4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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【版権イラスト】桜蘭ホスト部
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背景がまだですが^^;
ホント私のオリジナリティー一切ない塗り絵状態です。


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これは以前描いたもの・・・。ハニー先輩のマグカップ間違っています。
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一途 (40)外遊出発!
 やっとのことで準備が整い、政府チャーター便が飛び立つ羽田空港へ向かう。美咲は雅のお父さんの秘書官をしている義弟、彬が迎えにきてくれた。俺と雅は美咲にバイバイをしてタクシーで空港へ・・・。

予定通りに空港について、羽田空港支店の会議室に召集。ブリーディングを兼ねた最終打ち合わせが、政府関係者、航空会社、航空自衛隊関係者とともに行われた。

今日はまず韓国ソウルへ飛ぶ。俺ははじめての空港だ・・・。俺の場合は欧州中心の空路だからね・・・。打ち合わせが終了すると俺と機長、そして補助の自衛隊員とともに機体の安全確認。いつも以上に確認に時間を費やす。クルーたちも準備で忙しい。B747の2階席はクルーの控え室兼、打ち合わせ室。もちろん最終確認もしている。出発時間が着々と近づき、緊張もピークに・・・・。普通の搭乗口を使わない。保安上のため、普段はあまり使わない駐機場の位置に3機のB747。

「さあ、お出ましだよ・・・。」

って機長。機長のほうからは総理大臣が乗っている黒の車が見えるらしい・・・。

「さあ、弐條君、気合入れていきましょう!」
「はい!」

政府関係者、マスコミがずらっと並んで総理大臣を見送る。そして予定時刻になると総理大臣が乗り込み、無線で出発準備が整ったことが知らされる。どの順番に飛ぶかは極秘情報・・・。まずは予備機が飛び立っていった。次は副機、そして最後に俺が乗務している正機が飛び立つ。ソウルまでは2時間。

はぁ・・・。
長い長い仕事の始まりだ。


一途 (39)身の引き方
 12月に入り、外遊に関する公式発表があった。ずらっと発表された資料にはもちろん俺の名前、雅の名前がリストアップされていた。もちろんいくつかのマスコミは弐條という名前がふたつも入っていることに反応していたところもあった。

 護衛戦闘機と並んで飛ぶ訓練もしたさ。もちろん緊急時の無線連絡とかの訓練も・・・。資料だけでフライトケースいっぱいになるくらい・・・。読み返すだけでも何時間もかかる。訓練から自宅に帰ると、もうくたくたで、ベッドに資料並べたまま寝てしまったことも多々あり・・・。客室乗務員は気楽でいいよなあ・・・。俺は一国の首相を乗せるんだから命がけさ・・・。予備機と交代してくれないかなあ・・・。

 機長は俺と同じ防大出身。空自を経てうちの会社に入ったエリート機長。うちの会社いちの腕を持つ。はじめて組むわけじゃないけどね・・・。いつも俺のことを絶賛してくれててね、俺も中退したけど防大にいたから話があう。

 徐々に準備が整って、俺が乗る機内も政府専用機仕様に少し改装されていた。もちろんコクピットも少しね・・・。そして実機を使って最終訓練。体調を整えるために1週間休みをもらってリフレッシュ!その間に準備を整えておかないと・・・。そういえば、遥臨月だよね・・・。何かあったはいけないからって自宅待機だから石川にはいけない。明後日フライトから帰ってくる雅を寂しく待つしかない。その間遥の声を聞くことしか出来ないよな・・・。もちろん電話をかけてみる。

 いつものように元気な様子の遥。外遊乗務のことは遥のお父さんが言ってたらしくって、いいねとかいってくれたんだ。

「どう?もう臨月だろ?」
「うん・・・。全然・・・。予定日に孝博さんがいないなんて・・・。ついていないな・・・。生まれたら連絡したほうがいいのかな・・・。」
「いや、雅が一緒にいるからまずいよ。雅のほうに生まれたメールでも入れておいてくれよ。先輩後輩の間柄だろ?だから・・・。」
「うん、そうだね・・・。寂しいな・・・。」
「お土産もなしだぞ!」
「うんわかっている・・・。あのね、この前パパと話したの。孝志の父親の欄、空白にすることにしたの。弐條家に養子になったでしょ?家系に汚点が付くって事で、パパがそうしなさいって・・・。そうしたら将来もめることってないと思うの・・・。孝博さん、本当に認知してくれたときは嬉しかったよ。それだけで十分だから・・・。あと写真とかもいらないよ・・・。記録に残ることはしたくない・・・。自分が惨めになるだけだもん・・・。」
「遥・・・。」
「あとね、孝志が生まれて落ち着いたらお見合いをするの・・・。パパの私設秘書の人と・・・。五歳年上のバツイチさんだけど・・・。決まったらもう私と会わなくていいよ。もう大丈夫だから・・・。」

多分遥なりに悩んで決めたんだろうな・・・。
俺の子が生まれたことを見届けたら別れることになった。
ホント世間の常識から考えたらおかしなことだと思うけど、これは遥の身の引き方だと思うよ。

一途 (38)臨時要人輸送
 会社からの呼び出し、それも取締クラスからの・・・。初めてだよこんなの・・・。呼び出されたのは計6人。機長3人に副操縦士3人。みんな超がつくほど国際線運行乗務員部では有名なメンバー。俺だけが若手・・・。

「弐條君は知っているだろうが、12月中旬から半月間首相が外遊に出られる。丁度、天皇陛下の外遊と日程が重なってしまってね、政府専用機が使用できないらしく、わが社に依頼が来た。正機、副機、予備機3機用意せよとの外務省からの通達だ。そこで君たち優秀な6人が運行乗務員として乗務して欲しい。もちろん2週間という期間となるが、よろしく頼む。客室乗務員も数人ずつ乗務になる。」

そしてどの飛行機を担当するのか。
え???
何で一番若手の俺が首相の乗る正機なんだ???

数機の護衛の戦闘機が微妙な距離で守ってくれるらしい・・・。補助として数人の空自要員が乗るらしいけどね・・・。

はぁ・・・。

弐條首相を弐條副操縦士が操縦するチャーター機に乗せるって洒落かい!

12月にはいると、いろいろこのチャーター機のことで訓練に入ったり忙しい。機内も少し改装するらしいよ。そして家に帰ってびっくり!なんと雅も召集されたらしい・・・。それも正機で・・・。

一種の親族家族旅行かい?はははは・・・・。

まあそのことを聞いた雅のお父さんも驚いてたよ。ふと冗談でうちの会社を言ったらしいだけで、そのまま通った上に、俺と雅が乗務するんだから驚くよね・・・。結局美咲も行くことにしたらしいんだよ。だって、輸送以外は休みなんだもんね。あっちこっち飛び回るらしいよ。ほとんど俺は欧州航路だからね。ホントに笑うしかないよね・・・。

ってことは年末まで日本にいないってことかい・・・。
早速遥に連絡入れないとな・・・。


一途 (37)養子縁組
 次の日俺は遥に空港まで送ってもらった。遥は名残惜しそうに出発口の前で俺に抱きついてきた。

「次、いつあえる?」

なんて・・・。最近急なフライト変更が多いから、はっきりしたことがいえないんだけどね・・・。

「じゃあ、また連絡するから・・・。」

そういって俺は出発口に入る。遠めに見た遥は泣いてた。そして戻っていったんだ。そして東京へ戻る。自宅に戻ると雅は美咲と帰宅していた。そして微笑みながら夕飯の支度。

「お帰り、どう?石川のお友達は元気だったの?」
「んん・・・まあね・・・。」

美咲は満面の笑みで俺に飛びついてくる。俺は美咲を抱き上げてリビングへ・・・。そして例の話を始める。そう俺が養子になる件。なんとか叔父さんが説得して父さんは俺が源から出ることを承諾したらしい。そして手続きは叔父さんがすべてやってくれることに。それが済めば俺は源孝博から弐條孝博になる。未だに自分の名前を弐條美咲と思っている美咲。もう言い直す必要はなくなるんだ。ああ、ライセンスとかの名義変更もしないといけないなあ・・・ややこしいけど・・・。

そして半月後、俺は弐條姓になった。いろいろな名義変更も終了し、俺の制服の名札、そして雅の制服の名札も弐條姓に・・・。でもなんだか寂しい気分・・・。ずっと源で生活してきたんだからね。遥はきっとお父さんから聞かされることだろう。そしてなぜか、会社からの呼び出しが・・・。なんだろうねえ・・・。


一途 (36)子供の行く末
 夕飯は遥が作る。遥の家は温泉地の観光ホテル。お母さんは女将をしているから、家にはいない。産休に入っている遥は実家の家事全般をしているのだ。家族全員の分を作って、今はおじいさんとお父さん、遥と俺の四人で食べる。遥はここ最近料理が上手くなった。上手くなったねって褒めると照れ笑い。

「だって孝博さんのために一生懸命練習したの。うちの料理長にいちから教えてもらったんだから・・・。」

この2人の会話に、おじいさんとお父さんは複雑な表情で微笑んでいる。俺に家庭がなければ、普通の恋人同士なんだけどね・・・。そしてお父さんが言うんだ。

「孝博君、君、弐條の養子に入るそうだね・・・。」

あ、そういえばそういうこと叔父さんに言ったよね・・・。叔父さんは大賛成して、父さんを説得するって言ってたよね・・・。もうそんなこと周りに話しているんだ・・・。

「まだはっきりと断言は出来ませんが・・・。長男が高橋の婿養子になったもので・・・。」
「そうだよね・・・。高橋も後継者を欲しがっていたし・・・。弐條の次男はまだ小学生だ・・・。弐條の一番大切な娘が弐條に戻ってくるとなれば嬉しいに決まっているよ・・・。孝博君は政治家にはならないのかな?」

まあ、俺自身政治家の血が流れていたりするから、丁度いい人材なのかもしれないね・・・。でも俺はきっと政治家には向いていないんだと思うし・・・。今の仕事が一番好きだ。遥は俺とお父さんが弐條家の話をするもんだから、嫌そうな顔をして黙り込んでいた。そりゃ嫌だよね・・・。そういう話は・・・。なんだかんだ言って遥は俺の愛人で・・・。まあいう内縁の妻だろ?本妻の話をしてなんとも思わない女なんているのかなあ・・・。そして遥のお父さんは言うんだ。

「おなかの子が生まれたら、遥は東京へ出てきなさい。おなかの子は政治家の英才教育をする。いい環境で教育するぞ。小学校は早稲田か慶應に入れてな。私の後継者にするぞ。いいだろ、遥に孝博君。」

やはりこうなるのか・・・。
遥は黙って食事をしていた。
食事を終え、遥の片づけを手伝う。遥は苦笑しながら俺を時折見るんだ。

「ごめんね・・・うちのパパ。まだ生まれていないのに、あんなこといって・・・。やはりこの子にはパパが必要なのかな・・・。認知されても実際パパがいなかったら・・・。」
「でも俺は遥と一緒にはなれないぞ。」
「わかってるわよ。お見合いしないといけないかなって・・・。私が不倫の子を妊娠しているのを知っていて、それでもいいからって縁談を持ち込んでくる政治関係者が多いのも確かよ。議員秘書とか、どこどこ省の職員とか・・・。あとは政治家のご子息ね・・・。私は孝博さん以外の人とは結婚したくないのに・・・。悩んじゃう・・・。」

そういうと遥は大きな溜め息をしたんだ。そしてそのあと俺に謝るんだ・・・。

「ごめんね・・・。私が悪いんだもんね・・・。孝博さんの家庭を壊さない約束でお付き合いしていたはずなのに・・・。欲を出してしまったから・・・。あの時嘘をつかなかったら・・・そうしたらこうして悩むことなんてなかったのに・・・。」

俺だって悩むよ。不倫を清算したつもりがこういうことになって二重の生活をしているんだから・・・。俺だって悪いよね。鬱憤晴らしからはじまった過ちなんだから・・・。


一途 (35)二重生活
 俺はなんとか東京に着き、自宅へ戻る。もう小松行きの飛行機もないし・・・。俺は遥に電話。

「遥?今いいかな・・・。」
『うん・・・。』
「誕生日おめでとう遥・・・。明日、そっちに行くよ。昼ごろつくかな・・・。1泊しか出来ないけど、いいよね・・・。」

遥の声はすごく明るくなった。おいしいもの作って待ってるねって・・・。俺は自分のスーツケースの中のものを洗濯したり整理したりで、遥のところへ行く準備をする。もちろん誕生日プレゼントの指輪もカバンに入れる。いつまで続く二重生活。遥、他の男と結婚したらいいのに・・・。そしたら少し楽になるかな・・・。

 なんとか小松空港行きの飛行機に乗ることが出来、空港まで遥が出迎えてくれた。遥は俺の顔を見るなり、満面の笑みで微笑んで、俺に抱きつく。

「お帰り、孝博さん。」

傍目には出張帰りの夫を出迎える妻に見えるのかな・・・。駐車場に止めてあったはるかの家の車に荷物を詰め込む。そして俺が遥の代わりにハンドルを握って、遥の実家へ向かう。遥は相変わらず助手席で微笑みながら、俺の子供であるおなかの子を撫でている。複雑だよね。この子は不倫の末、出来た子なんだから。男の子であることは確定。遥は名前を決めているんだ。

「孝志、今日はパパが一緒よ。」

そう俺の一文字を取ってしっかりした男の子になって欲しいからか、「孝志」って名づけている。

「あと3ヶ月で生まれてくるのよ。早いね。孝博さん。予定日はクリスマスイブだもんね・・・。孝博さん、休み取れるかなあ・・・。」
「さあね・・・。クリスマス休暇真っ盛りだからだめかもしれないね・・・。」
「そうだよね・・・。一番忙しい時だもん。休暇なんて取れないよね・・・。今日はね、パパも帰ってきているのよ。だって昨日私の誕生日だったでしょ。昨日ね、いろいろ孝志の物をいっぱい買ってもらったの。孝志の部屋も作ってもらったし、ベビーベッドも、ベビーカーも、カーシートも・・・。生まれたら車も買ってくれるって・・・。孝志のためのね・・・。ホント楽しみ。私とても幸せよ・・・。あ、そうそう、宅配便届いたよ。覚えていてくれたんだ。欲しい香水・・・。」
「ま、それだけじゃないけどね・・・。」

遥はとても楽しそうな顔で俺を見つめる。
遥の実家に到着。もちろん遥のお父さんがお出迎え。お父さんにロスのお土産を渡して、家に上がる。そしてリビングでいろいろ話して遥の部屋へ。遥はドアを閉めると、俺に抱きつきキスをせがむ。もちろん俺はするんだけど・・・。カバンから遥へのプレゼントを渡し、遥の反応を見る。

「あ、これ私が欲しいって言ってた・・・。ありがとう。大切にするね・・・。」

そう、ずっと欲しいって言われてたんだけど、指輪はだめだって言い続けてたんだよね・・・。遥は早速左薬指にはめて、眺めている。そしてボソッと・・・。

「婚約指輪ならいいのにな・・・。」

って・・・。もちろんお互い苦笑・・・。俺が雅と別れない限り、そういうことはありえないのはわかっているくせに・・・。

一途 (34)由佳の父
 爺ちゃんと父さんがフライトで疲れてるだろう?って言って帰るように促してきた。それなら呼ぶなよって感じで。仕方なく病室を出る。そして談話室で雅と話す。

「東京に帰ったら?おじいちゃんが退院したら私も帰るから。今度フライトはいつ?」
「週末だから4日後かな・・・。その前の日にシュミレーターで適正訓練があるしね・・・。健康診断もある。春秋は辛いなあ・・・。シュミレーター終わったら検査官とフライトだぜ・・・。あ、そうそう。一旦東京戻ったら、ちょっと友人に会いに行く予定があるんだ。石川だから1泊してくると思う。何かあったら携帯に電話してよ。」
「んん・・・どの友達?」
「え?中学の友達。男だよ。(嘘嘘・・・遥・・・。)」
「わかった。」

はぁ、なんとかごまかせそうかな・・・。俺は雅と別れて帰ろうとしたんだけど、アノ由佳の父に声を掛けられる。

「きみ。由佳の同級生の源君だろ?いろいろうちの娘がお世話になっているようで・・・。」
「別に世話していませんが?何か?」
「ホント困った娘だ。君を追いかけて防大へ行って、卒業したと思ったら自衛官辞めて今度はCAだなんて・・・。だいぶん前に会社が別だったって泣いてたよ。ホント君のおかげで娘は人生狂ったよね。」
「あの、済みませんが、なんか勘違いしていませんか?俺は丹波と高校時代に少し付き合っだけで、後は勝手に丹波がついてきただけです。それを俺のせいにしないでください。今日だってべたべたされて困りました。こちらとしてもどうにかして欲しいんですから。」

この父親、笑ってたよ。何がおかしいんだか知らないけどね・・・。
俺から見合いするように説得しろだと???言ったって聞くもんかあいつ・・・。
はぁ、もう丹波って言う家系と付き合いたくないな・・・。

一途 (33)爺ちゃんが倒れる
 9月末。和気叔父さんは見事知事になった。

 伊丹駐屯地で非常勤として働いていた俺の父さんは若いころの功績が認められて、防災担当副知事として採用された。もちろん、うちの父さん、若いころ災害救助の部隊長にも任命されたことがあるから、災害が起きたとき、すばやく対処できると思って叔父さんが採用したんだと思う。そして防災についての知識も豊富だしね。これで父さんは晴れて小学生の育ち盛りの息子を養うことができるってわけだ。

 そして雅の伯父さんに当たる人なんだけど、元文部科学省の事務次官をしていた弐條雅孝氏も、教育関連の副知事として採用。あと数人、財務省やら、法務省やら叔父さんが引き抜いてきて脇を固めている。やはり叔父さんはそれだけすごい人だったんだ。

いとこの泰孝は叔母さんが高校まで通っていた学校に編入。そして超難関中学灘中と、叔父さんの母校洛南中学を受験するためにがんばっている。多分泰孝は灘中に楽勝で通るんだろうね。だって、漢検は1級だし、この夏行われた全国小学生学力コンクールでも見事余裕の1位。そして六法全書をほぼ覚えてしまっているというとんでもない秀才だ。でもなりたい職業は俺と同じパイロット。今は小6のくせに俺が冗談でやった防大の航空宇宙工学の教科書を愛読書にしているんだよね。ホント分厚いわけのわからないことばかり書かれているんだけど。(まあ俺はなんとか理解できたけどね)なんという子供か・・・。アメリカなら飛び級して、大学生になっていると思うよ。卒業できるかも・・・。

叔母さんは契約社員扱いで、もといた局の系列局に再就職。夕方のニュースを任されている。ホントマイペースだよねあの家庭は・・・。

 まあそれはいいとして、俺がロスに滞在中に雅から電話が入る。

「伊丹のお爺ちゃまが倒れたの!フライト終わったらすぐに自衛隊阪神病院に来て!」
「え?あの元気はつらつの爺ちゃんが???」

まあ爺ちゃんは88だもんな。今まで病気ひとつしたことがなかった爺ちゃん。父さんに電話したら命には別状はないらしいけど、とりあえず来いと言われたんだ。フライト終わったら加賀へ行く予定だったのに、キャンセルだ。雅もフライトを休んで病院にいるらしいし、美咲は代官山の高橋家に預けられているという。

実は最近遥用に携帯を契約。その携帯で遥に電話をする。

「遥?俺だけど・・・。」
『孝博さん???今どこ?』
「ロス。悪い、明後日行けなくなった。」
『え~~~そんなあ・・・。すごく楽しみにしていたのに・・・。』
「俺の爺ちゃんが倒れて入院中なんだ。雅が今病院に詰めているから行かないとね・・・。誕生日プレゼントは関空から送っておくよ。ホントごめん・・・。」

まあなんとか遥は納得してくれた。今回のフライトはチャーター便で成田から関空へ飛んでロス。そして関空に帰ってくる変な便。関空から成田へのフライトは別の人がしてくれるから、関空でフライト終了になっていた。久しぶりのボーイング777。あさって誕生日の遥にせっかくのプレゼントを買ったのに・・・。大好きだったブルガリの香水を・・・。日本になかなかなくって、欲しいっていってたんだよね。あと指輪も購入。指輪はまた今度渡そう・・・。見つかったら雅にあげたらいいよなあ・・・。サイズ一緒だから・・・。

はぁ、東京と石川の二重生活。
まあ俺が悪いんだけど・・・。
せっかく関空特急指定とって電車で遥のいる山代温泉に行くのもいいかなって思ったんだけどね・・・。
サンダーバードは関空でキャンセルして、関空特急でひとまず大阪に戻って伊丹に行こう・・・。

 関空に到着して、運行乗務員室でフライトレポート作成のあと、関空支店を出る。成田支店だったらロッカーがあるから着替えるんだけど、私服に着替えるのが面倒だから、そのまま制帽のみカバンに入れて遥へのプレゼントを宅配便で送って、JRの駅へ。窓口でサンダーバードを払い戻ししているときに声を掛けられる。振り返ると・・・ゲ!また由佳かよ・・・。

「偶然ね、孝博君。今から実家に帰るの?実家に帰るんなら私も一緒にかえろっと。」
「あのねぇ・・・。俺は指定席とってあるの。関空特急「はるか」のね。お前の席はない。」
「同じ名前ね、孝博君の愛人と。」

何で知っているんだ?こいつ。由佳は駅の窓口に俺の横の席空いているかを聞いて、指定席を取っていた。そして俺にべったりくっついて、特急に乗り込む。
新大阪までこいつと一緒かあ・・・。
はあ・・・。
そして席につくと由佳は俺に冷たいお茶をくれる。
こういうところは気が利いてていいんだけどね・・・。
しつこいのはどうにかしていただきたい。

「今ね、同じクルーの子がいるんだけど、同期でね九條桜さんって言うのよ。知ってるでしょ。桜のこと。5月くらいかな、こっちの支店に配属になったのよね。そしたらね、桜ったら、最近彼氏に振られちゃったっていって、泣いてたのよ。どんな彼知って聞いたらこっそり撮ったって言う写メを見せてくれて、よく見たら孝博君。他社のパイロットって聞いて、名前を確かめたらまさしくって感じ。他にもいろいろいるって聞いたの。その一人が遥って言うCAなんでしょ。何人も愛人作ってるんなら私も加えてよ。不倫でもいいから付き合ってっていったの覚えてる?」
「まあそうだとしてもお前と付き合うつもりはないよ。もう愛人は清算したしね・・・。友達としてなら別に構わないが、べたべたされるのは嫌だ。お前もういい歳なんだからほかにいい奴探せば?まあ顔はいいほうなんだしさ。俺みたいな最低な男つかまえてたって得にもなんないぜ。」
「わかってるわよ。でも私は孝博君じゃなきゃやなの。もちろんパパだっていろいろ私にお見合いとか持ってくるし、お客様にも声だって掛けられているの。もちろんぐらついた時もあったけどさ。孝博君追いかけてるのって私の生きがいというか、趣味というか・・・。」

それ以来由佳は新大阪まで一言もしゃべらなかった。
新大阪で宝塚線に乗り、伊丹駅で降りてタクシーを拾う。そして自衛隊阪神病院へ。病院前の警備官にお見舞いの理由を告げてじいちゃんの部屋番号を聞き、中に入る。

 病室に入ると爺ちゃんは結構あっけらかんとしていた。

「わざわざ仕事の後来てくれたんか?」

ってね・・・。重いスーツケース持って、制服のまま恥ずかしかったんだぞ。ったく。これなら遥に会いに行けばよかったかもね・・・。すると主治医が入ってくる。それはなんとさっきまで一緒に伊丹まで帰ってきた丹波由佳の父。そういえばここに勤務してたよなあ・・・。10年もいるのか???ここに勤めているってことは陸自の衛生部隊に所属しているってことで、陸一佐くらい?おばさん見舞いに来ないほうが懸命だよ・・・。いろいろあったみたいだしね・・・。由佳の父は俺をじっと見て嫌な顔をする。そして爺ちゃんを診察。やはり年なんだよね・・・。倒れたって言っても立ちくらみ程度。父さんの奥さんが慌ててしまって救急車を呼んだらしい・・・。そして爺ちゃんはもと最高幹部自衛官だろ。この病院にはカルテというか健康記録があるらしいから、ここの運ばれたってさ・・・。まあ一応年だから精密検査しましょうってことになってあと2日ここでお世話になるらしい。一応雅は爺ちゃんのために休んでしまったから、父さんの奥さんと交代で付き添うってよ。ホント人騒がせな爺ちゃんだよね・・・。爺ちゃんなら100は生きるよ。婆ちゃんに会いに行くなよな・・・。
爺ちゃんは天国の綾子婆ちゃんのところに行こうとしたら綾子婆ちゃんに叱られたってさ・・・。冗談言うくらいだから大丈夫だよ・・・。さあ俺はこれからどうするかな・・・。


一途 (32)呼び出し
 ある日フライトから戻る途中、見知らぬ携帯番号からかかってくる。

「もしもし源ですが・・・。」
「私は遠藤遥の父、遠藤春樹です。」

遥のお父さんからの電話・・・。話があるって言われて、六本木にあるリッツカールトンに呼び出される。俺はクロークにフライト用の荷物を預け、指定された日本料理店に入る。そして個室に通される。もちろん用事があるから遅くなるって雅に電話済み・・・。顔は知っているんだけど、初めて会う遥のお父さん。横には遥・・・。

「ごめんなさい孝博さん・・・フライトで疲れているのに呼び出してしまって・・・。どうしてもパパが話したいって言うもんだから・・・。」
「ううん・・・一度お父さんにはが挨拶をしないといけないし・・・。丁度良かった・・・。」

俺は遥のお父さんに名刺を渡し、土下座をして挨拶をする。

「源孝博君、いろいろ調べさせていただきましたよ。どこかで聞いたことがあると思ったら君は弐條君の娘と結婚をしていた男だ。それもいとこ同士で・・・。まあ詳しいことは聞いた。君が生まれてくる子供のために認知すると申し出てくれて、よかったと思っているよ。それなりの責任は取るとも聞いた。まあ私の立場上、公にはする気はない。弐條君たちには内密に事を運ぶつもりだから安心したらいいよ。とりあえず、座って食事でもしよう・・・。」

いろいろ話をしながら食事・・・。そして遥のお父さんは言うんだ。

「君のお爺様は亡き高橋元成代議士らしいね。私はあの人にはよくお世話になった。私はあの人の元私設秘書。いろいろ政治について教えてもらった。そして30年ほど前の総理大臣、藤原氏とも血縁と聞いた。確か君の祖母のお兄さんだよね。この上ない政治家血縁じゃないか。あのまま高橋にいていたら、この遥と結婚していたのになあ・・・。」
「え?」
「実はね、君のお爺様にね、遥が中1の時に縁談を持ち込まれてねぇ・・・。是非うちの孫と君の娘をって迫られたものだよ。まあ大変お世話になっていた人だし、2人が大人になったらいい返事をしますといったんだけどねぇ・・・。君を弐條君ところの娘に取られてしまった。今となっては笑い話のような話・・・。」

え?
爺ちゃんがそんなこと裏でやってたの?
きっと俺を政治家にするために???
雅と結婚しなかったら遥と????
あ?
今頃そんなこと言われたって・・・。

「君が認知を受け入れてくれたおかげで、遥もこうしていつものように朗らかになった・・・。後は弐條君ところの娘と別れてくれたら申し分ないんだけれどなあ・・・。まあそれは無理だろうね。お願いがある。こが生まれたら、入籍しろといわないが、遥と形だけの結婚写真を撮ってくれないだろうか?遥はもう誰とも結婚しないといっているし、私もこの子が可愛くてしようがない。写真はうちのホテルの写真室で撮ればいいから。」

普通、親ってこんなことは言わないのに・・・変な親だね。きっと遥がかわいくてしょうがないんだろう。もちろん承諾はしたよ。出来るだけの事はするって言ったもんな・・・。ホント雅たちにばれなかったらいいけど・・・。ばれるのも時間の問題か・・・。

一途 (31)ぬいぐるみ
 何も無かったように東京に帰ってきた。もちろん昨日は友人と会ってくるって言って出かけたんだよね・・・。雅はフライト中だから、美咲を首相公邸まで迎えに行く。美咲は2歳になったんだけど、未だに自分の名前を「にじょうみさき」という。叔母さんと叔父さんは名残惜しそうに美咲を俺に渡す。美咲は嬉しそうな顔をして俺に飛びついてくる。

「本当にお世話になりました。明日雅が帰ってきますから・・・。」

ホントに未だにお世話になりっぱなし・・・。おばさんも忙しいのにさ・・・。どうしてもだめな時は代官山の俺の母さんがあずかってくれている。最近ちょくちょく美咲を連れて行ってるから美咲も慣れて来てお泊りも出来るようになったのは確かで・・・・。あぁ、明日からのフライトの準備をしないと・・・。俺は午後の最終便で、雅は午前中の朝早く着く便だから、雅が帰宅するのを待って出勤するんだよね・・・。

「なあ、美咲。今度パパね、ドイツに行くんだけど、何か欲しいものないかなあ・・・。」

すると美咲はおばあちゃんに買ってもらった絵本を取り出して指を指す。

「くまさん・・・・。」

その絵本には可愛らしいくまのぬいぐるみが書かれていた。

「そっか、これによく似たクマのぬいぐるみを買って来よう。」

美咲から絵本を借りて、複合機でコピーをとる。

「じゃあ美咲、これに似たクマさん探してくるよ。とびきりかわいいクマさんを買って来よう!」

俺は美咲をお風呂に入れて寝かせる。すごく楽しみにしている様子の美咲。どうせドイツに滞在中は暇なんだし、いろいろ歩き回って探してみようと思う。

 俺はフランクフルトのおもちゃ屋さんを歩き回り、そして最後に見つけたシュタイフの専門店・・・。美咲の絵本のコピーを見せながら、下手なドイツ語や堪能な英語を混ぜながら店員さんに似たものを見つめてもらう。なかなか見つからなくって、諦めていたその時に、店員さんが奥から箱を抱きかかえて出てきた。店員さんはゆっくりした口調のドイツ語で話す。

「これが一番近いかもしれません・・・。2歳のお嬢さまにはちょっと大きいかもしれませんが、見てください。」

そういうと大事そうにぬいぐるみを取り出す。結構な大きさ。立たせると1メートルはあるかな・・・。座った状態で、50センチ以上ある。美咲よりも大きいクマ・・・。絵本のクマとよく似ているんだ。値段を聞いて驚いた。10万位するんだもん・・・。理由を聞くと、シュタイフはひとつひとつ手作りの上に、このぬいぐるみは限定品。世界限定数百体という。専門的過ぎてよくわからなかったけど、なんかの記念に作られたものらしい・・・。いいもので、掘り出し物ですといわれ、まあ美咲の誕生日プレゼントだと思って俺の小遣いほぼ使って購入・・・。あぁ、財布の中は帰りの足代と、滞在中の食費くらいかなあ・・・。きちんと包装してもらってホテルに持ち帰る。こんなでかい美咲のお土産は初めてだ・・・・。可愛らしい包装紙だから結構恥ずかしい・・・。次の日のホテルロビーでの集合の時も冷やかされるんだよね・・・。

「あれ?源君、可愛らしいもの持っているね・・・。」
「はははは・・・娘の誕生日プレゼントなんです・・・。」

俺の荷物を預ける時も係の人に同じことを聞かれる。もちろんクルーのCAたちも・・・。

「源さんって結構子煩悩なんですね・・・。」
「何買ったんですか?」
「でかいクマのぬいぐるみだよ・・・。娘にねだられてしまって・・・。フランクフルト中探してやっと見つけたんだ・・・。娘が欲しがっていたようなものをね・・・・。」

なんとかフライトを終え、帰宅。今週、雅はファーストクラスのいろんな研修があってフライトはない。俺だってそろそろ年に一度のパイロットの適正試験があったりする。大きな荷物に驚く雅。

「なに?この箱・・・。」

実は荷物を預けるところでいいサイズの箱があって入れてもらった・・・。

「美咲は?」
「お昼寝中だよ。何この箱~~~~~~~。」
「美咲にお土産なんだけどなあ・・・。残念、寝ているのか・・・。」
「私には???」
「ごめん。これ買うのにほぼ全財産使ったからねぇ・・・。雅はいつも行っているんだし・・・。我慢しろよ。これは美咲の誕生日プレゼントなんだからな・・・。明日だろ、美咲の誕生日は・・・。」

俺はいろいろ雅と話しながら着替えを済ませ、美咲が起きてくるのを待つ。美咲が目に付くように美咲の部屋のお絵かき机の上にドンと置いておいた。少し経つと美咲が起きたようだ。雅は美咲を連れてリビングへ出てくる。美咲は大きな箱を抱きかかえて・・・。

「美咲、開けてごらん。パパからのお土産だよ。」

美咲は急いで箱を開け中身を確認するとにんまりする。

「絵本のクマさん!わあおっきいね。」

雅も驚いていた。

「これシュタイフの限定物じゃない!!!だからか、財布空っぽにしたのは・・・。」
「んん・・・だいぶん探し回ったんだよ。美咲が喜ぶと思ってね・・・。」

美咲は喜んでずっと抱きしめていたんだ。今度お婆ちゃまに見せるんだって張り切っていたんだよね。
美咲の喜ぶ顔を見て久しぶりに幸せな気分になった・・・。

一途 (30)ほっとけない!
 結局あの日の送別会は行かないで、美咲と一緒に自宅にいた。本当に俺は責任を取らなくていいんだろうか・・・。ずっと遥のことが気になって・・・。

半月後、雅のお父さんは総裁に当選・・・。それを見届けた和気叔父さんは総理大臣を雅のお父さんに引き継いだ後、離党し県知事選挙のための準備に入った。ホントここんとこひと月で情勢は変わったというか、バタバタしていたのは本当のことで・・・。叔父さんの秘書をしていた彬は高橋彬として総理大臣秘書官に抜擢。その上年末には子供が生まれるってことで、俺の周りは順風満帆・・・。俺だけがなんだか取り残されたような感じ。

俺は彬を呼んで官房長官に抜擢された遥の父の地元の住所を調べてもらった。もちろん彬には理由はいっていないんだけど、なんとなく俺の真剣さが伝わったのか、それとも感づいたのか、こっそりと住所を教えてくれた。 『石川県加賀市山代温泉・・・・』 遠藤官房長官の実家は温泉町か・・・。超有名な温泉町。奥さんの実家らしいんだけど・・・。そこにいるのかな遥は・・・。実家に帰るって言ってたからね。

俺はきちっとしたスーツを着込むとこっそり休みを取って、羽田発小松空港行きの飛行機に乗って石川県へ向かった。そして温泉郷行きのバスに乗り込んで山代温泉へ。そして住所に書かれたところを探す。交番に聞くと指差されたのは・・・ え????でっかい温泉旅館って言うか・・・ホテル???もちろん俺は巡査に聞く。

「あの、遠藤代議士のご実家ですよね・・・。」
「ええ、官房長官遠藤代議士の・・・。」

間違いない。遥の実家だ。俺は言われたルートでホテルの前へ・・・。で、でかい・・・。この温泉郷でも大きいほうじゃないか???正面玄関に立ちつくしていると、スタッフが声をかける。

「お泊りでしょうか?ご予約は?」
「あ、予約していないのですが・・・今日大丈夫ですか?一人なんですが・・・。」

俺は案内されてフロントへ。まあ泊まる所を手配していなかったからいいかなんて思って、チェックインをする。フロントの人と女将かな・・・なんか話している。女将の顔、遥に似ている・・・やはり間違いない・・・。きっと遥のお母さんなんだ・・・。俺に仲居さんが一人つき、部屋に案内される。

「お一人でご旅行ですか?」
「ええ、まあ・・・。」

仲居さんがお茶を入れながらいろいろ話してくる。あぁ、この部屋いくらだろう・・・。部屋に露天風呂がついている・・・。カードで払ったらやばいかな・・・。現金も10万ほどしか持っていないし・・・。俺って何しに来たんだろう・・・。遥に会いに来たのに、呑気に温泉だなんて・・・。遥の実家がこんなところだなんて予想外だった。ひとまず風呂に入って・・・遥にメールでも入れよう。いろいろ考えながら風呂に入ると、もう夕食の時間で、急いで着替えると部屋の食事が運ばれてくる。

「お客様、女将と若女将の挨拶がございますので・・・。」

って仲居さん。いろいろつつきながら食べていると・・・。

「失礼いたします・・・。」

と、女将が入ってくる。そして後ろには、着物を着た遥。女将の挨拶なんか耳に入らない。遥は俺に気づくと目をそらす。そして二人は挨拶を済ますと、部屋を出て行った。食事を済ませると俺は遥にメールを入れる。

『今後のことで話がある・・・。』

すると返信・・・・。

『何も話すことなんてない。』
『会って話がしたい。お願いだから・・・。』

とりあえず、会う約束をした。俺はスーツに着替えてホテルを出て指定されたところへ・・・。
そして第一声。

「どうして来たの?」
「やはりそのままにしておけない。雅に知られてもいい。遥の子を認知したいんだ。俺だって責任がある。離婚を切り出されても構わない・・・。俺は遥が好きだから・・・。」

遥は俺に抱きついた。

「俺は嘘をつきたくない。お願いだから認知させてくれ。俺が悪かったんだ。遥とおなかの子をほっとけないよ・・・。」
「孝博さん・・・。」
「お父さんは今実家にいる?お母さんは?ご挨拶をしたいんだ・・・。」
「パパはいないけど、ママはいるわ・・・。おばあさまも、お爺様もいるけど・・・。いいの?」
「いいよ。もし離婚になったら、遥と一緒になるから・・・。」
「でもきっと先輩は・・・離婚なんてしないと思うわ・・・。」
「もし休みが重なれば、病院にだっていくし、立会いだってする。出来る限りの事はする。」

遥はとても嬉しそうな顔をして、俺の手を引き遥の実家へ・・・。
遥はお母さんに電話を入れ、会って欲しい人がいるって伝える。
俺は部屋に戻って東京から持ってきた手土産を持ってロビーに・・・。遥は、裏にある遥の自宅に案内する。俺は玄関先に立って、遥が出てくるのを待つ。遥は座敷に案内してくれて、お茶を運んでくる。そして現れる遥のおじいさんたち・・・。遥が事情を話したのかな・・・おじいさんの怒った顔・・・。俺は名刺を渡して、土下座する。

「副操縦士の源君か・・・。」

もちろんたくさん説教・・・。もちろん俺が悪いんだから・・・。罵られたってしょうがない。もちろん最後には・・・。

「遥のことどう思っているのかね?」
「もちろん大切には・・・しかし僕には・・・。妻子がおります。もちろん遥さんの子供の認知はいたします。そしてできる限りのことは・・・。」

黙っていた遥が言うんだ。

「お爺ちゃん。孝博さんは悪くないわ!孝博さんに奥さんと子供がいるのをわかっていて無理に付き合ってもらっていたの。そして子供のこともそう。どうしても孝博さんの子供が欲しくて、孝博さんに嘘ついて・・・。一緒になれないこと知っててこうなること知ってて・・・。だから・・・孝博さんを許してあげて・・・。私、この子を一人で育てる。私孝博さんが好きなの!でも一緒になれないのを知ってるから、どうしても孝博さんの子供が欲しかったの。」

遥の家族は困り果てた顔で黙り込んでいた。俺は条件を出された。もちろん認知は当たり前だけど、できるだけ遥と病院に行くこと、生まれたら3人で写真を撮ること、生まれた後も年に数回会いにくることなど・・・・。もちろん明日、遥は病院の検診だからついていくことになったんだけどね・・・。そして立ち会えるなら立ち会うことになったんだ。遥の予定日は12月24日・・・。それにあわせて休みがとれるかなあ・・・。

一途 (29)想定外
 雅のお父さんが所属している党の総裁が決める総裁選まであと半月という時のこと。もちろんお父さんの派閥には適任がいないので、お父さんが2度目の総裁候補になった。まあこれは別にいい話なんだけど・・・。

いつものように雅と俺の休みが重なった週末は弐條家へ行って夕飯をご馳走になるんだよね。食事を終えたあと、必ずと言っていいほど、お茶の時間がある。その時間でいろいろ話をするんだ。

「ねぇ、孝博。明日は予定ないよね?フライト明後日からだよね・・・。」
「何?フライトは火曜日からだけど?」
「じゃあいいよね。」
「何が?」
「あのね、何度もクルーで一緒になったことがあると思うんだけど、私の後輩の遥がね、退職するんだ。それで、明日の夜、皆で送別会するんだけど、孝博も行くかなって思って・・・。」

遥か・・・。
そうあいつは俺の元愛人で・・・。
3ヶ月ほど前まで一緒にいた時期があった・・・。
寿退社かな・・・。

するとお父さんが言うんだ。

「遥さんといえば、遠藤君の娘さんだよね・・・?」
「うん。今度パパと総裁選を戦う代議士さんよね。遥のパパってそうだよ。」
「そういえば遠藤君はいろいろ娘さんのことで悩んでいたよ。ここだけの話なんだが、確か・・・一時期妻子ある男性と付き合っていてねえ。一応代議士の娘だからって何度も別れさせようとしたらしいんだが・・・ついに別れたと思ったら、今度はその男の子を妊娠したって言ってたぞ。いろいろ相談を受けてねぇ。おろすおろさないでまたいろいろあって、結局認知がないまま育てることにしたらしいよ。」

え?
遥が妊娠???ってことは・・・もしかして?

雅はなんとなく遥の退職理由を知っていたらしいんだけど、相手までは知らないって言うんだ。
結局育てることを許したわけが、おなかの子が多分男の子だということらしいんだよね。

そういえば遥は三姉妹の長女で・・・。
娘かわいさ、そして後継者欲しさに折れたってことかな?

一途 (28)真剣な話
 梅雨が明けた7月の末。久しぶりに休みが重なって、朝から親子3人でくつろいでいる。美咲はもうすぐで2歳。言葉も結構しっかりしてきて、ますます雅に似てきた。結構爺婆っこの美咲もママとパパといる時間は好きなようだ。

「パパ。みいちゃんね。」
「何?美咲。」

美咲は俺の耳元でこっそり話す。

「お名前いえるの。」
「じゃあっ美咲のお名前はなんていうの?」

美咲ははい!って言って大きな声で言うんだ。

「にじょうみさきです!」

にじょうみさき???すると雅は驚いて美咲に言うんだ。

「美咲、あなたのお名前は『みなもとみさき』よ。この前教えたでしょ。」
「違うもん。みいちゃんは『にじょうみさき』なの。」

雅は何度も何度も美咲に源って教えるんだけど、美咲は頑として弐條と言い張る。こっちとしてはちょっと笑えるんだけど・・・。でも誰が教えたんだ?
その日の夜。美咲を子供部屋に寝かしつけると、2人で話をした。

「実はパパが悪いのよ・・・。パパったら、美咲に弐條美咲にならないか?じいじの子になる?って何度も聞くもんだから、覚えちゃったみたいなの・・・。ママもそうよ。彬が高橋の婿養子になってからずっと・・・。雅司も呆れてたわよ・・・。」
「雅、そのことなんだけど・・・。俺さ、弐條に養子に入ってもいいよ。俺は源家を継ぐつもりはない。」
「お父様は誰が面倒をみるの?」
「父さんは若い奥さんがいるわけだし、うちには次男がいる。俺はもう実家に帰っても居場所がないし・・・。父さんだって、春から非常勤として自衛隊に勤めているだろ?あっちはもう別の家庭なんだもんな・・・。だから俺は源でなくてもいいよ。弐條でも・・・。」

雅は冗談だと思って苦笑していたんだ。冗談じゃないよ。ここんとこずっと考えていたんだから・・・。そして俺は雅にこう切り出す。

「なあ雅。もうそろそろ美咲に兄弟をつくってやれないかな?一人っ子はかわいそうだ・・・。それと、無理にとは言わないけど、そろそろCAやめてもいいんじゃないかな?」

雅は黙り込んでいた。大好きなCAという仕事をやめたくないのはわかる。せっかく国際線、それも欧米路線に戻ってこれたところでこういうこと言うのは酷な話だろうけど・・・。でも美咲には母親が必要だし、俺が外で稼いで、雅が家庭を守るのもいいんじゃないかなっておもうんだ・・・。


一途 (27)決意と反抗
 もうあれから随分時間がたった・・・。俺の自分勝手はすべて清算。もちろん借りていたマンションも解約。普段どおりの親子3人での生活に戻る・・・。なんとか雅も浮気の件を許してくれて、益々尻に敷かれるようになったんだけど・・・。

雅は念願の欧米路線に復帰・・・。美咲は雅の乗務中実家に預かっている・・・。ホント世話になりっぱなし・・・。

美咲はまるで弐條家の娘のように大らかでお嬢様に育っているんだよね・・・。

いつも可愛らしいお嬢様のようなヒラヒラした服を着せてもらって、ミーちゃんミーちゃんって呼ばれて、代議士夫人たちの会合にも出席。ホントまわりからも大切に見守られているんだよね・・・。おばさんもホント美咲がかわいいらしくって、孫というより娘のように扱ってくれている。ホント迷惑掛けっぱなし・・・。ますます弐條家に頭が上がらない・・・。このまま弐條家の養子になってもいいくらいだ・・・。いいかもしんないな・・・。

 今年はなぜかうち恒例のカレンダーに夫婦でモデルに選ばれた。普通CAだけが選ばれるんだけど・・・。丁度浮気騒動が終わってからすぐの撮影・・・。見た目はすごく仲のよさそうな副操縦士とCA夫婦に写っている。多分はじめは雅だけが選ばれてたんだろう。写す条件に俺を入れてもらったんだろうな・・・。そしてきっと俺達が夫婦ですって公にしちゃって、浮気防止を目論んでいるんだろうね・・・。きちんとカレンダーの下のほうにこう書かれる。

「国際線運行乗務員部・副操縦士 源孝博  国際線客室乗務員部 源雅」

夫婦って丸わかりで・・・。結構デザイン的に好評らしくって、社内でも話題になっている。そして俺たちのオシドリ夫婦ッぷりをべらべら雅が話しているもんだから、今までいろいろ声をかけていた女の子たちがさっぱり声をかけなくなった・・・。雅の作戦勝ちだな・・・。

 俺たちは丁度休みが重なっていたから、出来たばかりのカレンダーを持って総理公邸へ。叔父さんの和気総理に会いにいったんだ。任期はあとひと月。もちろん久しぶりの訪問だったから、叔父さんは大喜びで迎えてくれたんだ。そしていろいろ話したんだ。

まずは次の総裁候補のこと。案の定、雅のお父さんの名前が挙がっている。他の派閥も小粒の候補。いかにもしょうがなく立てているって感じで。決まりなのかな・・・雅のお父さん弐條雅和氏・・・2度目の総裁・・・そして総理大臣。そして以前からチラッと聞いていた泰明叔父さんの今後。

「んん・・・。やはり夢は捨てきれないんだよ・・・。私は地元兵庫を良くしたいんだ・・・。だから総裁を退いたあと、地元に戻るよ・・・。8月の総裁選挙を見届けて、9月の知事選に立候補する。もちろん代議士を辞職してね・・・。うちの選挙区の後継者は決めてあるんだ。私の同級生で、公設秘書の二階堂を・・・。あいつならなんとかしてくれる・・・。内諾も取ってある。そして私は新総裁が決まった後に離党する・・・。無所属でがんばるんだ・・・。いちから地方からやり直したい。そして引退するまで地元を良くする為に働くんだ・・・。もし落選した時?まあ泰孝を養うくらいの蓄えはあるし、兄貴の病院の顧問弁護士をしないかっていわれているんだ・・・。だからなんとかなるから・・・。」

するとじっと話を聞いていた泰孝君が言うんだ。

「父さんはいつも勝手なんだよ!母さんだってそう!小さい頃から僕は人に預けられて、家族揃って食事なんて稀だったんだもん。どこかに連れて行ってもらったことも少ないし、なかなか参観日にも来てくれない。僕は東京にいたいんだ。今の学校を転校したくない。父さんが総理辞めたら、母さんはアナウンサーに戻るって言うし、またもとの家族になるじゃないか!!!そんな家族は要らないよ!そんな家族なら、弐條の伯父さんちか、多田の伯母さんちに厄介になったほうがましだ!!!もう親らしいことしてないくせに!勝手にししろよ!!!」

そういって泰孝君は部屋を出て行ったんだ・・・。そうだもんな・・・。叔父さんはいくらとなりの官邸にいるっていってもそう簡単に会えないし、叔母さんも公邸にいるときはあってもファーストレディーとして公務もあるんだもんな・・・。寂しいよな、多感な時期にこういう環境だったら・・・。叔父さんと叔母さんは黙って見つめ合っていた・・・。

「叔父さん、俺が話をしてくるよ。」

そういって俺は泰孝の部屋に行く。

「入っていいか?泰孝・・・。」
「孝博にい???」

泰孝はなんとかドアを開け、中へ入れてくれたんだ。いい子を演じていた泰孝・・・。わかるよなんとなく・・・。俺も父さんが単身赴任中はそうだった・・・。まだ俺の場合は母さんや高橋の爺ちゃんが側にいてくれたからいいかもしれないけど。

「泰孝、ホントにお前はお父さんのこと嫌いか?お母さんは?」
「嫌いじゃないよ・・・。だっていつも忙しいけれど、僕のこと真剣に考えてくれているのはわかるけどね・・・。」
「ならどうしてあんなこというんだ?お母さん、泣いてたぞ・・・。」
「だっていつも親は僕の意見なんて聞いてくれないだろ?いつも子ども扱いしてさ。首相の息子だからって僕の自由なんてないし・・・。小さい頃はよかったな・・・。家族だけで出かけたりしたし・・・今はどう?そんなこと無理だろ?」
「俺も同じこと悩んでたな・・・。知ってるかなあ・・・。俺の爺ちゃん政治家だったこと・・・。」
「知らない・・・。」
「そうだよね生まれてなかったもんなあ・・・。丁度泰孝くらいのころ、俺の高橋の爺ちゃんは官房長官だった・・・。慶應に通うのも、送り迎えは車で、塾とか行くのにも誰かついてたよ。官房長官の孫だからってね・・・。ホントあの時はうんざりして、いやだった・・・。ほんと爺ちゃんが政治家を引退した時ほどうれしいことはなかったけれどね・・・。泰孝には夢があるよね?」
「うん。僕兄ちゃんみたいにパイロットになりたい。」
「泰孝にも夢があるんだ。お父さんにも夢がある。もし、泰孝の夢をお父さんが反対して無理やり政治家にさせようとしたらどう思う?嫌だよね?今お父さんは泰孝の夢を反対しているかな?」
「してないよ。お母さんなんか、僕の夢を応援するって言ってくれたし、父さんなんて決して政治家になれとは言わないよ。」
「なら、お父さんの息子としてお父さんの夢を応援してあげるのもいいんじゃないかな?兵庫に行ってもパイロットになれる。俺も東京から兵庫に引っ越したしさ。どうかな?あのね、さっきお母さんは言っていたよ。アナウンサーに復帰しないほうがいいのかなって。お母さんは泰孝やお父さんのために大好きなアナウンサーを完全に辞めようとしているんだよ。それを見て泰孝はどう思う?俺だったらどちらの親も応援してやりたいね・・・。」

泰孝は黙っていたんだけど、こいつ結構賢いから理解は出来ると思うよ。
すると泰孝は勉強机に向かって言うんだ。

「受験勉強始めないとね・・・。あと半年しかないし、受けるなら兵庫でも一番ムズイところ受けるよ。どこがいい?やっぱり灘中かな?」
「うんそうだね・・・。」

泰孝は叔父さんのことを認めだしたようだね・・・。
俺はそっと泰孝の部屋を出て、リビングへ戻る。

一途 (26)遥
 次のフライトも遥と同じだった・・・。そして誰もいないところで遥に声をかける。

「遥・・・。」
「何?」
「あのさ・・・。」
「何よう・・・。」
「いいあとで・・・。」

一番仲のいい彼女・・・。なかなか言い出せなかった・・・。
とりあえず、到着後のホテルで密会をすることに決め、俺は遥の部屋を訪れる。遥は俺が入ってくるなり、抱きつき、キス・・・。俺は決心が崩れそうになったけれど、意を決して別れを告げる。

「悪い・・・。遥、別れよう・・・。」
「え?どうして?」
「雅に知られそうなんだ・・・。実は事務員の子との現場を見られて・・・。だから・・・雅が遥に気がつく前に別れよう・・・。」
「やだ・・・。孝博さんと別れたくない・・・。ねぇ、先輩と別れて、私と一緒になって!!!」
「それは言わない約束だろ?遥から約束してきたことだろ?」
「でも私孝博さんが好きなの!ずっと孝博さんといたいの。お願い・・・。私、別れてもいいけど、孝博さんの子供が欲しい・・・。そうしたら別れてあげる。」
「それもだめだ・・・。俺よりもいい人見つけて、幸せになれ。既婚の俺なんか相手にするな。だからごめん・・・。」

そういうと、俺は遥の部屋を出る。そして自分の部屋へ・・・。

 帰りのフライトの集合時間・・・。遥は遅れてやって来た。随分泣いたのかな・・・。目を腫らせて・・・。優しい言葉をかけてやりたいけど、もう別れる決心をしたんだ・・・。もう俺は一切浮気をやめる。そして雅一本にするんだ・・・。遥のことを心配そうに詰め寄るクルーたち・・・。

「大丈夫?遥・・・。」
「大丈夫です。ちょっと彼氏に振られちゃっただけですから・・・。」
「ええ!!遥ちゃんみたいないい子を振る男っているんだぁ・・・。遥ちゃんのいいとこ知らない男って最悪だよね・・・。どんな奴か見て見たいわよ・・・。」

俺なんだけど・・・。
遥は苦笑してCAたちと話していんだ・・・。
そして俺と目なんかあわせない・・・。きっと俺と別れることを決心したんだ・・・。それならいいけど・・・。

もし俺が独身だったら、遥と結婚していたと思うよ。最高の彼女だったもんな・・・。ごめんな遥・・・。俺はホントに最悪な男で、家族を捨てきれないんだもんな・・・。

遥、いい男見つけて、幸せになって欲しい。それが俺の願いだ。

一途 (25)修復しなければ
 雅は朝一の便でソウルから成田へ帰ってくる。到着は正午。俺は美咲を雅の実家へ預けて、車に乗って成田へ・・・。そして展望デッキで、雅が乗務している747が到着するのを待つ。デッキの金網にへばりついて・・・。定刻どおりの予定だから・・・。

着陸したのを確認すると、俺は成田空港支店へ向かう。急いだって早く出てくるわけないんだけど・・・。一応俺はIDを持ってきていたから、中に入ってロビーで待った・・・。お昼休みの事務員達がロビー周辺をうろうろ・・・。その中に・・・例の事務員の彼女優佳がいた。俺は気づかない振りをして腕組みしながら雅が乗務から帰ってくるのを待った。一時間ほどしてからかなあ・・・。ちらほら乗務から帰るCAたち・・・。雅はいるのか?いたいた!!!

「雅!!!」

俺は雅に駆け寄ると、雅は機嫌悪そうに出口のほうへ急ぐ。

「おい!待てよ。雅!今日は雅の誕生日だろ!!!」

雅はキッと俺をにらみつけるんだ・・・。

「浮気してたんでしょ!どうせまた。そんないい格好しちゃって・・・。」

俺は雅の荷物を持って、雅の手を握り締める。

「さあ行こう。時間がないよ。とりあえず何かうまい物食いに行こう!」
「孝博・・・。」

俺は雅の手を引いて車に乗って成田空港を出た。相変わらず機嫌悪そうな雅・・・。俺は独身時代よく2人で利用していたホテルでランチをすることにしたんだ。

「いろいろ今日何しようかと悩んだんだけど、雅がずっと2人の時間が欲しいって言ってただろ?叔母さんが美咲をみてくれることになったからゆっくりしようと思ってさ・・・。さ、雅。今日はどこに行きたい?何がしたい?俺が何でも聞いてやる。夜はどこに行こう。お台場?六本木ヒルズ?表参道?」
「なんだか変なの・・・。」
「何が?」
「おかしいよ・・・孝博・・・。」
「ごめんな雅・・・。もうあいつとは別れたから・・・。だから安心して・・・。」
「これ食べたらとりあえず家かえろ。ゆっくり話がしたいの・・・。」
「んん・・・わかった・・・。」

まだまだ機嫌悪そうだったけれど、なんとか自宅まで帰ったんだ。

家に帰ると、雅の追求が始まる。
何で浮気なんてしたの?からはじまり、キャンキャンキャンキャン言っている。
俺ははいはいと相槌・・・。
ついには正座をさせられる。

「まあ、今回初めての浮気でしょうから、今回に限って許すわよ。でもなんで?」
「それは・・・なんだか俺の居場所がなくって・・・。雅は美咲の世話で大変だし・・・。すれ違いの夫婦生活だったからね・・・。」
「それだけ?」
「一応ね・・・。」

まあそれだけではないけどね・・・。
いつまでたっても雅はお姉さんぶった言い方をするし、夜の夫婦生活を求めても疲れてるって言って断られるし・・・。実家と近すぎるってこともねぇ・・・。まあ言ったらキリがないからこれくらいにしておくけどね・・・。ああ、やはり遥と今すぐにでも別れたほうがよさそうだね・・・・。反省・・・。

ホントごめんな、雅・・・。反省します・・・・もう浮気なんかしません・・・・。きっちり清算してきます・・・。

一途 (24)旦那失格。
 俺はNEXに乗って渋谷についた。渋谷につくとタクシーを使って表参道へ向かう。明日は雅の誕生日・・・。何か欲しいものってあったかなあと悩む。

昔は直感的に雅の欲しいものがわかったはずなのに・・・。

ぶらぶら表参道ヒルズを重い荷物を持ちながら歩き回る。
ホント俺の心が雅から離れているんだなと実感・・・。
つい年末までは雅のこと大切に思っていたはずなのに・・・。
俺は遥に電話を入れる。遥はもう家についているはず・・・。

「遥、今どこにいる?」
『孝博さん?これからね、渋谷で合コンなの・・・。』
「合コンか・・・。」
『何?』
「いい、別に・・・遥の声が聞きたかっただけだから・・・。」

遥は俺の愛人の中でも一番長い付き合い・・・。
そして一番に俺のことを考え行動してくれる・・・。
もし、雅以外の女と付き合うなら遥がいい・・・。
遥は癒し系・・・。俺の癒し・・・。
だめだめ・・・割り切った付き合いのはず・・・。

雅の服のサイズはいくらだった?指のサイズは?靴のサイズは?どんなブランドが好きだった?今の俺ではひとつも思い出せない・・・。
遥ならいえるのに・・・。服のサイズは7号・・・。指は7号、靴は23.5・・・。プラダ、ブルガリがすきなんだ・・・。
雅は?雅はまんべんなく気に入ったものを買っているって感じで・・・。一時期エルメスのスカーフを集めていたんだよね・・・。

今は?何が欲しい?うわ~~~この前そんなこと話していたのに思い出せないよ俺・・・。
旦那失格だよね・・・。

結局何も買わないまま、広尾の自宅へ・・・。
美咲を迎えに行くと、夕飯までご馳走になって・・・。

「ねぇ綾乃おばさん。明日雅の誕生日だろ?雅は今何が欲しいのかな・・・。」
「そうねぇ・・・あの子なんでも持ってるものね・・・。あぁ、そういえば言ってたわね・・・あの子・・・。」
「何?」
「2人になる時間が欲しいって・・・。一日中孝博君と一緒にいたいって言ってたわよねえ・・・。そうだ、明日美咲を1日見ていてあげるから、2人でデートしてきたら?それがいいわよ・・・。」

そうか・・・そういえば、雅は2人でどこか行きたいねって言ってたよね・・・。
思い出した。
2人で手をつなぎながら、デートして、おいしいもの食べて、夜景なんか見たいねって・・・。
明日は雅の行きたいところへ行こう。雅のわがまま聞いて・・・。好きにさせてやろう・・・。

一途 (23)自己嫌悪?自業自得?
 あ~~あ。運悪く浮気現場を押さえられてしまった・・・。雅は今日休みだと思って油断していたよ・・・。まあしょうがない。事務員の優佳ちゃんとは丁度別れようと思っていたところだから、別れようとさっきメールを入れ、携帯アドレスを消去。そして着信拒否登録。

あぁ俺としたことが、雅にバレるなんてな・・・。とりあえず、俺の隠れ家によってから、広尾の自宅に帰ることにしたんだ・・・。すると、部屋に他社のCA、さくらちゃんが待っていたんだ。

「お帰り・・・。」

さくらだけ、この部屋の合鍵を持っている。

「来るときは電話しろって言っただろ・・・。突然現れんなよ・・・。」
「孝博さん、ごめんなさい・・・。急に会いたくなって・・・。」

そういうとさくらは俺に甘えてくる。

「悪い、そういう気にはなれないんだ・・・。妻に浮気がばれた。まあ君のことじゃないけどな・・・。もしかしたら君とも別れないといけないかもしれない・・・。」

彼女はしょんぼりして首を縦に・・・。
だって俺と付き合いたいならといろいろ条件を付けてたわけで・・・。俺が別れようと言えば有無を言わさず別れることが条件の一つ。俺が既婚とわかってて付き合って欲しいって言ったんだから、それくらいのリスクがあって当然だろ?なんて。

「今日くらいは私のこと愛してよ・・・。」

って彼女が言うもんだから、しょうがない、彼女を一度だけ愛してやった。
ホント俺ってつくづく嫌な男だと思うよ・・・。

この4ヶ月間自分の好き勝手な行動・・・。
あぁ自己嫌悪・・・。
どう雅に誤ろうかと・・・。

シャワーを浴び、着替えをするさくらを見ながら、溜め息・・・。
そしてさくらは俺の唇にキスして言う。

「孝博さん、この2ヶ月、楽しかったよ。いい思い出ありがとう・・・。」

って言って涙ぐみながら部屋を出て行ったんだ・・・。
きちんと合鍵も残して・・・。

いい思い出って・・・。
俺ってひどいことしていると思うんだけどな・・・。
俺はタバコに火をつけて、考え込む。

帰りたくないな・・・。
でも帰らないと・・・。
美咲を迎えに行かないとな・・・。
自業自得かぁ?

一途 (22)浮気現場を・・・
 今日は休みのはずだったんだけど、急遽昼過ぎの便に乗ることになった。そしてあっちに1泊して明日の始発で帰ってくる。アーア、今日は孝博が帰ってくる日なのにな・・・。もう孝博の飛行機は着いているはずで、何度も携帯を鳴らしているんだけど留守電・・・。しょうがないからメールを入れておいたのよね・・・。

時間帯的にはそろそろ運行乗務員部に戻ってくるはず・・・。そして遠目で孝博を発見!もう帰るのかな・・・。でも帰る方向と違うんだよね・・・。どこ行くの?って感じで・・・。階段を上って行く孝博・・・。私はそっと孝博を追いかけてみた。

すると屋上・・・。屋上に何か用事?それとも飛行機を眺めるの?そっと私は屋上入り口の窓から覗いてみる。すると孝博の歩く先には事務員の制服を着た女の子・・・。すると孝博はその子を抱きしめた後、あごに手を添えてその子にキス・・・。それもディープ!え!孝博の浮気現場????どういうことよ!

私はバ~~ン!って扉を開けてズカズカと二人の前へ・・・。

「み、雅・・・。」

孝博の焦った顔といったら・・・。

「何してるのこんなところで!!!誰?この女!」
「雅、何でここにいるんだよ・・・。」
「孝博!先私の質問に答えて!誰?この女は?」
「と、友達だよ・・・。」
「友達?友達とキスするって?それもあんなに・・・。」

私はその事務員の女の子の頬をたたく。

「あなたね、私の旦那様を盗って!いい気なものね。いつから?ねぇ、いつからこんなことしてたわけ?」

その女の子は急に泣き出して走り去った。孝博は相変わらずそ知らぬ顔で私と目をあわそうとしない。

「もういい!私、フライトの時間が迫っているから、明日フライトから帰ったらじっくりこの件に関して話しましょう!」

そういうと、私は急いで乗務員部に戻り、フライトの打ち合わせに入ったの。
最悪。
明日は私の誕生日だって言うのに・・・。
どんな言い訳をするんだろうね・・・。

孝博の馬鹿!!!

一途 (21)孝博の浮気
 今日のクルーには俺の浮気相手がいる。もちろんこういう時はフライトとフライトの間の休暇中にホテルの部屋をこっそり行き来したりする。

俺の彼女1。同じ航空会社のCAの遥。俺よりも2歳年下。雅に比べると美人とはいえないけど、スタイルは抜群で、すごく気が利いてやさしい。もちろん俺との不倫を承知の上の割り切った関係。実は雅の4つ後輩。そして元同じクルー仲間。

「ねぇ、孝博さん。先輩にばれてない?」
「んん・・・今のところね・・・。遥、俺は出しゃばらないお前が好きだよ・・・。」

そういうと俺はお決まりのキス・・・。そして遥を愛する。遥は満足そうに俺の腕枕で言うんだ。

「成田に帰ったら、事務員の彼女と会うんでしょ。もう、本当に孝博さんたら・・・。知らないわよ。雅先輩にばれても・・・。」
「バレやしないよ。雅のフライト時間や休みに合わせてあってるし・・・。」
「あとの例のCAは?」
「んん・・・。あいつの場合はたまにしか会えないしね・・・。」
「でもね、さっき機内でああいうことして、私ドキドキだったわよ・・・。誰もこなかったから良かったけど・・・。」
「たまにはいいじゃん。みんな降りたあとの機内でって言うのもね・・・。」

そう俺は俺と彼女以外のクルーが機内から出たのを確認して、エコノミークラスの中央部の座席の肘掛を上げて彼女といちゃついてた。キスして、制服のボタンを少し外して彼女の白い肌の胸元にキス・・・。彼女はこんなところじゃやだって言いつつも受け入れようとしたところでやめて・・・。

「この続きは後でな・・・。」

って言って今に至ったんだよね・・・。

彼女は時差と疲れからか、俺の胸の中で眠る。その姿はとても愛おしくって、雅と違っていいななんて思ったりするんだよね。

でももちろんこの彼女との別れって言うのもありえる話。彼女もいい歳だろ?今年26だもんな・・・。不倫なんかしてないで、いい相手を見つけたらいいのになんて思ったりするんだよね。彼女とは一緒になれないことぐらいわかってるし、彼女もわきまえているんだ。

ほんと俺は自分勝手だよね・・・。

 成田に帰る便。俺と彼女は何もなかったように乗務につく。もうそろそろ彼女との別れを切り出さないとね・・・。情がうつってしまう前に・・・。


一途 (20)隠れ家
 俺はこっそり成田空港近くのワンルームマンションを契約した。まあ、自分の隠れ家にするのにはいい大きさだ。もちろん雅には内緒。俺の小遣いで家賃を払う。このマンションは家具つき。あと布団とかぐらいかな・・・。たまにフライト日をごまかしてこの隠れ家でゆっくりしていたりする。ああ、雅の小言を聞かされなくてもいいし、美咲の泣き声も聞かなくてもいい。

 そしてこの頃から、俺は浮気というものを経験するようになる。はじめのうちは声をかけてくるCAや、地上職員と一緒に食事したりしていたんだけど、そのうちの数人と男女の関係というものになった。

一人は同じ会社のCA。もうひとりはうちの航空会社の事務社員。そして他社のCA。みんなわきまえているから、俺が会いたいときにあって、そして彼女たちは俺の家庭を壊そうなんて思わない子を選んでいる。その時さえ楽しければいいというような女の子たち。もちろんその子達は自分以外に彼女がいるってことも知っているんだよね・・・。そして決して俺と付き合っているということを公言しない・・・。ほんと父さんと一緒で浮気で仕事や家庭の鬱憤を晴らしているというんだろうかね・・・。


もちろん家庭ではそ知らぬ顔をしていい夫、いいパパを演じる。

一途 (19)唯一の居場所をなくす俺
 真面目で浮気なんてしないと思っていた父さんの20年も前からの浮気と隠し子騒動・・・。俺はなんか裏切られた気がしたんだ。

 年が明け正月3日。年末からのフライトだったフランスパリから関空へ戻って来た。今日は実家で泊まることになっている。年末父さんは実家のある兵庫に引っ越したんだよね・・・。そして父さんの新しい奥さん、そして年の離れた弟・・・。

 俺は昼ごろ関空に到着すると、関空の運行乗務員部へ寄って報告書を書き、帰路につく。ほんと疲れたよ。エールフランスの共同運航便。機材はエールフランスで、機長はフランス人。四六時中英語三昧。乗務員の半分はフランス人。いい経験にはなったけど、気を使いすぎてもうくたくた・・・。

そうだ弟にお年玉の用意をしないとな・・・。ぽち袋を関空の売店で買って相場のお年玉を入れる。関空から伊丹空港行きのリムジンバスに乗り込み、着ていたコートとジャケットを脱いで荷物籠にのせる。どっと疲れが来て、気がつくと伊丹空港に到着していて、運転手さんに起こされた。急いで荷物をまとめて、バスを降り、近距離タクシー乗り場に並ぶ。やはりこっちも寒い・・。まあパリのほうが寒かったんだけど・・・。パリでは買い物三昧。といっても雅やお義母さん、彩子おばちゃん、静姉ちゃんに頼まれたものばかり・・・。まあ化粧品とかばかりだからかさばらなくて済んだんだけど・・・。もちろん実家に泊まるわけだから、お土産持参・・・。

 タクシーに乗って実家の前まで・・・。重いスーツケースを降ろして、玄関ベルを押す。すると出てくる父さんの奥さん。

「孝博君だったわね・・・お帰りなさい。」
「ただいま・・・。親父は?」
「ちょっと出かけてるわ・・・。すぐ帰ってくるから・・・。」

まずは爺ちゃんの部屋に行って、帰宅の挨拶。

「あ、孝博。今日からここで寝なさい。いいね。」
「何で?」
「これからは雅斗の部屋にしたからな。」
「まだ俺の私物とかあっただろ!年に数回でも帰ってくるんだから、俺の部屋をなくすなよ!」
「孝博、お前はもう独立したんだ。小さい弟に部屋を譲るのは当たり前だろう。」
「俺はあいつのことを弟と認めていない。」

爺ちゃんは溜め息・・・。まあ俺の私物は家具以外箱に詰められて倉庫においてあったんだけど・・・。まあ家具は使えるもの意外は処分。大事にしていた机、いすなんかは処分されてたんだよね・・・。ベッドはそのまま弟が使うらしい・・・。ほんと俺に一言も言わずに処分することないだろうと俺は怒る。ほんと腹がたつ。もう父さんが信じられないよ・・・。

「やっぱり俺東京に帰る。もうここには俺の居場所ないから帰らんから・・・。」

俺は私服に着替えると、なんとか取れた伊丹空港発羽田行きの飛行機に乗って帰る事にした。玄関先で父さんとはちあう。

「孝博、どこか行くのか?」
「東京に帰る。パリの土産と雅斗のお年玉置いてあるから・・・。」
「夕飯一緒にと思ったんだけどな・・・。」
「飛行機の時間があるから・・・。じゃあ・・・。」

そういうと、タクシーを拾い伊丹空港からの飛行機に乗り込んだ・・・。本当に唯一の俺の居場所がなくなってしまったんだよね・・・。

自宅?まあ自宅は自宅なんだけど、雅の実家の下の階・・・。雅は実家の近くで嬉しいだろうけど、俺の場合はやはり息苦しいよね・・・。一応書斎というものはあるんだけね・・・。本当の居場所じゃない。どこか成田の近くに俺用にマンションでも借りようかな・・・。うん、そうしよう・・・。

一途 (18)父の退官式
 ついに父さんの退官式。俺は何とか休みを取って市ヶ谷の防衛省へ・・・。そしてその中にある陸上自衛隊へ向かう。俺はというと半月前の出来事が気になってしょうがなかった。あの後何度か父さんと電話で話したんだけど、何度問い詰めようとしたことか。父さんはいつもどおりの父さんだった。ホントあの子は小さい時の俺に似ていた。

 退官式が始まる。相変わらずご立派な言葉を述べる父さん。俺はご苦労様ってことで、父さんに花を渡す。父さんは涙を浮かべながら受け取る。ありがとうって。あれ?自衛官の席に例の女の人が座っているんだ。相手も自衛官か。俺は退官式を終えると、近くにいた防大時代の同級生に声をかける。

「おお!源久しぶり!」
「あのさあ、渡瀬、聞いていいかなあ・・・。あの女の人って誰?」
「あの人?ええっと・・・。源のお父さんの秘書みたいな人だよ。伊丹駐屯地からずっと一緒に行動しているって聞いたけど?それが何?」
「いや別に?ありがとう・・・。渡瀬。今度一緒に呑みに行こうな。」
「いいねえ・・・。じゃあまた連絡するよ・・・。」

秘書に手を出したのか?
それとも・・・。ホント複雑で・・・。

 夜はみんなが集まってお食事会になっているんだよね・・・。もちろん叔父さん連中も来る。母さんは絶対行かないって言ってたなあ。ホントに毛嫌いしてるんだもんなあ、母さん。今度の姉貴の結婚式も結局呼ばないって言ってた。でもそれじゃだめだって言うから、雅のお父さんが彬の伯父さんとして呼ぶことに決めたんだよね。例の親子も来るのかなあ。爺ちゃんもさっき懐かしい市ヶ谷駐屯地に来ていろんな人たちと話してた。もう爺ちゃんが自衛官辞めて27年だもんなあ・・・。早い・・・。当時自衛官なりたての人がもう定年間際ってことだしねぇ・・・。爺ちゃんはあの親子の事知ってるのか?だって年明けから父さんは実家で爺ちゃんと暮らすって言ってたしね・・・。

 案の定、父さんは食事会が始まるなり、こう言い出した。

「あの、みんなに紹介したい人がいるんだよ・・・。美菜、入りなさい・・・。」

そして例の親子連れが入ってくるんだ・・・。
爺ちゃん以外はもちろん驚いていたよ・・・。
やっぱり爺ちゃんは知っていたんだよね・・・。

「どういえばいいのかなあ・・・この人は私のいい人なんだ・・・。ずっと10年以上お付き合いをしていてね、そしてこの子が生まれた。雅斗って言うんだよ。静、孝博。お前たちの弟だ。春に一年生になるんだよ・・・。ホントは雅斗が生まれる前に入籍だけでもしようと思っていたんだが、静と孝博が新しい所帯を持つまではと、入籍しなかったんだよ・・・。静が今度結婚するって聞いてね、入籍することにしたんだ・・・。そして年明け、親父と一緒に暮らすことになったんだ・・・。わかってくれるかなあ・・・。孝博、静・・・。すまなかったね・・・美菜。」
「いいえ・・・。そんな・・・。」

なんて言うのかなあ・・・ショックって言うのかな・・・。
別に隠す必要なかったのに、どうして隠してたわけ?
ホント何かまだまだありそうだよ・・・。爺ちゃんは小さな孫を膝に座らせて笑ってる。だからか、しょっちゅう東京に行ってたのは・・・。きっとこの子に会いに言ってたって事か・・・。ホント姉貴も俺も、おじさんたちも複雑な顔で父さんたちを見ていたんだよね・・・。ホント複雑・・・・。

 俺は母さんに先日のことを話したんだ。するとかあさんは「そう・・・。」っていて黙っていた。その顔はいかにも知ってたような顔つき・・・。

「もう孝博は大人だから言うわよ。」

ホント真剣な顔で俺に言うんだよね・・・。

「博雅さんはね、浮気していたのよ。離婚の本当の理由はね・・・。あの人との付き合いは10年どころじゃない。孝博が小学校お受験の時にはもう始まってたのよ・・・。丁度もめてたでしょ・・・。孝博の将来のこと・・・。孝博の亡きお爺様は孝博を養子にしようとしてたでしょ。後継者にしたいって・・・。その頃からかしらねえ・・・。その頃、博雅さんは防大勤務だったでしょ。そこで出会ったらしいのよ・・・。高橋の家でもめてた鬱憤を浮気で晴らしていたのかしらねえ・・・。離婚を機に本格的に付き合うようになったって聞いたわよ・・・。だからもういやなのよ。博雅さんの事・・・。」

やっぱり父さんは浮気してたんだ・・・。父さんがそんな人だなんて思わなかったよ・・・。



一途 (17)秘密
 ある11月の休日久しぶりに休みが重なった俺と雅は美咲を連れて新宿へ買い物に出かけた。

「ねぇ、孝博。ショッピングなんて久しぶりだね・・・。そうそうあと半月でお父様の退官式でしょ。行けそう?」
「んん・・・何とか休めそうだよ・・・。12月は姉貴と彬の結婚も控えてるしさ・・・。休み取るのが大変だったよ・・・。そのせいで共同運航便になりそうだ・・・。聞いてくれよ・・・。前日の関空に入って、関空から成田に飛んで成田からパリだぜ・・・。エールフランスとの共同運航・・・。ということはクルーは半分半分ってことかな?機長はフランス人????あぁやだ・・・ずっと英語・・・。息詰まりそう・・・。」
「ということは関空で解散ってことね?」
「いや、その便はチャーター便だから、関空に着いて成田に着く。変則型・・・。やはり年末ってなんかねえ・・・・。」

あぁ早く雅も欧米線に帰ってこないかな・・・。そうしたら一緒にってこともあるんだけどなあ・・・。

 そろそろ美咲をベビーベッドから卒業させようと思って、美咲用の家具を探しに来たんだ・・・。子供部屋を充実させようと、いろいろ見ていたんだけど、机のコーナーでみたことある後姿・・・。

あれは父さん???父さんに声をかけようとしたんだけど・・・。

「お父さん!!!これがいいな・・・。この机。」

父さんの側には6歳くらいの男の子・・・。
そして側には40歳くらいの女の人・・・。仲よさそうに話しながら、学習机を選んでいるんだよね・・・。

誰?あの子は?誰?あの女の人は・・・?

販売員に注文を済ますと、側においてあるランドセルを選び出す。

「雅斗。どの色がいいかなあ・・・。父さんはやはり黒がいいと思うけどなあ・・・。」
「やだ、僕ねぇ、青がいいな。青!青!!」
「やめなさい。雅斗。お父さんが困っているでしょ。」
「わかった。青にしよう。雅斗、大事にするんだぞ!」
「うん。僕嬉しいよ。もうすぐお父さんと一緒に住めるんだもんね。僕平気だよ。遠いところに引っ越したって・・・。だってお父さんと一緒だもんね・・・。」

ホント家族みたいに和やかな雰囲気・・・。
俺はその場を立ち去った。なんだか嫌な感じで・・・。

「雅、家具は今度にしよう・・・。」
「どうして?」
「いいから・・・。美咲には服を買ってやろう。今度父さんの退官式と結婚式に着る服をね・・・。」
「うん・・・いいけど・・・。」

ホント誰?
母さんは知ってるんだろうか?
もしかして隠し子???
あの熱血自衛官でくそ真面目な父さんに限って・・・。見間違いであって欲しい・・・。

一途 (16)ファーストレディーの訪問
 いつものように私は仕事を終えて実家へ美咲を迎えに来たの。美咲ったらもう慣れてしまってご機嫌さん。お昼間、実家でママと遊んでいるの。

 今日は彩子叔母様が従弟の泰孝君を連れて遊びに来ていたの。

泰孝君は11歳。小学5年生かあ・・・。大きくなったよね・・・。今早稲田実業の小学校へ行っている。泰孝君は美咲と仲良く遊んでいたわ。

「あ、雅ちゃんお帰り。」
「叔母様いらっしゃい。」
「ねぇ聞いてくれる?和気さんたらね、首相任期満了になったらとんでもないことを考えているのよ・・・。」

そういえば叔母様って今総理大臣夫人よね・・・。来年の夏に任期満了。総裁選が行われる。和気泰明叔父様は2期総裁を勤めたから、まあこれで終わり・・・。次はパパと泰明叔父様の派閥「弐條・和気派」から誰を総裁候補に出すんだろう・・・。パパと叔父様の派閥が一番大きいから、だいたいパパと叔父様が出した候補は決まってしまう。とんでもないことって?

「ホント前代未聞。お義兄さんも聞いてよ・・・。」

なんか苦笑しているパパ・・・。

「雅ちゃん聞いてよ。和気さんたらね、中央政界をやめて地方でやり直すって言うのよ。なんと来年秋に行われる知事選に出るって言うのよ。総理大臣経験者が知事をするって・・・。前代未聞よねえ・・・。」
「でもね、彩ちゃん。和気はね、もともと地元優先の人だったからねぇ・・・。大臣時代も官房長官時代も、同じことを言ってたんだよね・・・。知事になるって・・・。派閥の人間で何とかここまで引き止めていたんだよ。総裁を退けば、別に何やろうが構わないんだけど・・・・。まあ和気らしいと言えばそうかもしれないよね・・・。この前だって引きとめようものなら、離党するって言ってたんだよね・・・。無所属でやり直すんだって・・・・。雅、このことは絶対誰にも言うもんじゃないよ・・・。まだ公に出来ないことなんだから・・・。」
「わかっているわよ。何年政治家の娘をしていると思っているの?」

パパは苦笑していたの。

「で、パパ、次の総裁選は誰を派閥から出すつもり?」
「それなんだよね・・・。なかなか適任がなくて・・・。要請しても断られるしね・・・。何事も国民のために一生懸命だった和気の後をやろうというものはいないんだ・・・。和気は結構成果を出してたしね・・・。この3年の評価はとてもよかったよ・・・。任期延長をして欲しいくらいだよ・・・。」

パパだってそうだったじゃない・・・。パパだって結構支持率高くって。
パパが二度目の総裁になれば?お爺様も2回首相をしたわ・・・。パパはまだ若いんだし、もう一度したっていいんじゃないかな?来年54でしょ・・・。

「ねぇ叔母様、もし叔父様が知事さんになったらどうするの?」
「そうね・・・。別に強く反対するつもりはないけど、知事になれば、東京を離れないといけないでしょ。実は私ね、和気さんが総理を辞めたら、アナウンサーに復帰するのよ・・・。もといた局に契約社員として再雇用してもらうことになっているのよねぇ・・・。まあいうパートみたいなもので・・・。泰孝も再来年中学でしょ。もし知事になったらまたどこか受験させないと・・・。もう大変よお・・・。まあ和気さんを応援したいのはやまやまだけど、こっちだって家族の都合というものがあるのよねぇ・・・。まあまだ時間があるし、よく話してみるわ。あぁスッキリした。じゃあ私公邸に戻るわ・・・。ありがとう愚痴聞いてくれて・・・。じゃあ・・・。」

そういうと叔母様は泰孝君を連れて永田町の総理公邸に帰って行ったの。彩子叔母様も大変ねぇ・・・。ホントに・・・。

一途 (15)職場復帰と旦那様の国際線副操縦士デビュー
 何とか引越しも終わり、私は国際線CAに復帰したの。久しぶりに着る制服。身が引き締まる思い。

昨日フライト予定を見たの。すると当分近距離ばかり。ソウル、北京とか。みんな日帰り。まあそれならそれでいいんだけど。美咲と一緒に過ごせるしね。

 旦那様の孝博は早速ニューヨーク便。B777に乗るって。朝は一緒に成田まで行ったわよ。孝博の便は昼過ぎだけど、初国際便だから早めに出るんだって。成田のセンターに着くと、私は国際線客室乗務員部。孝博は国際線運行乗務員部へ別れる。

「じゃあね、孝博。お仕事がんばってね・・・。今度帰ってくるのは週末?」
「うんそうだね・・・。ニューヨークで何か買ってきて欲しいものとかある?」
「別にないなあ・・・。美咲にお土産買ってきてあげてね・・・。」
「んん、わかった・・・じゃあ・・・。」

手を振って別れる。ホント久しぶりね・・・ここも・・・。
1年半ぶり?きっとクルーは知らない人ばっかりなんだわ。初めての近距離便だし。

近距離便のB777だから、ファーストクラスはない。私はビジネスクラス担当を命じられる。掲示板を見てミールサービスのチェックとか、お酒類などの銘柄をチェック。これでも私一応だけど、元ファーストクラスの担当だったから、ソムリエの資格も持っている。必須なのよ、ソムリエの資格・・・。そしてクルーのミーティング・・・。やっぱり知らない人ばかり。あ、名札新しいものにかえるの忘れていたわ・・・。弐條雅から源雅に変えないとね・・・。ふう・・・緊張。ミーティングが始まる。まずは私は新入りだから、紹介を・・・。

「皆さん。産休から戻られた源雅さんです。」
「源雅です。以前は欧米便中心に乗務をしておりました。よろしくお願いいたします。」

なあなんとかやっていけそうねえ・・・。
そして運行乗務員との打ち合わせのあと、ソウル行きのB777の機内へ・・・。そして私はビジネスクラスの準備を。きちんと数が揃っているかのチェックね・・・。

「ねぇねぇ・・・源さんって・・・もしかして運行乗務員部の源副操縦士の奥さん?」
「ええ・・・まあ・・・。」
「そっか・・・あなたなのね・・・。源くんを射止めたCAって・・・。ふうん・・・。みんな源くんが結婚するって聞いたとき泣いてたのよねぇ・・・。でもいまだにモテモテ・・・。羨ましいわよ・・・。まあ私もあなたと一緒で既婚だから、関係ないけどね。」

なんていいながら微笑んでいた綾瀬さん。
孝博がいまだモテモテなのは有名な話で、既婚と知っていて言い寄るCAや地上業務職員も多いってね・・・。孝博だってぼやいてた。よく食事に誘われるって・・・。おごるからってね・・・。ふう大変だよね・・・。

何とか往復の乗務を終え、くたくたになって帰ってきたの。久しぶりで緊張していたからかなあ・・・。すごく疲れちゃったのよね・・・。実家に行くとご飯食べていきなさいって言うから、ご飯食べて寝ている美咲を抱っこして帰ったの・・・。美咲は始め愚図ったらしいけど、大好きなお婆ちゃまといたから機嫌がよくなったって・・・。まあイイコだったよって言ってたの。今日は美咲と同じお布団で寝る。

今頃孝博はどこを飛んでいるんだろうね・・・。
初めての副操縦士としての国際線乗務・・・。
がんばってね孝博・・・。
私も明日からがんばるからね・・・・。

一途 (14)お引越し
 私の旦那様孝博はフライトで忙しいから、私一人で引越し作業・・・。もちろんおじいちゃまも手伝ってくれたのよね・・・。荷物をみんな積み終わると、引越し業者によろしくって頼んだの・・・。明日朝には広尾の家に着く。そして私は伊丹発の最終便で東京に向かうの。今晩は実家にお泊り・・・。明日は彬が休みを取ってくれて、引越しを手伝ってくれるんだもんね・・・。まあ、あっちにはパパとママが新生活用に家具とか揃えてくれたから、引越し荷物も少ないけど・・・。

「雅、寂しくなるねえ・・・。美咲、おじいちゃんのこと忘れないでくれよ・・・。」

美咲はもう少しで1歳・・・。最近ジイジっていえるようになったの。余計におじいちゃまは美咲がかわいくってしょうがない様子・・・。初曾孫だもんね・・・美咲は・・・。
おじいちゃまは空港まで送ってくれたの。搭乗手続きまでしてくれて・・・。まあ予約は孝博がしてくれたから助かったけど・・・。

「じゃあおじいちゃま、また遊びに行くね・・・。ちょっとの間だったけど、お世話になりました。」
「雅、仕事もいいけど、美咲の事きちんと見るんだぞ・・・。」
「うん・・・。じゃあ行くね・・・。」

最終便のB747・・・。本来ならB777なんだけど、夏休み真っ盛りだからジャンボになったって・・・。搭乗口あたりでじっと乗る予定のB747を見ていたの・・・。すると美咲が叫ぶの。

「パパ!!!」

パパがいるわけないじゃない・・・。
孝博は今福岡のはずで・・・。

でもよく見たら、孝博が搭乗予定の747のエンジンあたりで機長と話しているの・・・。よくわかったわね・・・美咲・・・。暗いんだけどライトでなんとなくわかるって感じなのに・・・。でもどうして???よちよち歩きの美咲。ベビーカーから降りてじっと孝博のほうを見ていたの。

「パパ!パパ!」

って言いながら・・・。
孝博はきっと気づいていない・・・。
孝博は話を終えると機内に・・・。

さあ搭乗開始・・・。借りたベビーカーを返し、美咲を抱っこして機内へ入る。一応孝博は美咲のためにもう一席取ってくれたの。離着陸の時は膝に乗せて、他は美咲は席に座らせる。美咲はおもちゃをもらってご機嫌。赤ちゃん連れの席だから入り口近く。そして2階席への階段の横。この階段を上がればコクピットがあるんだよね・・・。美咲は相変わらずパパを探している。

「パパは?」

って感じで聞いてみるもんだから・・・。

「美咲、パパはお仕事ですよ・・・。ブーンのお仕事・・・。」

飛行中もジュースのみながらご機嫌・・・。私はお気に入りのスープで・・・。美咲はジュースを飲み終えると眠ってしまったの。もうちょっとで着くのにね・・・。孝博、このフライト終わったら終わりよねえ・・・。羽田に宿泊するのかなあ・・・。

 無事到着・・・。

美咲ったらまだ寝てるの・・・。気持ちよさそうに寝てるから、最後に降りることにしたのね。そして最後の人が出たころ美咲を隣の席に座らせて、荷物を取るの。すると階段から人が降りてくる。
ふっと振り返ると孝博・・・。2人で一緒に「あ・・・。」って感じで・・・。

「美咲寝てるのか・・・。雅、早く降りろ。降りないとクルーが降りられないだろ・・・。」
「そうだね・・・。今晩はどうするの?」
「広尾の家に行こうと思うけど・・・迷惑かな・・・。また電話するよ・・・。」
「うん・・・。」

美咲はパパの声が聞こえたらか、起きたの。

「あっこ~~~~~~。」

って抱っこをせがむ。

「しょうがないな・・・。ちょっとだけだぞ・・・。パパはまだ仕事中だから・・・。」

そういいつつも嬉しそうに美咲を抱っこ・・・。
そしてわざわざ搭乗口のところまで送ってくれたの。

「じゃあ美咲、また後でね・・・。」

といって美咲の頭を撫で撫で・・・。美咲はご機嫌で孝博にバイバイ・・・。そして孝博は急いで再び機内の中へ・・・。

 羽田の出口を出るとなんとパパがお出迎え・・・。そして私と美咲の顔を見るなり笑顔・・・。私が持っている荷物を持ってくれたりなんかして・・・。

「雅、夕飯食べたか?」
「うん・・・。孝博も広尾に来るって。孝博のフライトの便に乗ったから・・・。」
「そうか・・・。新居、いつでも住めるようにはしておいたよ。」
「ありがとうパパ・・・。」

パパの秘書が運転する車に乗り込む。パパったら美咲のためにカーシートを用意してたのよね・・・。明日は荷物が来るから大変だね・・・。孝博は多分仕事だろうけど・・・。あと一週間で私は復帰・・・。私はダイエットして何とか制服が入ったし・・・。一応フライト前には顔を出さないとね・・・。フライト予定を聞きに行かなければ・・・。
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さくらと空 
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