4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第113章 帰京~想いを絶つ日
sayakoyasuaki.jpg


 帰京の前日の朝、彩子は行宮の一室に入った。もちろん昨日は勝手に邸を抜け出した事が大和守にばれてしまい、女房ともども一喝されたのは言うまでもないが、彩子はひとつの心の支えが出来たことで、おとなしく今日の日を迎えた。部屋には帰京関係者の高位の者達が彩子に対してご機嫌伺いにやってくる。養父である右大臣、警護責任者である右大将。皇族関係を取り仕切る宮内卿などがかわるがわるやってきて御簾越しに彩子に挨拶をする。そして途中通る山城国の守、そして父であり滞在中お世話になった大和守。最後には今日の診察に医師である和気泰明が現れる。泰明は診察のため、御簾に入り彩子に深々と頭を下げて診察に入る。脈診中に泰明は周りに聞こえない声で彩子に聞く。


「彩子様、昨日は申し訳ないことをしてしまいました。昨日のことでお腹の張り、出血など異常はありませんでしたか?それだけが昨日気になりました・・・。」


彩子は首を横に振って微笑む。泰明はほっとした表情で脈診を続ける。やはり心配だったのか、いつもは診ない彩子の腹部を衣の上からであるが触診した。泰明はすべての診察が終わると、頭を下げながら御簾を出て、養父である右大臣と父である大和守に診察結果を言う。


「まったく異常はございません。お疲れのご様子もなく、これでしたら明日の帰京は滞りなく済みましょう・・・。」
「ご苦労であった。明日の出立時刻まで実家に戻り帝への報告書を書くよう。何かあればこちらから使いを出す。大和守も下がって明日に備えよ。」


と、右大臣は二人を下がらせると、右大臣は彩子に文を渡す。


「大和女御。これは昨日帝から託された文でございます。お返事はいらないと仰せです。今日一日養生されて、元気な御子、特に皇子をお産みください。」
「皇子を?」
「はい、御懐妊された限りは皇子をお産みになられないと・・・。周りの者の立場がございますので・・・。」


(やはりこの子も政治の道具にされてしまうのね・・・。)


彩子はお腹をさすりながら涙ぐむ。気を取り直して帝からの文を読む。いつものように人格が現れたような字で書かれた文は彩子に対する想いや、これからの事が長々と書かれていた。


 夕刻になると、小春日和であった昼が一転、冷え込むとちらちら雪が降り始めた。積もるほどの冷え込みではないが、彩子は大和最後の夜を、雪を眺めながら過ごす。彩子の女房たちは慌てて彩子を部屋の中に入れ、暖かくする。


「さ、彩子様、もうお休みになられては?明日は早い出立です。」


彩子は寝所に入ると、静養期間中の出来事を思い起こす。この三ヵ月何もなかったようで、色々あった。絶対安静中は近所の子供たちがみんなでお見舞いに来てくれた。そしていろいろな人が体調の悪い彩子に色々差し入れをしてくれたりと、大和の民たちの暖かさに触れた。そして久しぶりの泰明との再会と告白。そして昨日の出来事・・・。


一方泰明も帝と典薬寮に出す報告書を書き綴っていた。泰明はふと筆を止め、立ち上がると当分帰って来る事が出来ないあろう大和の夜空を見つめた。


「雪か・・・。彩子様はもう眠られただろうか・・・。」


泰明は苦笑をして部屋に戻る。そして続きをはじめるが度々筆を止め物思いにふける。


「泰明、一昨日から変よ・・・。何かあったの?」


姉の明日香が入ってきて、そばに座る。


「いえ・・・。」
「もうすぐ終わりそう?早くあなたも寝ないと・・・。帰りの支度はもうしておきました。」
「もうすぐ終わります・・・。」


書きあがった報告書に明日香が目を通すと、順次文箱に入れていく。泰明は書き終わったようで、筆をおき、溜め息をつく。


「泰明、報告書の内容はこれでいいと思うけれど・・・。今回の件は本当にあなたには酷な事ね・・・。」
「え?」
「知っているわ。泰明は彩子様のことを想っていたことぐらい・・・。そして・・・昨日・・・。」


泰明は顔を赤らめて、振り返る。


「姉上・・・。」
「彩子様も彩子様だけど・・・。あなたもあなた。私はあなたの姉だから、大和守様や帝にご報告などしません。昨日のことは姉の胸の中にしまっておきます。あなたはこれからも彩子様と関係を持つつもり?あなたの想いを今すぐ断ち切りなさい。そうしないとあなたどころか彩子様の身の破滅になります。いいわね・・・。」


泰明は黙ったままで、寝所に横になる。


(わかっている。姉上の言うことぐらい・・・。昨日のことは最初で最後だと思っている。明日からは気を入れなおして、帝や彩子様に御仕えしないとな・・・。)


泰明は苦笑しながら眠りに付いた。


 次の日泰明は束帯に着替え、たくさんの荷物を馬にのせて実家を出て、行宮に向かう。行宮に付くと荷物を控え室に置き、出立前の診察をする。診察を終えると出立の本格的な準備に取り掛かった。昨夜の雪はうっすらと積もっていたが、日が昇るにつれて、徐々に解けていった。彩子が唐衣に着替えている間、泰明は大事な書状を忘れてはいないか確認した上で、馬に荷物を積みなおし、固定をした。出立の時刻が近づくと、行宮は慌しくなる。行宮の表で泰明は自分の乗る馬をなだめながら、その時を待つ。


「和気殿!準備は出来たか?そろそろ出立だぞ!」
「はい!・・・紅梅(馬の名前)頼んだよ・・・。お前には大切なものを乗せている・・・。」


泰明は馬の顔を撫でると、馬に乗り彩子が乗る車を待った。馬に乗った大和守が近づき、泰明に言う。


「泰明殿、都までの道のり頼みましたよ。帝にも・・・よろしくと・・・。さ、行くぞ!」


大和守は先頭に立ち、一行を誘導する。泰明は一行の一番後ろで控えながらついて行った。彩子は後ろのほうで控えている泰明を見て溜め息をつく。


「姫様、車の揺れでお腹が張るのですか?それともご気分が?」


と彩子の女房が声をかける。彩子は首を振り、微笑む。


 国境に来ると、大和守は山城守に引き継ぎ、少し行列は休憩に入る。引継ぎを終えた大和守は右大臣や右大将に挨拶をすると、供の者を十数人連れて引き返す。その中には泰明の兄である智明も含まれており、泰明に声をかける。


「泰明、もう当分会えなくなるが、都で精一杯腕を磨くのですよ。大和に帰らなくてもいい。都で名声を上げる事が出来るような医師に・・・。これは父上の願いでもあるのです。医師である以上様々な間違いをしないようにね。医師は人の命を左右する事が出来る職だから・・・。じゃあ・・・。」


智明は馬を歩かせる。


「兄上!」


泰明の言葉に智明は振り返ることもなく、手を振ってさよならをした。


「和気殿!何をしている。早く行くぞ!」


警護の近衛の者が泰明に声をかける。泰明は急いで馬に乗り、追いかける。最後尾の警護の者に追いつくと、警護の右近少将が言う。


「右大将様が、もう少し前に行けとおっしゃっていたぞ。帝への大事な書状を携えているのだから・・・。さ、車の後ろのあたりに控えろ。」
「は!」


そういうと泰明は馬を走らせて列の真ん中で、彩子の車の側に控えた。時折石が車の車輪に挟まって車が揺れるのを見て、彩子のことを心配する。国境から宇治にかけては道があまりよくないらしく、車がよく揺れる。泰明は馬を右大将の近くに寄せていう。


「あの、この車の揺れ・・・。女御様のお体に触るような気がします。宇治のあたりで休憩を・・・。お考えいただけないでしょうか・・・。」


右大将は少し考えていう。


「女御様は体調が悪いといっておられない。早く都に入らなければならない・・・。」
「しかし・・・。私は今回、女御様の主治医です。ほんの少しでもいいですから、休憩を・・・。」
「わかった、そのようにしよう。宇治を出ると道はいいからな・・・。そのあとは休み無しに・・・。」
「ありがとうございます!」


右大将は近くにいる部下の者に命じ宇治で休憩することを決めた。休憩先の宇治で、泰明は馬を下り、彩子のいる車に近づき、頭を下げ言う。


「女御様、お体の調子はお変わりありませんか?」
「こちらで休憩を入れてくれて助かったわ。少し車に酔ったみたい・・・。気分が悪くて・・・。」


泰明は近くにいるものに冷たい水を彩子に差し上げるように頼む。その水を受け取ると、彩子の女房に渡し、女房はその水を彩子に差し出した。その水を一気に飲み干すと彩子は泰明にいう。


「ありがとう・・・。あなたの配慮に感謝します。」
「いえ、私は医師なので当たり前のことをしたまでのこと・・・。途中ご気分が優れない事がございましたら、早めのお申し出ください。もし車酔いが治まらないようでしたら、酔い止めの針でも打ちますので・・・。」
「いいえ、そこまでではないから・・・。」


泰明は下がると、右大将に休憩終了の合図をする。右大将は都に向けて出立の合図をすると、一行は都に向けて急いで動き出す。


 何とか無事に後宮に彩子を届けると、早速泰明は殿上し、帝に到着の報告と彩子の診察結果などが書かれた書状を帝に渡した。


「ご苦労であったね・・・。あなたが付いていてくれて助かった。今日は大和女御をそっとしておこう。きっと大変疲れているであろうから・・・。下がっていいよ。」


泰明は頭を深々と下げて退出すると、彩子の病状日誌を持って、典薬寮に入る。そして師匠である侍医和気に挨拶をしこの病状日誌を預ける。侍医は事細かく彩子の診断について書かれているのを見て、驚き感嘆する。そして泰明を褒めると、当分の休みを与えた。


《作者からの一言》

よそよそしい二人・・・。
まあ当たり前のことなのですが・・・。

冒頭のイラストは彩子と和気泰明です。ラブラブバージョンです^^;
スポンサーサイト

Comment

 秘密にする

Track Back
TB*URL

Copyright © ねぇね2人と双子っちのママのお部屋。別館. all rights reserved.
さくらと空 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。