4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第102章 やさしさとは  【第3部序章③】
 帝を見送った右大臣は寝殿のすのこ縁の階に座り、溜め息をつく。


(本当にあのお方はお優しすぎる・・・。こういうときこそ我を通されたらいいのに・・・。)


「右大臣様・・・。」


と大和守が右大臣に声をかける。


「申し訳ないことを・・・。あの方はああいう方なのだ・・・。兄宮の廃太子の際も、そうだった・・・。兄宮のために東宮になられ、帝になられても周りにばかり気を遣われる。自分自身のお気持ちを押し殺してまで・・・。大和守、帝のお言葉が聞こえたであろう・・・。」
「お優しい御方ではありませんか・・・。当家の姫のことを考えた上のお言葉・・・。あの方ならば、私は一生死ぬまでお仕え出来ます・・・。」
「しかし優しいだけでは帝は務まりません・・・。優しさが仇になることも・・・。優しさがあの方の弱点でもあります。」
「そういうものでしょうか・・・。地方にいる私には到底わかりません。」


右大臣は苦笑して言う。


「まあ、あの方がああいう人であるからこの醍醐源氏である私がこうして一族最高位である右大臣まで登りつめたわけでもあるのだが・・・。本当に帝は皇后を亡くされてから、さらに自分らしさを失っておられる。どうにかしてお助けしたい・・・。それにはやはりあなたの姫が必要なのです・・・。」


すると彩子が右大臣に近づき、微笑んで言う。


「右大臣様、なんとなくですが判ったような気がします。私、右大臣様の亡き姫君の代わりになっても構いません。あの方をお助けするお手伝いが出来れば・・・。」


すると右大臣は微笑んで言う。


「わかりました。姫のお気持ち、きちんと帝にお伝えしましょう・・・。聞き入れて頂けるかはわかりませんが・・・。」


すると、彩子の母君が、突然口を挟む。


「彩子、私はそのようなことは許しません・・・。彩子にまで私と同じようなことを・・・。」


 彩子の母君は宮家出身の姫君である。側室の姫ではあるが、前式部卿宮家のれっきとした姫君である。母君はこの大和守と結婚する前はなんと先帝の更衣として後宮にいた事があった。先帝といえば、帝の父君である宇治院のことである。二十六年前、先帝に見初められて、藤壺更衣として入内した。しかしこの入内は皇后(今の皇太后)が密かに綾乃を懐妊中に一年程宇治に籠もっていた時、帝が皇后によく似た藤壷更衣を入内させて一時的に寵愛していた事があったのである。もちろん皇后が後宮に戻ってきた途端寵愛はなくなり、そのまま後宮を出て、この大和守と結婚したのである。そのことでこうして彩子の母君は彩子の申し出を強く反対した。このことを聞いた右大臣は、驚き言う。


「ああ、あなたはあの時の藤壺更衣様でしたか・・・。私は当時頭中将として先帝の側におりました・・・。あの時は、本当に先帝は尋常ではなかった・・・。宇治院はあのようなお方ではないのですよ・・・。まあ原因は私にあったのですが・・・。ですから、私は宇治院の二の宮である今上帝に生涯お仕えしようと思ったのです。」


右大臣は大和守に侘びを言うと、二条院に帰っていった。


 一方清涼殿に戻った帝は内大臣と右大将の前に立つ。早々と帰ってきた帝に、二人は驚き問いかける。


「なんとまあ、早いお帰りで・・・。朝になるのではないかと、右大将殿と話していたのですよ。」


帝は内大臣に借りた直衣を脱ぐと、小袖に上着を羽織り脇息にもたれかかり、考え込む。


「帝、いかがでしたか?期待外れだったのでしょうか・・・このように早くお帰りで・・・。」


と、右大将が帝に言う。帝は苦笑して黙り込んだ。内大臣と右大将は向かい合うと、不思議そうな顔をして帝を見つめ何かこそこそという。すると、帝は籐少納言を呼んでいう。


「籐少納言、実は何も食べていないのだけれども、何か食べるものはないかな・・・。それとお二方に酒と肴を・・・。そうだ私も少し飲むとしよう・・・。」


籐少納言は不思議そうな顔をして下がっていく。


「帝、帝はあまり酒がお好きではないはず・・・。」


帝は苦笑していう。


「兄上、この私でも飲みたいときぐらいあるのです。そうそう、大和守の用意した酒、あれはうまかった。あれなら苦手な私でも飲める。」


女官たちが続々と入ってきて、夜食を並べていく。もちろん酒も用意され、女官たちによって杯に注がれていく。帝はそれを一気に飲み干すと、夜食をつまみながらまた何か考え事をする。三人は何も話さないまま時が過ぎ、帝は酔ってきたのか、脇息にもたれかかって、うとうとしだす。右大臣は帝のために白湯を持ってくるように命じ、膳の上にそっと置いておいた。


「右大将殿・・・やはり何かあったのでしょうね・・・。」
「はい・・・。明日こっそりと右大臣様にお聞きするしかないようです・・・。」


すると、帝は気が付いて白湯を飲み干すと、意を決して二人に言う。


「実は、例の姫は皇后に生き写しだった・・・。でも違うんだ・・・。綾乃と違って、あの姫は大和でのびのびと育った姫・・・。小宰相が側にいたから、きっと私に会わすためにそれらしく礼儀作法とかを仕込んだんだろうね・・・。もちろんあの時入内を切り出しても良かったのだけれども、あのような純真な目をした姫を、このようなところに押し込めることは出来ない・・・。あの姫は私のわがままで不幸せになるんじゃないかな・・・。だから一目見ただけでそのまま帰ってきたのです・・・。」


そういうと、帝はそのまま脇息にもたれ眠ってしまった。籐少納言は帝に上着を掛けると、内大臣たちに言う。


「本当に帝は・・・。もう少し帝の好きになされたらよろしいのに・・・。本当に優しいお方です・・・。皇后様がお亡くなりになる直前の清涼殿を抜け出されたとき・・・。あれが本当に帝のお気持ちだと思ったのです・・・。昔の宮様に戻られたと思ったのですが・・・。そう、綾乃様のことになるととてもむきになられたころの・・・。自分の気持ちにもうちょっと素直になられたらよろしいのに・・・。元服されるまではとても素直でいい方でしたが・・・。いつからこのような・・・。」


内大臣はハッと気が付いていった。


「やはり私が東宮を譲位してしまったからか・・・。もともと優しい弟であった。あの頃からだね・・・。自分自身の気持ちを押し殺すようになったのは・・・。原因はやはりこの私にあるかも・・・。今回の件は無理にでも進めないといけない様な気がする。きっと例姫が入内したら大切にされるであろう・・・。弟宮はそういう性格なのです・・・。決して放っておくようなことはしないと思う・・・。明日、右大臣殿と大和守に会うことにしよう・・・。」


そういうと内大臣は帝を見つめて溜め息をつく。
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