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4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

第91章 鈴華の三度目の懐妊
 内裏亡霊事件から数ヶ月がたち、内裏の者たちが忘れかけた頃、帝のもとに中宮職大夫が現れる。


「大夫、最近藤壷中宮の体調が思わしくないと聞く。何かわかりましたか?」
「はい、先ほど典薬寮の者に見ていただきました。帝、喜ばしい診察結果が出ました。中宮様御懐妊とのことでございます。」


帝は懐妊の報告に驚き、大夫に駆け寄る。


「もちろん確かなことであろうな!」
「はい。春御出産予定でございます。おめでとうございます。」


続けて大夫に帝はいう。


「中宮は一度流産をしている。一度流産をすると再びしやすいと聞く。そのような事がないように頼みましたよ。」
「御意・・・。」


この日のうちに中宮の懐妊は都中に広がり、父親である関白太政大臣は皇子無事出産を早々祈願させる。中宮はこの懐妊を知っていたかのように和やかな表情で、お見舞いに来た帝を迎える。


「鈴華、懐妊を聞いたよ。今度こそ健やかな子を・・・。」


鈴華は微笑んで、帝に言う。


「はい。今度はちゃんと生まれてきます。勘なのですが、双子の皇子の様な気がしますわ・・・。」
「まだ懐妊がわかったばかりだよ鈴華・・・。まあ父方の祖母も父上も私も双子で生まれたからないとはいえないけれど・・・。でも・・・。」
「いいから春の誕生を楽しみにしていてください。きっと雅和様がお喜びになると思いますので・・・。」


鈴華の今まで見たことのない幸せそうな表情に帝は改めて鈴華にときめく。


「鈴華、あれから変わったね・・・。なんというか・・・・良くわからないけれど・・・。」


鈴華は不思議そうな表情で帝を見つめる。


「まあとりあえず鈴華、健やかな御子を・・・。」
「はい。」


鈴華は満面の笑みで帝に返事をする。帝は顔を赤らめ立ち上がると、清涼殿へ戻る。


 この日から続々と懐妊祝いの贈り物が届いた。もちろん心からのお祝いをする者もあれば、一部ではあるが鈴華の幸せを嫉む者からの嫌味なお祝いもある。


「中宮様、皇后様がこちらに・・・。」


突然綾乃がお見舞いにやってくると、藤壺の者たちはあわてて皇后を迎える用意をする。


「気を遣わなくてもいいわ。鈴華様と私の仲ではありませんか・・・。」


綾乃は鈴華の前に座ると、微笑んで綾乃は言う。


「聞きましたわ、嫌味な贈り物が何度も同じ人物から送られてくるそうですわね。どなたかしらね・・・。まあ大体誰かわかっています。」
「いいのです・・・。私ばかり懐妊するので・・・。」
「前回は残念な結果でしたが、鈴華様、今回は元気な御子をお産みくださいね。私は東宮を産んでからなかなか御子に恵まれません。鈴華様がご懐妊したと聞いたときは本当に私が懐妊したときのようにうれしかった・・・。本当にひどいことをする方がいるのですね・・・。」


もちろんこのような嫌味なことをするのは、土御門殿の姫君である尚侍で、もちろん帝はこの姫をなんとも思っておらず、尚侍の一方的な帝に対する想いが募ってしているのである。もちろん帝の耳にも入っており、帝はどうすればいいものかと悩んでいるのである。尚侍から嫌がらせの文や贈り物が毎日のように届くので、帝は鈴華の事が気になって、暇を見つけると、藤壷までやってきて鈴華を見舞う。鈴華は帝に心配を掛けないようにと、元気そうに振舞うが、やはりかなり堪えているのが目に見えてわかる。痺れを切らした帝は左大臣を呼びつけ、尚侍のことについて話す。


「土御門殿、あなたの姫尚侍には呆れます。懐妊中の中宮に嫌がらせばかりしている。前回中宮は流産しているので今回は無事に生まれて欲しいのです・・・。あなたならわかっていただけるものと思っている。また嫌がらせをするようなら、出仕停止を考えないといけません・・・。」


土御門左大臣はまったくそのようなことを知らなかったようで、驚いて尚侍の御殿に行くと、しかりつける。


「尚侍、今日は恥をかいてしまったよ。お前は御懐妊中の中宮様にいろいろ嫌がらせをしているようだな。父である私は帝に怒られてしまった。前回もお前は中宮様に嫌がらせをしていたと聞いたぞ、もしそれが原因で前回流産されたというならば、なんとお詫びをしないといけないものか・・・。いくらお前が帝を想っていたとしても、このようなことをするのは逆効果なのだよ。いいね、もう中宮様への嫌がらせはやめなさい!」


尚侍は泣いて父君に訴える。


「土御門家は都で一番の名家なのよ!二流の堀川家の姫のほうが寵愛されているなんて・・・我慢できない!」


左大臣は呆れた顔で言い返す。


「何を言うのだ?堀川家は嫡流ではないが同じ摂関家であり、中宮の父君は関白殿。それに妹君も女御として承香殿を賜っているのです。今のところ一女官であるお前が勝てる相手ではない。中宮様に御子が無事に生まれるまでおとなしくな・・・。」
「わかりました・・・。大人しくします。」


尚侍は脹れながらも、父君の言うことを聞く。左大臣は溜め息をついて、もう一度尚侍に釘を刺す。


「いいか、またこのようなことをしたら尚侍を御辞退して邸に連れて帰る。」
「お父様・・・。」


この日以来尚侍からの嫌がらせはぴったりと収まったが、帝は怒りが収まらず、尚侍に出仕停止と謹慎を言い渡した。


 鈴華は何事もなく年を越す。やはり鈴華の勘が当たっているのか、まだ生まれるまで3ヶ月ぐらいあるのにも関わらず、結構なおなかの大きさである。相変わらず、帝は心配してちょくちょく鈴華の顔を見に来る。


「まあ、雅和様。ご公務は終わられたのですか?」
「ん・・・。姫宮のときよりもおなかが大きいから心配なのですよ。」
「ですから、双子なのです。おなかの御子動きでわかりますわ。ですから早めに里下がりを・・・。」
「双子か・・・。典薬寮のものはなんと・・・。」


鈴華は微笑んで言う。


「女医もたぶん双子でしょうと・・・。」
「双子か・・・。名前も二つ用意しないといけないね・・・。あと守り刀なども・・・。」


鈴華はおなかを撫でながら幸せそうな顔つきで言う。


「とても元気なお子達です。どちらも皇子です。よく似た・・・。名前も実は考えていました。」


もちろん鈴華は生まれてくる御子達は初恋の君と吉野の君の生まれ変わりと信じている。だから鈴華は帝に許してもらえるのであれば、二人の名前をつけようと考えていた。


「どのような名前をつけたいのですか?参考までに聞いておこうか・・・。」


鈴華は少しためらって言う。


「まさひろとまさもりです・・・。」


帝はその名前を聞いてハッとする。もちろんまさひろは鈴華の初恋の君であり、まさもりは例の吉野事件の検非違使少尉の名前であった。


(鈴華は二人の生まれ変わりと信じているのかな・・・。まあいい・・・鈴華の思うように・・・。)


帝は女官に御料紙と筆を持ってこさせると、鈴華といろいろな字を当ててみる。鈴華は楽しそうに一文字一文字当ててみる。


「やはり『まさ』は雅和様の雅を・・・。雅和様、『ひろ』と『もり』はどのような字がいいかしら?」


すると帝は少し考えて書き足し、鈴華に見せる。鈴華はたいそう喜んで、おなかの御子達に話しかける。


「雅博に雅盛、お父様が字を考えてくれましたよ。元気に出てきてね・・・。」


鈴華はうれしそうにおなかを撫でるのを見て帝は微笑む。


「鈴華、もし姫宮だったらいけないから、生まれるまでに考えておくよ。」
「はい。でもこの子達は皇子です。絶対・・・。」
「はいはい皇子ね・・・。里下がりを許すよ。いつでも都合の良い日に里下がりをしなさい。」


鈴華は微笑んでうなずく。半月後の吉日に鈴華は実家である堀川邸に里下がりをした。関白太政大臣は典薬寮から双子の件を聞いていたので、早めに準備をさせ、何もかも二つずつ用意させた。もちろん鈴華は2回目の出産ではあるが、双子であるのでとても不安な様子でその日を待つ。


 予定日よりもひと月近く早くその兆候が見られた。鈴華のおなかはもうパンパンに張って、今にも破裂しそうな大きさだった。兆候が出だした頃、典薬寮より帝にもうそろそろ生まれるとの報告が入る。珍しく難しい双子の出産に典薬寮や堀川邸は二人とも無事に生まれるように神頼みするしかなかった。ひと月早めであったが鈴華は何事もなく無事に小さめの元気な瓜二つの双子の皇子を産んだ。関白は二人の皇子の誕生に大変喜び、従者に行かせずに急いでそのまま自ら帝の御前に報告に行く。


「申し上げます、当家の姫藤壷中宮、無事双子の皇子をお産みあそばしました。中宮も何事もなく元気でございます。皇子たちも小さくは生まれましたが、とても元気な皇子たちでございます。」


帝は喜んで、関白にお祝いの言葉を言うと、うれしさのあまり堀川邸に非公式の行幸をしようと関白に提案した。もちろん関白は快く引き受け、陰陽寮に佳き日を占わせる。3日後ならと報告を受けると、早速行幸の準備をさせた。


 一方鈴華はどちらの皇子にどの名前をつけようか悩んでいた。するとふと少将の亡霊が言っていた事を思い出す。そして吉野の君にもあったあざの位置も確かめさせる。


「左肩にあざのある皇子はいないかしら・・・。あと首の付け根の当たり・・・。」


二人の皇子の乳母たちは、皇子を隅々まで見てあざの位置を見る。すると中宮が言ったとおりの位置にあざがあった。


「肩にある皇子は『雅博』、首の付け根にある皇子は『雅盛』にしましょう。」


乳母たちは鈴華の言う言葉を不思議に思う。鈴華はやはり二人は初恋の君と吉野の君の生まれ変わりであると確信した。



《作者からの一言》
昔双子を無事出産なんて無理に等しいかもしれません。現代でも絶対安静をしてやっと生まれるのですから・・・。

双子の若宮はやはり初恋の君と吉野の君の生まれ変わりでした・・・。幸せになってくれるといいですね^^;
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