4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第96章 拒否
 皇后綾乃が24歳の春。暖かい太陽の光が弘徽殿に差し込んでいる。帝である雅和親王に入内して丁度十年となる。十年経っても帝の寵愛を受け、何不自由な生活なく過ごしていた。


「あら、皇后様。朝餉を召し上がらないのですか?」


と、綾乃の乳母である小宰相が心配そうに綾乃に声をかける。


「なんとなく体が重いの・・・。風邪かしら・・・。」
「そうかもしれませんわ・・・ここのところ朝餉も夕餉もあまり召し上がっておられない様子ですもの・・・。もともと食の細い綾乃様・・・。本当に大丈夫ですか?」


綾乃はうなずくと、脇息にもたれかかって溜め息をつく。小宰相は心配になって、典薬寮の女医を呼んで診せる。女医は首をかしげて、綾乃のもとを去っていく。


「小宰相、だからいったでしょう、風邪だって・・・。少し休めばよくなるわ・・・。」
「それでは今夜の清涼殿へのお渡りは延期いたしましょう。そのように帝に・・・。」


小宰相は安心した表情で弘徽殿を退出し、清涼殿に行く。清涼殿につくと、小宰相は帝の乳母である籐少納言に言う。


「籐少納言様、本日皇后様はお風邪を召されましたので、こちらへは参れません・・・。別の日に・・・。」
「そうですか・・・。最近皇后様は体調がよろしくないようですわね・・・。先日もお断りになられたばかり・・・。」
「はい・・・。もともと食の細いお方なのですが、最近は特にあまり召し上がらないのです。ご懐妊ではないのですけれど・・・。先程も女医を呼んだのですが、これといって病と診断されたのではないのです・・・。」
「心配ね・・・。帝にはあまり心配されないように伝えておくわね。本当に今まで何もご病気などされなかった元気な御方でしたのに・・・。風邪としても長いですわね・・・。」


籐少納言は心配そうな表情で帝に伝える。


「そうか・・・また皇后は寝込んでいるのか・・・。今晩はこの私が弘徽殿へ渡って皇后を見舞うことにするよ。」
「はいかしこまりました。そのように小宰相に伝えますわ。」


籐少納言は、小宰相に帝の意向を伝えると、小宰相は心配そうな顔で弘徽殿へ戻り、綾乃に言う。綾乃は少し疲れた顔で、返事をする。


「そう・・・こちらに来られるのね・・・。」


そういうと、綾乃は寝所に横になって眠りにつく。毎晩のように帝は綾乃が心配で、弘徽殿へ通ってきて、綾乃の看病をするが、日に日に弱っていく綾乃を見て、益々帝は綾乃の病状がただの風邪ではないと気が付く。


「これはただの風邪ではないと思うよ。小宰相今すぐ典薬頭、侍医、女医を呼びなさい。早く・・・。」


帝は心配そうに綾乃の手を握り締めて、侍医や女医が到着するのを待つ。侍医と女医は急いでやってきたが、典薬頭がまだ来なかった。


「典薬頭はどうした。」
「本日は宿直ではございませんので、今急いでこちらに向かっております。」


女医は綾乃がいる御帳台に入って、診察をする。しかしこの女医は良くわからない状態で、御帳台から出てくる。帝はいらつき、侍医に言う。


「侍医、御帳台に入り皇后を直接診る事を許す。」
「御意・・・。」


侍医は御帳台の前で綾乃に対し、深々と頭を下げると御帳台に入り綾乃を診察する。かなりの時間をかけ診察をしている最中に、典薬頭が入ってきた。


「遅れまして申し訳ありません。」
「日頃皇后の調子が思わしくないのは知っているのであろう。本日は特別、侍医に皇后を診るように命を出したが、腕のいい女医はいないのか・・・。今まで風邪だと思い、看病してきたが、いっこうに良くならん。原因を突き止めよ。」


典薬頭が頭を下げると、侍医が丁度御帳台から出てきて、帝に深々と頭を下げる。


「和気殿、何かわかりましたか?」
「申し訳ありません、もう少し早く治療しておけば・・・。風邪ではなく、重篤な病でございました。」


帝は驚いた表情で、問いかける。


「どのように重篤だというのだ・・・。手遅れだというのか?」
「はい・・・。この病は今の医学では不治の病・・・。早目にわかっていれば治すことができましたが、ここまで進行すればもう・・・。今の医学では進行を遅らせることしかできません・・・。」
「わかった・・・。典薬頭、出来る限り皇后が長く生きられるように頼みましたよ・・・。女医たちも腕のいい者たちを・・・。もう下がっていいよ。」


帝は典薬寮の者たちが下がったのを確認すると、ショックのあまり力が抜け、その場に座り込んだ。


(綾乃が不治の病だって・・・。そんな・・・。)


帝は、眠っている綾乃の側に座ると、綾乃の手を取り帝の頬に当てる。すると小宰相が、帝に申し上げる。


「帝、皇后様の里下がりを・・・。」


小宰相は慣例どおり病の綾乃の里下がりを願い出た。


「里下がりなど許しません。最期まで私が綾乃の面倒を見るよ・・・。」
「しかし帝・・・ご公務に障ります。とりあえず、皇后様のお父上である内大臣様とご相談を・・・。」
「小宰相、私の気持ちには変わりはないよ・・・。綾乃の側には私がいないといけないのだ。そして私の側にも綾乃がいないと・・・。」


帝は泣きながら、そのまま一夜を過ごした。


 朝一番に慌てて内大臣が参内してくると、そのまま帝のいる弘徽殿にやってきた。そして続々と、関白や左大臣、右大臣もやってきて、弘徽殿入り口のすのこ縁に座った。そして帝に清涼殿へひとまず戻るように促した。帝はしょうがなく清涼殿の戻ると、大臣たちとこれからについて話した。綾乃の病気の知らせはもちろん宇治の皇太后のもとにも届いた。皇太后は院の制止を振り切って急いで車に乗り込み、参内した。


「申し上げます。宇治より皇太后様が参内されましたが・・・。」


帝は驚いた様子でいう。


「どうして皇太后様が参内なさるのか?今どちらに?」
「もう弘徽殿のほうに・・・。」
「わかった、今から弘徽殿へ行く。」


帝は不思議に思いながら弘徽殿に向かう。すると、御帳台の側で綾乃の手をとり泣いている皇太后がいた。


「綾乃・・・。なぜこのような病になってしまったの・・・。もし出来るのならば代わって差し上げたいわ・・・。」
「お母様・・・。」


綾乃は辛そうな顔をしながらも、皇太后に微笑んだ。その一部終始を見ていた帝は驚いた。


(え?綾乃の母は・・・皇太后???)


皇太后は帝に気付くと、頭を下げる。


「皇太后様、どういうことですか?綾乃は・・・。綾乃の母君は・・・。」
「そう、帝のお考えどおり、私の子です。私と内大臣様の間に生まれた姫君です・・・。もういまさら関係はありません・・・。今は少しでも綾乃が元気になれば・・・。帝、里下がりをお許しにならないそうですわね・・・。小宰相に聞きましたわ。帝のお気持ちもわかりますが、このような堅苦しい後宮にいては・・・。綾乃の生まれた宇治に連れて行きます。それが叶わないのでしたら、私はこちらに残って看病をいたします。それが今まで綾乃を放って置いたお詫びになるのですから・・・。」


帝は少し考えると、皇太后に言う。


「私も綾乃の看病をしたいのです。本当であれば、実家に帰してやりたいのですが、私の身分ではそちらに行って看病できない・・・。ですから、後宮に残し側において公務をしながら看病をしたいのです・・・。」


綾乃は涙ぐんで、いう。


「お母様、雅和様・・・。私・・・。ここにいたいのです・・・。雅和様とは離れたくはないのです・・・。お母様・・・。最期まで雅和様と・・・。」
「綾乃、わかりました・・・。帝、私もこちらで綾乃の看病をいたします。帝の公務の間だけでも・・・。」


帝は微笑んでいう。


「皇太后様、ありがとうございます。」
「本当に帝は綾乃のことになると一生懸命で、我を通されますね・・・。綾乃感謝しないといけませんよ・・・。三人もの妃の中で、唯一あなただけです。ここまで思っておいでなのは・・・。」


慣例に反して病人であり、先の短い皇后を里下がりさせずにそのまま置いておくことに対して、太政官達はみな反対をしたが、帝はいうことを聞かずに公務をこなしつつ、暇を見つけては弘徽殿に行って、綾乃の看病をした。内大臣は反対をせず、温かく見守った。


「内大臣殿、いいのですか?」
「本当です・・・。先の短い皇后を後宮に置かれるとは・・・いくらご寵愛を一身に受けられている皇后といっても・・・。」


内大臣は苦笑して言う。


「いいじゃありませんか・・・きちんとご公務もこなしておられる・・・。帝の好きにさせて差し上げてもいいではありませんか・・・。」
「しかしね・・・。」


綾乃は闘病生活を送りながらも充実した生活をしている。大好きな帝や今まで一緒に過ごす時間が少なかった母君と残り少ない命を存分に生きている。辛い闘病生活ではあるが、綾乃はとても幸せに感じた。
 このような生活が半年以上続き、綾乃は何とか年を越しまもなく発病して一年・・・。綾乃の母である皇太后も、ずっと綾乃の側に付き、看病をしている。度々心配して院もやってくる。


「雅和、典薬頭に聞いたよ・・・。まさしくあの症状は亡き私の兄上と同じ病気・・・。熱があり、体の倦怠感、節々の痛み・・・。本当に残念なことだけれども・・・。先は短いね・・・。しかしなぜ里下がりを許さないのですか?」


帝は苦笑していう。


「本当に私のわがままなのです・・・。私が綾乃の最期を看取りたいのです・・・。綾乃も私と居たいと言うのです・・・。」
「しかし、慣例です・・・。もし身罷った時はどうするのですか?帝の立場としては亡骸には触る事が許されません。穢れなのです・・・。」
「わかっています。父上も妹宮が亡くなった時に亡骸を抱いたと聞きました・・・。慣例などどうでもいいのです・・・。穢れてもいい・・。そのときはきちんと穢れを落とした上で、公務に戻ります。」
「しょうがないね・・・。綾乃は雅和にとって最愛の姫だからね・・・。」


院は溜め息をついて、清涼殿を立ち去る。


内裏ではある噂で持ちきりとなる。


(なぜ帝の母でもない皇太后様が皇后様の看病に当たられるのか・・・?)
(皇后様の母君は誰なのか?)


もちろんこの噂は内大臣の耳に入る。いろいろな憶測が飛び交い、内大臣は皇太后との昔の経緯が世間にばれてしまわないかと、冷や冷やする。殿上の間で、内大臣は土御門左大臣に声をかけられる。


「噂をお聞きになられましたか?あなたの姫君、皇后様の母は誰なのか?」
「・・・。」
「皇后様がお生まれになったときは丁度あなたは頭中将でしたね・・・。」
「それが何か・・・。」
「丁度皇太后様が病気のためご静養に宇治へ行かれていたときと重なるような気がします・・・。」
「偶然ですよ・・・。別邸は隣でしたが・・・。皇后の母君は・・・皇后を産んで少しして亡くなりました。ただ皇太后様のご実家と縁があっただけです・・・。女童で後宮に入っていたときにたいそう可愛がって頂きましたので、それでだと思うのですが・・・。」
「ほう・・・。そうでしょうか?まあいい、少しでも長生きされるといいですな・・・。あなたもがんばらないといけませんな。油断すると皇后亡き後、源腹の東宮は摂関家腹の若宮に代わられる可能性がありますな・・・。後見人の右大臣殿も高齢であられるしな・・・。立場上堀川殿のほうが有利である。」
「まだ皇后は・・・。帝も東宮は康仁親王であると断言しておいでだ・・・。」
「さあ・・・皇后亡き後は堀川摂関家の中宮様にご寵愛が移る。気が変わられることもあるってことですよ・・・。ではでは先が楽しみだ・・・。」


内大臣は珍しくイラついた様子で立ち去っていく左大臣を睨みつける。内大臣は柱をこぶしで殴ると、そのまま弘徽殿の綾乃のもとに見舞いに行く。周りは普段とても温厚な内大臣の変わりように驚き、ハラハラする。弘徽殿では皇太后が相変わらず綾乃の看病をしている。綾乃は日に日に弱っていき、ひどい倦怠感と全身の痛みに耐えている。何とか典薬寮の処方した痛み止めを飲むと少しはましになるのであるが、また痛みがぶり返してくる。もう痛みに耐えられる程の体力は皇后にはないと思われるのであるが、気力で生きているとしか言いようがない。その姿を遠目で見て、内大臣はかわいそうな娘の姿に涙ぐんでしまう。綾乃は内大臣の存在に気付き、声をかける。


「お父様・・・。」


内大臣はそっと中に入り、綾乃の側に寄る。


「綾乃、何か願いはあるかい?出来ることなら何でもしてやりたい・・・。」


綾乃は力を振り絞って内大臣に言う。


「お父様・・・・お願いがあるの・・・。私・・・もういいわ・・・雅和様の前でこのまま死にたくはない・・・。雅和様のいないところで・・・。私をそっとここから出して・・・。出来れば私の生まれた宇治の別邸に行きたい・・・。お庭の綺麗な桜の花を見たいの・・・。それがだめなら・・・五条邸の橘・・・・。二条院の桜・・・。あれは初めて雅和様と眺めたっけ・・・。きっとここを出るのはお許しにはならない・・・。雅和様がご公務をしている間、そっと後宮の裏から・・・。」


内大臣はうなずくと、綾乃に言う。


「わかったよ・・・。そっとお前を後宮から出してあげるよ・・・。帝から怒りをかってもいい。このまま出仕をお断りしてもいい。お前の願いであるならば、叶えてあげるよ・・・。」
「お父様・・・。」


すると皇太后が言う。


「それなら私の車に乗ったらいいわ。そのほうが安全よ・・・。衛門の者たちは私の車を調べたりしないから・・・。」
「皇太后様、ありがとうございます。私も右大将を兼任しておりますので、近衛府に根回しをしておきましょう・・・。宇治まで体力が持つか・・・。決行は明後日・・・。右大臣様にも根回しして、少しでも帝を清涼殿にお引止めしておかないと・・・。小宰相・・・、聞こえたであろう・・・。弘徽殿内のことはあなたに頼みましたよ・・・。」


小宰相は涙ぐみながら、返事をする。


「はい、かしこまりました。皇后様のため、私も帝に処分されても構いません・・・。きっと無事宇治にご到着されるように何とかします。」


綾乃は涙ぐんでみなに感謝をする。


 決行の前日の夜、いつものように帝が弘徽殿にやってきて、綾乃の看病をする。帝はまず綾乃に重湯や葛湯をひとさじずつ与え、全部食べ終わると微笑んで、綾乃を横にする。


「今日は全部食べてくれたんだね・・・。まだ今日は調子がいいようだ・・・。綾乃、いま薬湯を持ってこさせるから、待っていて。」
「雅和様・・・外の天気はどうかしら・・・。」
「今日はね・・・朧月夜だよ・・・。もうすぐ桜の季節だよ・・・。もう左近の桜は一分咲きだ・・・。」
「雅和様、朧月夜を見せてください・・・。」
「わかった・・・暖かくして表に出よう・・・。小宰相、皇后に上着を・・・。」


小宰相が手渡した上着を帝は綾乃に被せると抱き上げて弘徽殿の南側の階に座らせる。綾乃は何とか帝にもたれかかって座ると、一言言う。


「私の父と母が出会ったのも、丁度このような朧月夜と聞きました。庭にあるあの大きな桜の木下で・・・。そして二人はしてはいけない恋に落ちてしまったのです・・・。そして私が生まれた・・・。そして別れたのもこのような月夜・・・。とても物語のような・・・。母が雅和様のお父様の妃でなければ、きっと一緒に暮らしていたのでしょうね・・・。私わかるもの・・・いまだ二人は惹かれあっているのよ・・・。でも立場上それが叶わないだけ・・・。」


帝は初めてくわしい内大臣と皇太后の関係を知った。ショックであったけれども、そのおかげで最愛の姫君である綾乃が生まれたのだから、二人の出会いに感謝した。やはり春先の夜は冷えるので、帝はさっと綾乃を抱き上げて部屋に戻った。


「ありがとうございます。雅和様・・・。人生の半分を雅和様と一緒にいる事が出来て、綾乃はとても幸せでした。」


そういうと帝に綾乃からくちづけをした。


《作者からの一言》

綾乃は不治の病・・・。

本当に歴代の帝の中で病気で先の短い妃に里下がりを許さず最期を看取ったという帝が実在するそうです。もちろん慣例では病気になれば里下がりをするのですけれど・・・。
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