4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第101章 引き合わせ 【第3部 序章②】
 大和守は右大臣の提案に驚きながら仮住まいである五条邸に戻ってきた。すると大和守の正妻は、大和守を出迎える。


「殿、彩子の舞い姿はいかがでしたか?私も見られるものなら見てみたかったですわ・・・。」
「ああ・・・。」


いつもの大和守の様子とは違い、何か考え事をしながら帰ってきたので、正妻はおかしいと思った。


「そうだ、明日一番に大切な話があってこちらに右大臣様がこられることになっている。彩子が帰ってきてもこちらには来なくていいといってくれないか・・・。」
「はい・・・。どうかなさったのですか?」
「いや・・・。彩子には想い人か何かはいるのであろうか・・・。」
「さあ・・・どなたかとは文を交わしているらしいのですが・・・。それが殿方なのか、姫君なのかは・・・。」
「明後日に大切なお客様がこられる。身分が相当高い御方なので粗相がないように・・・。」
「はい・・・。」
「あと、彩子に一番良い唐衣を着せなさい・・・。」
「しかし・・・唐衣は持ってきておりませんが・・・。」
「まあいい、何とかしよう・・・。」


大和守は久しぶりの参内で疲れたのか、着替えると眠ってしまった。


 次の日、昼前にはもう右大臣が五条邸にやってきて、寝殿の上座に座ると、人払いをして大和守と面会する。すると、右大臣が声をかけると小宰相やら数人の女房たちが何かを持ってくる。そして大和守の前に置く。


「これは・・・。」
「これは明日、宮様がこちらに参られる際に彩子姫にお着せなさい。これはもともと亡き姫のために誂えた物だが、もう必要がなくなったのでね・・・。彩子姫ならきっと似合うであろう。」


いままで娘に着せたことのないような高価な衣で作られた唐衣一式を見た大和守は、驚いて右大臣に言う。


「このような高価なものを・・・。」
「いいのですよ。ここにいる小宰相たちを明日のために置いていきます。宮様に会って頂くわけですから、きちんとした身なりで・・・よろしくお願いしますよ。」


大和守は頭を下げてお礼を言う。


「しかしなぜ、明日こちらに参られるのですか?」


右大臣は真剣な顔つきになり事の一部始終を話す。彩子姫が帝の亡くなった最愛の皇后に生き写しであること、そして一目会ってみたいと仰せであったこと、こちらへは帝の身分を隠し宮様としてお忍びでやってくること、もし帝が彩子姫を所望であれば、右大臣家の養女として入内可能であることなどを話した。大和守は詳しい内容を聞き、驚愕した。もちろん今まで帝に直接会った事もなく、そして自分の姫が帝の目に留まってうまくいけば右大臣家の姫として入内可能というのだから。


「このことは家族のものにも内密に・・・。外に漏れては困る内容なのです。」
「はい・・・。しかし、彩子はなんと思うでしょう・・・。」
「宮様はあまり無理強いをする方ではないから、姫が嫌だといえばお諦めになられるであろうが・・・。しかし今回は事が事だけに・・・。本当に縁談は今までないのでしょうな。」
「はい。」
「では、これから参内するので、明日の事頼みますよ。私も宮様と共にこちらへきます。明日の夕刻に・・・。小宰相、姫君のことを頼んだよ、いいね・・・。」


小宰相は右大臣の言うことに頭を下げ、右大臣が立ち去るまで頭を下げていた。そして小宰相は大和守に言う。


「はじめまして、私小宰相と申します。右大臣様の亡き一の姫様の乳母。また後宮では皇后つきの女官長としてお側におりました。もし、姫様が入内される場合、お妃教育等、姫様の教育を右大臣様から命じられておりますので、何なりとお聞きください。さて、姫様に会わせていただけますか?明日のことについてもいろいろございますし・・・。」


大和守は小宰相を連れて、姫のいる部屋を案内する。彩子は昨日までの疲れのためか、脇息にもたれかかって、ぐったりしている。そこへ父である大和守が、入ってきたので驚いて姿勢を正す。


「まあ、お父様・・・。そちらは?」
「疲れて帰ってきたのにすまないね・・・。彩子、こちらは今日から彩子の身の回りの世話をするよう右大臣様から命じられてお前のためにやってきた小宰相殿だ。いろいろわからないことなどを聞くといい。」


小宰相は彩子の前にやってくると、深々とお辞儀をして言う。


「私は小宰相と申します。よろしくお願いします。まあ、右大臣様の言うとおりの姫君ですこと・・・。お世話し甲斐がありますわ。」
「では、小宰相殿、頼みましたよ。」
「はいお任せください。」


小宰相は彩子に微笑む。彩子はきょとんとして小宰相を見つめる。


「彩子様、昨日までの舞姫の件でたいそうお疲れでしょうが、明日お客様がこちらに参られる前に、礼儀作法を仕込ませていただきます。」
「お客様?」
「はい。とても位のお高い方がこちらに参られます。恥ずかしくない程度に・・・。」


小宰相はまずどれほどの礼儀を知っているか確かめると、礼儀作法を一から教える。やはり田舎育ちの上、自由奔放に育ったようで、亡き皇后とは雲泥の差であった。


(ふう・・・。やはり思ったとおりの鄙びた姫君だわ・・・。これでは帝に御見せできませんね・・・。中宮様も結構礼儀作法がいい方ではなかったのですが、これ程まで・・・・。これでよく舞姫に選ばれたものね・・・。)


小宰相は溜め息をついて彩子を見つめる。彩子もいきなりの厳しい礼儀作法の教育におこって顔を膨らませた。


「どうして私がここまでしないといけないの?」
「それは姫様のためにございます。」
「私のため?」
「姫様にはお好きな方がいらっしゃらないのですか?もしその方と結婚されるときに礼儀作法を知らないとお恥ずかしい思いをするのは姫様だけではなく、大和守様やお母上様なのですよ。」


彩子はうつむいていう。


「私も好きな人くらいいるもの・・・。でも片思い・・・。」
「どのような方ですの?」


小宰相は微笑んで彩子に聞くと彩子は顔を赤らめて言う。


「お父様の部下である、大和国少掾の和気様よ・・・。ずっとお兄様のようにお優しい方で・・・。でも片思いなのです・・・。少掾様にはお相手がいるの・・・。私の四つ上のお姉さま・・・。お姉さまは少掾様の北の方だから・・・」
「そうなのですか・・・。それはそれは・・・。しかし姫様は十七と言うお年頃・・・。そろそろ大和守様もお相手をお探しでは?」
「そうね・・・。お父様はお姉さまみたいに地方役人を婿には迎えたくないらしいの。だから舞姫を引き受けたの。そうしたらきっと都のある程度の位の方との縁談が来るかもしれないって・・・。」
「それなら断然礼儀作法を・・・。今日はお疲れでしょうから、これでお休みを・・・。」


そういうと小宰相は優しい顔で彩子を見つめると、彩子も微笑んで寝所に入り横になる。やはりこの彩子もやれば出来るタイプのようで飲み込みが早く、帝が訪れる夕刻までには何とかさまになった。


 一方帝は夕刻まで公務をこなし、本来であれば、天皇家の文様の入った直衣を着ていくところであるが、やはりお忍びということと、帝という立場を隠しての訪問ということで、兄宮である一条院宮家の文様の入った直衣一式を借りて着替える。清涼殿に帝が不在とわかればちょっとした騒動になるので、兄弟であり背格好の似た兄宮である内大臣が急遽宿直をすることになり、また側には右大将源常隆が内大臣の側に控える形になった。


「兄上、この直衣をお借りいたします。」
「帝、早めのお帰りを・・・。今日の宿直は皆、帝の顔をあまり知らないもの達。その直衣の文様を見て、私と勘違いをする者もいることでしょう。また、車も私のものをお使いください。」
「兄上、皆は気付かないでしょうか・・・。」
「はい、最近帝は父君に似てこられたのです。背格好も似ているので大丈夫でしょう。」


すると右大臣も言う。


「そういえばそうですね・・・。三十路近くになられたからでしょうか・・・。母宮に似ておられた帝が最近宇治院に似てこられたのは気のせいではなかったか・・・。」


帝は自分の頬を引っ張っていう。


「そうかな・・・。最近男顔になってきたからかな・・・。顔って変わるものなのかな・・・。」


和やかに話していると、右大将が参内してくる。すると入れ替わりに帝と右大臣は清涼殿を出て行く。右大将は御簾の中に入ると、内大臣に言う。


「ほう・・・。帝が内大臣様の直衣をお付けになるとやはり内大臣様と間違ってしまいますね・・・。本当にここ数年で帝のお顔つきが変わられた。さすが母君は違えど、ご兄弟であられる・・・。」
「右大将殿はわが父上によく似ている。右大将殿が帝の身代わりをされてもわかるものは太政官の一部のみ・・・。またこちらを抜けられる際は頼むことにしよう・・・。」
「またまたご冗談を・・・。さて、空蝉宿直をしましょうか・・・。今夜中に戻られるといいのですがね・・・。」


内大臣と右大将は思い出したように笑い出すと、籐少納言が用意した夕餉を食べながら歓談することにした。


 日が沈んでしまったので、灯篭のみ明かりのためか、内裏を出る道中に出会うものたちは皆、帝を内大臣と勘違いをし、通り過ぎるたびに頭を下げお辞儀する。今日は珍しく内大臣と右大臣が一緒に内裏を出るので、皆は不思議に思ったが、そんなこともあるであろうと気にとめるものは少なかった。内裏外に横付けされた車に各自乗り込むと、右大臣家の別邸である五条邸に向けて車を出す。内大臣の一部の従者以外は、帝を内大臣と勘違いをしている。予定の刻限を少し過ぎてしまったが、無事に五条邸に到着した帝は五条邸の寝殿に通され、上座に右大臣は帝の右側に座り大和守が現れるのを待つ。大和守が現れると、大和守は帝の前に座り深々と挨拶をする。


「宮様、わざわざこちらに御出で頂きましてとてもうれしく思っております。はじめてお目にかかります。大和守源靖伴と申します。」


帝は微笑んでいう。


「突然私のわがままでこちらにお邪魔してすまなかったね。さぞかし驚かれたことでしょう・・・。」
「本日はお気に召されるかわかりませんが、私の任国より取り寄せました食材で、膳を作らせましたので、どうぞお召し上がりを・・・。」
「いえ、こちらこそ気を遣わせて悪かったね・・・。」
「宮様、これは私の妻、悠子でございます。さ、悠子、宮様に杯を・・・。」


大和守の妻が帝に近寄り杯を渡そうとすると、帝は丁重に断った。


「すみません。私は酒が苦手なもので・・・。白湯にしてもらえませんか・・・。」


すると右大臣が言う。


「宮様、せっかく大和守が用意した酒です。大和もおいしく良い酒があります。一口でも口をお付けなさいませ。こちらの酒は右大臣家が取り寄せているものと同じでございます。」
「そうだね・・・。せっかくだから一杯だけ・・・。」


そういうと帝は杯を受け取り、一杯だけ飲むことにした。すると右大臣は話を切り出す。


「大和守、今日宮様が来られた理由を覚えているのか?」


大和守はハッとして女房を呼び、彩子を呼ぶ。少し経つと、小宰相に先導され、昨日右大臣により用意された唐衣で着飾った彩子が入ってきた。この日のために一日みっちりと行儀作法を仕込まれた彩子は父君である大和守が見違えるほど雅な姫君になっていた。


「当家の二の姫、彩子でございます。さ、彩子前へ・・・。」


彩子は父君のいうとおりに帝の御前に座ると、小宰相に言われたとおりに挨拶をする。


「初めてお目にかかります。正五位上大和守の娘、源彩子でございます。よろしくお願い申し上げます。」

今までよりも近くで見た彩子を見て帝は、持っていた杯を落としてしまう。


(まさしく、綾乃ではないか・・・。姿形だけではなく、声までも・・・。)


帝は杯を落としてしまったことに気付くと慌てて取り乱した。


「すみません・・・。取り乱してしまいました・・・。」


右大臣は微笑むと、帝に言う。


「宮様、お気に召されましたか?」


帝の頭の中は真っ白になりじっと彩子のことを見つめていた。すると次第に帝の目に涙が溜まっていく。帝は気付かれまいと、懐紙で涙をふき取ると、立ち上がって右大臣に言う。


「ありがとう、右大臣殿。もう戻らなければ・・・。兄上も右大将も心配している・・・。大和守殿、おもてなしどうもありがとう・・・。これで気が晴れました。では失礼します。」


そういうと、帝は寝殿を飛び出し、乗ってきた車に乗り込もうとする。すると右大臣が声をかける。


「宮様。何を遠慮されているのですか?」
「右大臣殿、私は一目見たいといったのです。それ以上のことは望みません。」
「しかし!」
「生き写しだからといって綾乃の代わりにはならない。綾乃の代わりにされる姫君には迷惑な話。この姫を側に置いたとしても綾乃はもう戻ってきません。堅苦しい後宮に置くことなどできない。あのように純真な姫を鈴華や鈴音のいる後宮に入れるなど・・・。わかるよ・・・あの姫は今まで自由奔放に生きてきたんだろう。目を見たらわかる。あのような姫を籠の鳥にはしたくはないのだ。私は内裏に戻る。この日のためにいろいろ走り回ってくれた右大臣には感謝するよ。大和守によろしく伝えよ。」


そういうと帝は車に乗り込み五条邸を後にした。



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