4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第98章 綾乃の最期 (第2部 雅和&綾乃編 完結)
 帝は毎日を不安な気持ちで過ごしていた。様々の者たちが帝の御前にやってきて報告するたびに「もしや・・・」と思うまで毎日をびくびくして暮らしている。あの綾乃の後宮脱出事件からふた月が経ち、桜が終わってもうそろそろ綾乃が好きだった橘の花が咲こうとしている。清涼殿から見える思い出の右近の橘もつぼみが出来、そろそろ咲こうとしているのである。


(綾乃に初めて恋文を出したのはもう十三年も前か・・・。あの時は父上に頼んで右近の橘の初咲きの枝をいただき文につけて綾乃に送ったっけ・・・。)


そう思うと、帝は御簾を出て、すのこ縁から庭に飛び降りて右近の橘の木の元に走っていく。もう初咲きのつぼみが咲こうとしているのを見て、居てもたってもいられず守り刀を懐から取り出すと、その今にも咲きそうな枝を切り、清涼殿に戻る。その行動を見ていた頭中将はついに綾乃の居る宇治の別荘を帝に報告しようと決心をした。帝は切り取った橘の枝を女官が用意した水の入った器につけると、御料紙を用意してなにやら何かを書き出した。度々筆を止めると思い出したかのようにまた書き始める。籐少納言を呼ぶと、耳元で何かをささやくと籐少納言は二階厨子から小さな香入れを取り出し、香焚き染める。


「帝・・・この香は・・・・もしかして・・・。」
「頭中将、気が付いた?これは帝位に就く前に使っていた香だよ。」
「あの・・・皇后様のご療養地なのですが・・・・。実は知っております。」


帝は頭中将の言葉にハッとして頭中将に聞く。


「大体の見当はついていたのだが、詳しくは・・・。どこ?なぜ知ってるの?」
「申し訳ありません、内大臣様のご命令で、皇后様をお運びしたのはこの私だからです・・・。」
「そう・・・なんとなくわかっていたよ・・・。どこ?」
「宇治の皇太后様の母君のお邸でございます・・・。そちらに・・・。」
「ああ、やはり・・・皇后の生まれた邸だね・・・。さっきもだめもとで文を送ろうと思っていたところ・・・。」


頭中将は帝に申し上げる。


「それなら、直接お届けになられたらいかがでしょう・・・。帝としてではなく、宮様として・・・。今からご用意いたしましょう・・・。」


帝はうなずくと、頭中将は馬の用意をする。すると籐少納言が気を利かせて先程の香を焚き染めた狩衣一式を用意し、帝に着せる。


「帝、雅和親王として綾乃様のもとに行ってらっしゃいませ・・・。」
「ありがとう・・・籐少納言。関白殿を呼んでくれないか・・・。」


帝に呼ばれた関白は何事かという様子で御前に来ると、狩衣姿の帝に驚く。


「帝、どちらへ?」
「今から宇治へ行ってくる。私がいない間、頼んだよ。いつもどおりに・・・。あなたにお任せします。何かあれば宇治院に使者をお願いします。」
「しかし・・・いつお帰りですか?」
「わからない。頭中将を供に連れて行くから・・・。」
「御意。」


頭中将は帝の馬を用意し清涼殿の庭に連れてくると、帝は切り取った橘の枝と文を持って馬に飛び乗り、内裏を抜け出した。大内裏を出ようとしたときに中務卿宮に呼び止められる。


「頭中将!どちらへ!!」


すると帝が前に出ていう。


「兄上、綾乃に会ってきます。一応関白殿に頼んできましたが、内大臣がまだ出仕を控えているため、何かあっても引き止めるものがいない。兄上、私の代理として摂関家の者たちの監視をお願いします。」


中務卿宮はうなずくと、帝たちは馬を走らせる。都を出て宇治に到着すると、邸の手前で馬を止める。


「宮様、どうかなさいましたか?」
「いや・・・。なんだか・・・。常隆、お前が代わりに届けてくれないか・・・。」
「宮様・・・。宮様がお届けするべきです。さあ、勇気をお出しになって・・・。」


帝は一息ついて、意を決し綾乃が生まれた別邸前に着く。馬を止めると、邸の門衛が近寄ってくる。


「この邸に何か御用でしょうか?」


頭中将は馬上から門衛に言う。


「私は頭中将源常隆と申す。こちらにおわす方は先帝である宇治院二の宮雅和親王様であられる。開門をお願いしたい。」
「こちらの主、静宮様にお目通りをお願いしたい。」


すると門衛の一人は中に入り、この訪問者たちのことを静宮の女房に伝えに行く。それを聞いた女房は、静宮に伝える。


「宮様、門前に頭中将様と、宇治院二の宮雅和親王様とおっしゃる方が宮様にお目通りをと・・・。」


静宮はハッとして女房に言う。


「雅和親王様というと今上帝ですよ!いつまで門の前にお待たせさせるつもり!早くこちらへお通ししなさい!」


女房は驚くと、急いで門衛に伝える。門衛も狩衣を着た男の正体に驚き、急いで門を開け、帝を馬上に乗せたまま静宮のいる寝殿まで案内する。帝は馬から下りて、少し乱れた狩衣を直すと、静宮の女房に案内されて静宮の前に座る。頭中将は寝殿表のすのこ縁にて待っていた。


「お久しぶりでございます。静宮様。大変お元気そうで・・・。もうあれから八年・・・。あの時は大変お世話になりました・・・。」
「どうかなさったのですか?」
「いえ、こちらにある姫君をかくまっておられると聞きましたので・・・。」
「さあ、ある姫君とは?」
「あなたの孫に当たられる綾乃姫こと、私の妃、源祥子姫でございます。会わせて頂けないでしょうか・・・。一目でもいい・・・。綾乃に・・・会わせて下さい・・・。」


静宮は困った表情で帝を見つめる。すると帝は懐から、大事そうに橘の枝と文を取り出し、いう。


「本当でしたら、これを直接綾乃に届けたかったのです。これは初咲の右近の橘・・・。私は生まれて初めて綾乃に恋文を差し上げたときに添えたものと同じ初咲きの橘・・・。ではこれを綾乃に渡していただけますか?」


帝は悲しそうな顔をしてその橘の枝を眺めていると静宮が言う。


「わかりました。宮様が直接綾乃姫にお渡しください。きっと綾乃姫は喜びます・・・。部屋は綾乃姫が生まれた部屋・・・・わかりますね?」


帝はうなずくと静宮に礼を言って綾乃のいる部屋に向かう。一方綾乃は何とか一日一日を大事に生きていた。毎日のように皇太后が看病をし、綾乃は皇太后に支えられて庭を見つめて季節の移り変わりを眺めていた。


「綾乃、見て・・・今日はなんとたくさんの雀が・・・。」
「ええ・・・。」


綾乃は微かだが、懐かしい香りに気が付く。


「この香り・・・お母様・・・この香りは・・・。」


綾乃は涙を浮かべ、香りのするほうを見つめる。すると懐かしい香りと共に懐かしい姿が目に入る。


「お母様・・・幻かしら・・・。雅和様が・・・。雅和様が・・・。」
「ええ、綾乃・・・雅和親王様です・・・幻ではありませんよ・・・。あんなに夢にまで見た、雅和親王様がこちらに・・・。」


皇太后も涙を浮かべて帝を見つめる。帝は綾乃の側に近づき、初めて綾乃に恋文を渡したときと同じような満面の笑みで右近の橘の枝と文を綾乃に渡す。


「綾乃、橘の花だよ。綾乃が好きって言っていたから、今年初めての右近の橘の花を綾乃に見せたかったんだ・・・。」


綾乃は微笑んで言う。


「雅和様が初めて私にくださった恋文と同じですね・・・。あの時はとてもうれしかった・・・。生まれてはじめて頂いた恋文でしたもの・・・。」


綾乃が文を開くと、今まで帝が綾乃に出した思い出の歌がすべて書かれていた。綾乃はうれしさのあまり、帝に抱きつく。


「どうしても会いたかったんだ・・・。毎日綾乃との思い出が夢に出てくる。初咲きの橘を見ると我慢できなくなって、内裏を抜け出して、頭中将とここまで馬を走らせてきた。会えてよかった・・・。」
「私も・・・毎日のように雅和様が夢に・・・。懐かしいこの匂い・・・。」
「今日は帝としてここに来たのではない・・・。雅和親王としてここにきた。だから・・・。」
「これこそ雅和様の・・・・雅和様の匂いです・・・。ホントに懐かしい・・・。」


綾乃は安心した表情でまぶたを閉じる。


「綾乃?」


急に重くなった感じがし、帝はさらに声をかける。


「綾乃・・・起きて・・・。」


帝の袖を握り締めていた綾乃の手は袖を離れ、力をなくした。


「綾乃!」


綾乃は最愛の帝の胸の中で静かに息を引き取った。綾乃の顔はまるですべての苦痛から開放されたように、とても幸せそうな顔をしていた。皇太后をはじめ、周りの者たちは嘆き悲しみ、泣き叫ぶものもいた。帝は綾乃の亡骸を離そうとせず、泣き叫んでいた。帝が宇治に向かったと聞いた内大臣は綾乃の死から少し経って到着した。綾乃を抱きしめたまま泣いている帝を見て、内大臣は頭中将を呼び、皇后崩御を内裏に伝えさせる。頭中将は急いで馬にまたがり内裏に向かって走らせた。


「帝・・・もういいでしょう・・・。綾乃はもう旅立ちました・・・。寝かせてやってください・・。」


内大臣は帝に声をかけると、帝は名残惜しそうに綾乃の亡骸を横にさせる。綾乃は本当生きて眠っているような顔をしていた。


「これでよかったのかな・・・内大臣・・・。」
「はい・・・綾乃はきっと幸せだったに違いありません・・・。この表情を見ればわかります・・・。」


帝は綾乃の胸の辺りに、橘の花と文をそっとのせる。つぼみだった橘の枝は全部花が咲いていた。まるで綾乃のように可愛らしく綺麗な花が・・・。



《作者からの一言》

結局最期を看取った帝。本当は綾乃は帝に会いたかったのでしょう・・・。幸せだったでしょうね・・・。
第2部の完結です。まだ第3部がありますのでよろしくお願いします。
第3部は和気泰明&彩子編になります。



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