4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第90章 伝えたいこと・・・
 最近内裏中にある噂が流れる。名も知れぬ武官姿の亡霊が内裏中をうろついているというのだ。そのためか、近衛の者達は恐れて宿直を断るものが続出した。しょうがないので内大臣兼任の右大将と、頭中将源常隆が、帝のためにと名乗り出てほぼ毎日のように宿直を引き受けた。この噂はもちろん後宮にも広がり、後宮にいる女官たちは恐れて引きこもるものが多かった。


「内大臣様、宿直の間そのような者は見ましたか?」


内大臣は首を横に振って頭中将と共に内裏を一周する。


「本当に他の者達はお勤めというものをどう思っているのか・・・。ここは帝の住まう内裏・・・。守るものがいなくてどうするのか・・・。宿直する者はみな皇族に関わりのあるものたちばかり・・・。宿直の必要のない中務卿宮様までずっと後涼殿に詰めておいでなのに・・・。」


すると藤壷あたりで女官達の悲鳴がするのを聞いて、急いで二人はそちらに走る。藤壺では藤棚近くのすのこ縁で顔を青ざめた女官が座り込ん
でいた。


「どうかしましたか?」


その女官は震え上がり、声は絶え絶えで答える。


「これは・・・内大臣様・・・頭中将様・・・。私は見たのです・・・。緋色の武官束帯を着た若者が・・・中宮様の御殿に入ろうとするのを・・・。私はおかしいと思い声をかけると、そのものはふっと消えて・・・。」


気を失いそうになる女官を頭中将は支えて、内大臣の言葉を待つ。


「緋色の束帯・・・。そして若い・・・。心当たりはあるのか?」


他に何かないかと女官を問いただすと、他の女官は言う。


「下がさねの襟の文様に見覚えが・・・。あれは確か・・・。一部の摂関家が使うもの・・・。最近は見ていませんが・・・。」
「どこの摂関家が使う文様かわからぬか?」


女官は恐怖のあまり思い出せない状態でいるので仕方なくその場を立ち去った。


「頭中将、若い緋の束帯に特殊な摂関家の文様の入った下がさね・・・。心当たりは・・・。」


頭中将は右近衛の詰め所に入ると、考える。


(なにかひっかるのだけれど・・・。緋の束帯に最近使われていない特殊な摂関家の文様の下がさね・・・。もしかして・・・。しかし・・・そんなはずは・・・もうあの方が亡くなって三年は経つ・・・。あの家系に唯一縁のある人物といえば今内裏にひとり・・・・。)


頭中将は早速後涼殿に向かって、中務卿宮に会う。


「どうしたのですか、頭中将殿・・・。こんな夜分遅くに・・・。」
「中務卿宮様、お願いがあるのです。皇太后様のご実家の紋が入ったものをお持ちですか?」
「え、東三条家の?一条院に戻ればある。亡きお爺様の形見の品には確か東三条家の紋が入っていたが・・・。どうしてそのような・・・。」
「今噂になっている亡霊の件で心当たりが・・・。お貸し願いませんか。紋の入ったものを・・・。」


中務卿宮はうなずくと従者を呼び、紋の入った形見を持ってこさせる。従者から形見を受け取ると、中務卿宮は頭中将に見せる。


「これはお爺様愛用の直衣の端切れ・・・。直衣を持っていてもしょうがないので、一部を切り取って大事に保管していたのだけれども・・・。これなら紋がはっきり見えるからいいと思う。これを貸してあげるよ。なくさないように頼みますよ。」


頭中将は深々と頭を下げると、藤壺に向かい先ほどの女官に会う。そしてこの紋の入った歯切れを見せると女官はうなずき、戻っていった。頭中将は右近衛の詰め所に入り、内大臣に報告する。


「なるほどね・・・東三条家の亡き右近少将殿か・・・。元私の部下であるから面識はある。そして藤壺中宮様の元婚約者であったというのも聞いている。でもなぜ今頃・・・。」
「そうなのです・・・。いくら中宮様と結婚直前の急な死去・・・無念であったとはわかりますが、なぜ今頃・・・。中宮様に何か悪い事が起こらなければいいのですが・・・。やっはり中務卿宮様や帝にこのことは・・・?」
「亡霊の正体が誰かわかった以上、放っておくことは出来ない・・・。陰陽師の管轄は中務であるし、中宮様が絡んでいるとしたら中宮職・・・。もちろん帝のお耳にも入れておいたほうがいいかもしれません・・・。事によっては帝のお命に関わるかも・・・。今すぐ後涼殿の中務卿宮様のところへ行こう、それからどうするか・・・。」


二人は後涼殿に向かい、中務卿宮と亡霊の正体について話す。中務卿宮は少し考えさせて欲しいといって考え込んだ。丁度その頃藤壷では皆が眠ってしまうと同時に例の亡霊が再び現れそっと鈴華の寝所に入っていく。もちろん鈴華は寝所でひとり眠っている。枕元に例の亡霊が立ちじっと鈴華の顔を見つめている。鈴華は異様な空気に気が付き意識が朦朧としながら目を開けようとすると、亡霊は鈴華の側に座り鈴華が目覚めるのを待つ。


『泰子・・・』


その言葉に鈴華はハッとして起き上がる。鈴華は亡霊と目が合ってしまい、一瞬体が強張ったが、亡霊が誰であるかわかるとその亡霊に声をかける。


「政弘様?」


亡霊はうなずくと、微笑んだ。


「泰子、今幸せ?答えはわかっているよ。ずっと僕は泰子の側にいたのだから・・・。泰子と帝を引き合わせたのも僕さ。幼馴染でもあるし、ずっと僕は帝が東宮の頃、東宮御所の警備を任されていたから、帝の性格は良く存じ上げている。だから僕は帝なら泰子を幸せにしていただけるだろうと思って、入内の宣旨が下るようにしたり、宇治で帝と会わせたりしたのです。僕はずっと泰子が心配だった・・・。帝の妃として後宮に入ってもちゃんとやっていけるか・・・。でももう心配はない・・・。帝なら泰子のことをお任せできる。もう僕は行かなければならないのです・・・。ずっと泰子の側にいてはいけないのです・・・。」
「政弘様・・・。」


亡霊は自分の腕をめくると、肩の辺りのあざを見せる。


「このあざを覚えておいてください・・・。きっと僕は戻ってきます。泰子の側に・・・。」


亡霊は立ち上がるとふっと消えそうになり鈴華は呼び止める。


「政弘様・・・どちらへ・・・。」
「帝にご挨拶をして僕は行くべきところへ・・・。」


そう告げると亡霊は消えてしまった。鈴華は何故か涙があふれ、気を失ってしまう。気が付くと朝になっていた。結局例の亡霊は昨夜清涼殿には現れず、何事もなかったように朝を迎える。朝から清涼殿には中務卿宮、内大臣、頭中将が現れ、亡霊の正体について報告する。


「そう・・・。私も東三条の少将のことは知っている。もちろん幼馴染でもある。中務卿宮も、一緒に育ったのだから知っているはず。東宮時代はよく警備を頼んだものだ・・・。中宮と婚約していたことはあとから聞いたこと・・・。本当に確かなのだろうか・・・。」


帝は考え込んで、中務卿宮の話を聞く。


「東三条の少将が中宮様のことを想うあまり、帝に害を及ぼすかもしれません・・・。まあ私もとても温厚であった少将がそのようなことをするとは思いませんが・・・。万が一を考え、今晩より清涼殿に陰陽師を詰めさせます。そして私たちも・・・。本日は中宮様もこちらのお局に・・・。そのほうが安全だと思います・・・。」
「うん。ありがとう兄上・・・。内大臣も、頭中将も連日の宿直でお疲れだと思います・・・。兄上も無理をせず・・・。」


三人は帝の御前から下がり、後涼殿に入る。そしてこれからのことについて打ち合わせをする。帝は脇息にもたれかかって、考え事をする。そして東三条邸での幼き日々を思い出す。


 東三条の少将は年下ではあるが、中務卿宮の叔父に当たる。もちろん小さい頃より当時東三条邸で育てられていた、一の宮こと現在の中務卿宮とは同じ邸内で育ち、まるで兄弟のように一緒に遊んだり勉強したりしていた。もちろん、二の宮である現在の帝も、養育されていた二条院から兄を慕って遊びに来ていて、一緒に遊んだ事が何度もあった。二の宮も二歳年上のこの若君を兄のように慕い、若君も弟のようにかわいがっていた。それは二の宮の祖父亡くなり、後宮に引き取られるまで続いた。再会は帝が元服し、中務卿宮として出仕を始めた頃、同じ歳同じ頃に出仕をはじめた友人である当時の左衛門佐源常隆に会うため衛門府に訪れた際に久しぶりに出会った。それ以来仲良くなり三人でいろいろ話したりしていた。帝の兄が廃太子し、帝が東宮としてついた後の秋の除目。丁度右近少将として昇進した藤原政弘を東宮御所警護に任命し、側につけていた。少将は東宮と一線を引き、今までと違った態度で接していた。少将が倒れたのは丁度東宮御所での宿直中であって、即東三条邸に運ばれたが、すぐに亡くなってしまったのだ。幼馴染であった少将が急に亡くなって、相当ショックであった。


(本当に東三条の少将はまじめで、温厚な性格であった・・・。しかし婚約者であった最愛の鈴華をこの私の妃にしたことで彼は私のことを怨むであろうか・・・・。それならそれでいい・・・。)


帝は溜め息をつき、執務をこなしていった。鈴華は中宮職大夫である兄からの報告で、当分清涼殿の鈴華の局で過ごすようにと伝えられ、清涼殿に渡る準備をする。


「お兄様。どうして当分私だけ清涼殿で過ごさないといけないのでしょうか?」
「いや、この私でも良くわからないのです。帝のご命令と中務卿宮様から伝えられたのです。」


鈴華は不思議そうな顔をして、とりあえず帝の命令どおり清涼殿の局に入る。大夫は鈴華が局に入ったのを確認すると、帝に報告する。


「ただいま中宮様、局に入られました・・・。」
「大夫殿、ご苦労。」


大夫が下がると、帝は立ち上がって鈴華の局に入ると、中務卿宮を呼んで人払いをし、鈴華に事情説明をする。


「帝、政弘様はそのような方ではありません。実は昨夜、私の前に現れいろいろ話してくれました。私や帝に関する怨み言等一言も・・・。」
「ああ、私も東三条の少将のことは幼馴染だから良く知っている。そのような性格ではないのも・・・。でも万が一って言うのもあるからね・・・。中宮に何かあってもいけないから、解決するまでこちらにいて欲しいのです。」


と帝が言った。すると中務卿宮は鈴華に言う。


「私も少将と一緒に同じ邸で育ったものとして、そのようなことはないと思いますが、亡霊なので何が起こるかわかりません。中務卿宮として、帝を最善の方法でお守りするのが務めです。右大将である内大臣、頭中将もお側でお守りいたします。亡霊であるので効き目はないかもしれませんが、もし帝に何かあったときはこちらも命をかけて対処させていただきます。」


中務卿宮は一礼をすると、鈴華の局から下がっていった。


「政弘様は言っていました。帝にご挨拶をしてから行くべきところへいくと・・・。」
「今夜は、こちらにいるのですよ・・・いいね鈴華・・・。」
「嫌です、私は雅和様の側にいて何かあったときは政弘様を説得します。」
「わかったよ・・・珍しく勇ましいね鈴華は・・・。あまり無茶なことは・・・。」


鈴華は微笑んで、うなずくと帝は心配そうな表情で、局を後にする。


 夜になると、とりあえず帝は寝所に入る。御帳台の側に鈴華は座って控える。もちろん同じ部屋には内大臣や頭中将、中務卿宮、陰陽師が控え、内大臣や頭中将は陰陽師により細工された刀を携えて今か今かと亡霊の出現を待つ。夜が更け、帝も眠りにつき、鈴華はうつらうつらとしているとき、何者かが入ってくる気配を陰陽師や控えているものたちが感じる。内大臣と頭中将は刀に手を掛け、いつでも帝からの抜刀命令が出てもいいように準備する。帝も異常な雰囲気に目を覚まし起き上がると上着を羽織り、鈴華に声をかける。


「中宮、几帳の裏にいなさい。早く。」


鈴華は帝の言うとおり几帳の裏に控え、様子を伺う。すると扉が開いていないにも関わらず、冷たい風が吹き、白い光が現れる。帝は立ち上がってその光の近くに近寄ると、光の中から、亡霊が現れる。


「東三条の少将殿だね・・・。待っていたよ。」


亡霊は膝をつき頭を下げたままで、話し出す。


「お久しぶりでございます。帝・・・いえ雅和親王様。」
「本当に・・・なぜ、私の前に・・・?顔を上げなさい。」


亡霊は顔を上げるとまさしく東三条の少将であった。少将は微笑むと、きちんと座りなおし、深々と頭を下げる。


「まずは右大将様と頭中将殿に物騒なものをしまうようご命令ください。帝に危害など加えるつもりはありません。今夜は帝に伝えたい事があり、こちらに参りました。」


帝は内大臣と頭中将に刀を下に置くように命じる。すると少将は話し出す。


「今まで泰子を大事にしていただき、感謝しております。やはり帝は私の思ったとおりの方でした。私は残された婚約者である泰子が心配で、死んでも死にきれませんでした。帝に泰子を託し、本当に正解でございました。幸せそうな顔をする泰子を見て、もうこれで泰子を諦める決心がつきました。私は行くべきところに参ります。帝、うっかり者の姫ですが、今後とも泰子のことをよろしくお願い申し上げます。」
「ああ。安心していくべきところへ・・・。」


少将は頭を上げ微笑むと、その姿は白い光に変化し、天に昇っていった。何故か帝の目には涙が浮かんでいた。帝は溜め息をつくと力が抜け、その場に座り込んだ。


「これで少将の亡霊は現れることはないだろう・・・。皆、ご苦労・・・。下がって休んで・・・。」


下がったのを確認すると、鈴華は帝の側に座りみつめる。


「やはり東三条の少将はそのままだったね・・・。鈴華の言うとおりだ・・・。これで終わったかな・・・。」
「はい・・・。」


帝は鈴華を抱きしめる。


「鈴華を大切にするよ・・・。少将とも約束したし・・・。もちろん約束をしなかったとしても鈴華は大事だよ。」
「雅和様・・・。」
「さあ、夜も更けてしまった。一緒に寝よう・・。」


二人は御帳台に入り、仲良く寄り添いながら眠りについた。この夜以来武官の装束を着た青年の亡霊は現れなくなった。そして内裏は平静を取り戻した。



《作者からの一言》

亡霊の正体はやはり鈴華のもと婚約者である東三条家の少将でした。ずっと鈴華の側で見守り続けていたのです^^;もうこれで安心だと思ったのでしょうか・・・。帝に鈴華を託し、昇天しました。何事もなく終わり、帝は安心したことでしょう。
スポンサーサイト

Comment

 秘密にする

Track Back
TB*URL

Copyright © ねぇね2人と双子っちのママのお部屋。別館. all rights reserved.
さくらと空 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。