4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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一途 (13)突撃!彬の乱入
 仕事中ふと見た時計は12時!やばいと思って俺は官邸を出た。タクシーを拾って孝博が言っていたホテルへ・・・。急いでたからか、IDつけたまんまでホテル内をうろうろ・・・。そして孝博に電話。

「孝博、静はどこにいるんだ。」
『今日本庭園にいると思うよ・・・。』

俺は急いで日本庭園に・・・。どこだどこだって探しながら広い日本庭園を走り回っていたんだ。すると遠くに着物姿の静・・・。俺は急いで静のもとへ・・・。

「静!!!」

俺の声に振り返る静・・・。

「彬君・・・。」

そして俺は静に駆け寄る。相手の男みたことあるぞ。確か内閣府職員の・・・。官邸で何度かすれ違った・・・。俺は静の手を引っ張る。

「何?彬君。」
「いいからこっち来い。」

唖然とする見合い相手・・・。俺は静を連れ出し、見つけたベンチに座らせる。

「何?彬君。私見合い中だよ・・・。」
「静、決めるのか?あいつに・・・。」
「決めないとだめなんだよね・・・。ママがうるさいから・・・。これで最後にしなさいって・・・。でもなんで彬君がここにいるの?」
「それは・・・静かに言い忘れたことがあって・・・。」
「何?」

といって静は俺をじっと見つめる。俺は我慢できなくなってそのまま静を抱きしめ、キス・・・。静はそっと俺を離して言うんだ・・・。

「これが彬君の言いたいこと?」
「ああ・・・。俺は静が好きだ・・・。ずっと前から・・・。小さい頃からね・・・。」

静はうつむいて言うんだ・・・。

「いとこじゃなかったらよかったのにね・・・。そして彬君が弐條家の長男でなかったら・・・。彬君は高橋になれないもん・・・。」
「いいよ俺、高橋彬になっても・・・。弐條は雅司がいるしさ・・・。」
「きっと叔父様は・・・。」
「親父は別に継がなくてもいいって言ったんだ・・・。親父だって長男じゃない・・・。次男だし・・・。いとこだってもいいじゃないか・・・。姉ちゃんと孝博はいとこだろ?」
「でもだめよ・・・。」
「俺に任せとけって・・・。だから、見合いを断って、俺についてこい。」

すると静は俺に抱きついたんだ・・・。
そしてもう一度キス・・・。
そして俺たちは手をつないで、静の見合い相手のところへ行ったんだ・・・。

「悪いな、確か・・・結城さんだったよね・・・。俺がこいつと結婚するから・・・。俺は弐條彬。今内閣総理大臣の私設秘書をしている。いずれこいつのところへ婿養子になって高橋姓で出馬する。だから今回の見合いはなかったことにしてくれ・・・。」
「ごめんなさい・・・結城さん。そういうことなので・・・。」
「え?静さん・・・。」

俺と静はそのままホテルを出た。
しっかりと手をつないで・・・。
もちろんこういうことしてしまったから、静のお母さんに怒られるし、親父には呆れられるし・・・・。あちらさんもカンカン・・・・。

でもいいんだ・・・。
俺は静を嫁にする。
そして高橋家に入るんだ・・・。
決めたんだから・・・。
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一途 (12)突撃!見合い会場
 今日の予定は代官山の母さんち。お土産を渡しに行ったんだ。姉貴は朝から見合いの準備で大忙し・・・。美容院に行って髪の毛と振袖の着付け・・・。家に戻ってきたのは10時半。

「姉貴、綺麗じゃん。」
「そう?もう見合いはやだな・・・。これで20回目よ・・・。写真だけでも100はあったわよ・・・。」
「みんな姉貴が断ってるんだろ?」
「だってみんな変な人ばっかりなの。あんな人たちとなんか結婚できないよ・・・。みんな弁護士やら、医者やら・・・。欲望の塊って感じかしらね・・・。みんなうちの財産目当てって感じ?」
「今日人は結構優秀じゃん。背も高くてカッコよさそうだし、早稲田政経出だろ。」
「もうお坊ちゃん系はうんざりよ・・・。いいよね、孝博は・・・。好きな人と一緒になれて、かわいい美咲ちゃんまでいるんだもん・・・。」
「姉貴は好きな人いるの?」
「そりゃいたわよ。でも私は跡取り娘だから、見合いじゃないといけないの!婿養子をもらわなきゃ。もう!孝博が高橋にいてくれたらこんな苦労はいらなかったのに・・・。」

ふうん、姉貴も好きな人いるんだ・・・。ならどうしてその人と一緒にならないんだろう。まあ姉貴は昔っからもててたけどね・・・。特に大学を卒業した時なんてお見合いが殺到してさ・・・。今姉貴はいい歳だからさ、次第に見合いも減ってきてるんだよね・・・。母さんは今日でお願いだから決めて欲しいって言ってたんだよ。俺も今度の見合い相手がどんなやつか見定めるために、父親代わりって言うのかな・・・父さんの代わりに姉貴の見合いに行くことになったんだよね・・・。今日ちゃんと彬来るんだろうか・・・。仕事って言ってたけどな・・・。

 母さん、姉貴、そして俺で見合い会場に行った。姉貴はそ知らぬ顔で、見合いを始める。結構いい男じゃん・・・。

内閣府に勤める公務員。いずれ政治家になりたいってよ・・・。内閣府だったら彬と顔を合わせているかもしれないんだよね・・・。彬は総理大臣の私設秘書だから・・・。

淡々と食事会が始まって、お決まりのお2人の時間・・・。俺は母さんとあっちのご両親といろいろ話していた。あっちのご両親は俺のことまで気に入ってくれたんだよね・・・。あぁ、独身ならうちの娘と・・・なんていいながら・・・。まあ俺って結婚したい相手の職業ランキングに載るような職業だろ?残念残念とかいってたよ。俺は時計を眺めながら、彬はどうしてるんだと心配してるんだよね・・・。

一途 (11)彬の思い
 俺は家を飛び出した彬を追いかけた。

「彬!待てよ!」
「いいご身分だよな・・・。孝博は。親父にもかわいがられてるしさ。姉ちゃんと幸せそうでさ・・・。」
「ホントにやめるのか?やめるならいい加減な気持ちでやめるなよ。目標のない辞め方は良くないと思う。やめて何するんだ?今からじゃ鉄道会社には・・・。」
「わかってる・・・それくらい・・・。別に秘書の仕事嫌いじゃない・・・。でも政治家にはなりたくないんだ。俺は親父のように人前で話したり自分の意見を言うのは苦手なんだ・・・。」
「じゃあずっと秘書でもいいんじゃないの?叔父さんも強制しないって言ってたじゃん。それと姉貴のことなんだけど・・・。明日午後から見合いだぞ。気持ち伝えたいんだろ・・・。多分今回の見合いで決まるんじゃないかな・・・。姉貴もいい歳だし・・・。政治家志望の旧家のボンボンを婿養子にもらうらしいしね・・・。」
「いいよ・・・。俺は高橋には入れないし・・・。静は俺のことなんてちっとも思っていないよ・・・。」
「何で決め付ける?言ってみてもいいんじゃないかな・・・。言ってだめだったら叔父さんに見合いを頼めばいいじゃないか・・・。雅司がいるんだから高橋に入ったっていいと思うよ・・・。まあ姉貴がどう思うかはしらねえけど・・・。当たって砕けてみたら?叔父さん、別に悪い人じゃないし、きっと話したらわかってくれるよ。俺の時もそうだったしね・・・。」

彬は俺に姉貴の見合い会場を教えろって掴みかかる。俺は代官山の高橋家に電話をし、母さんに聞いたんだ。

「紀尾井町のホテルの日本料理のお店。12時だってよ。彬、明日は仕事か?」
「うん・・・土曜だけど仕事はいってるんだ・・・。でも抜け出す。紀尾井町なら近い。」
「まあ気持ちだけでも伝えたらいいよ。でも姉貴の気持ちは期待すんなよ。」
「わかってる。俺の気持ちに決着をつけて、再出発だ。」

彬、がんばれよ。俺、応援するよ・・・。

一途 (10)弟・彬の反抗
 新婚旅行を終え成田に着くと、広尾の私の実家に寄ったの。もちろんパパとママに会うため。それだけじゃない。新居のリフォームが完成したっていうから、どんな感じか見にいったのね。やっぱりママの趣味がいいから、壁紙とかキッチンとかホントいい感じに仕上がっているのね。きっと随分お金をかけたんじゃないかなって思っちゃった・・・。

久しぶりに一緒に夕飯を食べた。パパったら私や美咲が来たもんだから、仕事をさっさと済ませて帰ってきたのね。昔から親ばかなパパで、美咲が生まれてから輪をかけて爺馬鹿になったの。美咲をお風呂にまで入れてくれて・・・。
彬遅いな・・・。
せっかく孝博が来ているのにね・・・。

「ねぇ、パパ・・・。彬遅くない?」
「んん・・・。そうだな・・・。いくら和気君の秘書だといっても遅いね。彼女でも出来たかな・・・。彬も年頃だしなあ・・・。もうそろそろ相手を探してみるのもいいかもなあ・・・。」

そういや昔っから双子の弟彬は、孝博が来るとどっかへ逃げてたな・・・。嫌いなの?孝博のこと?いつも私と孝博が仲良く話しているとむくれた顔でどっかいってたのよねぇ・・・。私が伊丹に引っ越してから、一人暮らしをやめて家に戻ってきたのにねぇ・・・。

すると彬が帰ってきた。第一声が・・・

「姉ちゃんまだいたのかよ・・・。」
「あんたねぇ、今日来るっていってたでしょ。泊まるっていってたし・・・。」
「泊まるのか・・・。うざい・・・。」
「うざいってどういうことよ・・・。」
「うざいっていって悪いかよ!!!天真爛漫に好き勝手なことしてる姉ちゃんがよ!!!いとこと勝手につきあって子供作って、結婚して、これから子供預けっぱなしで仕事かよ・・・。いい加減にしろよ!」
「彬!あんたねぇいっていいことと悪いことがあるでしょ!!!私だって・・・美咲と一緒にいたいよ・・・。いたいけど・・・会社から期待されてるんだよ・・・。」

すると孝博が私たちのけんかを止めるの。

「やめろ2人とも!いい大人がみっともないだろ!雅司も美咲もいるんだぞ!!!」
「うるさい!孝博が姉ちゃんのこと好きになるから悪いんだ!いとこのくせに!俺だって俺だって!!!」

彬は下を向いていったのね・・・。
今まで知らなかったことを・・・。

「俺は静が好きだったのに・・・。従姉弟だからって諦めてたのに・・・。何で姉ちゃんは許されて俺はだめなんだよ。だからうざいんだよ!!!」
「弐條の跡取りだからしょうがないじゃん。長男でしょ。」

すると見かねたパパが言うのね。

「彬。私は長男じゃないぞ。長男が継ぐ必要はないよ。」
「親父、でも俺は政治家にならないとだめなんだろ。雅司はまだ小さいし・・・。」
「別に強制はしていないじゃないか・・・。やりたいものでもあったのか?」
「親父は覚えてないのか?小さい時から俺・・・電車好きだったよな・・・。運転手になるんだって言ってたよな。どうして俺が今政治家目指して秘書してるか知ってるか?親父の後援会のやつらが俺にうるさいからさ。後継者後継者って!!もううんざりだ。俺、もう秘書辞めるから。」

パパは珍しく黙り込んでいたのね・・・。
彬はあまり自分を出さない弟だった。
それが爆発・・・。
自宅を飛び出していったのよね・・・。
もちろん孝博は追いかけていったの。

一途 (9)突然のB747初乗務
 4時間経ったことかな・・・。アナウンスがかかる。

『お客様の中で、お医者様はいらっしゃいませんか?いらっしゃいましたら乗務員までお声をおかけください。』

あぁ、誰か病人かしら・・・。すると愛美さんが孝博に駆け寄ってくる。そして耳元で何か話すと、孝博は立ち上がっていう。

「コクピットに行って来る。」
「何かあったの?」
「ここではお客様がいるから・・・。美咲は寝てるよね・・・。」

孝博と私は2階の操縦席まで・・・。

「副操縦士の源です。どうかしたのですか?」

床には機長が横たわっていたの。そしてお医者様の診察を受けていたの。

「多分急性盲腸炎ですね・・・。一応持ち合わせた鎮痛剤を飲ませましたが・・・・。安静に出来るところは?」
「では僕の席を使ってください。ファーストクラスですのでゆっくり出来ると思います。」
「そうですか・・・。助かります。」

そういうと、機長は先生と、チーフに支えられて操縦室を出て行ったの。

「私は当機の副操縦士吉田ともうします。源君、私の補助についてもらえますか?747のライセンスは?」
「一応持っています。取りたてなんですが、いいですか?」
「ああ良かった。源君が補助してくれるのでしたら安心です。よろしく。」
「こちらこそ・・・。」

孝博は白手袋を受け取ると、副操縦士の席に座る。そしていろいろこのフライトについてのデータを渡され、目を通していた。私は邪魔だから、自分の席に戻ったの。ホント孝博は仕事となると目の色が変わるって言うか、仕事モードに入る。まあいうこういうお仕事だから、集中力っていうのは相当なものを必要とされる。やっぱり仕事中の孝博はかっこいい。未だにファンが多いのもうなづけるわね・・・。

私は孝博の席で寝込んでいる機長の脂汗を拭いていたの。

「源さん、すみませんね・・・。いきなり盲腸だなんて・・・。せっかくの家族旅行を台無しにしてしまった。でも源君が搭乗していてくれて助かりましたよ。源君なら大丈夫だ・・・。伝説の男だからね・・・。」
「そうでしょうか・・・。主人はホントここ最近747のライセンスを取ったばかりですし・・・。」
「いや、源君なら大丈夫だよ。今度一緒に組みたいよ・・・。ホントあのように優秀なご主人を持った源さんは幸せだね・・・。」

本当に孝博はすごい才能があるんだろうか?まだまだひよっこの孝博なのに・・・。

 無事にフランスのドゴール空港に到着したの。機長はお客様が皆降りたあと、待たせてあった救急車で運ばれていったの。孝博は操縦席のある2階から降りてきて、副操縦士さんと話している。

「ごめん雅、退屈だったろ・・・。美咲はいい子にしてた?」
「うん・・・。はじめはパパがいないって泣いてたけどね・・・。ほら、今はこんなにご機嫌よ・・・。」

私たちは荷物をまとめて飛行機を降りる。そういえば私たちって団体旅行のパックツアーできていんだ・・・。早く行かないと迷惑かかるよね・・・・。

 案の定なかなか降りてこない私たちにブーブー言うおば様方。

「すみません・・・機長が急病で、主人が操縦席に呼ばれて操縦の補助していました・・・。」

ホントに私たちは頭を深々と下げて謝ったのよね・・・。
みんな機長が病気だったってことには気づかなかったみたいで驚いていたのよ・・・。孝博がいてよかったわね。

一途 (8) 子連れ新婚旅行
 私の旦那様は何事もなく747のライセンスを取得してニコニコ顔で帰ってきたのよね・・・。これでジャンボを操縦できるってこと。海外主力路線って747が多いもんね・・・。

そしてバタバタと荷物を用意して新婚旅行へ・・・。もちろん美咲同伴だけどね・・・。成田発の便に乗るから、伊丹空港から成田空港行きの便に乗って乗り継ぐことになっている。ホント久しぶりの成田。本当に添乗員つきの旅行って楽ね・・・。手続きをみんなしてくれる。搭乗手続きの窓口には一時居たことがあるし、本当に懐かしいな・・・。

「雅、荷物預けたし、時間があるから、ラウンジへ行こう。」
「うん!」

私は借りたベビーカーに美咲を乗せて税関でのパスポート審査を終え、航空会社のファーストクラス用のラウンジに入るの。ここはお酒も飲めるし、軽食も充実。あるって聞いてたけど、入ったことはないのよね・・・。

「あれ?孝博飲まないの?」
「ん?なんだかいつもの癖かもしれないけど、飛行機に乗るときに飲む気がしないんだよね・・・。おかしいかな・・・。」

ホント私は孝博の言葉に笑ってしまった。そして私は孝博と美咲にジュースを頼んだの。

「今日のクルー誰かな?知っている人かな・・・。気にならない?孝博。」
「ん?んん・・・そうだね・・・。ジャンボに乗るんだよね・・・。」
「早く操縦したい?」
「そうだね・・・。せっかくライセンス取ったところだし・・・。でもまずは帰ると国内線での乗務だよ・・・。急がなくったって操縦できるさ・・・。移行訓練でもいっぱい操縦したしね・・・。」

出発時間が近づくと、孝博はじっと乗る予定の747を見つめて目を輝かせている。

「やっぱりジャンボはいいよね・・・。」
「そうよね・・・。」

私は美咲を抱きながら一緒にジャンボを見つめてたの。そして時間が来て、搭乗。もちろん私たちは美咲がいるから最後に入ったの。なんとクルーは知っている人ばかりで、みんな私たちの登場に驚いていたわよ・・・。そして同期の愛美さんが小さな声で話しかけてくれるの。

「雅~~~久しぶり。旅行?いいわね・・・。それもファーストクラス?美咲ちゃん大きくなったねぇ・・・。相変わらず源君のかっこいいこと・・・。」
「今度ね、9月から私復帰するの。孝博も9月から国際線に配属よ。」
「え!すごい!!!」

ホントみんな知っている人たち・・・。温かく迎えてくれたの・・・。

 初めての客として搭乗するファーストクラス。何もかもが新鮮で、うきうきしてたの。美咲も機嫌がよくておとなしくしてくれたから助かっちゃったの。

ミールサービス。
相変わらず孝博はお酒を口にしなかったのよ。
そういえば、以前訓練生の時、ファーストクラスに乗ってきたときもそうだった。
もともとお付き合い程度にしか飲まない孝博だしねぇ・・・。
美咲もおなかいっぱい食べてご機嫌でウトウト。
孝博は新聞片手にコーヒーを飲みながらくつろいでいる。
今回、孝博はわざわざ美咲のために一席取ってくれたの。もちろん孝博はここのパイロットでしょ。丁度空席だったから、取れたってこと。もちろん無料。美咲が眠ってしまったから、私も座席をいっぱいに倒してうとうとしていたの。孝博は相変わらず何かを読んでいるのよね・・・。

一途 (7) B747-400移行訓練の前倒し
 私の旦那様、孝博は9月から訓練の予定だったの。でも訓練が前倒しになって、7月から・・・。ということは当分自宅に帰ってこないって事?寂しいな・・・。また美咲が孝博になつかなくなったらどうしよう・・・。

 とりあえず孝博は荷物をまとめて東京の訓練センターへ・・・。シュミレーター訓練をして国内の訓練センターにてボーイング747-400のライセンス移行訓練と試験を行うことになっているの。実は彼、ボーイング777のライセンス試験中に油圧系統のトラブルで、胴体着陸して777を一機だめにしたという経歴を持つ伝説の男。また747が何かのトラブルにならないかと心配をしているのよね・・・。

「雅、訓練が終わったら、2週間休みが取れそうなんだ・・・。ちょっと遅くなったけれど、美咲も連れて新婚旅行へ行こう。行きたいところが決まったら、メールでもちょうだいよ。手配しておくからさ・・・。」

本当に嬉しかったんだ・・・。だって結婚した時お腹には美咲がいて、新婚旅行に行けなかったんだもの・・・。私はすぐに行きたいところが決まったの。やっぱり思い出の地イギリス・・・。そしてその周辺諸国に行きたいの。パリでお買い物もしたい。ドイツのロマンチック街道にも行ってみたい。ベルギーのおいしいチョコも食べたいし、イタリアでおいしいパスタも食べたい。行きたいところばかりで迷ったんだけど・・・。そして見つけたうちの航空会社のパック旅行。いろいろ行けて丁度2週間・・・。バスで連れて行ってくれるから楽でいいよね・・・。ファーストクラスがいい?ビジネス?美咲がいるからエコノミーは狭いなあ・・・・。せっかくの新婚旅行なんだからファーストクラスがいいな・・・。一度お客様としてファーストクラスに乗ってみたかったんだ・・・。

もちろん孝博に電話・・・。孝博は私が行きたいんならいいよって言ってくれたのね・・・。そして孝博は忙しいのにそのパックツアーを手配してくれた。もちろんファーストクラスで・・・。

 一番忙しい夏休み時期、8月の初めに休みを取り、お盆に帰ってくる予定なの。そして帰ってきたら、引越ししないとね。だって私も孝博も、9月1日付で、成田空港支店の配属が決まったんだもんね。

なんと私のパパったら、東京に戻ると聞いて、早速私達の新居を買ってくれたの。もちろん美咲を預けないといけないでしょ。だからなんと実家と同じマンションをお買い上げ~~~~。中古物件だったけど、決まってすぐにリフォームして、8月末に入居できるようにしてくれているのよね・・・。

実家と同じ間取りの3LDK100㎡強。中古でも結構高い。だって広尾だから・・・。早く引っ越せないかなあなんて、楽しみでたまらないの。

一途 (6) 重役からの呼び出し
 ある日俺は運行乗務員部に呼ばれる。まあいつものことなんだけどね。最近特に各航空会社からのアプローチが多くなってきて、うちの会社も引き止めに必死らしい。もちろん俺は移る気はない。でもこれをえさにいろいろ俺の希望を伝えておこうと思ったんだよね。こういうのは駆け引きが大事だってある機長に聞いたんだ。

 今日はなんだかいつもと違う。封筒を渡されるんだもんな。中身を見て驚いたよ。国際線移行訓練と747のライセンス取得に関する書類。ついでに雅のことの書類まで・・・。もちろん訓練終了後の勤務先まで書かれている。なんと俺が提示した条件をみんな飲んでくれたってことか。副操縦士になってまだ1年なのになんという異例なこと。普通なら3年いや5年かかるのになあ・・・。いってみるもんだ・・・。

もちろん他の声をかけてくれた会社には丁寧にお断りの電話をしておいたよ。
異動は9月。
とりあえず9月に引っ越す。

もちろん雅は喜んでたよ。でもまだ2ヶ月先のこと。雅なんか舞い上がっちゃってクローゼットから制服を取り出して眺めてたんだ。そしてボソッと。

「この制服入るかな・・・やばいかも・・・。着てみよっと・・・。」

そして俺の前で堂々と着替えてみる。やっぱりまだ子育て中だからか、ジャケットの胸がきついとぼやいている。しょうがないよ、まだ母乳育児なんだし。もうそろそろ断乳させないといけないってまたボヤく。でも本当に雅のCA姿は綺麗だよね。

客の中にFANがいるのもわかる。もちろん結婚するまでうちの会社のカレンダーモデルの常連だったしねぇ。(普通慣例では一人一回らしいけど^^;)

俺はついCA姿の雅を抱きしめてキス・・・。

「やだあ、美咲が見てるよ・・・。」
「いいじゃん・・・。仲のいいパパとママなんだから・・・。」

美咲はベビーベッドの中でじっと俺達のいちゃついている姿を見ているんだもんな。
いいじゃないか、たまには。今まで雅を美咲が独り占めしてたんだし。
いいよな少しぐらいママを貸してくれ。

一途 (5) これが有名な引き抜き?
 浮気騒動をなんとか切り抜け、副操縦士になって丁度一年の5月、俺は関空で懐かしい人に声をかけられる。

「源!」

それは防大の先輩。俺が1年のときに3年だった先輩で、俺と同じようにパイロットになったんだよね・・・。そういえば海外の航空会社に就職したって聞いたぞ・・・。

「あ、吉岡先輩、お久しぶりです。」
「ちょっと時間あるかな?」
「まあ・・・今から帰宅ですし・・・。」

俺と先輩は関空内にあるホテルのカフェでお茶。

「ホント久しぶりだな・・・。源。お前の副操縦士の腕は結構有名だよ・・・。」
「そうですか?まだまだ2年目ですよ・・・。」
「いや、何年もしてる下手くそなやつよりは随分ましだよ。で、今何に乗ってる?」
「777ですけど・・・。何か?」
「747に乗る気ないか?」
「そりゃ、そろそろライセンスを取ろうかとは思うんですが・・・。国際線に行きたいですし・・・。」
「それならうちのルフトハンザに来ないか?」
「ルフトハンザはうちの会社の提携会社ですけど・・・。」
「俺さ、上司にお前を引き抜いて来いって言われたんだよ。どうかな、悪い話じゃないだろ。今の給料よりも出すらしいぞ。まずは担当者に会って欲しいんだけど・・・。」

そういうと無理やり名刺を渡される。

「興味があったらここに電話をくれ。話だけでも聞くといいよ。じゃ、俺は今からフライトだから。」

先輩は俺が頼んだものを支払って空港内へ。これが世に言う引き抜きか?でも俺まだひよっこだぞ。別に興味がないわけじゃないけど、転職してしまったら雅と乗務出来ないよねえ。
 
自宅に戻り、着替えながら雅と話をする。

「もしさ、今の会社辞めて他に転職したらどう思う?もちろんパイロットとしてだけど・・・。」
「そんなのやだよ・・・。一緒に仕事したいもん・・・。引き抜きでもあったの?」
「まあね・・・。ルフトハンザ。」
「うちの提携じゃない!やはり噂は本当だったんだ・・・。」
「噂?」
「国内外はもちろん、世界中の航空会社が孝博を引き抜きたいって・・・。例の訓練中の事故あったでしょ。あれよあれ。世界中が注目してたって聞いたわよ。経験の浅い訓練生が何事もなく胴体着陸させたんだからね。」
「ま、安心して・・・話は聞く事はあっても今のところ移るつもりはないからね。それよりももうそろそろ747のライセンスを取りたいなあ。国際線には不可欠だしねぇ。」
「ねぇ、孝博・・・私、美咲が1歳になったら国内線からでいいから復帰していいかな・・・。」
「ん?んん・・・。それまでに俺が東京勤務になればいいけどね・・・。そうじゃないと美咲はどうするんだ?爺ちゃんに頼めないだろ。東京なら実家に頼めばいいかもしれないけど・・・。まあ希望は出しておくけど?」

ホントそうだよな・・・雅は前々から復帰したいって言ってたし、会社側も早く帰って来いっていっているのは知っている。

国際線で雅のクルー仲間がよくお客様に雅のことを聞かれるって聞いたよ。そして事情を説明すると皆残念そうにして復帰して欲しいというご意見が。もちろん本社にもいろいろ寄せられてるって。そして俺の耳にも入ってくるわけで。

それならは東京に戻して欲しいって感じだよね・・・。

一途 (4) 俺の浮気疑惑??
 今日は機材の都合で、伊丹空港へ帰らず、関西国際空港に到着。関空支店で報告書記入を済まし、さあ帰ろうと思ったんだ。JRで帰るか、リムジンバスで伊丹空港へ戻るか。タクシーはちょっとねぇ。結局リムジンバスで帰ることにしたんだ。よく考えると車を伊丹空港に置いて来たんだよねえ。

リムジンバスの時刻表を見ると出たばっかり。ついてないなあって思いながら、時間つぶしに何しようかと考える。どこかでお茶でもしようか、それとも美咲に何かお土産を買おうかなんて悩みながら国際線の到着フロアでうろちょろしてた。すると声を掛けられる。

「た・か・ひ・ろ・君」

こういう言い方をするやつはただ一人・・・ゲ、丹波だ・・・。

「今日は関空だったの?もしかして私を待っていてくれたの?そうだったら嬉しいな・・・。」

なんていって俺の腕を掴む。おい、お前の会社のCAが見てるだろうが・・・。先輩に冷やかされたこいつはこういうことを言いやがった。

「私の彼氏です!かっこいいでしょ~。副操縦士なの~~~~~。」
「おい!俺はけ、結婚を・・・。」
「いいじゃん。私不倫でも構わないもん。だって私・・・。」

そういって嘘か真か知らないけど泣きやがる。泣くなよ・・・誤解される。俺はどうして女の涙に弱いんだろう・・・。丹波由佳をやんわり抱いてたんだよね。時計を見るとやばい!!!バスの時間・・・。

「ごめん、俺帰る。」

そういって俺は丹波由佳を離し急いでリムジンバスに乗る。あ、美咲に何か買って来ようと思ってたのになあ。最近やっと抱かせてくれるようになったんだもん。伊丹空港で買うか。

 俺は伊丹空港支店のロッカーに制服をかけると、展望フロアにあるお店で美咲のおもちゃを買って自宅に着く。

「ただいま~~~~。」

すると爺ちゃんが美咲を抱いて出てくる。

「あれ?雅は?」
「買い物行ったけど・・・。」
「そ、美咲~~~おもちゃ買って来たぞ、後でパパと遊ぼう。」

でも雅が美咲を置いて買い物に行くって珍しいよな。いつも近所のスーパーに行くんだったら美咲をベビーカーに乗せていくのに。

俺は着替えたあと、リビングで買ってきたおもちゃを出して美咲と遊んだんだ。引っ張って歩くと鳴く犬のおもちゃ。美咲は座っておもちゃを前後に動かして喜んでいる。気に入ってくれたんだ。時間を見ると6時か。どこまで買い物に行ってんだろ。

しょうがないから俺がありあわせのもので夕飯を作ることにしたんだ。8時になっても帰ってこないもんだから俺は電話をした。

「雅か?今どこにいる?」
「私・・・。今梅田なの・・・。もうすぐ帰るね・・・。ごめんね・・・。」

なんか声がおかしいんだよね・・・。9時になってやっと帰ってきた雅。両手いっぱいに何か買い込んで・・・。

「雅、こういうこと初めてだよね・・・。美咲置いて買い物だなんて・・・。」
「ごめんなさい・・・。すぐ帰るつもりだったんだけど・・・。でも・・・これ見て・・・・。」

そういうと俺に携帯の画面を見る。なななんとこれって・・・関空で・・・。

「なにこれ?ねぇ孝博。私の高校の親友、舞ちゃんが送ってくれた写メ。これ孝博だよね・・・。このCA誰?それも他社だよね・・・。」

これって丹波由佳が泣いたから・・・ついやんわりと・・・・。他社の到着フロアだからって油断してた・・・。

「私むしゃくしゃして買い物でストレス発散したわけ!ねぇ何これ、ねぇ・・・。」
「こ、これは丹波由佳だよ・・・・。俺見て泣いたからついやさしくしてしまったんだ・・・。」
「うそ!このCA彼氏だって断言したって・・・。」
「あれは勝手にあいつが言ったんだよ!知ってるだろあいつの性格。」
「孝博は未だにモテモテだもんね・・・。いいよ別に・・・私は美咲がいるから・・・。好きにしたらいいよ!最近の孝博、家にいてもつまんなそうだもんね・・・。」
「雅!」

そういうと雅は部屋に美咲と入ってしまったんだよね・・・。じいちゃんったら2人のやり取りを見て呆れてたよ・・・。

ホントに最近すれ違いが多いな・・・。
やっぱり雅は今の生活に不満があるんだろうなきっと・・・。

一途 (3)同居
 俺は長いフライトから戻ってきた。いろいろな都合で機材間に合わなかったりとかで空港に足止め。日帰りのはずが足止めされた札幌で一夜を過ごした。本当なら今日は休みのはずだったのに。

そう今日は雅と美咲が引っ越してくる。引越しの手伝いをするつもりだったのにね。はじめは空港の近くに家借りて3人で新生活をするつもりだったんだけど、今俺が出て行くと爺ちゃんは一人暮らしになるんだよね。

もういい歳の爺ちゃん。90近いのに元気元気なんだけど、いつ何があるかわからないから、父さんが定年で戻ってくる来年の末までは同居しようって雅と決めたんだよね。

雅にとっても大事な祖父。特に爺ちゃんは昔から孫の中で雅がかわいくてしょうがなかったから、雅と同居と聞いて、すごく喜んだんだよね。

昼過ぎの便で帰ってきた伊丹空港。
疲れてはいないけれど、なんとなく気が重い。
これって気疲れってこと?

俺は雑用を済ませると関係者駐車場に停めておいた車に乗って、伊丹の自宅へ帰ったのは夕方。とりあえず次のフライトのあとにまとめて休みをもらえたんだよね。

これで美咲と遊べる。

もう美咲は5ヶ月。はいはいもお座りもきちんとできて、とてもかわいくなったよって雅が言ってたんだよね。なかなか会う機会がなかったからきっと美咲は俺のこと嫌うかもしれないな。

自宅の駐車場に車を停め、玄関の戸を開ける。
すると奥から楽しそうな声が聞こえる。

「雅、美咲が泣いてるぞ!何でだ?」
「お爺ちゃま、ちょっと待ってて・・・美咲おなか空いてるのよ・・・。」

などと微笑ましい内容の会話。あぁ本当に雅と美咲が引っ越してきたんだよね・・・。

「ただいま・・・。」

俺はリビング前で、ただいまを言うと、雅が微笑んで言う。

「おかえり、大変だったね・・・。雪で足止め?」
「そうだと思うけど・・・。まあ帰れてよかったよ・・・。爺ちゃんただいま。」
「おお孝博、美咲はかわいいなあ。雅のこれくらいの時そっくりだ。愛想もいいしな。ほら、美咲、パパが帰ってきたぞ。」

俺が美咲を抱こうとすると、美咲はなんかパニックになって泣き出す。
雅が美咲を抱いてなだめて言う。


「孝博、制服脱いでから抱っこしてみたら?美咲、パパだよ。美咲のパパ。」


しょうがない・・・着替えてくるか。雅は俺のカバンを持って俺たちの部屋へ。

「ごめんね孝博・・・。最近美咲人見知りが始まったみたいで・・・。ちょっと早いと思うんだけど・・・。」
「しょうがないよ・・・。別居してたんだから・・・。雅・・・。」

俺は雅からフライトバックを取って机に置くと、抱きしめてキスをした。ホント雅とも久しぶりに会うんだから。

「だめだよ孝博・・・。続きはあとでね・・・。さ、早く制服脱いで、ご飯にしましょ。」
「うんそうだね・・・。」

食事のあとも美咲を抱こうとしても泣き叫ばれてしまう。
夜久しぶりに夫婦生活と思っても、環境が変わったのが気に入らないのか美咲は夜鳴き。
俺は雅とこれからっていう時に途中で止められて、渋々そのまま寝てしまった。
もうこういう生活が何日も続いて俺は滅入ってしまったんだよね・・・。


「雅、なんで美咲は俺になつかないんだ?ホントに俺の子か?」
「何言ってるの?クリスマスの日、孝博と過ごした日に出来たんだから・・・。私が浮気でもしたって言うの?ひどい・・・。」
「ごめん、俺眠れないから親父の部屋で寝る。明日フライトだし・・・。」

そういうと、枕をかかえて今は使っていない親父のベッドに潜り込んだ。
この日から雅と俺は新婚なのに別室になってしまった。

一途 (2)パパになる
 沖縄那覇に泊まりの日、電話がかかる。

「孝博か???雅が産気づいた。東京に帰って来れそうか!!!」

実はなぜ沖縄にいるかというと・・・台風で足止めくらってるんだ。もうこれで2日目。ホテルと空港を行ったり来たりしても飛ばないんだもの。那覇から飛び立つことができれば、次は東京羽田だから。雅・・・。

「すみません・・・。飛行機が飛ばないんです・・・。明日飛ぶことが出来れば、羽田に行きますので、その時に・・・。」
「それはしょうがないな・・・。そうか・・・台風だからな・・・。じゃあ雅にかわるよ・・・。」

そういうと叔父さんじゃなかったお義父さんは雅と電話を交代する。

「雅・・・。いけなくてごめんな。今那覇に足止めくらってるんだ・・・。こっちは今日中に台風は去るけど、東京方面に向かってるから降りれないよたぶん・・・。ホントにごめんな・・・。」
「孝博、わかってるよ。私副操縦士の妻だし、そういう仕事にいたんだから・・・。生まれたらメール入れるね・・・。孝博?雅のこと愛してる?」
「もちろん愛してるよ・・・。元気な子産むんだぞ・・・。」
「うん・・・じゃあ切るね・・・。」

 何でこんな時に台風がくるんだ?ついてないよな・・・。あれほど俺は休みさえ合えば立会い出産をしようと思ったのに。俺は部屋にいられなくなって、ホテルのロビーを行ったり来たり。時折携帯を眺めたり、腕時計を眺めたり。変な行動をする俺を見て、機長が声をかけてくる。

「どうした?源・・・お前らしくない・・・。」
「実は、妻が産気づきまして・・・。早く東京に行きたいのに!!!!」
「まあまあ・・・自然には勝てないよ・・・・。座って座って・・・。そういえば僕もそうだったよ・・・。初めての子の時なんて仕事どころじゃなかった・・・。わかると源君・・・。すぐに生まれるもんじゃないから、ゆったりしなさい。」
「はい・・・ありがとうございます・・・。」
「そうか、君はお父さんになるんだね・・・。じゃあ弐條前首相もお爺ちゃんか・・・。若いおじいちゃんだ・・・。52でお爺ちゃんか・・・。僕と同じ歳でねぇ・・・。すごいかも・・・。きっと君と雅さんの子だったらかわいいだろうね・・・。」

外はまだ風が強い。暴風雨とはいえないものの結構雨風共に強いんだ。これじゃ気晴らしに外に行こうということも出来ない。しょうがなく俺は機長とラウンジで夜通し飲んでたよ。やっと朝方かな。お義父さんから連絡があって、女の子が生まれたって。名前は何にするって聞かれて俺は決めていた名前を伝えたんだ。

「美咲」

源美咲。
とてもかわいい名前だろ?
もちろん雅も気に入ってくれて、その名前に決まったんだ。

 で、美咲と雅にあえたのは2日後。色白で小さくてかわいい美咲はやはり雅に似ているんだと思う。こんにちは、美咲、俺がパパだよ。これからもよろしくな!

一途 (1)新婚なのに単身赴任
 俺は某航空会社の副操縦士をしている源孝博。実は6月に結婚したばかりの25歳。まだまだ昇格して1か月半という新米の副操縦士さ。俺の妻は妊娠中で、9月に子供が生まれるから、実は実家の広尾に住まわせている。もちろん一緒に住みたいって言われたけど、俺の場合日本中を飛び回っているから、留守がちになる。だから実家にいろって言っておいたんだ・・・。あと予定日まで三ヵ月きったもんな・・・。

 今日は乗務を終え、勤務地の大阪伊丹空港に着いた。今日は早番だったから、夕方の便で乗務終了・・・。

「お疲れ様でした・・・。」

そういってうちの航空会社の大阪伊丹空港支店を出る。今日は一緒に住んでいる爺ちゃんが退役自衛官の集いかなんかで東京へ行ったから、今晩はひとり夕飯をどうにかしないと・・・。

外食もいいけど、あまり一人で食べに行くのは好きじゃない。別に食事くらいは自分で作っても億劫じゃない。俺は父さんの車「パジェロ」に乗り込んでとりあえず自宅の近くのスーパーへ。

制服着たままでの買い物は恥ずかしいけれど、いったん家に帰ってまで買い物するのは面倒だ。ここは俺が高校時代から行きつけのスーパー。陸上自衛隊中部方面隊の総監部のほんと近くにあるから夕方になると自衛官が買い物に訪れる。

 俺が夕飯何にしようか物色していると、声を掛けられる・・・。

「お前源じゃないか?覚えてるか?防大で3年先輩だった高倉だよ。」

振り返ると確かに防衛大学校でお世話になった先輩だ。

「お久しぶりです、高倉先輩。」
「噂どおり、パイロットになったのか。今どこ勤務だ?」
「今大阪伊丹にいるんです。今実家に世話に。先輩は?」
「俺は総監部にいるんだ。元気そうだな!そうだこれから総監部で飲み会するんだけど、どう?結構懐かしい顔ぶれがいるぞ!!!」
「そんな、勝手に入っちゃ叱られますよ。俺はもう自衛官じゃないし・・・。」
「まあまあ・・・なんだかんだ言ってお前は陸上幕僚長殿のご子息だ。なんとか言って入れてもらうよ・・・さあ来い!」

まあ先輩の言葉は絶対だからな。

荷物と車を家において、仕方なく正門から入れてもらうことになった。もちろん止められるよね。もちろん先輩は警備官といろいろ話している。

「だから、こいつは幕僚監部陸上幕僚長殿のご子息。知ってるだろ陸上幕僚長といえば、ここの前総監だろ。顔を見ればわかる。源博雅陸将殿にそっくりだから・・・。」
「それはそうですけれど・・・。」
「俺はお前らよりも上官だ。幹部だぞ!!!俺は三佐だ。三曹のお前らと一緒にするな。」
「でしたら身分証明書と・・・。ここに名前を・・・。」

俺はどれを見せたらいいかわからなかったから、適当に出したら、B777のライセンスだったんだ。恥ずかしい。まあなんとか入れてもらえて、飲み会会場へ。10人くらいかな。みんな防大出身の人たち。知ってる顔も結構いたりする。

「おお!みんな懐かしいやつ連れてきたぞ!!!覚えてるか?」
「おお!!!源!!!元気か???」
「お久しぶりです。」

俺は苦笑。上は30歳くらいから下は俺より2こ下くらいかな・・・。もちろん知らない人もいるからってさっきの先輩に紹介される。

「こいつは源孝博。前総監のご子息。ということは幕僚監部陸上幕僚長のご子息ってことだ。防大を首席合格したくせに、途中で中退して航大に入って今は航空会社で副操縦士をしてるんだぞ!この前結婚したって聞いたぞ?どんな子だ?なあなあ。」
「俺の家内はCAで・・・。覚えていますか?よく防大前で俺を待っていた子です・・・。」
「ああ、いたいた!!!結構綺麗な子だったよな!確か2歳上・・・。写真とかない?」
「一応ありますけど・・・。」

もちろん結婚式の写真じゃないけど、制服姿の俺と雅・・・。もちろん羨ましがられたよ。やっぱり雅は航空会社の中でも1、2を争うような美人だったし、優秀でさ。産休終わったらすぐ戻って来いといわれたんだ。もちろんみんなは俺のこと興味津々で、俺のIDとかライセンスを見てすごいすごいって言うんだよね。

「おお!B777操縦してるんか!!!1回してみたいよな・・・・。」
「操縦って言っても俺は副操縦士ですから・・・。」
「でもすごいよな・・・ここで操縦できるやつってヘリとかだもんな・・・。」

すごい盛り上がっちゃってお開きになったのは夜11時くらいかな。
俺はなんとか門から出て自宅に帰ってバタンキュ~~~~~。
ああ、明日休みでよかったよ。
二日酔いじゃ乗務できないよな。

でもなんだかんだ言って自衛官の格好をしている先輩たちを見て、うらやましいと思うんだよね。もともとなりたかった職業だから。



作者から一言。

『夢』の続編です。題名『一途』は、やはり『一途な心』をテーマに長々書き綴る日記風小説です。

四神降臨 復活編 最終章 鳳凰降臨 (5)未来
 もうあれから何年経ったのかしら・・・。私は下賀茂神社内の一室にいる。純白の白無垢を着て・・・。

いろいろあったなあ・・・。少女だった私は今はもう立派な女性。養父母の朱雀神社の宮司さん夫婦は本当の娘のように今まで面倒を見てくれた。もちろん大学も出してくれた。普通の人間の生活。

「紫苑、準備できた?」

と、今日から私の旦那様になる人が声をかける。その人は私の白無垢姿を見て微笑む。

「何?恥ずかしいじゃない。じっと見ないでよ・・・。麻沙耶。」
「紫苑、すっごく綺麗だから・・・。」

そう私は玄武に関わる者だった近衛麻沙耶と結婚する。

ここまで来るのに色々反対された。だって麻沙耶は旧五摂家の次期当主。名門中の名門の長男。麻沙耶のご両親は名家のお嬢様と結婚させたかったらしいんだけど、麻沙耶は私を選んでくれた。きちんとご両親にも紹介してくれて、うまく行くと思ったんだけど、反対されたの。だって私は両親もいない、そして小さな朱雀神社の養女だから・・・。麻沙耶は何年もかけてご両親を説得してくれたんだけど結局首を縦に振らなかった。

「紫苑。しょうがない・・・最後の手段だよ・・・。」

といって既成事実をつくろうって・・・。はじめは私は反対したの。だって祝福されて結婚したい。でもそれではいつになっても結婚できないよって言われて首を縦に振った。そして私の体の中に新しい命が宿った。

「大丈夫だよ。うちの両親は処分しなさいとは言わないよ。だから安心して・・・。」

私は麻沙耶にすべてを任せることにした。案の定麻沙耶のご両親はしぶしぶ首を縦に振ってくれたの。そして結婚してからは麻沙耶の配慮で、当分麻沙耶のご両親と別居することに決めたの。

神聖な神前結婚。ふと振り返ると外にはお兄ちゃん。相変わらず若いまんまのお兄ちゃん。そして側には私達の他の四神に関わる者たち。私たち夫婦の門出を祝ってくれている。式が終わると親族での記念撮影。すると麻沙耶がご両親にいうの。

「ねえ父さん、母さん、あの3人も一緒に写っていい?あの3人は僕の大切な友達なんだ。」
「ああ、麻沙耶の友達ならいいだろう。」

3人が合流して記念撮影。本当にうれしそうなお兄ちゃんの顔。ホント九条君や安倍君と変わらない若さ。きっと麻沙耶のお父さんはみんな同級生と思っているんだろうな・・・。

「さあ!写しますよ!!!花嫁さん、もっと笑って!!!花婿さんも!!はい!」

出来上がった写真はホントに幸せそう。

平和で美しい国、日本。私はこの国に生まれてよかった。これからもずっと平和だといいな・・・。どうか四神が、そして黄龍が降臨しない世の中であり続けますように・・・。


(完)

四神降臨 復活編 最終章 鳳凰降臨  (4)再会
「お姉ちゃん!早くしないと遅れるよ!」

と亜樹ちゃんが私に声をかける。私は夏服のブラウスのボタンをかけ、緑色のリボンをつける。今日から私は高校3年生。そして2学期が始まる今日、私は大好きな彼がいる学校へ編入する。

 私は亜樹ちゃんの家の養女となった。政府から戸籍をもらったの。今日から私は源紫苑。お兄ちゃんの源朱央は本年度いっぱいまで先生として働く許可が政府から下りた。初めて3人で通学する。相変わらずお兄ちゃんは口数の少ないイケメン歴史教師。誰も双子だって信じないよね。

 昨日お世話になっている父親代わりの宮司さんとこの学校へ来た。そして転入するクラスも決まったの。大好きな彼と同じクラスだったらいいななんて思いながらお兄ちゃんと職員室へ。私の担任は女の先生。この人は元私が黒田紫苑と名乗っていた時の担任・・・ということは・・・?

 私は始業式前の教室へ担任とともに案内される。そして廊下で待つ。

「ほらほら!座って!今日は転入生がいるのよ!珍しいでしょ?さ、源さん入って。」

私は先生の言うとおりに教室へ入る。私を見た男子生徒がおお!!って・・・。

「源紫苑さんです。もともと海外のほうにいたらしいのだけれど、ご両親が亡くなられて、親戚のいる京都へ・・・。さ、自己紹介を紫苑さん。」

私は教室を見回した。相変わらずまだ阻害されているの?私の大好きな麻沙耶・・・後ろの席・・・。私の姿を見て真っ赤な顔をして見つめている。

「源紫苑です。京都に越してきたばかりでよくわかりませんが、よろしくお願いします。」

そういうと先生に席を指定される。

「近衛君、手を上げて・・・。」

麻沙耶君が恥ずかしそうに手を上げる。

「紫苑さん、近衛君の横の窓際があいているから、そこがあなたの席よ。」

ここは私が黒田紫苑と名乗っていた時の机。そして横には大好きな麻沙耶・・・。休み時間私は麻沙耶の前の席に座って微笑む。

「いつも一人でいるの?一人でいるの楽しい?可愛い顔だね。私好きだよそんな顔。」

そういえば私がはじめて麻沙耶に会った時、同じようなことをいったの。覚えてる麻沙耶?すると麻沙耶はにこっと笑って私に言うの。

「お帰り、紫苑。待ってたよ。きっと紫苑は帰ってくるって信じてた・・・。」

そういうと麻沙耶は私の手をぎゅっと握り締めて手の甲にキス。そして立ち上がって私の手を引き、私と教壇に立って言うの。

「おい!みんなよく聞け!紫苑に手を出すな!紫苑は僕の彼女なんだからな!!!」

クラスのみんなは今まで男しか好きにならないと思っていた麻沙耶の言葉に驚いていた。信じられない顔をしているクラスのみんなに麻沙耶は私を抱きしめてみんなの前でキス!ちょっと強引だけど・・・。でも私はうれしかった。麻沙耶は私のことを忘れていなかった。急に涙がこみ上げてきて私は麻沙耶の胸の中で泣いたの。もちろんうれし涙よ・・・。

クラス中は大騒ぎ。でもいいの。私達は本当に愛し合っているんだから・・・。

四神降臨 復活編 最終章 鳳凰降臨 (3)平安
 例の戦いが終結し、私は担当部署に提出する報告書をまとめた。

行方不明になっていた船、潜水艦、飛行機は不思議なことに無事に現れ、何事もなかったかのように帰還。現代の神隠しだと騒がれている。そしてあれほど頻発していた地震をはじめとした天変地異もあれ以来ぴたりと消え、この美しい国日本に平和が訪れた。

担当部署以外の人には理解できない内容の報告書。知らない人が見たとしてもこれはフィクションであると思うのであろう。そして報告書の最後にこう要望書きを付け加える。

『朱雀に関する者である我が妹、紫苑に正式な戸籍を与えてください。そして18歳の普通の人間の少女として扱っていただけるようによろしくお願いします。』

と書き記した。

「兄さん!ごはんだよ!」

と、巫女の格好をした紫苑がいつものように夕飯を呼びに来る。本当に紫苑は人間になった。もう朱雀のオーラなどまったくない。ここのところずっと紫苑は麻沙耶に会っていない。というよりも会ってはいけないのだ。これはしょうがないこと。政府から紫苑のこれからのことについての指導がない限り、動けないし、また外界との接点も禁じられているからだ。もちろんそれは麻沙耶君をはじめ、竜哉様、聖斗君にも説明した。ちょうどいいではないか・・・。彼らは受験生だ。この夏休みの間、今まで怠っていた勉強に精を出すのもいいものだと思うのだが・・・。紫苑もいつ普通の女の子としての生活が始まってもいいように、朱雀神社の娘亜樹とともに勉強をしている。そしてバイトとして巫女をやってくれているのだ。

 本当に今までのことが嘘のように平和な生活・・・。私は今までのようにまた生き神としての生活が始まるのだろうか・・・。せっかく教諭として慣れてきたところであるのに残念だけれど、教諭というのは私の仮の姿。いつまでもこの姿でいることは許されない・・・。

 しかし平和はいいことだ。私もいつ何時指令が来ても言いように充電をしないといけないからね。


四神降臨 復活編 最終章 鳳凰降臨 (2)願い事
 僕はもとの姿に戻った。もう僕って言うのはおかしいんだけど・・・。本当に僕は女の子だったんだね。長い髪、細い体、そして大きくもなく小さくもない胸、そして丸みのあるお尻・・・。顔は兄さんに似ているけれど、やはり女の子って感じの顔。双子だもん。麻沙耶ははじめ僕の姿を見て戸惑っていたんだけど、僕を僕と認めてくれた。初めて僕を女としてぐっと抱きしめてくれた。

麻沙耶はやっぱり男の子だよ。その力は力強かった。おとこおんなじゃない。この胸のドキドキ感。やはりこれは恋だよね・・・・?麻沙耶もなんだかたくましく見える。黒龍との戦いをともに戦ってきたから?ひとまわりもふたまわりも麻沙耶は成長した。男らしくなったよね?

 美しい瑞鳥鳳凰は微笑みながら僕たちを見つめていた。

「あのね、私からあなたたちに贈り物があるの。」

と、鳳凰が言う。贈り物?

「あなたたちの願いを叶えてあげる。何でもいいとは言えないけれど、一人一つ言ってごらんなさい。もちろん朱雀の皇子、守護龍、白狼も言って御覧なさい。あなた方はよくがんばってくれたもの・・・。」

みんなは考え込む。そして一人ひとり言っていく。九条君は平和。安倍君は天変地異がなくなること。守護龍・龍磨は立派な守護龍として守るべきものを守りたいと、白狼はずっと安倍君と一緒に過ごしたいと、麻沙耶は僕のために男らしくなりたい、そして僕は・・・。

「あの・・・鳳凰。僕、いえ、私は・・・人間になりたい。朱雀じゃなくて人間に・・・。」
「どうしてなの?不死鳥のあなたが・・・。せっかく覚醒したのに?」
「それが嫌。兄さんが言っていた。愛するものがみんな老いて死んでいくのを見届けなくてはならない苦しさ。永遠の若さなんていらない。私は麻沙耶と一緒に人間として生きたい。麻沙耶と一緒に歳を重ねて最後まで寄り添いたいから・・・。だめかな?兄さん・・・。」

兄さんは私の言葉に微笑んで頷いてくれた。もちろん鳳凰も私の願いを受け入れてくれた。最後に兄さんの願い・・・。

「私は何も要らない・・・。しいて言えば、紫苑をはじめみんなが幸せに暮らせさえすれば何もいりません。それでいいですか?鳳凰様・・・。」
「わかりました。皆さんの願い、受け入れましょう。」

鳳凰は変化して天高く飛び立ち、眩い光を放つ。とても清々しい聖なる光・・・。私は体の中の朱雀が消え去り、生まれ変わったような感覚を覚えた。鳳凰が消え去ると、まぶしい朝日が昇ってきた。

「兄さん、これ返すね。」

私は兄さんに朱雀のしるしを手渡した。もちろん私の分も含めて。

「これは紫苑の・・・。」
「もういい。もう私は朱雀の姫皇子じゃないから。朱雀の印は必要ないの。私の本当の父と母は私が人間になったことを怒るかなあ・・・。」
「そんなことはないよ。紫苑が決めたことなんだ。」

麻沙耶が私の側に来て微笑む。私は麻沙耶の体に身を預けて光り輝く朝日をみんなで見つめた。本当にひさしぶりに清々しい朝がやってきた・・・。

四神降臨 復活編 最終章 鳳凰降臨 (1)鳳凰降臨
 黄龍が消え、東の空が赤く染まっていく。夜明けだ・・・。そして天空には平和の象徴である鳳凰が聖なる光を放ちながら舞うように飛んでいる。私や白狼、龍磨に降り注ぐ聖なる光り。傷ついた体は回復した。そして漆黒の森は生命が漲る森へと変わっていた。振り返ると満面の笑みで向かい合う4人。無事に帰ってきたんだ。四神に関する者たち。

「兄さん!!!」

紫苑が私めがけて走り出し、飛びつく。

「僕やったよ!みんなの力で黒龍を倒したよ!!!」
「そうだね紫苑・・・。でも・・・まだお前の姿は・・・。」

まだ紫苑の姿は男のままだった。すると鳳凰が私たちの前に舞い降りる。鳳凰は人型になり、紫苑の前へ・・・。鳳凰の人型は女性・・・。なんて綺麗な人型なんだろう。鳳凰は姿が戻らないことによるショックで座り込んでいる紫苑の頭に手を置き、目を閉じる。すると紫苑の体は赤紫の光に包まれ、その光が消えるとそこにいたのは髪の長い少女・・・。これが紫苑の本当の姿というのか?紫苑は怖々閉じていた目を開け水溜りに写る自分の姿を見つめる。顔は私に似ているものの、姿かたちはまさしく少女。紫苑は自分の長い髪を不思議そうに触りながら私のほうを見つめる。

「兄さん・・・?僕・・・。」

声も少女の声に変わっていた。

「これが本当の僕の姿・・・・?」

白い肌に桃色の唇、茶色の瞳に茶色の髪。聖斗君や竜哉様は紫苑の本当の姿に顔を真っ赤にして見つめているのだ。学校にいるどんな少女よりも可愛く、美しい・・・。紫苑は麻沙耶君の方を見つめ、微笑む。

「麻沙耶・・・。」
「紫苑君・・・・?」

麻沙耶は紫苑に近寄り座り込んでいる紫苑に手を差し伸べる。紫苑は麻沙耶君の手を握ると立ち上がり、麻沙耶君に抱きつく。麻沙耶君ははじめ複雑な顔をしていたのだが、フッと微笑むと紫苑をぎゅっと抱きしめた。なんと微笑ましい光景なのだろうか・・・。

四神降臨 復活編 第10章 五神降臨 (6)完全消滅
 私は眩い光で目が覚めた。何とか命は助かったようだ。白狼も龍磨も荒い息をしながら立ち上がり、黄龍降臨に立ち会う。そういえば4人の姿がない。誰が生贄になったというのだ?もしかして4人で生贄になったのか?

 眩い光が消え、現れる黄龍。まさしく黄龍が降臨した。さすが神獣の筆頭、黄龍の気は凄まじく、陽の気が充満する。特に前回に比べて、黄龍の力が増大しているのがわかる。やはり4人が生贄となったからなのか?

『深海深く封印したはずの黒龍よ。またお前は人間に復讐をしようとしているのか?』
『ふ、今の私は以前の私ではない。黄龍よ。私はたくさんの力をこの体に蓄えた。にっくき人間どもを苦しめるのが私の願い。穢れも知らない私の子たちを皆殺しにした人間への復讐。同じ目に遭えばいいのだ。ちっぽけな人間どもは・・・。』
『人間の皆がそういうものではない。一部に過ぎない。人間は弱い。弱いからこそ恐怖に襲われると何をしでかすかわからない動物ではある。しかし人間には愛がある。愛は恐怖に勝つ。お前にもあったはず。子を想う愛。家族を想う愛。そして一族を想う愛!』
『愛などもうどうでも良い!』
『まだわからぬか!黒龍よ!わかった。もう二度と黒龍族に機会は与えぬ。我は黒龍を完全封印する!もう復活などありえない。この世から黒龍を完全消滅させる!!!』

黄龍はさらに力を増大させ、黄金のオーラを全身から放出する。対抗するように黒龍も漆黒のオーラを放出。しかしやはり力の差は歴然だった。四神に関わる者すべてが生贄になったからか、以前の黄龍の力よりも4倍強い。黒龍は黄龍に襲い掛かるが、聖なる力で吹き飛ばされる。しかし怯まない黒龍に黄龍は苛立ち、黄龍は反撃する。ぶつかり合う巨大な二体の神獣と魔獣。凄まじい衝撃波が起こる。私の残り少ない力で結界を張り、白狼と龍磨を守護する。黒龍は力を使い果たしたのか、力を無くし倒れる。荒い息づかい・・・。最後の力を振り絞って黒龍は頭を上げるのだが、すぐに黄龍によって地面に叩きつけられた。黒龍は倒れこんだまま人型となり、虫の息で動かないのである。

『終わったか・・・。』

はじめてみる黄龍の人型。白い肌に金色の髪。そして黄金に輝く瞳を持つ黄龍の人型。黄龍は黒龍に近寄り、黒龍の胸元に輝く黒龍の水晶玉を取り出し、天高く投げ、呪文を唱えるのだ。すると黒龍の水晶玉は木っ端微塵に砕け散り、消え去ると同時に黒龍の姿も消え去った。

『朱雀の皇子、朱央。これで黒龍の復活はないであろう。龍族の一角を失うことは残念なことだが、しょうがない。朱雀の皇子よ。よくここまで四神に関わる者を集めてくれた。皆純粋で平和を愛するいい者達ばかりであった。この者たちの愛がある限り、人間に愛がある限り、魔王が現れようとも、我は何度でも復活し、降臨する。では我は再び深い眠りにつく。このあとのことは鳳凰に任せる。ではこれからのことを頼んだよ。朱雀の皇子よ・・・。』

そういうと黄龍は微笑みながら消えるのだ。

四神降臨 復活編 第10章 五神降臨 (5)黄龍降臨
 四神が降臨した。はじめてみる四神。これからどうすればいいの?僕は兄さんに聞こうとした。しかし兄さんは倒れこんでいた。ピクリともしない。

「兄さん!!!」

僕は倒れこんだ兄さんの元へ駆け寄ろうとした。すると僕の体が光る。

『紫苑、お前は黄龍降臨の生贄に選ばれた。さあ!呪文を唱えよ!』

四神のうちの一神『朱雀』が僕に話しかける。この僕が生贄?もちろん生贄についてのレクチャーを兄さんに受けた。もちろん呪文も・・・。生贄になるってどういうこと?もしかしてこのままこの世からいなくなるの?僕は不安でたまらなかった。すると僕の手を誰かが握った。

「紫苑君。僕も一緒に生贄になるよ。ずっと一緒だよって約束しただろ?」
「麻沙耶・・・。」

そして安倍君も九条君も僕のところにやって来て僕の手を握り締める。

「朱雀!僕ら4人は一心同体だ!一人欠けるなんて考えられない。僕たち4人で生贄になるよ!朱雀!そして僕の神、青龍!」

九条君が朱雀と青龍へ向かい叫んだんだ。

「そうさ!白虎!俺も九条と同じ考えだ。4人で力を合わせて黒龍を倒す。そしてもとの美しい日本に戻すんだ!!!」
「いいよね、玄武。4人の力を合わせて最強の黄龍を降臨させようよ!」
「みんな・・・。いいよね、朱雀・・・。」

四神すべてが頷き、4人すべての体が光り輝く。そして足元には五行星が浮かび上がり、僕たち4人で一緒に呪文を唱える。

『・・・・我ら四神に関わる者が生贄となり御願い奉る!黄龍降臨!』

僕ら4人の体がさらに光り、眩い光が漆黒の闇を照らす・・・。

四神降臨 復活編 第10章 五神降臨 (4)四神降臨
 四神に関する者すべてが完全覚醒した。四神に関する者すべての体が眩い光に包まれる。青龍は青、朱雀は赤、白虎は白、玄武は緑の光。ああこれで四神が降臨する。体制を崩した黒龍は立ち上がり、四神に関するものに向かって襲い掛かる。

「白狼!龍磨!!!四神に関するものを守護せよ!!!」

我ら三体は変化し、四神に関する者の前に立ち、時間稼ぎをする。もちろん我らの力でかなう相手ではない。特に今回、黒龍は核をはじめとしたエネルギーを吸収し、力を増大させた。本当に時間稼ぎにしかならないだろう。そして我らの命の保障もない。しかし我らが怯んでいる場合ではない。我らの命など惜しくはない。

さすがに黒龍の力は凄まじい。我らの力など、赤子同然ですぐに吹き飛ばされる。白狼、龍磨は虫の息。さすがに朱雀の皇子である私も薄れ行く意識の中で私は四神が降臨する瞬間を目撃することが出来た。

 四神に関わる者の光が柱となり、青龍は東、朱雀は南、白虎は西、玄武は北の方向へ飛び散る。そして眩い光りが漆黒の闇を照らし、そして降臨する四神。まさしく以前目撃した四神・・・。四方を四神が取り囲み、黒龍を睨みつける。しかし余裕の表情の黒龍。なぜだ?なぜそんなに余裕な表情でいることが出来るのか?私は意識を失い倒れこんだ。

四神降臨 復活編 第10章 五神降臨 (3)青龍覚醒
 『青龍がまだ覚醒していないというのであれば都合がいい。さてどいつからやってやろうか・・・。なあ紫苑。この裏切り者め!!!』

黒龍は紫苑めがけて邪気を放つ。不意をつかれた紫苑は変化する暇もなく吹き飛ばされる。

「紫苑君!!!」

麻沙耶君が紫苑のもとへ走り、衝撃で気を失った紫苑を抱き上げる。私は朱雀に変化し、最大限の結界を張る。

「紫苑君!紫苑君!」

麻沙耶君は紫苑を抱きしめて癒しの力を放つ。そして紫苑は気がつく。

「ありがとう麻沙耶・・・。」

こうしている間も黒龍はとてつもない邪気を我らにぶつけてくる。何とか私と聖斗君の結界ではねのけていても限界がある。徐々に薄まる結界。

「竜哉様!自分に自信を!!!自信を持ってください!!!竜哉様!!!」

守護龍、龍磨が黒龍の邪気を払いながら竜哉様に向かって叫んでいる。すると皆も竜哉様に声をかけるのだ。

「九条!何をしている!助けてくれ!このままでは俺たちの結界が!!!」
「そうだよ!安倍君のいうとおりだよ!九条君。癒しの力しかない僕も結界を張っているんだ。このままではだめだ!!」
「いつまでためらっているの!!!僕はもとの姿に戻りたいだけじゃない!この美しい日本を守りたい!そしてこの清々しい世界で一人の人間として生きたいんだ!!!いいのか!いつまでも漆黒の闇に覆われる世界で!!!」

座り込んでいた竜哉様がすっと立ち上がり、仁王立ちしている龍磨の前に立つ。

「そんなの嫌だ!!!!僕は平和が好きなんだ。この美しい日本が好きなんだ!!!魔獣になんか好き勝手にさせない!!!」

竜哉様は吹っ切れたのか、強烈な青龍のオーラに包まれ覚醒を果たす。さすが四神の筆頭青龍のオーラはすさまじい。劣勢に思われていた我らの力が増大する。怯んだ黒龍は青龍の聖なる気を受け、体制を崩す。これで四神が揃った。四神に関する者すべてが覚醒を果たしたのだ。

四神降臨 復活編 第10章 五神降臨 (2)黒龍王魔王変化
 四魔獣のうち三魔獣を倒した。残るはあと一魔獣の黒龍。黒流の棲家である漆黒の森は紫苑が放った朱雀の炎によって燃え上がった。漆黒の闇に燃え上がる森は夜空を真っ赤に染める。

「あ、雨・・・。」

と紫苑が言う。ポツポツと降り始めた雨は次第に雷を伴った豪雨になる。その豪雨は漆黒の森の火を消していく。

ああ強烈な邪気。これは黒龍によるもの。漆黒の森の中心部よりすさまじい邪気が襲い掛かってくる。私たちは身構える。来るぞ!黒龍!!!

「来た!兄さん!」

漆黒のオーラが漆黒の森を覆いつくすと目の前にはとてつもない大きさの赤い眼をした魔物が仁王立ちしている。まさしく魔王変化した黒龍。荒い息と陰の気を放ちながらこちらを睨みつける。

 我ら四神のうち完全覚醒したのは三神。残るは青龍。私は振り返り竜哉様のほうを見る。竜哉様は突然現れた黒龍の姿に驚いているのがわかる。

「龍磨!竜哉様をお守りせよ!今の段階では無理だ!」
「は!」

龍磨は守護龍変化し、竜哉様の前に立ち守りを固める。

『ふふふふ・・・・・・・・。』

不気味な声で笑う黒龍。

『あの時と同様、まだ青龍は覚醒していないのか・・・・。それなら都合がいい・・・。』

まさしくそうだ!まだ竜哉様は覚醒していない。あと一歩だというのに・・・。早く黄龍を降臨させないと!!!!

四神降臨 復活編 第10章 五神降臨 (1)襲撃
 完全覚醒し、朱雀の姿から人型に変わり戻ってきた紫苑。その途端に次元が変わる。来る!とてつもない邪気が。

「兄さん!来るよ!四魔獣の一角は倒した!あと三魔獣!!!」

まず現れたのは黒狼と黒蛇。我らに向かって襲い掛かる。紫苑、龍磨、白狼、そして私は変化し、身構える。聖斗君は札に呪文をかけ、白狼に貼り付け、呪文を唱える。白狼が黒狼へ向かい飛び掛ると同時に竜巻が現れる。

「行け!白狼!疾風!!!」

竜巻にさらに白虎の技である疾風が加わり、竜巻の中は激しくなる。竜巻の中では白狼と黒狼が戦っている。私たちはもう一角の黒蛇と対決。麻沙耶君は竜哉様に結界を張り、襲い掛かる低俗魔獣を追い払う。竜哉様はおどおどしながら私たちの闘いを見つめていた。未だ躊躇っておいでか?あと竜哉様が覚醒すれば!四神が降臨する!

「みんな下がって!!!!」

と聖斗君が叫び、呪文を唱え、指先を地面につける。すると地面は地響きをし、地割れをするのだ。油断をした魔獣たちはその地割れの中に落ち込んでいく。もちろん黒蛇も黒狼も・・・。白狼は???

「封!」

聖斗君のその言葉で地割れは元の状態に戻ろうとしたそのとき、地割れの隙間から白狼のみが飛び出してきた。これが白虎の力か?まさしく地と風の神。これで四魔獣のうち三魔獣倒したことになる。

版権モノを描こう!~プリキュア5 ココ



プリキュア5ココ
今日は版権デーか???


子供のリクエストで、ココまで描いちゃったよ^^;


ホント、アニメ塗りって楽ね・・・・。


線が太い^^;


荒い^^;


キャ~~~~~~あせる


目が変だし~~~~~。



版権モノを描こう!~プリキュア5 ナッツ
20070809103415.jpg

子供のカレーに入っていたナッツのシール。
なんとなく描きたくなってHP見ながら描いた版権ものです^^;

アニメ塗りのお勉強です^^;

四神降臨 復活編 第9章 復讐 (8)朱雀変化
 黒龍王に首を絞められ僕の意識は遠のいていく。僕の胸元にしまっていた大切なものすべてが黒龍王の足元に落ち、聖水の入った器は割れ、聖水は飛び散った。もうだめだと思った瞬間黒龍王の手が緩んだ。

「ぎゃー!!!!」

守護札、朱雀の印が聖水に反応し、とてつもない陽の気が僕の周りを包み込んだ。そして黒龍王はもがき苦しんでいる。僕は大切な朱雀の印を拾い、胸元に大切にしまう。

「おのれ!紫苑!!!!」

黒龍王はもがきながら人型から黒龍に変化した。黒い鱗の龍に青龍の青い気が包み込んでいる。黒龍王の気は一時的だろうけれど弱まった。黒龍王は僕の腕を掴みにらみつける。

「紫苑!お前を喰わせろ!!!」
「い、嫌だ!!!」

僕はいつの間にか真っ赤な朱雀のオーラに包まれ、身が軽くなった。そして僕の体は宙に浮いている。そして飛び散る炎の羽。長い炎の飾り尾。そう僕は朱雀に変化したんだ。

炎の羽は屋敷に火をつける。僕に襲い掛かる魔獣たちを焼き尽くし、僕は天高く舞い上がった。それを追いかけるように先日朱雀神社に現れた黒い鷹。火の着いた漆黒の森の上で、にらみ合いが続く。仕掛けてきたのは黒鷹。完全に覚醒したこの僕に襲い掛かる。もちろん僕は完全覚醒した上に、ここに来る前に飲んだ聖水、そして兄さんの力の一部が吹き込まれた朱雀の印があったからか、力の差は歴然だった。

「ギャ~~~~~~~~!!!!」

僕の放った烈火が見事に命中し、黒鷹は炎に包まれ落下していったんだ。その炎は漆黒の森にさらに引火。大火事となった。遠くで聞こえる消防車のサイレンの音。僕は急いでもとの姿へ戻り、兄さんたちの待つ森の入り口へたどり着いた。この炎の中、黒龍王はどうなったのか?これくらいで倒れるような奴ではないのはわかっている。

四神降臨 復活編 第9章 復讐 (7)復讐
 僕はとてつもなく不気味な漆黒の森の中へ足を踏み入れる。明かりがなければ何も見えない深い森。よくこのようなところで平気に暮らしていたものだ。僕は指先から炎を出し、明かり代わりにする。やはり周りには低俗な魔族がうようよしているのがわかる。時折不気味な笑い声で僕の事を裏切り者と罵る。

なぜ襲ってこないのだ?それどころかこの僕を誘導するように道を開けるんだ。森の奥に明かりが見える。あれが僕の住んでいた屋敷だ。そして僕は何かに導かれるように屋敷にある儀式の間へ。ここに大抵黒龍はいる。

「よく来たな、紫龍。いや、朱雀に関するもの紫苑。」

暗い部屋の奥から黒龍王の人型がでてきた。そして側には僕の育ての母・・・。僕は覚えている。小さい頃一時的であったが、母の表情をしていた育ての母・・・。もちろん僕を利用するために育てていたのではないというのはわかる。僕を可愛がり、大切にしてくれた。

「父さん、いえ、黒龍王。この僕を元の姿に戻してください。あなたしか戻せないと聞きました。お願いします。」

黒龍王は僕に近づき、僕の胸ぐらをつかむ。

「この裏切り者め・・・。ここまで育ててやったものを・・・。我らの計画は台無しだ・・・。人間どもに復讐をしようとしているというのに・・・。」
「復讐?」
「お前を喰らう前に、言っておいてやる。我らがどうして神獣から魔獣となったのかを・・・。」

黒龍王はさらに僕の胸ぐらを締め上げ、話を続ける。

「人間どもは我らの神聖な領域を荒らし、何も穢れを知らない我が子たちを化け物のように皆殺しにした。所用で国を離れていた私と妃は残忍な光景を見て意を決した。我らはもともと海の神。そして闇の神。日の神があり闇の神がある。闇がなければ日はない。日の神である青龍、そして闇の神である黒龍。黒いこの鱗は化け物にしか見えないかもしれないが、何も我らは人間どもに悪いことなどしてはいなかった。我らは復讐のために魔族に寝返った。お前は知らないであろうが、魔族へ寝返ったことによる全龍族を巻き込んだ争い。黒龍族はあの時に壊滅したのだ。その生き残りが私たち。そしてその時から完全に我らは魔族となった。わからないであろうな・・・お前には。朱雀の姫皇子であるお前にはな・・・。」

 そうか・・・人間との間にそのようなことがあったのか・・・。だからってこの美しい日本を壊滅状態にするなど、許せない!

黒龍王は、僕の首を締め上げる。

「死ね!紫苑。お前が死ねば四神は降臨せず、そして黄龍は現れん!!!」

僕は意識が朦朧となる。僕の胸元にしまっていた聖水の入った器、聖斗君からもらった守護札、そして兄さんと僕の朱雀の印が黒龍王の足元に落ちる。

ああもうだめだ!僕は黒龍王に食われてしまうのか???

四神降臨 復活編 第9章 復讐 (6)囮
 今日は新月の夜。新月の言うものは魔族が一番活発といわれている。満月が陽で新月が陰。

僕は兄さんとともに朱雀神社を出て黒龍のいる巣窟へ向かう。示し合わせたわけではないが、自然と集まる四神に関わる者たち。特に玄武に関わる者である麻沙耶は僕の顔をみて心配そうに見つめてくれている。白虎に関わる者である安倍君は少しでも魔族から僕を守ろうと守護札を僕に分けてくれた。僕はその守護札を胸元にしのばせ、黒龍の住む漆黒の森へ入っていく。

僕は今までこの森奥深くの古い屋敷に住んでいた。昼間でも暗いこの森は、新月の真っ暗い夜はさらに気持ち悪いものがある。

「紫苑君・・・本当に大丈夫?」

と、麻沙耶が僕の腕をつかんで言うんだ。もちろん僕は微笑んで、麻沙耶の手を離す。この森をよく知っている僕以外、誰が囮になり黒龍を誘き寄せることが出来るのか?

「紫苑様これを・・・。これは青龍族の聖水でございます。何かあればこれを開け、魔族にかけてください。時間稼ぎにはなると思います。あと一口お飲みください。」
「ありがとう。龍磨。」

龍磨はわざわざ青龍国からこの聖水をもって来てくれたらしい。この聖水のおかげで僕は黒龍の呪縛から開放された。僕は龍魔の言うとおり、一口聖水を口に含み、気合を入れる。やはり聖水の力というものはすごい。最後までしつこく残っていた黒龍の邪気が一気に払拭され、僕の朱雀の力が解放されたようだ。もちろん他の四神に関わる者たちも僕と同じように一口聖水を口に含む。

「兄さん、行って来ます。」
「んん・・・。無茶はするなよ。」

兄さんは僕をぐっと抱きしめ、送り出した。

四神降臨 復活編 第9章 復讐 (5)白虎の苦悩
「なあ、白狼。この前の魔獣、どう思う?」
と俺は白虎を守護するもの「大神・白狼」に問いかけてみる。

 俺は昔から陰陽師で有名な安倍家の嫡男。有名な安倍清明は俺の先祖。父は陰陽師。普段は国家公務員として文科省の職員をしているんだけど、何か不可思議なことが起きると陰陽師として密かに活動する。俺はもちろん小さい頃から父に一子相伝の陰陽師の秘術を学び、ある程度の事は出来る。

 先日現れた黒い狼の様な魔獣・・・。俺はいろんな秘術を使って立ち向かったのだけれども、ことごとく破られ、自分に自信をなくした。

「聖斗様。上辺だけの技では通用しないといったはずです。体の奥底に眠る白虎の力を引き出さなければ・・・。」
「白虎の力?」
「白虎は大地と風を操る力。疾風、竜巻・・・。色々とございます。」
「どのようにすればそのような力が?」
「それは自分を信じること・・・。そうすればきっと白虎の力がみなぎってくるはずです。先日の魔獣はそこらにうようよしているものとは格が違う。半端な力では通用しないということでしょうか?」

なんとなくわかるよ。なんとなくね。そこらにうようよしている魔獣くらいなら普通の陰陽師の術で何とかなる。でも先日の魔獣の力は魔獣が言っていたとおり四魔獣の一角にふさわしい力を持っていた。四魔獣の力を合わせると最強の魔獣が降臨するといっていた。まだまだ俺の力では四魔獣の一角さえ倒せないだろう。四神が降臨して黄龍が降臨したとしても本当に勝てるのか?本当に俺は白虎に関する者としてふさわしいのか?

「聖斗様。何を戸惑っておられます。あなたの体内におられます先代の白虎に関するもの、西斗様がきっとお力を引き出してくださいます。」

俺は自宅にある神棚に榊を奉納し、気を集中する。まもなく戦いが始まるように感じる。そのときが来るまで俺の気を最高の状態にしなければならない。どこまで白虎の力を引き出すことが出来るかわからないが・・・・。
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さくらと空 
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