4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第111章 静養~大和編
 彩子が大和での静養にはいってひと月が経った。切迫流産の危機を乗り越え、脇息にもたれかかって、毎日を過ごしていた。つわりも徐々にではあるがひどくなってきて食欲がない。心配になった大和守は毎日のように顔を見せに来る。今日はいつもと違い、大和守は束帯を着て朝早くに訪れる。


「お父様・・・。」

「朝早くすまなかったね・・・。今日都に国(くに栖す(古く大和国吉野郡吉野川の川上に土着していた住人の集団で、独特の風俗で知られた))が豊明節会のために上るのについて行かなければならんのでな・・・。」

「もうそんな時期なのね・・・。」

「去年は彩子が舞姫に出るので大変だったが・・・。この時期、都に上るのは恒例の事・・・。帝に何か届ける者はないか?代わりに私が届けておくよ・・・。」


すると彩子は帝から賜った御料紙に文を書き、庭に植えてあるもみじを添えて大和守に渡す。大和守は文箱に文を入れると一緒についていく従者に渡す。


「大和守様、国の者の出立の準備が整いましたが・・・。」

「わかった・・・今行く。」


大和守は彩子に別れを言うと、馬にまたがり都にむけて大和路を上っていく。宮中に献上する大事な供物を都まで運んでいるので、この日は都から派遣された検非違使もつく。彩子は大和守の姿が見えなくなるまで邸の表に立って見送った。


「彩子、もう部屋に戻りなさい。まだ無理をしてはいけない身重な体なのですから・・・。」

「お母様、いつになったら都に・・・。」


(早く優しい帝に包み込まれたい・・・。)


彩子は母君に支えられながら邸に入り、寝所に横になる。流産の恐れはなくなったとはいえ、まだ安定期に入っていないので、都までの道のりはまだ無理なのである。


「小宰相さん・・・。」

「はい・・・女御様・・・。」

「このような田舎にいてつまらないでしょう?今度帝の御使者が来られたらあなたも都にお戻りなさい。こちらには昔からの者もいるし、都と違ってそんなに人は必要ないわ・・・。明日香もついていてくれるそうだから・・・。」

「いえ、私は帝や右大臣様に女御様をお守りするように命じられております。ですので・・・。」


彩子は珍しく苛立っているのか、小宰相にあたる。


「私、あなたの事が好きではないの。いつもあなたは亡き皇后様と私を比べるような目で見るもの。あなたといると窮屈でたまらないの・・・。都の中ではいいけれど、大和の中では・・・。」

「女御様・・・。私は・・・。」

「今日の文にこのことを書きました。だからあなたは都に戻って・・・・。大和ではあなたがいると迷惑なの・・・。」


小宰相は立ち上がって彩子の部屋から出て行く。彩子の昔からいる女房が小宰相を追いかけて謝る。


「申し訳ありません。姫様はつわりで気が立っておいでなのです。もともとあのようなことを言う姫様ではありません。お許しください。」

小宰相は苦笑して言う。


「わかっています。そして女御様の言うとおりです。私は亡き皇后様と女御様をいつも比べていたのですもの・・・。ちゃんとお分かりだったのですね・・・。本当に賢い女御様だから・・・。私は本当に邪魔そうだから、右大臣様の許可を得て都へ戻ります。」


小宰相は寂しそうな顔をして自分の局に戻っていった。彩子は自分がなんとひどいことを言ったのか後悔した。小宰相は次の日に帝の彩子への返事の文を持ってやってきた博雅と共に都に戻っていった。


 豊明節会から数日が経ち、大和守が彩子にたくさんのお土産を持って邸に戻ってきた。すべて帝から賜ったもので、彩子のお印の入った御料紙や、反物、そして衣装が彩子の前に運ばれてきた。もちろん堀川姉妹からもお見舞いの贈り物が届けられる。このために大和守は右大臣家から牛車を一輌借りてくるほどの量である。早速彩子は帝や堀川姉妹にお礼の文を書く。そして右大臣家にいる小宰相に先日のお詫びの文を書き、右大臣家の者に託す。休む暇なく、右大臣家の車は急いで都に戻っていった。


「彩子、小宰相殿を都に返したのだってね・・・。」
「はい・・・私小宰相さんにひどいことを言ってしまったの・・・。いらないから帰ってって・・・。」
「大和守様、姫様はつわりがひどくなられて気が立っておいででしたから・・・。小宰相様はわかっておいでのようでしたし・・・。姫様の行いをお許しくださいませ。」
「うむ・・・。先日彩子の文を持って清涼殿に参内できたのだが、帝は御前で、たいそう彩子のことを気になされて、帰京を催促されるのだよ。明日香が帰京は母体が安定する年明けがいいといっていたから、それくらいだと申し上げてきたが・・・。都ではいろいろ彩子について噂する者がいてね・・・。重篤な病気だとか、帝に見捨てられただとか・・・。つい懐妊についていいそうになったよ・・・。帝もたいそうお困りのご様子で・・・。流産の危機も乗り越えたことだし、年明けにも正式に懐妊の報告をするそうだよ。」


彩子はまだ帰京できないことが悲しくてしょうがないようである。大和守は帰京の頃に雪が降らないかどうかを心配しながら寝殿に戻っていく。やはり雪が積もると大和路を上れなくなる。特に女御の行列であるので、相当な人が移動する。春まで待てばいいのであるが、帝の催促を考えると、無理をしてでも年明け早々に戻らなければならないのである。それが大和守の最大の悩みであった。


 師走に入り、大和国も新年の準備で大忙しで、彩子は邸の部屋に一人で座り邸の者達がせわしなく新年の準備をするのを眺めていた。おととしまでは一緒に新年の準備をしていたが、今年はみな彩子にじっとしているようにいう。彩子自身つわりが少しましになり、毎日が退屈である。都もやはり忙しいのか、いつもの間隔で使者が来ない。文を出そうにも都まで文を持って行ってくれる者がいないので、書けないでいたのである。


「明後日はもう大晦日か・・・。あとひと月で戻れるといいな・・・。」


彩子は脇息にもたれながら庭を見つめているとふと感じた。


(あ、もしかして・・・。)


彩子はお腹の胎児が動いたのに気がついた。


(もうすぐ五ヵ月だもの・・・。すこしお腹も目立ってきたし・・・。)


彩子はお腹をさすりながら、微笑むと、明日香が診察にやってくる。


「明日香、さっき赤ちゃんが動いたのよ。」


明日香は彩子を診察しながら言う。


「それはいいことですね。順調にお育ちになっている証です。これで彩子様のご不安もなくなりますね。」


明日香は診察が終わると、微笑んで言う。


「順調でございます。そろそろ安定期に入りますので、普段どおりに動かれても結構ですわ。でも飛んだり跳ねたりはいけません。いいですか?」

「いつ帰京できそうかしら・・・。」

「年が明け、都が落ち着いたらでいいと思います。」


彩子は嬉しくなって邸の者に無理を言って都の帝まで文を書き届けてもらった。
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