4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第119章 帝の配慮
 年が明け、泰明は殿上に必要な位、従五位下に叙される。官職では侍医であるので本来であれば正六位下相当なのだけれども、帝や東宮の信頼が厚く、毎日のように殿上をするようになったので、殿上に必要な最低位階である従五位下に叙された。これで泰明は六位以下の地下人から殿上を正式に許された公達として扱われることになったのである。束帯の色も緑から緋色へと変更になる。これでもう泰明のことを馬鹿にする者はいなくなった。また、浮いた話もなく、まじめで一生懸命な性格はやはり女官たちどころか都中の姫達の憧れとなる。殿上人となったので、もう車での出仕を許可されるのだが、なんとなく落ち着かないのか、たいていは馬に乗っての出仕である。

宮中の憧れの的である泰明は、もちろん承香殿の女官たちも例外ではない。ほぼ毎日のように清涼殿へ殿上する姿が見えるのか、泰明が東宮とともに殿上する時間を狙って、すのこ縁に陣取り、東宮を御簾の外で待つ泰明の姿を見て、うっとりするのである。

「女御様、年をひとつお取りになられた東宮侍医様はなんて素敵なこと・・・。」
「東宮侍医様は女御様の幼馴染の君であられるとはうらやましいことでございますね・・・。」
「東宮侍医をする傍ら、東宮様に色々ご指南されているとか・・・。ですから毎日のように東宮様は東宮侍医様をお側につけてこうして殿上されるのですね・・・。」

このような話を毎日のようにするので、小宰相は女官たちに言う。

「あなた方ははしたないですよ。帝のご寵愛を一身にお受けになられている女御様の女官であるあなた方が、そのようなところで騒いではいけません。あなた方はそれでも右大臣家縁者ですか?右大臣様の恥にもなりますからもうおやめなさい。」

小宰相の一言に女官たちは部屋の局に戻っていく。彩子は気にならないといえば嘘になる。御簾越しに遠目で泰明の姿を見ると女官たちにわからないように扇で隠しながら顔を赤らめる。泰明も度々風向きによって、彩子の香の匂いがするのに気付くと、帝や他の者たちに悟られないように胸をときめかせる。稀ではあるが、几帳や御簾の隙間から彩子の長く黒い美しい髪や、品のある色合わせをした衣の裾が見える事がある。泰明は無意識にじっと見つめ、承香殿の女官たちに勘違いされる事があった。

この日は春のような陽気であったので珍しく彩子が表近くに座って何か書き物をしていた。もちろん几帳を立てかけているのではあるが、時折吹く強い温かい風に、几帳がめくれ、彩子の横顔が見えた。年をひとつとり、二十五歳となった彩子は成長しきって、可愛らしさが抜け、美しい姫君へとなっていた。彩子は清涼殿のすのこ縁から見えていることに気付かず、そのまま書き物を続ける。小宰相は清涼殿からの視線を感じ、御簾を下げ格子を締める。

「泰明殿、いつも承香殿のほうを何気に眺めているが、気になる女官でもいるのですか?」
「東宮様?もうお済ですか?」

東宮に声をかけられ、驚いた泰明はあたふたして東宮の後をついていく。殿上の間の前に来ると、東宮が言う。

「泰明は今日ここでいいよ。」
「え?お一人で御所にお戻りに?」
「いや、そこの角で春宮大夫の博雅が待っているし、お爺様が後涼殿の一室で話があるから待っていると父上がいっていたのですよ。」
「右大臣様がですか?」
「うん。早く行かないとお爺様が怒ってしまうよ。最近お爺様は歳をとられて気が短くなってこられたからね・・・。」

東宮は微笑んで泰明と別れる。泰明は急いで右大臣の待つ後涼殿の一室に向かい、案内された部屋に入ると、右大臣が座って待っていた。

「申し訳ありません・・・。だいぶんお待ちになられたのでしょうか?」
「いや、近くに来なさい。内密な話であるから・・・。」

泰明は右大臣に言われるまま、右大臣の側に寄り頭を下げる。

「何か?」
「んん、十日後の夕刻以降、予定は入っているか?」
「いえ、特にはありませんが、娘のために宿直がない日は早めに帰るようにしているのですが・・・。」
「娘とは、例の宋国の姫だね・・・。一晩ぐらいは構わんだろう。あなたもそろそろ落ち着いてはいかがなものかと、見合いをしてもらおうと思ってね・・・。あなたの姫にも母は必要だ。もちろんお相手は右大臣家の縁の姫であるが・・・。帝もご承知である。勤めの帰りに五条邸に・・・。どうかな・・・。姫には宿直であるといえばいいのだ。」

泰明は承知して、そのように段取りを組む。

 この日までは宿直を入れず、出来るだけ蘭姫と過ごすようにした。見合い当日、泰明は蘭に言う。

「蘭、今日父様は用事があって遅くなるから、先に寝ておきなさい。待っている必要はないよ。」
「お父様、できるだけ早く帰ってきてね。」

泰明は蘭の頭を撫でて微笑むと、女房に言う。

「出来るだけ早く済ませるつもりだから、蘭をきちんと寝かせておいて欲しい。」
「はいかしこまりました。」
「蘭、行ってくるよ。」

蘭は手を振り泰明を見送る。泰明は気を引き締めて出仕する。いつもどおりに仕事をこなし、時間が来るとさっさと挨拶をして退出した。今日は珍しく、車できている。車に乗り込むと、見合いの場所となっている右大臣家別邸の五条邸に向かい、五条邸に到着すると、五条邸の者がある一室に案内する。

「和気泰明様、こちらで少々お待ちを・・・。よろしければ、先に夕餉などをお召し上がっていただくよう主から聞いております。」
「わかりました。」

五条邸の綺麗な庭を眺めながら、用意された夕餉をつつき、薦められた酒に口をつける。

「これは大和の酒ですね・・・。懐かしい味だ・・・。」
「はい。当家の主が取り寄せている大和の酒でございます。」
「私は大和の出身ですのでこの味は懐かしい・・・。」

などと、側に控えている五条邸の者と会話をしながら暇をつぶす。空が夕焼けから月夜になった頃、表が騒がしくなったことに気が付いた邸の者の数人が表に様子を伺いに行く。

「和気様。お待ちかねの方のご到着でございます。」
「わかりました。」

泰明はどのような姫との見合いなのか緊張しながら、身なりを整えて、見合い相手が現れるのを待つ。

(右大臣様の縁の姫と言うのだから、私の位に見合う源の姫君なのだろう。もしくは承香殿の女官か・・・。)

どのような姫なのか考えながら、見合い相手の姫が入ってくるのを待つ。すると意外な人物の香のにおいが近づいてくる。

(まさか???)

すると数人の侍女を連れた姫が部屋の前のすのこ縁に座ると頭を下げ、泰明に言う。

「遅くなりまして申し訳ありません。帝の書状を持って参りました、今上帝の女御源彩子でございます。」

その姫が顔を上げると泰明と目が合い、二人で驚く。

「彩子様!」
「泰明、どうしてここに?部屋を間違えたのかしら?」
「彩子様どうしてここに?」
「私は帝に頼まれて書状を五条邸にいる客人に届けて欲しいといわれたのよ。普通命婦か勅使にさせるにおかしいと思ったの・・・。泰明はどうしてここに?」
「右大臣様より、この五条邸で見合いをするようにと・・・。」

彩子は侍女に間違っていないか確かめさせると、間違ってはいないとの返事があり、彩子は不思議な顔をしてとりあえず侍女に預けていた文箱を泰明に渡す。泰明はなんだか騙されたような気がしてその文を開け中身を確認すると確かに泰明宛の帝直筆の文が入っていた。

『和気泰明殿 あなたを騙したような形になってすまない。しかし見合いというのは本当のこと。私の意向で彩子の養父である右大臣の許しを得られたので、こうしてこのような見合いをすることにした。もちろん今日のことは内密なことである。今はまだ彩子は私の女御であり、このようなことは許されない。しかし毎日承香殿を眺めるあなたの様子や最近の私に対する態度が違う彩子を見ていると、やはりあなた方を結ばせたほうが泰明殿にとっても彩子にとっても幸せなのではないかと思うのです。今はまだ私の妃であるから公には結ばせてやるわけにはいかないが、もうそろそろ私も譲位をしようと思っているので、譲位後に彩子をあなたに譲ろうと思っています。それまであと何年いや何ヶ月かかるかはわからないが、待っていてくれないだろうか?今日は二人でゆっくり一晩を過ごしなさい。私に気を遣う必要はないから。今まであなたの想い人を独占してしまって悪かったね。 今上帝 雅和』

泰明は信じられない様子でその文を彩子に見せると、彩子も驚き、泰明を見つめる。

「本当にこの文を信じていいのだろうか・・・。もしこれが・・・。」
「これは確かに帝の筆跡です。」

いつの間にか部屋は二人きりとなり見つめあうと、苦笑し、彩子が言う。

「帝の言葉に甘えていいのかな・・・。」

彩子は泰明の抱きつくと、泰明は微笑んで言う。

「帝にこのような機会を頂けて感謝しないといけませんね。この時間を大切に過ごしましょう・・・。」

泰明は彩子の肩に手を回すと、彩子を抱きしめる。

「彩子様、いえ、さや・・・。」

泰明は幼い頃から呼んでいた彩子の呼び方で彩子に声をかけると彩子は微笑んでいう。

「何?泰明・・・。」

泰明は微笑む彩子にくちづけをすると、そのまま彩子の唐衣の帯を解き脱がせる。そして小袖に長袴姿になった彩子を抱き上げ、塗籠まで運び横にさせると、自分も束帯の帯を解き小袖に袴姿となる。

「さや・・・。」
「泰明・・・。」

彩子は目を閉じ、二人は指を絡ませくちづけを交わすと今までの想いを取り戻すかのように何度も何度も愛し合った。

 朝が訪れようとしているのに泰明は気が付くと、起き上がって着替えをする。彩子は単を頭からかぶり、恥ずかしそうに泰明が着替え終わるのを待つ。

「もういいですよ彩子様・・・。私はもう帰ります。夜が明けるまでに邸に戻らないと、蘭が待っていますので。」

彩子は起き上がると、素肌に単をまとい、恥ずかしそうに泰明を見つめる。泰明は彩子の手をとり、手の甲にくちづけをするという。

「こういう時は私から彩子様に何かを差し上げなければならないのでしょうけれど、私は帝や他の公達と違って甲斐性がありません。ですので私は彩子様に私の「気」を差し上げました。医術秘伝の技ではございますが、これくらいしか彩子様に差し上げるものがございません・・・。この技は大変「気」を消耗するものですが、彩子様のためでしたら構いません。」

泰明は大変疲れた様子で微笑むと、彩子を抱きしめる。そして泰明は彩子に別れの挨拶をすると、彩子のいる部屋を出て、泰明の邸に戻っていった。彩子は小袖を着ると、何もなかったように再び眠りにつく。寝不足であるのにも関わらず、彩子は清々しい気分で朝を迎えた。

気の知れた大和時代からの侍女たちは、彩子に気を使って、日が昇りきった昼前まで起こしには来なかったが、彩子はいつもどおりに起きて小袿を来て脇息にもたれかかって物思いにふけていた。

「まあ、彩子様。もう少しゆっくりお休みになられていてもよろしいのに・・・。夕刻まで後宮に戻らなくてもいいのですよ。」
「ええ、わかっているわ。もう目が覚めてしまったの・・・。」

彩子は苦笑して遅い朝餉を取る。

 一方泰明は珍しく欠勤し、邸で蘭と共にゆっくりと一日を過ごした。まだ泰明の体調は戻ってはいないが、楽しげに蘭をあやす姿を見て、女房たちは微笑む。

「東宮侍医様はきっといい事がおありでしたのね・・・。こちらに養子に入られてから、あのような顔をされたことは一度もなかったのに・・・。」
「帰りが遅いと昨夜は心配しましたが、蘭様がご起床になられる時間までに帰られて安堵したわ・・・。しかし珍しく欠勤されるなんて・・・。」
「いいじゃない。たまにこのような事があっても・・・。」

微笑ましい泰明と蘭の姿を見て、女房たちは清々しい雰囲気で一日を過ごした。

夕刻、後宮に戻った彩子は帝のもとに現れる。

「どうかしたの彩子。こちらに来るなど珍しい・・・。何?」

帝は何もなかったように書物を読んでいた。

「昨夜・・・。」
「ああ、使いのことだね。ちゃんと文を渡してくれた?」
「はい・・・。帝?」
「んん?」
「何でもありません・・・。昨夜のことは大変感謝しております。」
「何のこと?私は文に使いを頼んだだけだけど?五条邸ではゆっくりできたでしょう。またこのような機会を作ってあげるよ。」

帝は彩子を見つめ微笑むと、再び書物を読み始めた。彩子は帝の心遣いに感謝し深々と頭を下げ承香殿に戻っていった。

「本当に雅和様は心が広すぎますわ・・・。本当によろしいのですか?」
「鈴華、いいのですよ。彩子が幸せになってくれるのなら・・・。彩子は今まで私に尽くしてくれた。このことは内密に頼むよ。特にあなたの父上にはね・・・。」

帝は鈴華を引き寄せ微笑む。

「あとはいつごろ行動に移すかだね・・・。東宮も和気泰明が側についてから、目に見えて体調が良くなって、しっかりしてきたし・・・そろそろ私もゆっくりしようと思う・・・。」

帝は、鈴華に譲位の意向を告げ、苦笑した。


《作者からの一言》

帝は人が良すぎですな^^;もちろん帝自身彩子を手放すのは惜しいのですが、泰明が帰京してからというもの彩子の想いは泰明に移っていることを感じ意を決して泰明に譲位後、彩子を譲ることを決めたのです。

もちろん二人の中を内々的に認められた二人はますます想い合うのです。

しかしこの二人の仲に割り込む人物が現れます。
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