4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第97章 密かな脱出
 綾乃はなんだか調子がいい。内大臣である綾乃の父は右大臣と共に、帝を清涼殿から出さないようにいろいろな議題を出したり、世間話をしたり、時間稼ぎをしている。その間に弘徽殿では、内大臣の部下である頭中将が、弘徽殿に寄せられた皇太后の車に皇后を抱き上げて皇后を乗せた。


「内大臣様からや皇太后様から伺いました。皇后様、私も微力ながら脱出のお手伝いを・・・。大袈裟にはできませんが、私が皇太后様の車の警護に当たります。ですからご安心を・・・。」


皇后はうなずくと、皇太后の膝に頭を置いて横になった。準備が整うと、皇太后は言う。


「小宰相、あとは頼みましたよ。また文を書きますから・・・。」
「お任せください、皇太后様。」


車が動き出すと、綾乃は痛みに耐えながら、早く内裏、そして都から出ないかと思う。難なく後宮や大内裏の門を通ると、皇太后や頭中将はほっとして宇治へを急ぐ。皇太后の車には数人の随身、牛飼い童、そして警護役の頭中将しか付いていないひっそりとした車である。皇族の印が付いた車である以外は本当に質素である。度々痛みに苦しむ皇后のために、頭中将は車を止めたりはしているが、やはり時間がかかってしまうので、皇后が言う。


「私のことはいいわ・・・。早く急いで宇治へ・・・。」


頭中将は気にしながらも、急いで牛車を走らせた。なんとか日が陰る前に皇太后の母が住む別荘に着く。そして綾乃が生まれ育った部屋に頭中将が皇后を抱いて運ぶと、寝所に横にさせた。そして頭中将は頭を深々とさげると部屋を出る。


「頭中将様、ありがとうございます。帝と一番仲の良いあなたが、このように帝を欺く様なお役目を引き受けていただきまして・・・。感謝しますわ。」
「いえ、皇后様のためでございます。」


そういうと別荘を出て、都へ急いで馬を走らせた。この別荘の主に挨拶を済ませた皇太后は、綾乃の寝所の前に座る。


「本当にここは懐かしいわ・・・。この部屋であなたが生まれたのですもの・・・。綾乃、ここにいる女房たちは私の女房たちの中で、気の知れたものたちばかりだから安心して・・・。この中には典薬頭の妹君もいるので、薬も調合できるわ。女医の経験もあるから・・・。」


皇太后はその女医を呼び、綾乃と会わせる。


「はじめまして。私は皇太后様にお仕えする女房であり女医の丹波と申します。皇后様の病状に関してはいろいろ伺っておりますので、ご安心ください。まずはこれを・・・。」


そういうと丹波は皇后に薬湯を飲ませる。すると皇后は安心した表情で眠った。


「丹波、皇后に何を?」
「ご安心ください。いつもの痛み止めと、ゆっくりお休みいただけるように眠るお薬を・・・。大変お疲れのご様子でしたので・・・。」
「そう、それなら良かったわ・・・。丹波、頼みましたよ・・・。私は院に会って来ます・・・。」


一方清涼殿では、夕方になってもなかなか話を辞めようとはしない内大臣と右大臣に帝は不思議な表情で話を聞いている。そこへ宿直の予定の頭中将が入ってきて、内大臣を呼ぶと、内大臣は御前を離れる。頭中将と内大臣は右近衛詰所に入ると、報告をする。


「無事、皇后様は宇治に御着きになりました。皇太后様によりますと、皇太后様の女官の中に典薬頭の妹君がおり、女医の経験もあるということで、皇后様にお付けになるということです。」
「そうか・・・ありがとう・・・。もし私の身に何かあれば、あなたは知らなかったことにしなさい。私単独で行ったことにしなさい。いいね・・・。」
「はい・・・でもいいのでしょうか・・・内大臣様のみ帝のお怒りに触れるような・・・。」
「いいのですよ。これが皇后の最期の願いなのだから・・・。もちろんどこの運んだかも忘れるように・・・。」


頭中将は頭を下げて、下がっていく。内大臣は急いで弘徽殿に向かうと案の定大騒ぎになっていた。帝は内大臣の顔を見るなり詰め寄ってくる。


「内大臣、綾乃をどこにやったのです!最期までこの私が綾乃を看取るといったでしょう!」


内大臣は帝の前に座って土下座をすると、そのまま黙ってしまった。


「二条院にいるのか、それとも五条邸か!内大臣!私は里下がりを許した覚えはない!勝手に綾乃を後宮から出すなんて・・・。綾乃はどこだ!」


帝は涙を流しながら、内大臣の胸元を掴み、問いただす。


「帝、綾乃の本当の願いを聞いただけなのです。綾乃は帝に最期を見られたくはないと泣いて私に願ったのです。綾乃の気持ちを察してあげてください。私は帝に背きましたので、お許しを得るまで謹慎させていただきます。殿上の札を削っていただいても構いません。私が単独で決めたことですので・・・。こちらの御殿の綾乃のものはみな即引き取らせていただきます。もうこちらには戻ることはないでしょう。この御殿は返上させていただきます。もちろんお怒りでしたら、綾乃の称号も・・・。では失礼いたします。」


そういうと帝の言葉を聞かずに、内大臣は二条院には戻らず、もともとの邸である五条邸に入って謹慎をする。潔い内大臣の行動に殿上人はみな感心をする。


(おい聞いたか、内大臣様のこと)
(聞いた聞いた、こっそり皇后様を後宮から出してどちらかに移したらしいな。)
(その後、帝が命を出す前にさっさと五条邸に謹慎されたらしい・・・。潔いこと・・・。)
(ホントホント・・・。皇后様はおかわいそうであったものな・・・。あんなに弱られて・・・。最期に後宮を出たいと申されたそうだよ。)
(で、帝はどのようにされたのか?)
(いまだ何も処分されてないようだよ。どこに運ばれたかを今探させているらしい。今日から続々と皇后様の荷物が五条邸に戻されている・・・。右大臣様も養女である皇后様があのようになられて残念なこった・・・。まあ東宮様がいるからいいものの、東宮様もおかわいそうに・・・。)


帝は検非違使のものや衛門府のものに命じて綾乃の行き先を探させた。しかし都内の邸や寺院思い当たるところにはいなかった。夕方が過ぎた頃、衛門督が言う。


「あの・・・昨日内裏の門で皇太后様のお印の車を通したのですが・・・。側に頭中将がおられたので、そのまま通したと申す者がおります。また羅城門のほうでも検非違使の者が皇太后様の車と頭中将様を見かけたと・・・。」


帝はハッとして、頭中将を呼ぶと頭中将は何もなかったような顔で御前に座る。


「昨日皇太后様の車の警護をしたそうだな・・・。」
「はい。それが何か・・・。」
「どうして警護を?」
「知ってのとおり、皇太后様は私の妻孝子の母君。皇太后様直々に宇治に戻る急用が出来たからと、休みを返上して警護を頼まれたのです。それが何か?」
「本当にそうであろうな・・・。」
「はい・・・。直属の上司である内大臣様に報告済みですが・・・。」
「また内大臣か・・・。乗っていたのは皇太后様だけか?」
「さあ・・・。弘徽殿の手前からの警護でしたのでどなたが乗られていたかまでは…。」
「いいよ、頭中将下がっていい。」


帝はやはり皇太后が引っかかるようで、衛門督を呼ぶ。


「宇治まで足を伸ばせ。宇治の宇治院とその隣の皇太后縁の別荘を・・・。」
「申し上げます!!そちらは私たちが踏み込めるようなところではありません。知らないといわれれば、それ以上は・・・。」
「勅命であってもか?」
「はい・・・。」
「わかった・・・ご苦労・・・。とりあえず宇治まで調べよ。」
「御意」


そういうと帝は脇息にもたれかかって溜め息をつくと、涙を流して綾乃の病状を心配する。


(綾乃はちゃんと薬を飲んでいるのか・・・私に何も言わずに出て行くとは・・・でもそういえば昨夜・・・。昨夜のあの行動は私に対する別れの挨拶だったのか?本当に幸せだったというのか・・・。)


すると鈴華が入ってきて、帝に一通の文を渡す。


「雅和様。一昨日に行ったお見舞いで綾乃様から手渡されたものです・・・。二日後に渡して欲しいと・・・。」
「綾乃から私に?」


帝は鈴華から手渡された文を開き、読み始める。


『雅和様。今まで綾乃は大変幸せでした。最期まで看取っていただけると聞き、本当に感謝しておりました。しかし私は帝である雅和様に私の最期を看取っていただくわけにはいきません。最後のわがままをお許しください。私は思い出の場所にて最期を迎えます。もちろん幸せだった雅和様との良い思い出を胸に抱いて・・・。東宮康仁のこと、よろしくお願いします。また、私の願いを聞いてくれた父上内大臣を叱らないでください。では永遠に・・・。
今までありがとうございました。                 皇后  源祥子』


帝は綾乃からの文を握り締め、涙を流した。鈴華は帝に寄り添った。


「雅和様、私も綾乃様から東宮様のことや雅和様のことを頼むと・・・。同じ女としてわかるような気がします・・・。女は好きな人の前では綺麗なままでいたいのです。決して死に際を見せたくないものなのです・・・。ですから雅和様、綾乃様をそのままに・・・。」
「そうかもしれないね・・・。ありがとう鈴華・・・。」


そういうと帝は御帳台に潜り込んで泣き崩れた。鈴華はその場を去り藤壺に戻って行った。
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