4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第110章 和気泰明の初殿上
ページファイル07.jpg

 帝が都に帰ってきて数日がたつ。毎朝侍医がやってきて帝の健康状態を診る。今日の担当侍医は和気家当主和気伴由である。


「帝、まだ御幸の疲れが取れていらっしゃらないようですね・・・。食事も完食されていないとのご報告が・・・。」


「んん、元気なのは元気だが、ちょっと気になる事があってね・・・。今日は和気泰明の初出仕と聞いたが、如何なものか・・・。」

「はい、この数日あの者の実力を見させていただきました。やはりあの智明のもとで三年修行しただけあり、先日頂いた従七位医師の実力はあります。」

「うむ、将来的には東宮が帝位に就いた折に侍医としてつけたいと思っている。あと何年先になるかはわかりませんが、侍医としてやっていけるほどの実力があるものなのか・・・・。」

「もちろんでございます。もしかしたら智明を超える者かもしれません。さすが帝のお目は高こうございました。あのまま大和に埋まるのみの男ではありません。ぜひ当家の養子に迎え、私の跡継ぎとして、修行させたいと思っております。」


帝は微笑むと、侍医に言う。


「そのほうがよろしい。あなたの腕は侍医の中でも一級品だ。その腕をすべて泰明に伝授せよ。」

「御意・・・。」

「泰明が出仕次第、こちらに参内させよ。」

「かしこまりました。」


侍医は一礼をすると、内裏を退出し典薬寮に戻る。典薬寮に入ると、泰明が初出仕しており、和気の帰りを待っていた。泰明は大和では職務中は狩衣を着ていたが、やはり侍医と共に殿上の機会が増えるため、七位の色である縹(はなだ:緑)色の束帯と冠を初めて身に着けている。


「泰明殿、今までの長閑な大和とは違い、こちらではとても忙しいので、覚悟なさい。さ、今から清涼殿に参内しますよ。これから私について修行するわけですから、帝にあなたの顔を覚えていただかなければなりません。普通ただの従七位の医師であるあなたが、特別に殿上を許されているのですから、礼儀正しく、和気家の恥にならないようお願いしますよ。」

「はい、侍医様。」


 泰明は一昨日この都に入った。当分は侍医の下で修行するので、和気家当主の邸の一室を借りて寝起きをする。和気家にはこのような修行中の弟子が数人おり、同じように小さい部屋を与えられている。侍医は大和から帰って昨日まで休みをもらっており、休みを使って弟子達の修行にあたっていた。特に生まれてずっと田舎に住んでいた泰明に今日まで宮中のしきたりや官位、そして重要な人物についてまで今日のためにじっくり教えつつ、弟子たちを使って、泰明の腕がどのようなものか見てみたのである。もちろん大和では、専門医というものはないので、脈診や薬学をはじめ鍼灸、按摩など様々な技術の基礎はもう身につけていた。帝や公卿はまだ無理であるが、他の役人などであれば診る事が出来る程度である。当主の弟であり、泰明の叔父である医師博士も、これならばと医師の位に見合う腕があると太鼓判を押していた。通常ならば狩衣で出仕可能な身分であるのだが、帝の前に出しても恥ずかしくないということで、殿上に必要な束帯や衣冠などを与えたのである。


 泰明は着慣れない束帯に戸惑いながら、侍医と共に清涼殿に参内する。自分よりも相当位が高い公卿たちが、内裏中を行ったり来たりしている。人の多さは大和国の役所よりも多く、束帯の色で大体の位はわかるものの、まだ家紋などを覚えていないので、誰がどこの家系の者か区別が出来なかった。見たことのある顔の者がこちらに向かってくる。その男は黒の束帯を身につけ、冠は巻纓、おいかけ、腰には勅許のいる刀を身に着けている。


(確かあの方は・・・彩子様のお相手の側にいた・・・。)


「これは、和気殿。また参内ですか?」



侍医は深々と頭を下げる。泰明も侍医につられて頭を下げると、侍医は言う。



「これは右大将様。今から帝に呼ばれましたので・・・。」

「そう・・・。和気殿、今日は新しい者をお連れですね。お弟子さんですか?」

「はい、今日から初出仕いたしました私の甥でございます。これから私について修行をいたしますので、よろしくお願いします。」

「うむ、覚えておくよ。早く行かないと帝が・・・。」




侍医と泰明は礼をすると、清涼殿に向かう。




「侍医様、あの方は?」

「右大将様ですよ。帝の側近中の側近で、ご公務以外でも側におられる事が多い方ですよ。武官の中でも一番の信頼がある御方。あとは内大臣様、右大臣様、そして宮内卿様。この四人を覚えておくがいい・・・。」

「はい・・・。」




二人は清涼殿に入ると、御前に上がる許可を待つ。侍従が二人を呼ぶと、清涼殿のすのこ縁に通され、帝と御簾越しに会う。侍医は泰明の初出仕の報告をする。




「こちらが例の大和国元少目従七位下医師、和気泰明にございます。」

「んん・・・。」




泰明は侍医に促され、挨拶をすると、帝は泰明にとって意外な言葉を発する。




「今日で二回目だね、和気泰明殿。」

「はい?」

「先日は大和女御こと彩子姫の実家にて対面したが、覚えていませんか?」




泰明は信じられない様子で、帝の姿を見つめる。帝は籐少納言に御簾を半分上げさせると、帝は言う。




「あの時はお忍びであったので、私の身分は明かせなかった。私は彩子の夫であり、今上帝である。」




確かにあの時見た宮であったので、泰明は驚いて頭を深々と下げる。




「和気泰明殿、あなたの実力は侍医の和気殿より聞きました。これから侍医のもとにつき、存分に侍医の腕を習得するように・・・。」

「はい・・・。」




帝は微笑んで、泰明に時間を忘れて色々大和のことなどを聞く。




「帝、東宮侍従源博雅様参内でございますが・・・。」




と、帝の侍従が声をかけると、帝はそのままこちらに通すように言う。博雅は帝の御前に座ると、帝に言う。




「帝、本日大和に参りますが、帝から何か文などの託はございませんか?」

「ああ、今日行くのですか?今から文を書くので、待ってくれないか?」




帝は文机の前に座ると、御料紙を取り出し、三通の文をさっと書く。そして博雅を呼び、手渡す。




「これは大和守に、これは大和女御に、これは和気智明に渡すよう・・・。決して失くさない様頼みましたよ、博雅。」

「御意にございます。」




三通の文を大事に懐にいれると早速退出し、そのまま内裏を出て馬にて大和に向かった。すると侍医が帝に言う。




「大和女御様はいつお戻りになられるのでしょう・・・。この時期に風邪とは・・・。都の慣れない生活で体力が落ちておられるのでしょうか?」




侍医も泰明も彩子が懐妊中であり、流産の兆候があるなど思っていない。




「そうかもしれないね・・・。無理に入内を願ったのは間違いだったかもしれないね・・・。しかし大和女御の側には泰明殿の姉と兄が交代でついていてくれるというし、住み慣れた大和で静養というのもいいではありませんか?これから年に数回は大和に里帰りさせてもいいかもしれない・・・。」




すると泰明が帝に聞く。




「ひとつ大和女御様についてお聞きしてもよろしいですか?」




侍医は慌てた様子で泰明を止めに入る。帝は人払いをして微笑んで言う。




「和気殿、別に構わないのですよ。泰明殿は大和女御の幼馴染であるから気になるのでしょう。何でも聞きなさい。あなたの気が済むなら・・・。わかっていますよ、あなたの女御に対する気持ちは・・・。」




泰明は顔を赤らめて頭を下げると、帝に質問をする。




「彩子様いえ、大和女御様をなぜ・・・。」




帝は苦笑すると泰明に言う。




「和気殿は亡き皇后の顔を知っているね・・・。あなたが皇后の病を直接診断してくれた。まああの時は手遅れだったのだけれども・・・。そして昨年の五節舞に舞姫として出ていた大和女御の顔を覚えていますか?」

「はい、驚いたことを覚えております。亡き皇后様に生き写しで・・・。皇后様の病は先帝の亡き兄宮様と同じ病・・・。当時東宮であった亡き宮様を診断したのは私の父・・・。あの病は当家の医学書にのみ記載されているもの・・・。丹波家の医学書には・・・。しかし、皇后様と女御様があれほど似ておられるとは・・・。」

「うん、そうだね・・・。はじめは亡き皇后の代わりとして大和女御を入内させたのだけれども、今は違うのですよ。顔は似ていても、中身は違う。天真爛漫な大和女御を見ていると私の気が晴れるのです。なんていうのかな・・・堀川中宮や堀川女御と違うのですよ・・・。堀川姉妹はやはり摂関家の姫君だから、それなりに気を使うのだけれども、大和女御は違う。気を使うことなどまったくないし、本当の自分に戻れるのですよ。」




帝は照れながら微笑む。




「泰明殿、もういいでしょう・・・。帝もお困りです。申し訳ありません・・・。」




侍医と泰明は深々と頭を下げると、申し訳なさそうに退出していく。もちろん泰明は典薬寮に戻ると、侍医和気に相当叱られたのはいうまでもありませんが、泰明は彩子のことを帝から直接聞き、なんとなく帝が彩子に対する気持ちがわかったような気がした。




《作者からの一言》
またイラスト付き
これは帝の弟 東宮侍従 源博雅くんです。何で俺が大和にいかなあかんねんと申しております。
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