4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第89章 幼き頃からの思い出
 鈴華はある日幼い頃の夢を見て、懐かしそうに昔の事を思い出す。


四つの頃、鈴華は実家のある理由で、曽祖父が建てた宇治にある鳳凰堂に預けられていた。もちろん鈴華は嫡流の子ではなかったが、立派な摂関家の一の姫であったので、曽祖父にたいそうかわいがられ、末は御年七歳の東宮に入内するよう期待されていた。


「泰子や、お前はとても可愛らしく、いい家柄の姫君だ。嫡流ではないがきっと東宮妃となって、摂関家を盛り立ててくれよ・・・。」


小さい鈴華は訳がわからなかったが、曽祖父の喜ぶ顔を見たさにいつもいい返事をしていた。ある日曽祖父の甥である東三条家の隠居が寝込みがちの曽祖父の見舞いにやってきていた。曽祖父は喜んで話をする。


「おやその若君は?」


と曽祖父が言うと、東三条の隠居は言う。


「私の一番小さな孫でございます。一番上の孫と親子ほど離れておりますが、とても利発でいい子なのですよ。政弘、大叔父上にご挨拶は?」


その若君はきちんと座って挨拶をする。


「はじめまして東三条左大臣の子藤原政弘と申します。」
「おうおう・・・ホントに利発な子じゃ。年はいくつじゃ。」
「六歳でございます。」
「そうかそうか・・・。今から大事な話があるのでな、庭にいる泰子姫と遊んでおいで。」
「はい!」


若君は立ち上がって早速鈴華と仲良く遊んだ。若君の祖父は言う。


「あの子は例の堀川中納言殿?」
「そうだ・・・。とてもかわいいだろう。ちょっと家の都合でこちらに預かっておるのじゃ。」
「そうですね・・・今堀川中納言殿はいろいろごたついておられる・・・。」


二人は仲良く遊んでいる若君と鈴華を見つめる。微笑ましい光景は二人の歳のいった男たちを和ませる。それからというものたびたびこの鳳凰堂で鈴華と若君は会うようになった。庭に生えている草花を摘んで冠を作ったり、鬼ごっこをしたりして過ごした。


 出会って半年後、ついに鈴華の曽祖父が亡くなってしまった。曽祖父を鈴華が看取り、都の土御門邸で行われた葬儀にも鈴華は参列した。もちろん葬儀にはあの若君も来ていた。曽祖父のもとで長い間育った鈴華は悲しみのあまり、泣き崩れてしまった。それを見た若君は鈴華に声をかける。


「泰子姫、堀川邸に戻るのでしょ。堀川邸は僕のおうちのお隣だから寂しくなったら遊びにおいでよ・・・。いいでしょ父上、兄上。」


若君のいう言葉に左大臣と兄である参議は微笑んでうなずいた。もともと鈴華は曽祖父の養女として引き取られ東宮のもとに入内する予定で育てたられていた。それを志半ばで養父となるべき曽祖父が亡くなってしまったので、鈴華は実家である堀川邸に戻されることになったのである。その遺志を受けた鈴華の父はその後幼い鈴華を東宮妃にしようと育てるが、隣の邸の若君と遊ぶのが夢中で落ち着いてお妃教育どころではなかった上に、何をやらせてもうまくいかない鈴華を見て、入内をあきらめようとした。そして十一歳のある日、鈴華の父は若君の父である左大臣と相談する。


「東三条様、お願いがあるのです。当家の一の姫泰子を末の若君と婚約させていただきたいのです。もちろん二人は幼馴染であり、未だに両家を行ったり来たりしている間柄・・・。若君が元服し、ある程度の官位になられたら当家の婿として若君を頂きたいのです・・・。」


左大臣は同じ摂関家としてこの縁談を喜び、受け入れる。それを知ってかしらずか、二人はまだ元服裳着を済ましていないにも関わらず、二人だけの約束を交わす。


 年が明けすぐに東三条の若君は元服の予定が入る。元服式の前日、若君は鈴華の元を訪れ、元服の挨拶をする。


「泰子姫、僕は明日元服します。きっと泰子姫に見合う官位になったら姫をお迎えにあがります。それまで待っていて下さい。」
「きっとよ・・政弘君・・・。私も春になったら裳着をするの・・・。もうこうして会えないのね・・・。」


二人は正式に婚約が決まるまで会えなくなった。元服から二年が経ち、正式に婚約が決まると、侍従から右衛門佐になった若君は鈴華の元へ話し相手にやってくる。


「政弘様、来月の節会、私舞姫に選ばれたの。今から準備で忙しいのよ。」


右衛門佐は残念そうな顔で鈴華にいう。


「では当分姫には会えないのですね・・・。がんばってください・・・。」


右衛門佐は鈴華が着る舞姫の衣装を見つめると、溜め息をついた。


(姫を人前に出すなんて・・・。いくら婚約をしているといっても、もし御年十七の東宮の目に留まったら・・・。)


右衛門佐の心配をよそに、鈴華はとても喜んで衣装を触っている。当日もちろん鈴華が五節の舞を舞う姿を、そわそわした気持ちで見つめた。右衛門佐の同僚は右衛門佐の婚約者が舞っているということで注目して見つめていたが、やはりなんと言ってもうっかり姫であるので何度か間違ってしまう。右衛門佐は頭を抱えて、恥ずかしい思いをした。もちろん心配したように東宮の目には留まることはなく、あっという間に年が過ぎた。


 鈴華が十五の秋、婚約者が秋の除目で右近少将に昇進したので、婚儀の日程が決まった。しかしながら年明け早々に右近少将の兄である三条大納言の二の姫が新東宮に入内する事が決まって早くても梅雨明けの庚申の日以後となった。少将と一歳年下の姪の入内のため、ずっと会えないまま年を越し、春が来て鈴華の婚礼のお道具が少しずつ揃うのを見て、鈴華は少将との結婚に実感が沸く。忙しいといっても、ほぼ毎日のように少将からの文が届くので、会えなくても我慢できた。婚儀まであと半月という時に東三条家で不幸が起きた。親子ほど離れた少将の兄である三条大納言が急に倒れて逝去してしまったのである。少将は急いで鈴華の父である権大納言邸を訪れ、鈴華の父である権大納言に喪が明けるまで婚儀は延期したいと頼みに来たのである。もちろん喪が明けるまでは文も一切出せない状態である。少将は鈴華の部屋を訪れ謝罪をした。


「泰子姫、兄上が急に逝去してしまったのです・・・。喪が明けるまでは姫との婚儀は出来ません・・・。喪が明けたとしても、嫡男である兄が逝去してしまったので、僕が東三条家の家督を継ぐことになると思います。もちろん姫との婚約は続行するつもりです・・・。だから姫・・・。我慢してください。秋になれば東宮女御の里下がりがありますし・・・。早くても東宮女御のご出産が終わってからになるかもしれません・・・。すみません・・・。」


そういうと急に立ち上がって鈴華の言葉を待たずして隣の東三条邸に帰っていった。鈴華はじっと我慢して喪が明けるのを待ったが、喪が明けた途端今度は少将の父である左大臣が持病のため逝去し、そのひと月後、東宮女御が産後の肥立ちが悪く逝去してしまったのである。度重なる不幸のため、少将は東三条家の整理のため、東三条邸から離れる事が出来ず、落ち着いた頃にはもう年が明け、春がそこまで来ていた。少将は落ち着いたことを機に、改めて堀川邸の権大納言に婚儀の相談に現れる。現れた少将はずいぶん苦労したのか、痩せてしまって、以前の利発で朗らかな面影などなかった。御簾越しに対面した鈴華は心配のあまり、御簾から飛び出し、少将に抱きつく。


「政弘様・・・。そのようにお痩せになられて・・・。」
「姫、父上や兄上、そして亡き東宮女御の件でいろいろ忙しかったので・・・。もう大丈夫です・・・。先ほど権大納言様からも、姫との婚儀のお許しを頂きました。藤の花が咲く頃、結婚しましょう。そして姫は東三条邸にいらしてください。だいぶん待ったでしょう・・・。泰子・・・。」


そういうと、少将は初めて鈴華にくちづけをした。その後も婚儀の日までに鈴華の衣装や様々なものが新調される。毎日のように少将からの文が届き、たまに休みを取った少将が堀川邸に訪れ、婚儀の打ち合わせをした後、鈴華に会って帰る。そのような幸せな毎日が鈴華の訪れ、婚儀を控えた三日前に事態が急変した。堀川邸内が急に慌しくなり、いやな予感がした鈴華は父君のいる寝殿に向かうと、東三条邸の者が権大納言に報告する。


「権大納言様に申し上げます。ただいま右近少将様ご逝去!」


その言葉を聞いた鈴華はショックのあまり気を失い、倒れてしまった。気が付いたのは少将の葬儀が終わった数日後で、鈴華は放心状態のまま日々を過ごした。


(なくなる前日、私の前で微笑んでおられた・・・。まもなくですねって・・・。あんなに元気そうだったのに・・・。どうして私を置いて旅立ってしまわれたの!)


すると鈴華は無意識のうちに守り刀を手に取り、首を切って自害しようとしたが、心配で様子を見に来た父君に止められた。


「鈴華!お前は何をしているのだ!」
「お父様!このまま死なせてください!政弘様のいないこの世など、惜しくはありません!」


父君は鈴華をたたいて言う。


「お前が死んだら少将殿は喜ぶと思うのか!最後に少将殿は泰子を頼むと言って亡くなったのだぞ!お前は生きないといけないのだ!きっといい事がある!きっといい殿方との出会いがあるぞ!」


鈴華は泣き叫んで寝所に籠もった。父君はこれ以上自害などしないようにたくさんの女房たちをつけ見張らせた。


 時が過ぎ、鈴華が十八の春。少将の一周忌となった。鈴華は少将の墓のある遠い遠い吉野のほうに向かって手を合わせる。本来ならば、父君の許しを得て吉野に墓参りに行きたかったのであるが、このまま鈴華が出家してしまうのではないかと心配して一歩も邸から出さなかった。庭に植えてある藤の花を見ると、涙が出てしょうがなかった。鈴華の女房たちは鈴華に同情して、一緒に涙を流した。


 さらに数ヶ月が過ぎ夏真っ盛りの頃、鈴華の父君は縁談を持ち込んできた。


「鈴華、いい縁談が決まったぞ!決まるとは思っていなかった。さあ来年早々だ、今から準備をしないと間に合わぬ。」
「私は結婚などしません・・・。このまま尼になって少将様を弔いたいのです。」


父君は困った顔をして言う。


「まだ少将殿のことを・・・。今まで一周忌を過ぎるまでは縁談を持ってこないようにしていたが、もうそろそろいいだろう。お前ももう十八。これを逃すともういい話はない。聞いて驚くなよ。お前の相手は今の東宮。来年新帝におなりあそばす際、鈴華が女御として入内することに決まったのだ。これは直々今上帝からのお言葉・・・。」


鈴華は寝所に籠もって反論する。


「いや!私は入内なんかしません!」
「何を言っているのだ。東宮様は鈴華と同じ年でとても姿かたちが良く、利発でとても気さくな方。これ以上の縁談はない!これを断るということはどうなるかわかっていっているのか?一族の廃退を意味するだぞ!決まった以上明日からお妃教育をするからわかったな!」


鈴華は泣き叫ぶと女房たちは心配して駆け寄る。鈴華は父君がいなくなったのを確認して鈴華の乳母に言う。


「私今から家出する!用意してちょうだい!吉野にいって政弘様の墓前に手を合わせてそのまま尼になるわ。」


鈴華に同情していた女房たちは急いで旅装束を用意し、鈴華に着せると、乳母と共にこっそり堀川邸を抜け出した。姫にとって慣れない徒歩は相当辛かったが、早く嫌な都から立ち去ろうと、足早に都を出た。途中縁ではない尼寺に泊めさせてもらい、翌朝早く次の休憩予定地である宇治へ急ぐ。もちろん父君は姫の家出に驚き、縁の寺や邸などを探させたが、なかなか見つからなかった。宇治に到着し、疲れたので河原に下りて岩に腰掛け、疲れた足を川につけて休ませる。いくら夏真っ盛りといっても宇治川の水は冷たく、なんとなくほっとした。


「吉野までまだまだなのよね・・・。さあ今日の宿を探さないとね・・・。」
「はい姫様。」


鈴華は立ち上がって草履を履くと、歩き出した。しかし少し歩いた途端躓き、草履の鼻緒を切ってしまった上に足をくじいてしまった。


「痛い!」
「ひ、姫様!誰かを呼んできますから!」
「だめよ。もしうちの縁者だったら連れ戻されてしまうわ・・・。少し休めば・・・。」


乳母はあたふたして姫の様子を伺うと、二人の後ろで声がする。


「どうかなさいましたか?どうもお困りのご様子で・・・。」


狩衣姿の男が声をかける。すると、乳母が言う。


「姫様の草履の鼻緒が切れまして、足を挫かれてしまったのです・・・。私にはどうしようもなく・・・。困っておりました。」


すると側にいた小葵の文様入りの直衣を着た男が鈴華の側に近づき、草履を手に取ると、自分の小袖の袖を少し破いて草履を直す。


「宮様、そのようなことはこの私が・・・。」


と従者らしきものが主人らしき人物に言う。


「常隆、いいよ。これくらい。本当にお困りのようなのだから・・・。」


鈴華は直衣を着た男の微笑む姿を見て顔を赤らめると、何もいえないまま、怪我をした鈴華をその男が抱き上げ、ある邸の客間に通した。この男はもちろん当時東宮であり、現在の鈴華の夫である帝なのです。鈴華はこの日の出会いに運命を感じ、あの婚儀の日の再会まで、帝を慕い続け、再会後は大変寵愛を受け、ひとりの姫宮を授かった。ほんの数年までは不幸のどん底にいた鈴華は帝との出会いによってとても幸せな日々を過ごしている。鈴華は今までの出来事を思い出しつつ、今の堅苦しい生活ではあるが、それ以上に帝に寵愛され、幸せに暮らしていることに感謝する。きっとこれは亡き少将が鈴華のために帝と引き合わせてくれたのではないかと少将に感謝する。そして帝の言うようにいい思い出として胸にしまおうとした。もちろん先日の吉野の出来事も同様に、大切な思い出として心に刻んだ。




《作者からの一言》

ネタがないときの思い出話です^^;鈴華から見た宇治での出会い・・・。鈴華はこの時当時東宮であった今上帝雅和親王に一目惚れをしてしまうのです。
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