4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第94章 勅使
 帝は摂関家の血筋ではない。帝の母は宮家出身で、元中務卿宮家の姫宮である。普通中務卿は一代で替わる事が多いが、この宮家は珍しく三代続けて中務卿宮家として受け継がれていた。

 帝の祖父はとても温厚で管弦を好み、特に龍笛が得意であった。子供は帝の母しかいない。たった一人の姫宮を後宮に入れ、帝である二の宮を授かった。帝は生まれてすぐから、この宮家で育ったが、帝が十一歳の時に祖父が亡くなり、後宮に引き取られることになったのである。あれから十数年、今年は祖父宮の十三回忌に当たる。そのことで兄である中務卿宮に相談する。


「兄上、今年は祖父宮の十三回忌に当たります。何かしないといけないですね・・・。今まで何も出来なかった・・・。」
「そうですね・・・。二条宮家の墓所に勅使をおくられてはいかがですか?」
「ん・・・。本当なら私が墓参りに行きたいが、帝の身分では無理だろうね・・・。兄上、手配を頼んでもいいでしょうか・・・。」
「お任せください・・・。滞りなく帝の勅使を二条宮家の墓所に派遣しましょう。」


異母兄弟である中務卿宮は帝の頼みを聞き、勅使の手配をする。


(結局お爺様のご期待に背いて二条宮家を再興できなかった・・・。)


帝は小さい頃を思い出す。


 物心つく前から、ずっと二条院にいた。当時東宮であった兄を除き、年に数回内裏に行くか行かないかであり、帝である父や麗景殿中宮である母の顔の印象などない。もちろんずっと二条院にて養育されていたので、おじいちゃんっ子である。祖父も大変可愛がり、邸にいるときはずっと側に置いた。優しいだけの祖父ではなく、躾にはうるさく、特に龍笛を厳しく仕込んだ。


「雅和、いいかい。お前は帝の二の宮であるが、この宮家を継いでおくれ。今誰もいない中務卿宮としてこの宮家を再興しておくれ。」
「おじいちゃま?」


祖父は雅和を膝に乗せ、微笑んで言う。


「そうだね、まだ雅和は3歳だからわからないな・・・。お前は母宮に似てとてもいい子だ。」


祖父は雅和の頭を撫でる。雅和は満面の笑みで祖父を見つめた。祖父は暇を見つけては雅和を呼び、龍笛を教える。祖父は雅和に小さめの龍笛を与え、手取り足取り教えていった。もちろん厳しく仕込む。その厳しさに雅和は何度も泣いた事がある。


「おじいちゃま・・・もうやだ・・・。」


祖父は雅和を叱りつける。


「雅和、途中で諦めてはいけないのです。雅和がやりたいと言ったのでしょう!」
「僕、出来ないもん!おじいちゃまなんて嫌いだ!」


雅和は祖父の寝殿を飛び出し、近くの兄宮のいる東三条邸に何度お邪魔した。兄宮と遊び、発散して帰ってくると、いつものように優しい祖父に戻っている。雅和はやはり祖父が大好きなので、祖父の胸に飛び込んで、毎回祖父に謝罪する。徐々に上手くなっていく雅和を見て、祖父は喜び、自慢の孫だと珍しく殿上人に自慢をする。躾と龍笛に関してはとても厳しかったが、それ以外はとても優しく、楽しい幼少時代をこの二条院で過ごした。


 十一歳になったある日、祖父は病を患い寝込んでしまった。雅和は四六時中祖父に付き添い、看病をする。


「雅和、すまないね・・・。もしこの私に何かあったら、母宮のいる後宮にお世話になりなさい。」
「お爺様・・・。僕はこの二条院に残ります。」
「雅和、ほんとにお前はいい子だね・・・。お前が元服したらこちらの邸に住みなさい。それまでは父君である帝と、母宮である中宮の側にいなさい。いいですね・・・。」


雅和はうなずき、祖父は安心した表情で雅和の頭を撫でる。この数日後、雅和の看病も虚しく、亡くなってしまった。きちんと曽祖父と共に葬儀を取り仕切り、落ち着いた頃父君である帝から梨壷を賜り、後宮に引き取られた。ここ何年も父君である帝に会っていなかった。清涼殿に呼ばれた雅和はあまり父君の印象がないので、緊張した様子で、参議に連れられ御前に通される。


いつもと違って、雅和は髪を下げみずらで萌黄色の小狩衣を身に着け、紫の宮家の紋の入った袴を着て帝の前に座る。


「二の宮様、帝であられます。ご挨拶を・・・。」


雅和は祖父に躾けられたようにきちんと帝に挨拶をする。


「雅和、久しぶりだね。ずいぶん大きくなられた。いろいろ亡き二条宮から雅和のことは聞いていたよ。ますます母宮である中宮に似てこられましたね。さ、御簾の中に入ってよく顔を見せておくれ。」


雅和はためらい、参議に声をかけられてやっと御簾の中に入る。御簾の中には父君らしい帝が中央に座り、その横に母宮と思われる女性が座っている。母宮は雅和の姿を見て涙を流す。


「さ、雅和、こちらにおいで。」


帝は雅和を呼び寄せて、頭を撫でる。そして母宮は雅和を抱きしめて、今まで側に置かなかったことを謝罪する。


「父上?母上?」


雅和は不思議そうな顔をして、二人を見つめた。梨壷に部屋を賜ってから数日間は慣れない環境のためか、泣き暮らした。乳母である籐少納言が、雅和を慰め雅和の祖父から預かった形見の龍笛を雅和に手渡した。


「これは宮様のお爺様から宮様に渡すようにと頼まれた物なのです。」
「これはお爺様のご愛用の龍笛・・・。」


雅和は龍笛を受け取ると、大事そうに撫でて亡き祖父を偲んだ。気が滅入るといつもこの龍笛を取り出し、祖父を思い出しながら龍笛を吹いた。もちろんこの響きは隣の麗景殿まで響き渡り、母宮は父宮にそっくりな竜笛の響きを聞き、どんなに父宮が雅和を大事にしていたか知る。そして今まで一緒にいる事が出来なかった分を取り戻すように毎日のように梨壷を訪れ、雅和をかわいがった。そして雅和は心を開き、徐々にもとの明るい雅和に戻っていった。母である中宮だけではなく、弘徽殿に住む皇后もとても雅和のことをかわいがった。


 十二歳の正月、兄である一の宮が、元服を行うので挨拶のために弘徽殿にやってくるのを聞きつけ、走って弘徽殿に向かう。息を切らして弘徽殿に入ると、丁度兄宮が到着したところのようで、皇后に挨拶をしていた。兄宮は雅和に気付くと微笑んで言う。


「久しぶりだね、雅和。」
「兄上!」


雅和は兄宮に飛びつく。


「雅和、元気そうで良かったよ。」
「ねえ兄上!蹴鞠をしてあそぼ!ねえ、ねえ・・・。」


すると皇后が言う。


「二の宮様、一の宮は明日元服式なのですよ。大事な体なのです。無理を言ってはいけませんよ。」


雅和は残念そうな顔で弘徽殿を後にしようとすると、兄宮は言う。


「雅和、ちょっとならいいよ。もう元服したら当分遊ぶ事が出来ないからね。」


皇后は困った顔で言う。


「雅孝、お父様に怒られますよ。早くご挨拶に行かないといけないのに・・・。」
「母上、ちょっとぐらいいいではありませんか・・・。」


そういうと、庭に出て雅和と一緒に蹴鞠をする。雅和は今までに見たことのない笑顔で、兄宮と共に蹴鞠をする。楽しそうな笑い声は清涼殿まで響き、父である帝は清涼殿から承香殿に渡ってきて、二人に声をかける。


「雅孝、雅和、とても楽しそうな笑い声が清涼殿まで聞こえたよ。」
「父上!」


帝は微笑んで、すのこ縁に座り、二人が楽しそうに蹴鞠をする姿を見つめる。


「二の宮様~~。」


と、乳母の籐少納言が雅和を捜しに来ると、兄宮は蹴鞠をやめ、雅和を乳母のもとに返す。


「兄上・・・。」
「さあ、雅和、籐少納言が呼んでいるよ。行っておいでよ。そうだ、またいつでも東宮御所においでよ。待っているから。」


雅和はうなずくと、微笑んで手を振りながら梨壷に戻って行った。籐少納言は心配そうな顔をして雅和を連れ戻した。兄宮の元服が終わっても雅和はよく東宮御所に顔を出し、一緒に遊んだり、勉強をしたりして過ごした。


 (本当にお爺様には悪いけれど、後宮に引き取られたおかげで、綾乃と出会えた訳だし・・・。)


帝は今までのことを思い出しながら祖父のことを考えた。


 数日が経ち、中務卿宮を通して勅使の件について無事終了したと報告を受け、安堵した。



《作者からの一言》

ネタ無しシリーズですね^^;

中務卿宮と帝が同腹ではないのに仲がいいのは小さい頃から交流があったからです。
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