4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第99章 忘れていた自分 (第3部への序章)
 帝が綾乃の最期を看取り、皇族縁の寺院である聖護院にて穢れを落とした後、帝はうなだれながらも内裏に戻ってきた。滞りもなく綾乃の葬儀も終了し帝は喪に服した。


公務も手につかず、紫宸殿のすのこ縁に座ると、1日中満開の右近の橘をじっと溜め息をつきながら眺めている。側には中務卿宮と内大臣が控えている。殿上人たちは帝の様子を見て口々に言う。


(皇后様を失われ、帝は相当気が滅入っておられる・・・。)
(皇后様は帝の初恋の姫君であり、相当ご寵愛・・・。)
(お食事もあまり摂られていないそうな・・・。ああやって葬儀の後からずっと橘を眺めておられる。大事に至らないといいが・・・。)
(しかし、皇后様の最期を帝が看取られたというから、それが唯一の救いであられるな・・・。)
(内大臣殿も最愛の姫を失われたのだから相当なことであったろうに・・・。喪に服されつつも、ああやって毎日のように帝の側についておられる。)


殿上人たちは最愛の皇后を亡くした帝にみな同情をする。そして最愛の母君を失った東宮の行く末もみな心配をする。


(摂関家の中宮腹の三の宮か四の宮を東宮に立てようとしている輩もいるらしいな・・・。)
(そうそう・・・。皇后様亡き後は中宮様が一身にご寵愛を受けられるであろうからな・・・。女御様も中宮様の同腹のご姉妹であられるし・・・。これからは堀川様の天下というべきか・・・・。)


もちろんこのことは内大臣の耳にも入っている。内大臣は綾乃の死の後、帝にすべての役職返上を願い出たが、帝は許さなかったどころかこれからも側近として側にいて欲しいと頼んだ経緯がある。もちろんこれは東宮の変更はないということでもあり、これからも東宮の後ろ盾の一人としてよろしく頼むということに値していた。


この秋の除目にも引退を表明している右大臣には継ぐべき子がおらず、内大臣の嫡男博雅を養子にという話があった。もちろんこれは綾乃の子である東宮のためでもある。博雅の元服も少し早めではあるが、年明け早々に行われる事になっている。


 橘の花が散り始めた頃、内大臣は帝に言う。


「もうそろそろご公務に戻られてはいかがでしょう・・・。いつまでもこのような帝であられるのであれば、殿上人のはおろか、都中の者たちの秩序が乱れます。帝のお気持ちは良くわかります・・・。私も最愛の姫を亡くしてしまったのですから・・・。」


帝はふっと内大臣の顔を見て思った。


(そうだ・・・内大臣も悲しんでいるのだ・・・。そして都中の秩序が乱れれば・・・。)


「内大臣、ありがとう・・・。いつまで経っても綾乃のことばかり考えたら、綾乃は成仏できない・・・。そして綾乃は私のこのような姿など見たくはないだろうね・・・。わかったよ。公務に戻ろう・・・。」


帝は涙をふき取ると立ち上がって、清涼殿に戻る。清涼殿に戻ると、大臣の四人を呼んではっきりという。


「皇后が亡くなり、様々な憶測が出てきているというのを耳にした。ここではっきりしておく。誰が私の次に帝位につくのか。それは今までどおり、東宮康仁親王である。後見人は右大臣、内大臣に引き続きやってもらう。雅博、雅盛両親王に関しては帝位継承順位には加えるが、康仁親王が何もない限り、帝位に就くことはない。そして東宮を梨壷から東宮御所に移す。中宮の子、篤子内親王は斎院とする。篤子内親王、雅博、雅盛両親王は今までの梅壷から堀川邸にて慣例に従い、親王、内親王として養育すべし。東宮傅は中務卿宮に兼任してもらう。異論は受け付けません。以上。」


そういうと帝は大臣たちを下がらせる。大臣たちをはじめ様々なものたちは、帝の急なお達しに驚き、慌てる。急に子供たちを実家である堀川邸に移されることになったことを知った鈴華は、驚き清涼殿を訪れる。


「帝、どういうおつもりでしょうか?」
「鈴華・・・そろそろ来ると思っていたよ。」
「あれ程側での養育をお許しになっていたのに・・・。」


帝は苦笑していう。


「けじめをつけただけです。このままの状態であれば、きっと摂関家の者たちが東宮廃太子を迫ってくるでしょう。もちろん摂関家の者達が異論を唱えないように考えてはいます。内裏の乱れは都、そして国の乱れとなるのです・・・。いいかい?鈴華・・・。」
「でも篤子まで・・・。」
「篤子の斎院の件は前々から考えていたことなのです・・・。本来なら伊勢斎宮に・・・。もう何年も置いていない。また、雅博、雅盛に関しては臣籍に下らせます。私はあまり後ろ盾の少ない帝であるから、子供たちを十分養っていく事が出来ない。わかってください、鈴華・・・。」


鈴華は涙を浮かべてうなずくと、、藤壺に戻っていった。


 次の日からも帝は綾乃の死を忘れようとするかのように精力的に公務をこなしていた。元服したての頃を知っている内大臣はまるで無我夢中で仕事をし過労で倒れてしまった中務卿宮時代を思い出す。その時は綾乃のために一生懸命昼夜を問わずに仕事をしていたが、今回は綾乃を忘れようとしているのが目に見えてわかる。たぶん何かに集中しないと思い出してしまうのであろう。帝の側に仕えているものたちも休んでいられないほどの仕事の与えようであった。公務が終わっても、喪中なのでしょうがないのだが、中宮や女御を清涼殿に呼ぶこともなく眠る直前まで書物などを読んでいる。やはり蔵人別当も兼ねている内大臣にとって帝の体が気になってしょうがなかった。


 残暑の厳しい8月終わり、内大臣は帝に提案をしてみた。


「帝、今年は特に厳しい暑さでございます。中宮様をお連れになって貴船のほうにご静養にいかれたらいかがでしょうか・・・。丁度も喪が明けたことです・・・。貴船はとても涼しいところでありますし、都の騒がしさもございません。そちらでゆっくりとお体をお安めになられては・・・。9月に入りますと秋の除目について忙しくなります。」


帝は微笑んでいう。


「ありがとう内大臣。そろそろ静養もいいかもしれないね・・・。たくさん仕事をこなし過ぎたかな・・・。そのように手配を頼んでいいかな・・・。」
「御意。」


内大臣は久しぶりの帝の笑顔を見て、安堵の表情を見せた。


(少しずつではあるが立ち直ってきておられるように思う・・・。でも・・・。)


やはり内大臣はなんだか帝が気になってしょうがなかった。もちろん帝の乳母である籐少納言も、側にいて帝の様子がおかしいことに気付いていた。


「帝、もう喪が明けましたのに・・・。中宮様や女御様をお呼びになられないのでしょうか・・・。」
「ん?んん・・・。そんな気にならないのだよ・・・。一人にさせてくれないか・・・。」


喪が明けてからというもの人前では明るく振舞ってはいるが、夜一人になると、誰も近づけずに、一人で籠もって何かをしている事が多いのである。また相変わらず食欲もなく、食事も半ばで箸を止めてしまうのである。


 貴船行きの日程が決まり、二泊三日の短い時間であるが、帝は貴船行きを伝えるために久しぶりに藤壺に渡る。藤壷では久しぶりの帝のお出ましに鈴華は胸躍らせた。帝が入ってくると、鈴華は帝を上座に座ったのを確認して、自分は帝の右手に座った。


「今まですまなかったね鈴華・・・。」
「いいえ。鈴華はとてもうれしいです・・・。」


鈴華は微笑む。いつもなら微笑み返してくる帝がずっとうつむいたままで黙っている。


「帝?」


帝はハッとして鈴華の顔を見ると、話し出す。


「今度貴船に行くことになったことは聞きましたか?もちろん鈴華と鈴音も一緒のどうかと思ったのですよ。今までいろいろ放っておいたからね・・・。気晴らしにどうかなっと思ってね・・・。」
「はい。貴船には行った事ありません。いろいろ話には聞いていましたが・・・。帝に御供できるなんて鈴華はうれしいです。」


鈴華は扇で顔を隠しながらうれしそうに話す。帝は鈴華のうれしそうな表情にやっと微笑み返した。その夜は久しぶりに鈴華の御帳台に泊まった。鈴華は帝に言う。


「雅和様、早くいつもの雅和様に戻ってください。綾乃様のことは忘れて欲しいとはいいません。たくさんの思い出をお持ちなのですもの・・・。私も初恋の君のことを忘れようとは思っておりません。きっといい事がありますわ。だから早くいつもの雅和様に戻ってください・・・。鈴音もそう思っているはずです。利発で優しくて笑顔の素敵な雅和様に・・・。」
「そうだな・・・。ありがとう鈴華・・・。」
「何でもご相談ください。もう何年一緒にいるのですか?もう私は昔のようなうっかり姫ではありません。綾乃様には負けますけど、きっとしっかりした妃になりますから。」


帝は微笑んで、鈴華を抱きしめて鈴華を見つめる。


「雅和様・・・最近雅和様の龍笛の音が聞こえません・・・。また始められてはいかがですか?きっと気分も晴れますわ。」


帝はそういえば最近吹いていないことに気が付く。そして二階厨子の中になおしたままであることにも気付いた。


「すっかり忘れていたね。そうだよ・・・最近触ってもいなかった・・・。」
「雅和様は雅和様でいいのです。無理してほかを演じなくてもいいのですよ。昔私にも言っていただいたではありませんか・・・。雅和様は雅和様そのままでいいのです。」


帝はここ最近自分を忘れていたことに気が付いた。それを思い出した帝は何か吹っ切れた感じがして、いつもどおりの満面の笑みで鈴華を見つめ、鈴華にくちづけをした。鈴華も微笑み返す。


「ありがとう鈴華。頼りになるよ。はっきりいってくれるのはやはり鈴華だけだね・・・。」


そういうと二人は長い夜をゆっくり過ごした。



FC2ブログランキング



【作者からの一言】
第3部への序章です。まだ主人公たちは出てきませんけど・・・。
スポンサーサイト

Comment

 秘密にする

Track Back
TB*URL

Copyright © ねぇね2人と双子っちのママのお部屋。別館. all rights reserved.
さくらと空 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。