうがないこと。自己嫌悪など感じている暇などないんだ。心を鬼にして母の言うとおりに計画を進めないといけないんだ。

 最近、早くしないと、四神が揃ってしまうと母はますます口うるさくなった。わかっていても、麻沙耶が側にいると癒されるというのか、フッと自分というものを感じさせてくれるんだ。もしかしてこれが玄武の力である癒しというのか?僕が黒龍の皇子でなければ、きっといい友達でいることができるんだろうね・・・。でもそれは許されない。僕は父を復活させるために麻沙耶に近づいたんだ。黒龍の皇子として・・・。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (3) 誘惑1
 「麻沙耶、朝よ。早く起きなさい。」

といつものようにお母さんが起こしにくる。僕は飛び起きて着替える。この家の人は僕が学校で「おとこおんな」といわれていじめられていることは知らない。もちろん家では立派な長男を演じている。特にお父さんはしつけには厳しい人で、昔からなよなよしていた僕を厳しくしつけた。だから僕は近衛の家の中では長男らしく振舞っている。もちろんそれは僕にとってとても苦痛なことで、本当の自分を出そうものならきっとお父さんに勘当を受けてしまうかもしれない。

 昨日の転校生、かっこよかったなあなんてふと思ったりなんかしたけれど、僕は九条君一筋なんだと、自分に言い聞かせている。おかしな話だよね。男の僕が九条君に想いを寄せているなんてね・・・。ホント九条君はいつもいじめられている僕にも優しくて、かっこいい。そして昨日の転校生、黒田君は、初めて僕のことをかわいいって・・・。もちろん顔はかっこよかった・・・。恋する乙女ってこういう感じなのかな?といっても僕は乙女じゃないけどね・・・。

「麻沙耶、黒田君って言う男の子が迎えに来たわよ。早く支度しなさい。」

え?黒田君が???家を教えていないのに?恥ずかしいよ・・・。一緒に登校だなんて・・・。

もちろん僕は急いで身支度をして家を出る。ホントはじめは冗談だと思ったよ。でも現実にあの転校生、黒田紫苑君が僕の目の前にいるんだもの。僕の胸はバクンバクンとなって、頭の中は真っ白。

「おはようございます。黒田君。」
「おはよう。麻沙耶。僕のこと紫苑でいいよ。」

え?いきなり名前呼び捨て?それも僕も黒田君のこと紫苑って呼んでいいの???あ、だめだめ、僕は九条君一筋なんだ・・・。でもなんで僕の家知ってるんだろ。ま、いっか。近衛ってここしかないし・・・。きっとそれでわかったんだろうな。

この日から毎日のように紫苑君は家に迎えに来てくれて、休み時間はこの僕の相手をしてくれる。自然と僕も笑いが絶えなくなって、クラスのみんなとも馴染めるようになったんだよね。

初めてだよ。この学園に入って12年目・・・。こういうことはなかった。もちろん僕は自然と紫苑君に惹かれていくんだよね・・・。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (2) 玄武に近づく者
 「さあ、今日は季節はずれだが、転校生がいる。黒田紫苑(しおん)君だ。」

と、玄武に関する者、近衛麻沙耶の在籍するクラスに一人の少年が転校してくる。その少年は金色に近い茶色い髪をし、一際目立つ少年である。もちろん休み時間となると、周りの女の子たちが集まり、いろいろとこの少年に探りを入れるのである。

「ねえ紫苑君って、もしかしてハーフ?」
「どこから転校してきたの?」

少年はある一点を見つめつつも、女の子たちの相手をする。ある一点とはもちろん玄武に関するもの、近衛麻沙耶のことである。このクラスで除外されているかのような存在の麻沙耶。仕方なく休み時間は本を読んだり、勉強をしたりと一人寂しく過ごしているのである。少年は立ち上がり、麻沙耶の前のいすに座り、話しかける。

「君、いつも一人でいるけど、一人で楽しい?あ、僕の名前は黒田紫苑。君は?」
「僕は、近衛麻沙耶。別に好きで一人でいるわけじゃないよ・・・。」
「へえ・・・。」

といって少年は麻沙耶の顔を覗き込む。麻沙耶は真っ赤な顔をして目をそらす。

「かわいい顔してんじゃん。こういう顔好きだよ。」

そしてにこっと微笑んで立ち上がると、もといた席へ戻る。そして一変して不気味な表情をする。もちろんこの表情は誰も気づかなかった。

「紫苑君、やめときなよ。あんなおとこおんな。」
「おとこおんな?」
「あいつは男のくせに男が好きなの。変な子でしょ?」
「ふ~~~ん。(もしかして母上が言っていた誘惑って・・・?そういうことか・・・。おもしろい・・・。)」

少年は時折獣のような瞳で麻沙耶の方を見つめているのである。

四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (1) 黒龍の皇子
 ここはある集団の住家。夜毎奇妙な儀式が行われている。この集団は黒龍を信仰し、黒龍復活を願っている。その中に少年が一人いるのである。

「母上、この僕に何をさせようというのですか。」

とその少年が教祖といわれる女に話しかける。

「紫龍(しりゅう)。」

女は人払いをすると、少年に話しかける。

「紫龍。あなたは黒龍王の唯一の皇子として、動いてもらわなければなりません。あなたの父、黒龍王を復活させるために・・・。」
「復活???父上はどこにいるというのです?」

女は世界地図を広げ、あるところを指差す。そこは日本海溝。

「紫龍。このあたりで頻発する出来事をお前は知っているわね。そして頻発する地震。」
「はい・・・。」
「あれは、黒龍王が復活のための行動・・・。力を蓄えているというべきでしょうね・・・。信者のおかげで、黄龍にかけられた結界をずいぶん解くことができたようです。しかしあと一歩・・・・。あと一歩のところで最後の結界を破れないのでしょう・・・。」
「どのようにしたら最後の結界が・・・。」

女は少年の耳元で小さな声でいうのである。

「生と霊の神。玄武を味方につけなさい。そうすれば最後の結界が破れるかもしれないねえ・・・。」
「玄武?」
「聞いたことはないかい?四神のことを・・・。その中の一神。玄武。先ほど、探らせていたものから報告があってね、玄武に関するものが現れたと・・・。いいかい紫龍。そのものを誘惑し、こちらの味方につけるのです。一神欠ければ、にっくき黄龍も降臨することはない。わかりましたか?紫龍。」

女は有無を言わさずその少年を玄武に関するものの近くへ潜り込ませる。それがうまく行くのか行かないのかはここにいる少年、黒龍の皇子・紫龍にかかっているのである。

四神降臨 復活編 第4章 玄武 (5)黒勾玉
 私は近衛君を外へ連れ出す。もちろんこういうことをしてはいけないのだろうけれど、どうしても内密に確認をしないといけないことがある。それは黒の勾玉。先ほどから黒い勾玉が異常に震えているのだ。近衛君が、玄武に関する者であれば、この黒勾玉を彼に託さなければならないのだ。竜哉様の時と同様に黒勾玉を近衛君の前に出せば、何か起こるはずである。

「源先生、昼間はすみませんでした。ご迷惑だったでしょう・・・僕はおとこおんなだから・・・。」
「おとこおんな?君はれっきとした男だろ?」
「もちろんついているものはついていますけど・・・。あ、さっきされていたことは他の先生に言わないでください。もちろん僕の家には知られたくはないんです。僕はああいうことされて当たり前なんです。本当のことだから・・・。僕は女の子にまったく興味ないから・・・。」

といって近衛君は苦笑する。

やはり近衛君の性格は前世の影響というべきか。近衛君の前世はやはり玄武に関する姫君であった麻耶姫なのか?

近衛君はぽろぽろと大粒の涙を流しながら、下を向いているのだ。私は胸元から黒勾玉を取り出し、彼の前にかざしてみる。やはり案の定黒勾玉は眩く光を放ち、彼のほうにひきつけられている。ああ、帰りたがっている。玄武に関するものを見つけた・・・。もちろんこの黒勾玉を彼に託さなければ・・・。しかしこのような彼に託しても大丈夫なのだろうか・・・。

「近衛君、この石は君を守ってくれるよ。そして君を強くしてくれる。だから、君にこれを・・・。」
「え・・・?」

私は彼の首に黒勾玉をかける。するとどうだろう・・・。黒勾玉は竜哉様の時と同様に彼の体内へ吸収されていったのだ。そして彼は玄武のオーラに包まれる。彼は何が起こったのかわからない様子で、胸元を見つめている。なんとなく彼の表情は清々しくなったように思える。これで黒勾玉は私から離れた・・・。

あとは、朱雀・・・。私のほかに朱雀に関するものとは誰なのか?もしかして亜樹?いやそんなはずはない・・・・。

四神降臨 復活編 第4章 玄武 (4)接触
 日光をバスでいろいろ観光したあと、東京へ戻る。近衛君と担当クラスが違うために、なかなか接触できないのが現実である。接触ができないまま、夜が訪れた。もちろん私は非常勤ではあるが、引率教諭の一人として、宿舎内の見回りというものがある。ほかの先生たちはお決まりのようにある先生の部屋に集まって酒盛りをしている。もちろん私も誘われたのだが、私は酒を飲まない。と言うか酔って正体がバレてはいけないために、飲めないのである。付き合い悪いなあといわれながらも「見回りしてきます」といってその場を抜け出したのだ。

 各部屋を回り、就寝準備をするように促す。枕投げをしている部屋、部屋を真っ暗にして怪談話をしている部屋、お菓子を広げて騒いでいる部屋さまざまだ。守護龍龍磨は現代っ子に馴染んでいることには驚いたよ。私でさえいまだに馴染めない面が多々あるのに・・・。

「辰巳君ちょっと・・・。」

と私は龍磨を呼び出す。

「何ですか?朱央先生。」
「九条君の姿が見えないけど・・・。(お前は守護するものだろう・・・。何かあったらどうするつもりだ・・・。)」
「あ、いっけねえ・・・。(申し訳ありません朱雀様・・・今すぐに・・・。)」

困ったやつだ。馴染みすぎもいいところだ。何のために竜哉様の側についているのだか。私と龍磨は竜哉様を探す。ロビーに下りると、竜哉様と近衛君が話していたのだ。

「九条君の志望校ってどこ?このままエスカレーターってことはないよね?」
「そうだな・・・。本命は京大だけど・・・・。何?」
「ううん・・・。京大かあ、さすがだね。僕も同じところへ行きたいなあ・・・。」
「じゃ、近衛、一緒にがんばろうな!」
「う、うん!」

近衛君は真っ赤な顔をして竜哉様と話している。もしかして近衛君は・・・そんなことはないだろう・・・。

この場に近衛君がいる。この機会を逃すといつ接触できるかわからない・・・。私は龍磨を使って竜哉様と近衛君を離れさせる。もちろんその作戦はうまく行ったのだけれども、そのあとすぐに、うちの学校であまり良くないといわれている女の子たちが近衛君を取り囲むのである。いかにもいじめているというべきか?肩を押したり足元を蹴ったりしながら言うのだ。

「おとこおんなく~~~ん。九条君と何話てたわけ?真っ赤な顔しちゃってさ・・・。ばっかじゃない?」
「今日だって倒れてたじゃん。源先生に抱き上げられていい気分だった???おとこおんなく~~~ん。」

近衛君は半なき状態で、反抗さえしない。私は教師としてではなく、人、いや同じ生き物として、彼女たちの行為を許せなかった。

「君たち!何しているんだ!!!」

彼女たちはやばい!といってその場を逃げていった。私は近衛君に駆け寄り、座り込んでいる近衛君に手を差し伸べた。近衛君は恥ずかしそうな顔をして私の手を撥ね除け、自分で立ち上がった。

「いつもこうなのか?」

近衛君は何も言わなかったが、どう見てもさっきの彼女たちの行為は尋常ではなかった・・・。

四神降臨 復活編 第4章 玄武 (3)鳴き龍
 何とか近衛君は落ち着き、養護の先生とともに観光バスへ戻っていった。本当に呆れるくらい弱々しい男の子の近衛君。噂では1日に1回は倒れるという。陰で男女(おとこおんな)とも言われ、実は初恋が男の子であるとかないとか・・・。近衛家といえば五摂家。まさしく近衛君はそこの跡取り息子。近衛家は、玄武の姫君といわれた麻耶姫のご実家であり、龍哉様と麻耶様の皇子が近衛家に養子に入られた経緯がある。ということは近衛君も龍哉様、麻耶様の末裔となるのではないか・・・。私は担当のクラスに合流し、鳴き龍を見学に行く。

 本殿の横にある薬師堂。そこには鳴き龍という有名な天井絵がある。龍の顔の下で音を鳴らすと龍の鳴き声のような音が聞こえるというもの。もちろん何度か来たことがある。

説明を行うお坊さんが、拍子木で音を鳴らすと、拍子木の音が反響するのである。はじめは感心してみていた私たちであったが、さあ移動しようという頃になって、異変に気づく。誰も拍子木を鳴らしていないにも関わらず、天井の龍の絵が鳴き続けているのである。もちろんお坊さん、ガイドボランティアはこんなことは初めてだという。

「なんですかこれは!!!」

と、お坊さんが叫ぶ。天井絵を見ると天井に書かれた龍の目から血のような涙が流れているように見えるのである。水墨画で書かれた天井絵・・・。その絵が流す朱色の涙・・・。いつの間にか薬師堂内は私と竜哉様、龍磨、聖斗君、そしてお坊さんだけとなった。

「このようなことは初めてですか?」
「はい・・・。なぜ水墨画に赤い色が・・・。しかし極秘の言い伝えがありまして、この龍の絵、実は絵師が実物の龍を見て描いたものといわれております。本当かどうかは定かではありませんが、この絵に何か異変が起きた場合、龍の国といわれる日本に何かが起こると・・・。」

すると龍磨が静かに言う。

「この龍は龍哉様の兄上、青龍国東宮、龍杜様のお姿。そういえば、この国が江戸時代に乱れた時に龍希様の代わりに現れ、鎮めたと・・・。」
「ああ、そういうことがありましたね・・・。あの時は龍哉様と龍杜様が手を取り合って大坂冬と夏の陣をお鎮めになられた・・・。当時龍哉様は西国、京都を、龍杜様は東国、江戸の青龍として守っておられた。半龍半人であられた龍哉さまは大坂の陣の折、かなり無理をなされたのだがね。龍希様が龍杜様をお呼びになられて、何とか沈静化できたのだ。その時のできた龍哉様の傷が、大切な龍の爪1本欠損・・・。さっき絵で見たであろう・・・。一本爪のない龍の絵を・・・。」

私と龍磨以外は半信半疑の様子。もちろん現代に生きる者には理解できるわけがない。やはり着実に何かが迫っていることは確かである。その何かはだいたい見当がついてきたのであるが・・・・。まずは近衛君と接触して、彼が玄武に関わるものであるかを確かめなければ・・・。

四神降臨 復活編 第4章 玄武 (2) 記憶
 この本殿には懐かしい襖絵がある。その襖絵には平和が訪れる時に現れるという瑞獣・黄龍こと、麒麟。そして瑞鳥・鳳凰。私はこの二つをこの目で見た。龍哉様が生贄となり出現させた黄龍。そして魔王を倒し、すべてが終わった時に現れた鳳凰。まったくそのままの姿ではないが、まさしく平和の象徴である黄龍(麒麟)と鳳凰の姿・・・。

 すると私は竜哉様と聖斗くん表情に目が行くのである。なんと二人は涙を流しているではないか・・・。私も初めてこの襖絵を見て時ははっとしたものだ・・・。そしてあの時の戦いのすごさを思い出し、涙を流した。もしかして記憶としてよみがえったのか?

 私は本殿を出て、二人に確かめてみる。なぜ涙が出てきたのかを・・・。もちろん二人は無意識のうち出でてきたといい、はじめて見た気がしないとも言ったのである。本殿を出た後、竜哉様のクラスと二つあとのクラスが入れ替わりで入っていった。そして少し経った後、私はそのクラスの担任に呼び止められる。

「源先生!」
「どうかしましたか?」
「うちのクラスの近衛君が急に倒れたので、手助けを!!!」

もちろん私は再び本殿へ戻り、生徒たちが取り囲んでいる中央へ向かって入っていく。この子は近衛麻沙耶君。何度か授業で一緒になった。ちょっと女の子みたいな少年で、おとなしく、よく貧血で倒れていた記憶が・・・。また貧血か???私は近衛君の頬を軽くたたき、抱き上げて、表に出る。そして巫女さんが持ってきた水をそっと与えてみると、気がつく。

「あれ・・・僕・・・。」

すると彼は私の胸にしがみついて泣くのだ。

「源朱央先生・・・。あの絵・・・あの絵を見たら・・・急に・・・・。恐ろしい映像が・・・頭をよぎったんです・・・。特に麒麟の絵が・・・。僕・・・僕・・・。」

そういうとまた気を失って倒れる。

「近衛君!しっかりしなさい!!!」

すると私の胸元の黒の勾玉が騒ぎ出すのだ・・・。
もしかしてこの少年は・・・。三神目の玄武???

四神降臨 復活編 第4章 玄武 (1) 修学旅行
 5月中旬、3年生の修学旅行が行われる。場所は東京周辺と日光。3泊4日。私は歴史の非常勤として同行する。まあこれは、竜哉様、聖斗君をお守りするという意味がある。もちろん歴史教師であるから、表向きは生徒たちに歴史的なことについて解説せよというのか・・・。

 朝9時台の飛行機に乗り、無事羽田空港に着く。そして観光バスに分乗し、一路鬼怒川温泉へ・・・。まずここで一泊し、次の日朝から日光見学。日光といえば世界遺産の日光東照宮。もちろんここに訪れる。一クラスに一人ずつボランティアガイドがつき、丁寧に解説していくのである。

実はこの私、ここにくるのは数百年振りである。何度も朝廷の使者としてここに訪れている。古いといってもあまり変わっていない。極彩色の建物は本当にそのままである。私は、さまざまは動物の彫刻を眺めながら、思いに耽る。ガイドの話を聞きながら、当時のことを思い出すのである。

当時、私は衣冠束帯を着て朝廷の使者して何年かに一度、遠い京都からここまで来た。この東照宮まで続く杉並木。ずいぶんと大きくなった。本当に時が経つとはこういうことなのだと実感するのである。

 陽明門にはすべて表情の違う龍が彫刻されている。もともと守護龍である龍磨は興味深々で眺めている。もちろん竜哉様もだ。

「朱央先生。面白いですよね。さまざまな表情が・・・。ほんとの龍はここまでいろいろな表情はしないのに・・・。人って言う者の想像力は面白いな・・・。」
「龍磨、本殿の中にはすばらしい龍の絵がありますよ。それも同じものがひとつと無い龍の絵が・・・。」
「へえ・・・行ったことがあるのですか?」
「まあ・・・。帝の使いとして・・・。」

ぞろぞろと本殿に入る。巫女さんの解説に耳を傾けながら、上を眺めてみる。すると龍磨が心の声で話しかけてくる。

「朱雀様、この絵、みな龍族の肖像画ですね・・・。赤龍、白龍、蛟龍、応龍、青龍の王と、その王族の変化姿。特にあの青龍の絵は龍希様によく似ている。あの青龍は・・・?」
「あれは・・・一度だけ変化された龍哉さまのお姿かもしれないね・・・。ほんと一度だけ・・・。大坂夏の陣の折・・・。ほら見てごらん・・・。左手の1本の爪が欠損している。あれは夏の陣の折に折ってしまわれたのですよ・・・。」
「へえ・・・でもひとつの龍族が足りない・・・。」
「足りない???」
「んん・・・。黒龍族・・・。」
「あれは黄龍により封印された・・・。だから無いのでは?」

そう、黒龍族は、神獣であるにもかかわらず、魔族へ寝返った龍。最近この黒龍を信仰するという新興宗教があると聞いたが・・・。

四神降臨 復活編 第3章 白虎 (4)白虎
「朱雀様、あの少年が白の、西斗様の勾玉を身に着けております。そしてあの少年は西斗様と同じ気を持つ者。西斗様が転生した姿と言うべきでしょうか・・・。」

と白老(そのほうが呼びやすい)が言う。

「本当か白老・・・。」
「ええ・・・。確かに・・・。今は父親によって前世の記憶は封じ込まれておりますが、確かにあの少年は小さき頃より私が仕えていた西斗様の転生したお姿。見間違うわけはありません。」

いつの間にか普段と変わらない風景に戻っていた。私朱雀と亜樹、龍磨、竜哉様そして白老(このときはもう白老は白狼に変化していた)が安倍聖斗を見つめていたのだ。安倍聖斗もこっちをじっと見つめている。

「聖斗!」
「父さん?」

安倍聖斗のほうに一人の男が駆け寄ってくる。やはりそうだ。あの男は私が所属する部署にいる。もちろん陰陽師として・・・。普段は文科省のある部署で普通の職員をしているが、依頼が入るとすぐさま陰陽師として動く。東京にいるはずの彼が、どうしてここにいるのか?きっと何かあるに違いない。彼はこちらを見ると頭を下げる。やはり我々の立場を知っているのだ。

 放課後、私は安倍聖斗の住所を調べ、訪問することにした。やはり家は前世安倍西斗と縁がある嵯峨野。竹林に囲まれ、ひっそりとした古い家に住んでいる。私は呼び鈴を押す。すると女性が顔を出す。

「私は、聖斗君の学校で歴史の非常勤講師をしています源朱央と申します。ご主人様はご在宅ですか?」
「はい・・・。何か?」
「聖斗君のことでお話が・・・。」

女性は安倍聖斗の母親だろうか・・・。招き入れてくれて、座敷に通される。少し経つと例の陰陽師が入ってくる。陰陽師と言ってもああいう格好は今はしない。ごく普通のスーツ姿であったりする。よっぽどの儀式以外は別なんだが・・・。

「聖斗のことで話があると・・・。」
「はい、聖斗君は白い勾玉を持っているのですか?」
「は?何のことやら・・・。」

陰陽師であれば、心の言葉が読めるはずと、言葉を送ってみる。

「私は源朱央と申します。別名朱雀。」

もちろんすぐに反応がある。

「もちろん存じ上げております。生き神様。白の勾玉・・・。あります。当家代々伝えられてきた勾玉。今は聖斗が持っております。ですが外すことは出来ません・・・。」
「何?」
「先日の大きな地震の際に聖斗の体に吸収されてしまったらしいのです。その知らせを聞き、こうしてこちらに・・・。」

話によると、安倍聖斗が生まれたとき、大切に家宝としてしまわれていた勾玉が急に騒ぎ出したかと思うと、白虎が現れ、こう話したと言う。

『この子は四神に関する者の一人の生まれ変わり・・・。世の中が乱れしとき、四神に関する者の一人として世を助ける。この子に白の勾玉をかけ、この子に残る前世の記憶を封印し、大切に育てよ。ある不吉な者が復活の時、その封印をとき他の四神に関するものと手をとり、世を助けよ。いいか、安倍西斗の末裔よ。』

父親は白虎の言うとおり、前世の記憶を封印し、聖斗と名づけたと言う。

「封印を解く日が来たというのですか・・・朱雀様・・・。」
「はい・・・多分。例の黒龍が封印を解き、復讐を企てているのかもしれません。私にはそうとしか思えない・・・。日本海溝あたりで頻発する不明事件。そして日本全土の天変地異・・・。私たち四神に関する者はあなたのお子さん聖斗君の力が必要なのです。あと玄武と朱雀・・・。」
「朱雀?朱雀は朱雀様ではないのですか?」
「はい、そのようです。私がこうして首からかけていても、聖斗君のように吸収はされない。と言うことはほかにいるはずと思うのです。私は四神に関する者を導くことが役目ではないのでしょうか・・・。よろしいですか、陰陽師殿・・・。」
「わかりました・・・。そのように・・・。」

これで白虎に関するものが現れた。
守護する者、白老は安倍家の番犬として共に生活することになったのである。これで二神が集まった・・・。あと二神、そうあと二神なのだ・・・。
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さくらと空 
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