4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第100章 面影 【第3部 彩子&和気泰明編 序章①】
 貴船の静養から戻ってきた帝は元の清々しい顔つきで、秋の除目について検討に入る。今回の除目はいろいろと異動が激しい。今年は何故か高齢のため引退を希望するもの、病のため官位を返上するもの、亡くなる者、そして皇后崩御により皇后職廃止など様々な理由でも異動が多い。兼任しているものならばいいが、専任のものは職を与えなければならない。兵部省や式部省から続々と人事についての報告があがってくるのを帝は一つ一つチェックする。殿上を許されているもの以外はほとんど式部、兵部各省に任せることにしたが、殿上人に関してはやはり帝の側近に当たるため、帝は人事案を見ながら一つ一つ決めていった。


 秋の除目発表の日、役人たちは皆ハラハラしながら発表を待っている。昇進にとても喜ぶもの、何もなくうなだれるもの、様々な者達がこの日を迎えた。主だった者の昇進はこうなった。


右大臣が高齢のため、引退を表明し、内大臣兼右大将である源朝臣将直卿が、右大臣に昇進し、兼任で東宮傅に。異例だが頭中将であった源常隆が二十七歳という若さで右大将に昇進した。帝の兄である中務卿宮は、兼任で内大臣。鈴華鈴音の父である関白太政大臣が、蔵人別当を兼任した。この人事はまさしく東宮は皇后腹の康仁親王であると皆に知らしめた結果となった。


秋の除目が終わり、そろそろ豊明節会の舞姫選び入る。五節舞の伝統を守るために、担当の者たちは十月に入ると走り回っている。もちろん舞姫になるためにはたくさんの財が必要であり、選ぶにも選ばれるにも相当な覚悟がいる。今年は四人選出しないといけないので、公卿から二人、殿上人と受領から二人を選出する。なかなか適齢の姫君がいないようで、土御門左大臣殿は三の姫、権大納言殿は四の姫、橘参議殿の一の姫、大和守の二の姫が何とか決まった。


大和守は右大臣源将直卿の遠縁にあたり、同じ源氏の流れをくむ一族である。右大臣が嫡流であるのに対し、大和守は何代か前の分家である。舞姫に決まったものの舞姫に出す余裕はないので、大和の国からわざわざ都に出てきて、右大臣と面会をし後見をお願いにやってきた。もちろん親戚であるこの大和守の申し出に右大臣は快く承諾をし、大和守の姫君のために、五条邸を節会が終わるまで貸す事も決めた。もちろん大和守は大変感謝して自分の国に戻って行った。


帝にもどこの誰の娘が舞姫に出るか報告が来る。ある日の大臣たちとの歓談の際にも、この話題が出てくる。もちろんこの話を出してきたのは帝である。


「土御門殿、舞姫に出されるのはこれで二度目ですね・・・。大変なことで・・・。」
「いえいえ、堀川殿も中宮様と女御様を出された事があります。これくらいうちの家ではたやすいこと・・・。権大納言家は堀川殿が後見されるようですし・・・。」
「ええ聞いていますよ。参議殿は私の父上である宇治院が後見を申し出ているし、大和守は右大臣殿が後見をすると聞きましたが・・・。」


と帝が右大臣に聞くと、右大臣はうなずいて言う。


「はい。私の曾お爺様から分家した家なので、これくらいは当たり前です。大和守が私に申し出をしなくても私が申し出ていましたよ。それぞれもう練習に入っているようですね・・・。」


すると内大臣である帝の兄宮がいう。


「今年は麗しい姫君が揃っていると聞きます。姫君達の縁談話のほうもさぞかしたくさん集まることでしょう。」


すると土御門左大臣が口を挟む。


「帝、もうそろそろ新しい女御を召されてはいかがなものかと・・・。中宮様はもう二十七、女御様はまだ二十歳であられますが、未だ御懐妊の兆候はなし・・・。皇后様が崩御されてもうすぐで半年になりますし・・・。」


すると慌てて右大臣が左大臣にいう。


「土御門殿、お二方の父君であられる堀川殿の前でそのようなこと・・・。」
「本当のことをいったまでです。右大臣殿は孫であられる東宮様がいるのでいいではありませんか・・・。」


堀川殿は苦笑して言う。


「本当にそうですね・・・。まだ中宮や女御が帝のご寵愛があるのでいいのですが・・・。中宮に関しては身を引かなければならない年頃ではあります。しかしながら・・・。」


堀川殿は帝のほうをチラッと見ると帝は苦笑していう。


「私には今のところこれ以上妃は必要ないよ。皇子三人に姫宮が一人いれば十分だから・・・。」


一同は気まずい雰囲気でありながらも、何とかこの場を乗り切って様々な話題を話し合った。もちろん帝は皇后綾乃を忘れたわけではない。女御や中宮のところに新しい女官が入ってきたと聞くと、綾乃の面影を追い求めるが、やはり綾乃に似たものはなかなかいなかった。でももしかして綾乃に似た者が現れるのではないかと無意識に考えている。


 11月に入り常寧殿ではまず帳台の試みが行われる。これは五節舞のリハーサルを帝の前で披露するのである。御簾の中に帝、左に中宮鈴華、右に女御鈴音が座って始まるのを待つ。


「帝、今年もこの季節がやってきましたね・・・。昨年は皇后様のご病気で盛大に節会を行わなかったですし・・・。」
「そうだね鈴華・・・。明後日は新嘗祭・・・。毎日が大変ですよ私は・・・。鈴華や鈴音は楽しめるだけ楽しめばいい・・・。」


帝は苦笑して鈴華を見る。すると鈴音が言う。


「東宮様は遅いですわね・・・。」
「もうすぐ来るよ。ほらほら。」


東宮は何とか始まるまでにやってきて、帝と中宮の間に座る。そしてきちんと帝や中宮、女御に挨拶をする。三人は微笑んで東宮を見つめると、舞姫たちが入ってきて帳台の試みが始まる。帝と東宮はなんとなく見ていたが、いきなり東宮が帝の袖を引っ張り帝の耳元でいう。


「父上、前の左の舞姫・・・誰かに似ていませんか?」


帝は東宮にいわれるようにその舞姫を見ると帝は持っていた扇を落とした。鈴華はそれに気が付いて帝のもとに駆け寄り、扇を拾うと帝に手渡す。


「帝、どうかなさいましたか?」
「鈴華・・・いや・・・ありがとう・・・。」


帝はその舞姫をじっと見つめたまま動かなかった。舞が終わってもじっとその舞姫を目で追っている帝に鈴華は不思議そうに帝が見ている舞姫を見てみる。


(まあ、あれは綾乃様?いえ、よく似ているけれど・・・。)


鈴華はそう思って近くにいた鈴華の乳母にこっそりと言う。


「あの舞姫はどちらの姫君か調べてきてくれないかしら・・・。」


乳母は頭を下げると早速舞姫の控え部屋に入って姫君についている女童に聞く。


「ちょっといいかしら?あなたが付いている姫君はどちらの姫君かしら?」


すると女童は不思議そうに言う。


「私は二条院の姫君の乳母子ですが、あの姫様は右大臣様の遠縁である大和守さまのご息女彩子(さやこ)様と聞いております・・・。」
「そう、ありがとう・・・。」


そういうと、鈴華の乳母はその女童に菓子を与えて、藤壺に戻った。戻ってきた乳母に鈴華は聞く。


「わかったかしら・・・。どちらの姫様か・・・。」
「はい、右大臣様縁の大和守ご息女彩子姫様と聞きました・・・。」
「そう・・・ありがとう・・・。」
「どうかなさいましたか?」
「え、なんでもないわ。」


(やはり綾乃様の縁の姫君でしたのね・・・。)


と鈴華は思った。一方清涼殿に戻った帝は、あの姫君のことで頭がいっぱいであった。本当であれば、今すぐにでも後宮に行ってその姫と会いたかったが、そういうわけにもいかず、じっと考えていた。次の日もまた次の日も帝はその姫君を目で追いながら、見つめていた。


この日の夜は新嘗祭のため、特別の黄櫨染御袍を着て神殿にて新嘗祭を行う。毎年のことながら、この時はとても緊張した顔つきで、神殿へ向かう。神官とともに神事を行った帝は、最後まで滞りなく済ませると、清涼殿へ戻ってくる。清涼殿では鈴華と鈴音が帝の帰りを待っていた。清涼殿に入ると帝は緊張から解放されて、ほっとした表情で、鈴華達に微笑む。


「やはり年中神事があるとはいえ、この日が一番緊張して疲れるよ・・・。」


鈴華は帝の黄櫨染御袍を脱がせると、常に着ている直衣を女官に持ってこさせ、着付けを手伝う。鈴音は帝が脱いだ黄櫨染御袍を明日の節会のために大切に掛ける。直衣を着た帝は脇息にもたれかかって、溜め息をつくとまたあの姫のことを考える。


「鈴音、もう御殿に戻っていいわよ。もう遅いから・・・。私は帝と話があります。」


と鈴華が言う。


「はいお姉さま。では帝、わたくしはこれで・・・。」
「んん・・・。」


鈴音は帝に頭を下げると、承香殿に戻っていった。鈴華は鈴音が戻っていったのを確認すると、帝の前に座ってじっと見つめる。すると帝は鈴華の表情に気付くと鈴華にいう。


「どうかした?鈴華・・・。君は藤壺に戻らないの?」


鈴華は人払いをすると、帝にさらに詰め寄る。


「最近の雅和様はなんだか変です。何かお隠しになって?」
「え?何が?」
「知っていますのよ。舞姫のある姫だけを目で追っておられる。」
「ああ、そういえばそうかもしれないね・・・。だから?」
「だから?って・・・。雅和様、わたしは知っていますのよ。あの姫・・・綾乃様の生き写しだとお考えでは?あの姫はどこの姫か調べさせました。」


帝は黙ったままで、鈴華と目をあわそうとしなかった。


「雅和様は最近綾乃様によく似た者はいないかと探しておられるように思っているのです。どのようになさりたいかはなんとなくわかりますけれど・・・。」


鈴華はむくれた様子で、後ろを向いた。


「鈴華のいうとおりだよ・・・。そう、あの綾乃に似た姫が気になってしょうがない。出来るものならあの姫を側に置きたいと思っているよ。」
「だと思いました。あの姫は雅和様の側に置けないような身分の姫です。血筋は確かなのですが・・・。家柄が低すぎます。あの姫は大和守二の姫彩子姫です。母君は前式部卿宮の側室腹の姫。もちろん右大臣様と遠縁の家柄ですので、似ていても不思議ではありません。」
「そう・・・大和守の・・・。ありがとう、鈴華いろいろ調べてくれて・・・。」
「いいえ!私の家柄で調べられないものなどありません!では失礼します!」


そういうと鈴華は怒った様子で清涼殿を後にする。帝は鈴華のことを気にしつつも、彩子姫のことで頭がいっぱいであった。


 朝一番に帝は右大臣を呼びつける。右大臣は何事かという表情で、御前に座り帝の言葉を待つ。


「右大臣。大和守の彩子姫のことなのだけれども、決まった人はいるのかな・・・。詳しく知っている事があればすべて話してくれないかな・・・。」


右大臣は不思議そうな顔をしながら帝に言う。


「彩子姫は、歳は十七。決まったものがいるとは聞いておりません。それくらいしか・・・。どうかしたのですか?もしかしてお気に召されたとか・・・。」
「んん・・・。綾乃に似ているのですよ。とても・・・。つい気になってしまって・・・。」
「私は彩子姫の姿はまだ見ておりませんが・・・・。確かに私と大和守は顔が似ております。しかし・・・。」
「では今日の五節舞を見ればわかるよ。右大臣はきっと驚くから・・・。直接彩子姫に会いたいのです。」


右大臣は少し考えていう。


「明日以降当分の間、わが五条邸に大和守、北の方、彩子姫は滞在予定ですが・・・。しかし・・・。」
「何とか抜け出して彩子姫と引き合わせて欲しい。あなたなら出来るであろう・・・。後見を引き受けたのだから・・・。」
「御意・・・。」


と、困った様子で右大臣は答えると、帝はうれしそうに右大臣を下がらせる。もちろん右大臣は節会で行われる五節舞で、彩子姫が舞う姿を見て、本当に驚く。まさしく初夏に亡くなった自分の愛しいわが子綾乃の生き写しだった。右大臣は納得して、帝の御為と、引き合わせるための根回しをすることに決めたのである。


(もしどうしても帝がお側に彩子姫をおきたいと仰せならば、養女として迎えてもいいのではないか・・・。)


とそこまで右大臣は帝のためを思い、大和守にも話を進める。もちろん大和守は驚き、本当にそのようなことをしてもいいものかと思ったのである。



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