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4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

一途  (63)ひさしぶりの・・・
 北田さんと明日の夜一緒に飲みながら辞表を書くことにした。もちろん北田さんにも家族がいるから、帰って奥さんとどうするか決めたいらしい。もちろんそうだろう。7月入社予定がひと月早まったんだから・・・。まあうちはいつでもいいんだけど・・・。早く国際線に移れるんならね。ほかの人も7月までに順次入社らしいよ。みんな希望の路線にいけるらしいけどね。

訓練センターを出ると、雅が待っていた。ソワソワしながらね。研修終わったのかなあ・・・。北田さんは雅のことを知っているから、「おう!」って挨拶して帰路についた。他の四人は年末以来だし、「いいよな綺麗な奥さんで・・・。」なんていって冷やかしながら帰っていった。

「どうだったの?孝博。研修中も気になって・・・集中できなかったよ・・・。」
「合格した。採用だよ。もちろん欧州便で北田さんとこれから組むことになる。どうしようかなあ・・・。」
「何が?」
「6月1日付で来て欲しいっていわれたんだ。あと半月後だろ。いいのかなあ・・・。」
「いいんじゃない?籐華会のためには休みあけないとね。」

そうだ・・・籐華会があるんだ・・・。

 家に戻ると久しぶりの雅の手料理・・・。あれ?美咲は?

「実はね、またパパったら、二人でゆっくりしなさいって・・・。私の誕生日、何もできなかったし・・・。」

ははーん子作り応援ですか?お父さんらしいね。だってずっと籐華会の打ち合わせの電話で、もうそろそろ二人目はどうか?って聞いてくるんだから。

雅の手の込んだ料理と、ソムリエの資格を持つ、雅のチョイスしたワインでディナー。久しぶりにいい雰囲気でゆっくり出来たよね・・・。

 もちろん夜は二人で久しぶりの夫婦生活。キスして雅の左手と俺の右手を重なり合わせた時ふと違和感を覚える。

「あれ、雅・・・結婚指輪は?」

決して外さない雅。なのに結婚指輪がないなんて・・・。すると雅がいう。

「ごめんなさい・・・。フライト中に無くしちゃって・・・。見つからないの・・・。」
「そう・・・実は俺もなんだ・・・。そうだ、明日買いに行こうか・・・。形だけでもね・・・。」
「う、うん。そうだね・・・。」

夕方待ち合わせして、北田さんとの待ち合わせまでのデートの約束。
お互い苦笑しながらも、二人の長い夜を過ごした。


恥ずかしながら明るい家族計画実施中です。ははははは・・・。

(なんだかんだ言って周りの期待を背負う俺・・・。)
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一途 (62)入社試験2
 さて二日目。今日はタクシーで行くことにした。なんとかまた訓練センターに着き、みんな勢ぞろい。まずは午前中シュミレーター試験を受け、昼食を摂った後担当試験官から制服と空港に入るためのIDを受け取る。昨日サイズを聞かれていたので何とかぴったり収まる。胸にIDをつけ、会社が用意した車で、運行乗務員室へ連れられていった。

みんな興味津々で俺たちを見つめている。客室乗務員室からちらほら覗きに来るCAたち。6人の中でも俺は結構有名人だったりするんで、なんだかうるさい。打ち合わせ用の机につき、試験官より、概要を伝えられ、組み分けされる。順番に60分ほどの実機試験。

まずは俺と、年末に組んだ北田さん。駐機場に試験用のB747が2機置かれてあった。

「さ、機体運行前点検からお願いします。」
「はい・・。」


俺と北田さんで、いつものように運行前点検。隅々まで点検し、機内に乗り込む。白い機体に青いライン。お馴染みの機体。まあ中は一緒だけどねぇ・・・。

「機内運行前点検。終わったら管制塔に・・・。」

指示されたとおりにはじめ、管制塔の誘導で、滑走路にたどり着く。離陸は北田さん、着陸は俺担当だといわれる。管制塔から離陸許可が下り、北田さんが操縦桿を操作する。徐々に速度が増し、スムーズに飛び立つ。レーダー、計器類を確認しつつ、旋回し、再び管制塔に着陸許可と誘導を連絡する。管制塔から着陸する滑走路の指示と、着陸許可をもらい、俺は口頭で角度、速度、高度を確認しながら操縦桿を握って着陸。車輪が地に着いたことを確認後、逆噴射。いつもどおりのスムーズな着陸。

久しぶりにB747を操縦した割には上手くいったかな。そしてもといた駐機場へ戻る。最後の確認を終えた後、機体から降りる。あんなに硬い怖い顔をした試験官の顔が緩む。

「さすが噂どおり、弐條さんの着陸はすばらしい。今日のような天候不順な時なのに。」

北田さんは俺の背中をぽんぽんと叩き、微笑む。

今日は天気が悪い。風もちょっと強い。霧も少し出ている。まあ俺は様々な気候条件をクリアして資格も取っているから、大概の気候条件での離着陸は可能だ。

今まで見てくれた試験官は次の3組目の試験に移った。3組目も終わり、訓練センターに戻ると、制服とIDを返却し、再び試験会場へ。そして採用試験の結果が発表される。もちろんみんな合格。そりゃそうだろ。今いる会社の精鋭集団なんだから。

「北田さんと弐條さん、すぐにでも来て頂けませんか?すぐにではなくても、6月1日付で、成田空港支店に・・・。もちろんご希望通り欧米路線で・・・。」

半月後???俺と北田さんは向かい合って、苦笑。

「どうしますか?弐條君・・・。」
「どうしますか北田さん・・・。」

もちろん週末まで猶予をもらった。7月に移るつもりでいたからねぇ。もちろん俺の場合引越しとかあるから、フライトは2週目になるだろうけどね。どうする?俺。

雅と相談しなくちゃね。勝手に決めると後が怖いから・・・。(未だに尻に敷かれている俺・・・。)

一途 (61)入社試験1
 久しぶりの家族三人水入らずの夕飯。明日は入社試験。一応形だけらしいけど、しっかり筆記、面接、シュミレーション、身体検査、実機試験がある。明日は筆記や面接その他・・・。明後日はシュミレーションと実機。実機は羽田の空いている時間帯でB747を使っての試験となった。一応一通りの試験。離着陸はもちろん、管制塔とのやり取り、計器などの見方などなど。シュミレーションでは緊急着陸のシュミレーションをするらしい。誰が引っ張られてくるんだろうねぇ・・・。

 朝9時集合。大田区の乗員訓練センター。俺はスーツを着込んで雅に送ってもらった。

「孝博、がんばってね。」
「んん・・・。まあだめでも今の会社があるしね。」

手を振り別れ、中に入る。受付の人に試験会場を教えてもらう。
試験会場に入ると見た顔がいっぱい!!!
ああ!!!年末の召集組!!!


みんな苦笑して俺の顔を見て手を振る。なんと6人か・・・。トップクラスばかり・・・6人も・・・やるなこの会社。最近は操縦士の名前で選ぶ客が多いからねぇ・・・。まあいうブランドっていうか・・・。最近機材と便名そして操縦士の書かれたフライトスケジュールの一部を希望するお客様に知らせているらしくって、運行乗務員によってはいくら朝一番の便でも変な時間帯でも満席になる。昔と違ってねえ・・・。サービスの一環というか・・・。

まあなんとか1日目の試験を終え、皆で飲みに行くことになった・・・。

「一気に俺たちが抜けたらどうなるんだろうね・・・。」
「そうそう。面白いかもしれないけど・・・。オペレーションルームの人たちの顔みて見たいよな・・・。」

どうしてこの人たちは引き抜きに応じたんだろう。もちろん聞いてみる。

「え?まあ弐條が抜けるっていうのもあるけど、最近うちの会社ケチでさあ・・・。交通費減額、社宅家賃増額、ボーナス減額。特別手当減額。年収だけでも500は違うね。一時2000あった収入が今1500ちょっとだもんな・・・。」
「ほら弐條なんかさあ、国際線からはずされて国内線だしねぇ・・・。提示額は現状維持の2000くれるって言うし、いい借り上げ社宅を成田に手配してくれるって・・・。」
「そうですよ。僕なんて副操縦士8年目なんですけど、今度機長昇格試験を受けさせてくれるって言うし。今の会社で受けたいといったら却下されたからねぇ・・・。」

みんな大体同じ提示条件なんだ・・・。

いつ辞表出す?ってことになって、採用が決まり次第、皆で本社に出そうってことになってさ、6月末付けで辞めることになったんだよね。それも一斉に・・・。きっと会社は驚くだろう。


(作者からの一言)

フィクションですので、実在しないサービスが含まれています。こういうのがあったら面白いなあなんて思ったんで・・・。

一途 (60)総理公邸でのお食事会
 自宅についた後、着替えて総理公邸へ向かう。美咲はもうすでに到着済み。

「孝博、今日ね、官房長官も一緒にランチするんだって。遥覚えてる?遥も子供連れてくるんだって。久しぶりだもんな・・・遥の孝志君。きっとかわいくなってるよねえ。もうすぐで5ヶ月だもん。彬もくるんだよ。静も、ひかりちゃんもすごく楽しみだと思わない?」

え?遥が来るって???聞いてないよ・・・。

「どうして官房長官までわざわざ休日に?」
「パパがね、自慢の初孫を見たいっていったらしいのよ。官房長官ははじめ断ったらしいけど、どうしてもってパパのわがままよ。」

はあ・・・遥と顔を合わすのか・・・。公邸に着くと、彬が出迎えてくれる。

「孝博、久しぶり!元気にしてたか?」
「んん、まあな。ごめんな籐華会のこと頼んじゃって・・・。」
「しょうがないよ。急な転勤だったからね。まあ僕に任せてくれて正解だったかもねえ・・・。」

ホント彬には頭が上がらないよね。手配関係すべてやってくれたんだから・・・。公邸の中はもう揃っていた。

「遥!久しぶり~~~~~。」

と雅が遥のもとへ。遥は俺が来ることなんて知らなかった様子で、驚いている。もちろん僕もだけど・・・・何も関係ない顔して俺は遥に声をかける。

「お久しぶりです。遠藤さん。元気そうですねえ・・・。」

なんていいながら。ひと月半前には会ったのにさ・・・。おかしな話だよね。もちろん遥は同様に他人の振りして挨拶を交わす。

「遥~~~孝志君見せて。大きくなったんじゃない?」
「んん・・・お座りが出来るようになったの・・・。」

そういうとリビングへ。リビングでは彬の娘ひかりと、俺の隠し子、孝志が仲良く遊んでいた。同じ日生まれだもんなあ・・・。雅のお父さんは官房長官と話している。

「おお、孝博、来たか。」
「お邪魔しています。官房長官、お久しぶりです。」
「ああ、弐條君。久しぶりだね。」

ホント何気ない会話。

「ホント遠藤君の孫、いい顔してるねぇ。きっと遥さんの相手っていい男だったんだろうね。妻子持ちでなければよかったんだろうけど・・・。」
「ま、まあそうですね。妻子持ちでなければ一緒にさせていましたよ・・・。」

はははは・・・ひきつってる遥のお父さん・・・。相手はこの俺なのに・・・。
まあなんとかその場を逃れ、和やかなお食事会終了。遥たち親子は帰っていった。そしてお父さんは俺に言う。

「聞いたよ。会社移るんだって?」
「はい。あちらのほうが条件がいいので・・・。明日から入社試験があります。」
「んん・・・。そのほうがいいかもしれないね。ずっと大阪勤務って言うのも良くないし。受かるといいね。」
「はい。がんばってきます。」
「で、いつ移るんだ?」
「先日の話では7月らしいですね。俺のほかに数人引っ張ってくるらしくって・・・。この俺が移ると聞いて、他の人たちも首を縦に振ったと聞きました。」

お父さんはとても応援してくれた。がんばらないといけないね。


一途  (59)休暇中に
 昨日いろいろズボンとか探してもなかった結婚指輪・・・。きっとどこかで落としたのかもしれない。結婚指輪の裏にはきちんと結婚記念日と、雅から孝博へと刻印されてある。そして恥ずかしいけど、雅が俺に一言。「私の永遠の王子様」と、英語で・・・。拾った人はきっと・・・ああ恥ずかしい・・・。

 俺はいつも乗務する1502便に乗り込んで羽田へ向かう。変な感じ。いつものクルーが迎えてくれるんだもんな。スーパーシートしか空席はなくてそこへ座る。雅にはきちんと8時半に着くよって伝えておいた。雅は今週、新シーズンプログラムの研修のため東京の訓練センターに通うという。でも今日は休み。

 このスーパーシートではお茶菓子と飲み物が出る。ちょっと昨日の酒が残っていて、二日酔い気味。CAが入れてくれたコーヒーで目を覚まそうと思った。おかわりもした。お茶菓子は美咲の大好きなクッキーだったから、お持ち帰り。

「あれ?弐條さん、食べないんですか?」

って、担当のCAがこっそり言う。

「娘が好きなお菓子だから・・・お土産にね・・・。」

って言うとじゃあどうぞって10枚ほどくれた。ただ乗りしているのにねぇ・・・。悪いことしちゃったかな・・・。

無事に定刻どおりに羽田に着く。クルーたちと挨拶を交わして搭乗口を出る。あれ?雅。何でこんなところで。雅は搭乗口前で俺を待ち構えていた。きっと社員証で入れてもらったんだろう。首には社員IDがかけられている。

「お帰り、孝博。」
「ただいま。雅これ。」

と言って俺は雅のちょっぴり遅い誕生日プレゼントを・・・。休みの日に悩み悩んで選んだもの。中身は秘密。

 本当の休暇理由はある。明日から2日間、例の航空会社の入社試験がある。シュミレーターと、実技試験。まあ形だけらしいけどね・・・。結局雅はそのままの会社にいることに決めたらしいよ・・・。

 雅は微笑みながら駐車場まで行き、雅の運転する車で一路自宅へ戻った。

一途 (58)飲み会という・・・
 やっとのことで一番忙しい黄金週間を切り抜けた。そして俺は休みを取った。1週間もだよ。休日前最後のフライトを終え、運行乗務員室で報告書を書き、ロッカールームへ。制服を社内のクリーニングに預けたあと、同僚に声を掛けられる。

「弐條。今日飲み会するんだけど、出てくれないか?」

飲み会?

「どこでですか?」
「梅田だよ。もしよかったら俺のタクシーに便乗する?明日から休暇だろ?たまにはいいじゃないか・・・。」

まあ今まで呼ばれても数えるほどしか出ていないしね・・・。

「でも今から東京の自宅へ戻ろうと思っていたんですが・・・。」
「明日でいいじゃないか?1週間も休みとったんだろ?」
「わかりました。出ます。」

ということで、行くことになった。

案内されたのは大阪梅田北新地にあるお洒落な居酒屋というかバー。中は薄暗くて、間接照明がいい雰囲気を出している。こういうのって飲み会と言うより、合コンだよね・・・。副操縦士ばかり4名が揃う。でも席は8つ・・・。ああ、合コンだ・・・。

「安田さん、これって合コンじゃ・・・。」
「まあ飲み会飲み会。今日は一流企業のOL。綺麗どころを用意させていただいたよ。弐條だって、単身赴任で寂しいだろうと思ってさ。ま、奥さんが美人だから物足りないかもしれないけどねぇ・・・。あ、来た来た。こっちこっち。」

4人のスタイル抜群で、先輩のいうとおりキレイな子達。俺が独身なら相手にしたくなるような子達ばかり四人。もちろん男女交互に座って飲みながら食べ物をつつく。

「弐條さんでしたよね。何を操縦しているんですか?」
「メインはボーイング777だけど、国際線ではボーイング747中心に乗っていたよ。」

俺はB777とB747。安田さんはB767。高下さんはA320、森本さんはボンバルディアQ400に乗っている。

「え~~~国際線???いいなあ・・・世界中行けて・・・。」
「世界中と言っても俺の場合は欧米路線だったからね。」
「車は何に乗ってるんですか?」
「今一人だからいいのは乗ってないけど、東京の自宅では大概ベンツE550を乗ってる。こっちではBMW320だけどね。まあベンツは俺のじゃないけど・・・。」

女の子たちはみんなすごいすごいって言う。ベンツは実は雅のもの。雅の名義で、まあいう嫁入り道具のひとつに買ってもらったっていう代物。3年前にね。まあいうBMWは俺の通勤用に買ったって言うか・・・。国産でもよかったんだけど、雅のお父さんの知り合いから買ったんだよね。先輩に俺が既婚だということを隠せといわれて、結婚指輪はスーツのポケットの中。雅が見たら怒るんだろうなあ・・・。

「弐條さんって彼女いるんですか?」

先輩は俺のほうを見て×マークを・・・。ということはいないと言えってか???

「いないけど・・・。」
「え~~~~かっこいいのに・・・。今度ドライブ連れて行ってください。」
「ごめん、俺の休みど平日だから。朝一番の便に乗し寝るのも早い。君達が仕事終わった後に会うのは難しいかも・・・。」

なんとかごまかして、その場を乗り切った途端携帯に電話!!!雅からだ・・・。あ、明日帰るって電話するのを忘れたんだ・・・。俺は中座して外に出て電話を出る。

『孝博?いつ帰ってくるの?』
「ごめん。明日の午前の便で帰るようにするから。今日、先輩に飲みに誘われてね・・・。ホントごめん。」
『え~~~じゃあ明日帰ってくるのね。わかった・・・。パパがね一緒に食事しようって。公邸でランチ。わかった???』
「了解。じゃあ、先輩待たせているから切るね・・・。」

はあ・・・。

元の席に戻るとまた席替えしてる。今度の子はモデルみたいな子・・・。俺の膝に手を置いたり、猛烈なアプローチ???

「誰から電話ですか?」
「家族から・・・。今日ホントは東京に帰省するはずだったんだよね・・・。」
「弐條さん。電話番号とアドレス交換しませんか?」
「え?ちょっとそれは・・・。」
「え~~~~どうしてですか???」
「まだ知り合ったばかりだし・・・。ちょっと都合が悪い。」

その子は真面目なんだ~~~っていいほうにとってくれて助かったよ・・・。やばいやばい・・・。
なんとか終わり、先輩と別れる。俺はタクシーを拾おうと、国道2号線に立ちタクシーを拾おうとすると、さっきのモデル風の女の子・・・。

「弐條さん。どこまで帰るんですか?」
「伊丹空港近くだけど?なに?」
「え~~~そうなんですか??私蛍池なんです。それも空港近く。阪急の駅前なんです。一緒に乗せていってください!!」

ち、しょうがないか・・・。

タクシーをなんとか拾って一緒に乗る。そしてとりあえず蛍池駅前まで・・・。途中女の子は俺にべたべた・・・。そしていつの間にか俺の肩に頭を置いて眠っている。はぁ・・・。早く着かないかな・・・。なんて思いながら・・・。
何事もなく送り届けることが出来て安心・・・。やっとのことで着いた自宅マンション。スーツをがさごそして結婚指輪を・・・。

え????ない???

どこかに落としたのかなあ・・・。やばいよこれ・・・。
代わりにあの女の子の電話番号???
はあ・・・どうしよう・・・。雅怒るかなあ・・・。

一途  (57)最悪なお客様
 今日、私の乗務はパリ行き。私の担当するファーストクラスは満席のはずなのに、なかなかお客様が入ってこない。おかしいなって思っているうちに来たのは九條実朝。ただ一人・・・。ああやだ・・・。結局この人だけで飛行機は動き出したのよ・・・。実朝はチーフを呼んで、こそこそと何かを話している。

「お客様、弐條のみはちょっと・・・。」
「いいから。ここには僕しかいないんだから、他のCAははずしてくれ。一人で十分だろ?」

チーフは困った顔をして、私に言うの。

「弐條さん、この乗務一人で出来る?お客様のどうしてもとのご要望だから・・・。」
「え、私一人でですか???そんなの出来ません。」
「もちろん表だけよ。裏のことは皆でするから。」

すると早速呼び出し。もちろん私は担当だから行かないとね・・・。

「お客様、何か?」
「やっと二人きりになれたね。どう?ご主人の単身赴任中は。すごく寂しかったんじゃないの?その寂しさを僕で紛らわせてみない?きちんと大事にするからさ。今日だってここの席全部僕が買ったんだ。君とずっと一緒にいたいから・・・。」

そういうと私の手の甲にキス・・・。
気持ち悪い!!!
この人に十数時間も相手しないといけないの?

「あ、雅さん。リッツのスイートを手配してあるんだ。来てくれない?来てくれたら例の書類渡すからさ。また新しい情報が入ってきたからさ。知りたくない?」
「結構です。」
「ほんとつれないなあ・・・。せっかくこうしてわざわざ仕事休んできたのに・・・。それも超多忙期にここを買い占めてさ・・・。まあいい。絶対うんと言わせて見せるから。」

もうどうにかして・・・。私倒れそう・・・。
そして、もうすぐ到着ってころにシートベルトのチェックとかで席へ行くと、私の腕を掴んだ。

「やめて下さい!」

実朝は私の左薬指から結婚指輪を奪い取る。

「返してください!!!それは大切な・・・。」
「だから、ホテルに来てくれたら返してやるよ。」

そういうと私の手を離し、結婚指輪を実朝のスーツのポケットへ・・・。

ちょっと!!!それは孝博にもらった大切な・・・・。

私は涙をこらえることができずに、ファーストクラスのギャレーへ飛び込んで座り込んだの。そして泣いてしまったの。チーフは驚いてギャレーに入ってくる。

「弐條さん!どうしたの?弐條さんらしくない・・・。」
「いえ、何でもありません・・・。ちょっと・・・。お化粧直してきます。」

そういって私は化粧室に入って涙をふき取り、化粧を直す。そして節目がちで、着陸のため、シートに座り、ベルトをする。

 私はお客様のお見送りに出れなかった・・・。そしておかしい私を見てチーフもでなくていいわよって行ってくれたの。もしかして帰りもこうなるの?いやよ・・・。

 もちろん私は実朝のところへは行かなかった。彼の目的は私だって知ってるから。私は孝博しか愛せないの。私の結婚指輪・・・。あいつに何かされるくらいならくれてやるわよ。

帰りはエコノミークラスに変えてもらったの。ファーストクラスではいろいろあったみたいだけどね・・・。チーフはもちろん実朝の行為を報告書に書き込んでいた。規約違反一歩手前だったんだから・・・。まあいうブラックリスト入り?でもきっと個人筆頭株主だから、もみ消されてしまうんだろうけど?

ああ、早く孝博に会いたい。孝博の大きくて温かい胸に抱かれたい。
孝博の引き抜きの話、進めよう・・・。
このままじゃ、孝博の将来も、私の身ももたないよ・・・。

一途 (56)知事公邸へ
 芦屋を出たあと、神戸の知事公邸へ向かう。

ちょっと遅れたけど、従弟、泰孝君の合格祝いを渡しに行くんだ。楽々超難関の灘中学をトップ合格。それも史上初の満点だったらしい。さすが小学生学力コンクール断トツ1位常連君だ。それも愛読書は俺が防大で使っていた宇宙航空力学の教科書ときたもんだから・・・。何が欲しいと聞いたら、航空関係の専門書が欲しいといわれたから、難しそうなものばかり選んで持ってきたわけ。まああの子なら理解できるかもしれないけどね。さすがお父さんは東大法学部を首席で卒業。お母さんも東大文学部を上位卒業というだけはある。いくら賢い、秀才といわれた俺でも桁が違う。

 叔父さんはまだ公務中というから、リビングで叔母さんや泰孝君と話していた。泰孝君は早速本を広げて嬉しそうに読んでいる。

「わかる?難しいだろ?この俺でも理解しがたいものだ。」
「うん、なんとかね・・・。でも面白そう!!!ありがとう!早く大人になって実機に乗りたいよな・・・。」

ホントうれしそうだ・・・。おばさんは苦笑しながら見ているんだよね。

「叔母さん今日は休み?」
「ん?だいたい3時までに終わるから大丈夫よ。」

叔母さんは在阪テレビ局の契約社員。お昼のニュースを読んだりしている、さすが元人気アナ。引っ張りだこなんだけど、条件が泰孝君が学校に行っている間だけということ。ホント好きな仕事をしていて生き生きしている叔母さん。

 色々話していると叔父さんが帰ってきたみたいだ。そして後ろには俺の父さん。現在防災担当副知事。もちろん俺は父さんと目は合わさない。父さんは寂しそうな顔をして俺を見ている。

「孝博君、わざわざ泰孝にお祝いを届けてくれてありがとう。夕飯一緒にどうかな?」
「いえ、この辺で帰ります。明日朝一番のフライトがあるので・・・。」

すると叔父さんは俺を引き止める。

「孝博君、君、お父さんに転勤の話していなかったらしいじゃないか・・・。実家にも帰っていないというし。いくら弐條の養子になったとしてもあんまりじゃないのかな・・・。」
「叔父さん・・・。いいんです。実家は俺の居場所ないし、邪魔者だから・・・。」

すると父さんは俺をひっぱたく。

「孝博!いつ父さんはお前を要らないといった。邪魔者だって言った!!!いい加減にしろ。いくら弐條に行ったとしても、うちの息子だし、父さんの長男だ。爺ちゃん寂しがっていたよ。近くに住んでいるのなら、顔ぐらい出しなさい!!」
「父さんはずっと好き勝手なことしてたくせに・・・。母さん捨てて他の女のところへ行ったくせに。俺ずっと父さんのこと信じてた。真面目で一生懸命の親父だと思って誇りにしていたのに・・・。裏切ったのは父さんじゃないか!!!俺が弐條家に養子になるのを決めたのも、源にいるのが嫌になったからだ!じゃ・・・。」

そういうと俺は知事公邸を出た。
最後に見た父さんの顔・・・。一生忘れられないよね・・・。

一途 (55)破格な条件
「悪い、遥・・・。今日は予定があるんだ・・・。早めに帰ってよ。」
「予定?」
「芦屋のお爺様のところと、和気叔父さんの知事公邸へ行く約束なんだ・・・。もうそろそろ行かないと・・・。」
「うん・・・わかった・・・。」

俺は財布から帰りの飛行機代を渡す。

「これ、帰りの足代な・・・。もう勝手に来ないで欲しいんだ。」
「え?そ、そうよね・・・。孝博さんはもう先輩のおうちの人だし・・・次期当主だって聞いたわ・・・。私がいたら邪魔だもんね・・・。」
「ホントに悪い・・・。」

遥は足代を受け取らなかったけど、最後にキスをして別れた。

 俺はスーツに着替えて、車に乗り、芦屋六麓荘へ向かう。もちろんこれは籐華会の打ち合わせなんだけど。今年の籐華会は東京で行うことにしたんだ。当主である雅のお父さんは東京だし、首相だから勝手に東京を離れられない。ということで、東京の超高級ホテルの宴会場を押さえてある。彬に悪いけど、俺が打ち合わせにいけないから、代わりに打ち合わせをしてくれている。お爺様はそのことに関して仕事だからしょうがないと言っておられた。

「まあ、こっちに転勤したばかりだからしょうがないな・・・。5年後、10年後に期待しよう。で、仕事のほうは忙しいかね?最近国際線から国内線に移ってきたそうだけど?」
「はい・・・期間限定という条件ですけど・・・。いずれもとの国際線勤務に・・・。」
「んん・・ある筋から聞いたんだけど・・・。君、東京には戻れないらしいね・・・。」
「え?」
「国際線に戻すと言っても、関空支店らしいよ・・・。ああ、雅がかわいそうだ・・・。」

どういうこと???東京に戻れないって???俺なんか汚点があったかな・・・。もしかして俺の私生活がばれたのか?

「そこでだ・・・。」

そういうと、お爺様はある男を紹介する。

「この人はねぇ、敵対航空会社の運行関係の人なんだが、孝博君、どうしても君を引き抜きたいと言ってこうして東京からわざわざ・・・。」

その男は俺に名刺を渡す。本当に会社の敵対会社オペレーション関係の人・・・。それも取締クラス・・・。

「君は知らないだろうけど、私はここの会社の個人筆頭株主だ。いずれここの株を君の名義に変えるつもりなんだが、私の孫娘の相手が君と聞いて、泣きついてきたんだよ。」

そういえばここは昔から強烈なアプローチをしてきたここの会社。年を越してさらにね。一応話だけでもと思ったんだ。

 俺の評価はすごいらしい。

訓練生時代の訓練機胴体着陸といい、日ごろの勤務成績、資格、操縦技術。そして年末の臨時政府専用本機担当のこと・・・。この若さでB777とB747のライセンスを持っている。

条件面は今の年収1000万から1500万になる事、さらに色々手当てが付くこと。がんばれば年収2000万も夢じゃないと・・・。勤務は成田。路線は欧米路線。そしてたまに豪州まで。担当はB747中心。あと・・・雅もこっちにどうぞという・・・。雅まで引き抜きたいと言ってきた。もちろん雅のCA評価はうちの会社イチだし、リストラが激しいうちでいまだ引き止めているのは確か・・・。

ああすごく条件がいい。よすぎる。希望によっては成田に借り上げ社宅を用意するって・・・。そりゃそれなりのグレードのやつを・・・。あと最後の一言・・・。将来の最高クラスの昇進の約束・・・。ちょっと言いすぎじゃないかなと思ったけど・・・。

「孝博君、いい条件じゃないか?このまま関西に埋もれるよりも、こっちに移ったほうがいいんじゃないか?」
「それはそうですね・・・。でも雅にも相談しないと・・・。あと今おっしゃられた事・・・信じていいのでしょうか?私は一度そちらの会社を受けて、お断りしたんですよ・・・。誓約書か何か書いてください。条件が破格過ぎて、このままでは信じがたいのです。」
「わかりました・・・。いい返事をお待ちしております。」

担当者は俺の反応が良かったからか、ニコニコ顔で邸を出て行ったんだ。もちろん即お爺様は雅に電話・・・。ちょうどフライト前だった雅は困惑した声で話だけ聞いてたみたいだ。

どうする俺、どうする???

一応和気叔父さんにも相談してみよう・・・。
弁護士の資格持っているし・・・何かあった時に頼りになりそうだ・・・。


一途 (54)優柔不断
 食事中時折孝志は起きて泣く。遥はミルクをやったり、化粧室へおしめを変えに行くんだ。きちんと母親をしている遥。わかるよ、孝志は生まれてすぐの写真よりも随分大きくなって、丸々太っている。俺があやすと笑ってもくれる。

「最近似てきたでしょ。孝博さんに・・・。」

ホント目元がなんとも・・・。そっくりとはいえないけど、俺と遥のいいところをとっているんだ。とりあえず俺の新居に案内する。そしてどうして大阪まで来たのかと問う。

「んん・・・なんとなくというか・・・・。孝博さんに孝志を見せていなかったし、今月末にお見合いをするから・・・。どうしても孝博さんの顔が見たくなったの・・・。」

それだけ?でも時折溜め息をついて孝志を見つめている。

「ほんとのこと言ったらどう?」
「ほんとのこと?」

遥は苦笑する。

「そりゃあ・・・お見合いなんてしたくないし、出来れば孝博さんとって思うわよ。でもそれは叶わないんだもの。孝志にはパパが必要だし。早くパパを作って、物心着く前にパパはこの人だって思い込ませたいのよ。今日だってお見合いがいやで・・・。パパに反抗してでてきたみたいなものだし・・・・。パパなんて最近影で色々言われているのよ・・・。もちろん私のことでよ。ふしだらな娘をもったとか、どうせ相手はわからないんじゃないとか・・・。もちろんパパはその人たちに孝志の父親が誰かといいそうになったらしいわ。でもできないでしょ?パパとしては孝博さんは大伯父様が元首相だし、お爺様は官房長官までなった政治家。叔父様方は首相経験者方だし、お父様がたの家は代々お国の為に重要な仕事をしている。そして今お父様は兵庫県副知事でしょ?この上ない血筋だって思ってる。でもそれは言えないんだもの・・・。私に無意識であたるのは当然よ。」
「今は加賀にいるの?」
「ううん・・・。今東京のパパのマンションに同居。孝志を政治家にするために英才教育するんだって意気込んでいるの。それもちょっと・・・。でも孝博さんの顔を見て楽になった。」

そういうと俺に寄り添う。そして俺をじっと見つめるんだ。それもウルウルした瞳で・・・。ホントドキッとしてしまった。もう関係を持たないと決めていたのに・・・。結局ね・・・。孝志は朝までぐっすり・・・。助かったって言うか・・・。俺の横でまだ眠っている遥。全然変わんないよね・・・。俺はベッドを出てシャワーを浴びる。ああ、やはり俺って優柔不断かなあ・・・。結局遥が大好きで、突っ返すことが出来ない。もちろん雅のことも同じくらいすきなんだ・・・。俺だって遥といれば癒されるし、一緒にいたいと思うよ。でも、家庭がある。大好きな雅と美咲のいる家庭が・・・。ああそうか・・・。雅は心の支えで、遥は心の癒し・・・。俺にとって二人とも必要なんだけど、それは出来ない。


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