4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第109章 延期
ページファイル06.jpg
 帝が、東大寺の法要に出かける数日間、彩子は実家にお世話になる。法要に出席するため、帝は礼服に着替える。


「彩子、法要が終わる3日後まで、実家でゆっくりしておいで・・・。大和守がこちらに到着後に、大和守の車で実家に戻るがいい。」


彩子は礼服に着替えている帝を見つめながら、微笑む。着替えが終了すると、帝は彩子の前に座ると彩子を引き寄せ抱きしめるという。


「法要が終われば、中宮たちと合流し都に戻らなければならない。次はいつこちらに戻ってこられるかわからないから、存分に楽しんでくるといい。」


帝は彩子の頬に口づけをし、立ち上がって微笑むと、部屋を出て行った。彩子は顔を赤らめながら帝を見送ると、実家に帰る準備をする。彩子のいる部屋の前まで車が運ばれると、彩子は車に乗り込み、実家に帰る。


 実家に戻ると1年前まで過ごしていた自分の部屋に入る。部屋に入ると、窮屈な唐衣を脱いで、袿姿に着替えると、すのこ縁に座って、懐かしい庭を眺める。すると近所の子供たちが、彩子が戻ってきているのを聞きつけて遊びに来る。


「彩子様~~~。」


子供たちは彩子の為に野に咲く花々を花束にして彩子に贈る。


「彩子様、お母さんから彩子様が結婚したと聞きました。」
「私彩子様のお相手を見たわ。とても姿の良い人ですね。」


彩子は微笑んで子供たちから花を受け取ると、女房に言って花を生けさせる。


「ありがとう・・・。とても嬉しいわ・・・。」


彩子は庭に下りると、子供たち一人一人の頭を撫でる。そして子供たちと和やかに手遊びなどをして遊ぶ。彩子の側についてきている小宰相は溜め息をつきながら、彩子を見つめる。


(なんて鄙びた女御様かしら・・・。本当に前代未聞だわね・・・。よくまあ帝はこのような姫をお好きになられたのでしょう・・・。そこが綾乃様と違うところかしらね・・・。)


彩子は小宰相の心配をよそに、楽しそうに日が陰るまで子供たちと遊んでいた。


「彩子、いつまで子供たちと遊んでいるんだい?」


と、東大寺から帰ってきた彩子の父君大和守が声をかける。彩子は子供たちの別れを告げると、部屋に戻り、父君と話し始める。


「お父様、皆が私のために花を摘んでくれたのです。久しぶりに楽しかった・・・。お父様、法要のほうはいかがでしたか?」
「ああ、何とか一日目は終わったよ。彩子、民たちと仲良くするのは悪いことではないが、お前はもうそのようなことをしてはいけない身分なのだよ。お前は帝の妃の一人・・・。本来であれば、このように庭に出たり、平気で表を歩いたりなど・・・。この事が都の噂になれば、帝のご迷惑となる。いいね。彩子。もうお前は当家の姫ではない。嫡流である右大臣家の姫であり、そして帝の女御なのだよ・・・。」
「わかっています。もういつ大和に帰ってこられるかわからないと思うと、我慢できず・・・。ごめんなさい。お父様・・・。」
「本当に・・・。帝はとてもお優しい方であるからお前を大目に見てくださっているがな・・・。さ、寝殿に来なさい。今日はお前が里帰りをしてきた祝いの膳を用意したのだよ。身内の者がみんな集まっているのでな・・・。」


彩子はうなずくと部屋に戻り、土で汚れた衣装を着替えると皆の待つ寝殿に向かう。彩子が寝殿に入ると懐かしい顔ぶれが並んでいた。彩子の両親、彩子の姉夫婦、弟、妹、そして祖父母である。皆彩子が里帰りをしてきたことに喜び、そして無事に夏結婚したことを祝う。彩子の祖父母は都に嫁いだ彩子を大変喜び、そして見違えるように美しくなったことを喜んだ。そして彩子に色々都のことについて聞く。彩子は都のこと、宮中のことを事細かに話していく。


「彩子、今日はあなたの好きなものばかり用意させたのにあまり口をつけないのね・・・。」


と、彩子の母君が言う。すると彩子は苦笑していう。


「疲れたか、風邪でもひいたのかしら・・・。ちょっと体が重いの・・・。最近ちょっと熱っぽいしね・・・。さっきからお腹も・・・。」


彩子の義理の兄和気智明は立ち上がって彩子の側によるという。


「彩子様、ちょっと診て差し上げます。」


医師でもある和気智明は彩子の脈を取ったり額を触ったりしていう。


「あの義父上、姉を呼んでください。はっきりしたことは女医である姉ではないと・・・。私の診断が正しければ・・・。彩子様、部屋に戻られてひとまず横に・・・。」


大和守は従者を呼んで女医である和気の姉を呼びに行かせ、彩子を部屋の戻し横にさせると、大和守は和気智明に聞く。


「彩子がどうかしたのか?」
「私の口からは・・・。姉上がはっきりとしたことを・・・。私には核心まで診る事は・・・。特に彩子様は女御であられることですし・・・。もし私の口から言って間違っていたら・・・。でも確かに脈からして・・・。いや・・・でも・・・。」


和気智明は困った顔をして姉の到着を待つ。和気の姉は五つ年上であり女医である。智明と同様に都できちんと修行し、女医博士の位まで授かった程の腕の持ち主である。今は郷に戻り、郷の民のために特に女性の病について国中を走り回っているのである。丁度今日は和気家の邸にいたので、何とかすぐに呼び寄せる事が出来た。和気の姉は彩子の部屋に入ると、智明から症状などを聞き、彩子の寝所に入っていった。そしてもう一度脈を取ったり、額に手を当てたり、そして智明が診る事が出来なかった腹部に手を当てたりして彩子を診察した。そして寝所から出てくると、大和守に言う。


「智明の診断どおり、彩子様は御懐妊の兆候がございます。しかしながら、流産の兆候も・・・。安静が必要でございます。流産の兆候が消えるまで、こちらにおられたほうが・・・。智明に処方箋を渡しておきますので、その通りになさいませ。」


そういうと、処方箋を書いて智明に渡す。


「本当か?懐妊は喜ばしいことではあるが・・・。流産と?」
「兆候があるという程度・・・。まだ出血等は見られていませんので流産するとは決まっておりません。ひとまず安静を・・・。決して動かさないように・・・。」
「お願いがある。明日香殿・・・。彩子の側についてくれないか・・・。彩子は帝の大事な妃である上、帝のお子を身籠っておいでだ。このまま流産となってしまえば・・・。それもこの帝の御幸中というのに・・・。とりあえず帝にはこのことを内密に・・・。彩子は風邪であると明日帝に伝える・・・。」


大和守は焦りに焦って、邸中を行ったり来たりする。彩子の母君は彩子の側に座って微笑む。


「お母様?私懐妊しているの?」
「ええ、もう無理はしないでね・・・。きっと三輪山の神様があなたを守ってくださるわ。そうだわ、誰かにご神水を汲んできてもらいましょう。飲み続けるときっとあなたの体に神が宿って健康でよい御子が生まれます。そうしましょう・・・。ですから、明日香が起きてもいいって言うまで横になっておくのですよ・・・。」


彩子はうなずくと疲れているのかすぐに眠りについた。


 次の日もその次の日も、大和守は帝に報告しようと思ってもなかなか言えずにいた。帝は彩子の様子を聞いてくるが、大和守は、彩子は元気ですと何故か嘘をついてしまう。そしてこの日は法要の最終日、法要の終わる昼過ぎには彩子を行宮に戻す約束であったが、和気医師の絶対安静の指示で、動かす事が出来ないにも関わらず、あやふやな返事を帝にしていた大和守はどうしようかと悩みつつ、結局そのまま帰ってきてしまった。


「あなた・・・。きちんと帝に彩子のことを申し上げたのですか?」


大和守は首を振って礼服から狩衣に着替える。彩子の懐妊はとても喜ばしいことなのではあるが、この御幸で無理をさせてしまったことによる切迫流産にとても罪悪感があったからである。


「あなた、きっと行宮では大騒ぎになっているのでしょう・・・。明日都に戻られるというのに・・・。どうするのですか?彩子は当分こちらにて安静をしないと・・・・無理をさせ、流産となると・・・我が家は崩壊です・・・。今すぐ帝にきちんとご報告を・・・。」


大和守は束帯に着替えると、行宮参内の準備をする。


 一方行宮は案の定、彩子が帰ってきていないことに帝は気付き、大騒ぎとなる。帝は礼服から山鳩色の直衣に着替えると、脇息にもたれかかって一息つく。


「遅い・・・昼までには戻ってくるはずなのに・・・。」


帝は立ち上がって、右大将を呼びつける。


「常隆!今すぐ馬を用意せよ!大和守邸へ参る。」
「しかし、もう少しお待ちになられては?」
「待っていられない。私が彩子を迎えに行く。」
「御意。」


すぐに馬が用意され、山鳩色の冠直衣のまま馬に乗り大和守邸に向かう。右大将も冠は巻纓、おいかけ、当色である黒色袍の武官束帯を身に着けたまま、帝の後を追う。町の民たちは何事かというように二人を見つめる。途中帝は往診に向かう和気智明とすれ違う。


「和気殿、彩子が戻らないのだけれど、何かあったのか?」


和気は頭を下げたままと帝に申し上げる。


「大和守にお聞きになられていないのでしょうか?」
「いや。どうかしたのか?」
「こちらでは・・・民が居りますので・・・。邸に行かれたほうが早いかと・・・。」
「引き止めてすまなかったね・・・。」


帝はやはり何かあったのだと悟って、馬を急がせる。大和守の邸につくと丁度大和守が行宮に向かうようで、帝の突然の訪問に驚く。


「大和守、どういうこと?彩子はどうかしたのか?」


大和守は頭を深々と下げ、申し上げる。


「申し訳ありません、彩子は今床に臥しております。詳しくは邸内にて・・・。」


帝は馬から下りると、右大将に馬を預けて邸に入る。邸の外では近所の者達が騒ぎで集まってきた。右大将は随身に馬を預けて、邸内に入る。帝は大和守に誘導されて彩子の部屋に入ると、小宰相が帝の前に現れる。そして帝の前に座り、頭を深々と下げる。


「小宰相、何かあったのですか?」
「申し訳ありません、私というものがついておりながら、女御様をこのような・・・。女御様の体の異変に気付かなかった私の不始末でございます。どうぞご処分を・・・。」
「彩子は?」


小宰相は彩子の寝所に案内すると、彩子の側には女医の和気がいる。


「和気明日香殿、こちらは彩子様の・・・今上帝でございます。」
女医は頭を下げると、帝に申し上げる。
「恐れながら申し上げます。彩子様は御懐妊中でございますが、流産の兆候が見られまして、絶対安静を指示させております。兆候がなくなるまで都のほうにはお戻りになれないとお考えを・・・。」


帝はうなずくと、寝所に入り、彩子に会う。彩子は意外と元気であるのに帝は驚く。


「彩子・・・。」
「帝、私とても元気よ・・・。本当に懐妊しているのか不思議なくらい・・・。でも明日香が起きてはだめって言うから・・・。」
「思ったよりも元気で安心したよ。でも・・・本当に懐妊しているのですね?」


帝は彩子の手をとると、帝の頬に彩子の手を当て、微笑む。


「彩子、あなたを置いてはいきたくはないけれど、しょうがないよね・・・。私が帝ではなければ、このまま側にいてやりたいが・・・。これ以上都を留守にするわけにはいかないから・・・・。ゆっくり静養して、流産の心配がなくなれば、かえっておいで・・・。それまで待っています。いい?じっとしているのが苦手な彩子だけど、我慢できる?」


彩子はうなずいて微笑む。すると表が騒がしくなり、右大臣が入ってくる。そして帝のいる寝所の前に座ると一礼をしていう。


「早く行宮にお戻りくださいませ、ただいま行宮では大騒ぎになっております。中宮様をはじめ、斎宮の姫宮様が春日大社参詣のご報告に参られているのですが・・・。」
「わかっている・・・。しかし・・・。」
「彩子様がどうかなさったのでしょうか?」
「彩子は懐妊中である。しかし流産の兆候があってね・・・。彩子が無事都に戻ってくるまで、この懐妊は内密にせよ・・・。彩子の都入りは延期にする。何とか理由をつけて・・・頼んだよ、右大臣。」
「御意・・・。」


帝は直衣を脱ぎ中に来ている衵(あこめ)を脱ぐと彩子に被せる。


「彩子、私は行宮に戻ります。これを私だと思って・・・。早く良くなってかわいらしい笑顔を見せておくれ・・・。」


帝は脱いだ直衣を再び着ると、彩子の寝所を出て大和守に挨拶をすると部屋を退出し、右大臣が用意した車に乗って行宮に戻って行った。彩子は帝に頂いた衵を抱きしめると、寂しさのあまり涙を流した。
 帰りの車の中で、帝は帝が乗ってきた馬に乗り側についている右大臣に言う。


「右大臣、誰か彩子の様子を報告できる者はいないか・・・。随時彩子の様子を知りたい・・・。もちろん殿上の許しを出せる者であり、それなりの位のある者に限るが・・・。」
「それでしたら、博雅をお使いください。まだ十二という若さでありますが、しっかりしております。今回の御幸にも同行させておりますし・・・。」
「そうだね・・・。身内の者に限る・・・。博雅を五日おき位にこちらに派遣して欲しい・・・。後で博雅を私の前に・・・。」
「御意・・・。」


本当に博雅は十二でありながらしっかりとしている。前右大臣の養子として元服し、前右大臣の孫と婚約までしている。もともと前右大臣には一人息子がいたのだが、十年前に不慮の事故で亡くしていたのだ。唯一血の繋がったこの十歳ほどの姫を大事にし、その相手として博雅を養子に迎えて婚約させたのである。博雅は東宮侍従であるが、今回は元服前の東宮の使者として来ている。十歳の頃から東宮侍従として童殿上していたためか、とてもしっかりし、今年元服した者とは思えない落ち着きと判断力を持っている。母は違うが、帝の弟宮である兵部卿宮とは六歳の歳が離れているにも関わらず、こうも違うものかと、帝はいつも二人を比べてみてしまうのである。


 行宮につくと帝は直衣を着替えなおすと、鈴華の待つ部屋に入る。


「鈴華、待たせて悪かったね・・・。篤子、さあ父のもとにおいで・・・。」


斎宮篤子は喜んで帝の膝の上に座る。


「お父様、どこにいらしていたの?」
「ああ、ちょっと大和の女御が体調を崩してね、お見舞いに行っていたのですよ。篤子は今日いかがでしたか?」


帝は篤子の頭を撫でると、篤子の話を聞いた。篤子は大和の旅の中で起きたことを楽しそうに話し出した。帝は微笑むと、篤子を下がらせて、鈴華と話をする。


「鈴華、色々とご苦労でしたね・・・。院の使者と斎宮の付き添いを・・・。」
「いえ、篤子のずっと一緒でしたので・・・。大和女御様は?」
「ずっと大和を案内してくれていたでしょう。疲れたのであろう、風邪を引いてしまったようだ・・・。」
「まあそれはそれは・・・。では明日は?」
「女御に関しては延期させました。体が十分回復するまでは大和に滞在するのだよ。女御と帰れないのは少し寂しいが、しょうがないからね・・・。今日はこちらに泊まるの?」
「いえ、興福寺のほうに・・・。さ、やっと明日都の戻れるのですね・・・。帝は結構大和をお気に召されたようですけれど・・・。」
「鈴華、都に戻ったら里帰りでもすればいい。疲れたのでしょう・・・。三の宮と四の宮に会ってきたら?じゃ、明日・・・。」


鈴華は立ち上がると、少し機嫌が悪そうに退出した。退出したのを確認すると、博雅を御前に呼ぶ。そして彩子のことについて説明をし、内密に報告するように命じる。突然の派遣命令に、博雅は驚いたが、兄ではあるが帝の命令であるので快く受け、下がっていった。帝は溜め息をつくと立ち上がって、東南院の庭を眺める。丁度綺麗な満月が庭の池に映り、なんとなく帝は苦笑すると思った。


(このような大和最後の夜を、彩子と一緒に迎えたかったな・・・。同じ月を彩子は見ているのであろうか・・・。明日はもう都に戻る・・・。また忙しい毎日が始まる。彩子が側にいてくれたら・・・。)


彩子もやはり同じ月を見ていた。少しぐらいならと、和気明日香の許しをもらい、そっと立ち上がって、脇息にもたれかかり、大和の月を見ている。昼間に帝から賜ったあこめを抱きしめ、物思いにふける。


(こちらに滞在するのは嬉しい・・・だけど・・・。)


つわりもなく、お腹の痛みも引いてしまって、懐妊しているなど彩子には実感がわかなかった。


「さ、彩子様もう横になられませ、今薬湯をお持ちいたします。」


彩子は横になると処方された薬湯を飲み、目を閉じる。


 次の日、帝は大和守に国境まで見送る。帝は大和守に彩子への文を託すと、大和守に今までのお礼を言って都への大和路を登っていった。大和守は御幸の行列が見えなくなるまでじっと立ち止まって帝を見送った。


【作者からの一言】
また挿絵付です。
バランス変です^^;
ごめんなさい!!!
出来るだけこれから挿絵をつけようと思います^^;
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