4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第120章 東宮の結婚と隠し子
暖かい春が訪れ、十八歳となった東宮はいよいよ結婚することになった。東宮妃に選ばれたのは左大臣の孫である姫君と、東宮の叔母に当たるのだが、同じ歳の右大臣家安子姫と決まった。もちろん東宮にとってあまり乗り気ではない縁談であったが、この2大勢力の結婚話に世の中は驚き、騒ぎ立てる。

特に安子姫の場合は母方の父違いの兄が東宮の父である帝であり、父方の腹違いの姉が東宮の母に当たる。血筋的にはこの上ない姫君なのだが、このような複雑な関係に周りの者達は疑問を覚える。(帝と皇后の両方の妹に当たります。)

(きっと形だけの入内に違いない)

と周りの者達は噂する。はじめ帝自身もこの縁談に疑問を覚えたが、彩子と泰明の件での色々迷惑をかけたからか、疑問に思いながらも、右大臣の申し出を受け入れた。もちろん帝の母であり、安子の母そして東宮の祖母である和子女王はこの縁談にとても反対し、他の縁談相手を探すようにと右大臣の申し入れたのだが、頑として縁談を進め、和子女王は右大臣にある条件を出して承諾した。その条件は今住んでいる二条院を帝譲位の後は帝に譲り渡すことである。もともとこの二条院は和子女王出身の宮家の邸であり、帝の祖父もこの邸を帝である雅和に相続させるつもりでいたからである。

今、この邸には彩子が産んだ内親王と、親王が住んでいる。しかし彩子は和気泰明に譲るつもりでいるので、この子達は彩子と住む事ができない。それどころか、中宮である鈴華がこの邸に住むことになる。譲位後は亡き皇后綾乃に贈皇太后の位を与えることになっている。譲位のことについてはまだ正式には決まっておらず、帝は東宮の婚儀が終わり落ち着いてからと考えている。

「雅和様、私の意向も聞いてください。」
「何、鈴華?」
「篤子はもう裳着が終わりいいのですが、十三の三の宮、四の宮はまだ元服していません。譲位されるならあの二人を元服させてからにしてください。そして帝の親王として見合う位をお授けください。」
「んん・・・。では年明けに二人の元服を許そう。見合う位と言われてもね・・・。今は埋まっているのですよ。私としてはあの二人に氏を与えようと思っているのだけれど・・・。」

鈴華は納得をしていない様子で藤壺に戻っていく。

 まずは左大臣家の姫が先に入内する。左大臣家の姫は東宮よりも二歳年下である。特にこれといって美しい姫ではないが、摂関家嫡流であることと、多産系である事を理由に帝が決めたのである。そしてひと月おいて、右大臣家の安子姫が入内する。この姫は右大臣に似ており、東宮の母である亡き皇后に面影が似ているので、東宮としてはこの安子を側に置きたがった。この二人の東宮妃の御在所は後宮の隅とされた。

「なに?東宮が桐壺の東宮女御(安子)を東宮御所に移したいと?」
「はい・・・。」

春宮坊大夫である源博雅が帝に東宮の意向を申し上げた。

「麗景殿の東宮女御を移すのならまだしも・・・。東宮は安子ばかり寵愛している。安子は私や博雅、そして亡き皇后綾乃の妹だぞ。私の大和女御ほど生き写しではないが、安子は東宮の母に似ている。博雅には申し訳ないが、土御門の東宮女御にも通うように言って欲しい・・・。私の立場もあるのだから・・・。婚礼から数回しか通っていないと今日土御門殿に言われたよ。まあ、母恋しさに母に似た安子を寵愛するのは構わないが・・・。倫理的にね・・・。あれもわがままに育てすぎたのかな・・・。どう思う博雅。」
「さあ・・・。いかがなものでしょう。」

譲位のことといい、鈴華の産んだ親王たちのことといい、そしてこの東宮のことといい、帝の悩みは尽きず、ついには悩み悩みすぎて、体調を崩してしまった。帝は東宮侍医である泰明を指名して治療にあたらせる。もちろん治療だけではなく、東宮のことで相談したい事があるからである。東宮は叔父である大夫の博雅の言うことさえ聞かず、この泰明のことは何とか聞くのである。

「泰明、東宮と私の妹である東宮女御について医学的にどう思う?」
「宋でもこのようなことは良くないとされていました。ただの叔母ならよろしいのですが、東宮様がたの場合は・・・。たぶんお子様は見込めないでしょう。万が一生まれたとしても、血が濃すぎますので色々不都合が・・・。宋国でも書物に色々と書かれていました・・・・。」
「そう・・・。泰明からも東宮に土御門の姫に通うように言ってはくれないか・・・。」
「言っては見ますが、最近の東宮様は安子様に執着され過ぎでございます。私の意見を受け入れていただけるかどうか・・・。」

帝と泰明は治療中小さな声で相談をする。

「泰明、ここだけの話だよ。お前が宋国にいるときに東宮はこういったのです。大和女御を譲ってはくれないかとね・・・。はじめは冗談かと思ったが・・・。歴代の帝にこのようなことはなかったわけではない・・・・。もちろん厳しく叱った。泰明は心配しなくていい。女御を東宮に与えるつもりはない。安心しなさい。譲位ももう考えているのだから・・・。」

帝は治療中の泰明の耳元で言った。

 泰明は帝に言われたとおり、東宮の朝の診察のときに言ってみることにした。

「東宮様、あの、私の身分でこのようなことを言うのはおかしなことなのですが、わたくしは帝より東宮家の健康管理なども命じられておりますので、言わせていただきます。」
「何?」
「お子様に関することでございます。」

東宮はうっとうしい顔をして言う。

「泰明も大夫のようなことを言うのか?安子ばかりではなく、土御門の姫もと・・・。わかっているよ。」
「安子様をご寵愛されるのは構わないのですが、医学上安子様との間のお子様はお諦めください。宋国で実際に見てきたこと、書物で読んだことを検討して申し上げております。特に安子様はお父上、お母上どちらとも血縁関係にあります。それも血の繋がりが濃い妹君。帝も東宮様のお子様を大変楽しみにされております。また東宮というお立場。親王様がお生まれあそばさないと・・・。難しいことを言って申し訳ありません。私はこれで・・・。」
「それは本当なのか?安子との間には子が出来ないと?」
「できないわけではありませんが、五体満足な御子が出来ない例がたくさんございます。まあそれ以前に受胎しない例のほうが多いのですが・・・。私にはこれ以上のことは差し控えさせていただきます。では・・・。」
「わかった・・・。考えておくけれど、安子以外は考えられないから・・・。」

泰明は東宮に頭を下げて退出する。泰明は帝の診療のついでに東宮の返事を伝えると、溜め息をついて何も話さなくなった。きっと思ったような返事がなかったことからであろうか・・・。

東宮は婚儀の後からまったくというように殿上してこない。なぜなら、殿上するたび父である帝や土御門左大臣までも口うるさくするようになったからである。億劫になって泰明が殿上を誘っても行かないようになってしまったのである。宮中儀礼のときは来るが帝と目をあわそうともしない。東宮の母代わりとして接してきた彩子は心配になって、帝に無断で東宮御所に訪れ東宮と直接話そうとした。

「何?父上の女御様がこちらに?いいよ、東の部屋に通して。」

東宮は女官たちに几帳や御簾の準備をさせると、人払いをし、彩子を招き入れる。

「よくいらっしゃいました大和女御様。」

東宮は微笑むと、彩子を几帳の裏に通す。

「先触れもなく、そしてこのような格好で申し訳ありません。」
「いえ、大和女御様でしたらいつでも大歓迎です。格好など気になさらずに・・・今日は何か?」

彩子は夏の装いで、袿を上に単を重ね、打袴をはき、下に白の小袖をつけている。本来であれば正装をしないといけないのであるが、お忍びでの東宮御所への訪問なので、常着の夏の装いでやってきたのだ。

「お話がございます。私は父上様であられる帝より母代わりを仰せつかっております。この私の言葉を、亡き母君であられる皇后様のお言葉と思い、お考えくださいますよう、お願い申し上げます。」
「うん。だからなんですか?」
「東宮女御安子様のことでございます。」
「泰明から聞いたよ。安子との間には子供が出来ないという・・・。だから次期東宮を立てるために土御門の東宮女御の相手をするようにってことでしょう。」
「お分かりでしたら話が早いですね・・・。皇子が生まれる間だけでも、お相手を・・・。」
東宮康仁と彩子
彩子は微笑むと、東宮は何か思いついたようで彩子に言う。

「彩子様はお爺様の養女で、お爺様と同じ源の血筋ですよね。」
「はいそうですが・・・。」
「安子と同じ叔母上になりますよね。」
「はい。」
「そして彩子様は亡き母の生き写しだ。」
「それが何か?」

東宮は彩子の側にやってきて、驚くべき言葉を言う。

「安子に子供ができないというのでしたら、あなたが私の子供を産んでください。」

そういうと、東宮は彩子を押し倒し、無理やり口付けをする。やはり東宮も男であるので、彩子が抵抗しても無駄だった。そして口を塞がれ、助けを求める事が出来ずに、東宮を受け入れてしまった。

東宮は事を済ますと、さっさと直衣を調えて、東宮御在所に戻って行った。彩子はそのままの姿で泣き崩れ、東宮を受け入れてしまった自分を責める。表では普段開いていない扉が開いているのに泰明は気付き、その部屋に入ると、人の気配がする。

「誰かいるのですか?私は東宮侍医和気泰明と申す者です。いるなら出てきなさい・・・。」

部屋に入ってきたのが泰明だということに気付き、彩子は黙って泰明が彩子のところに来ないことを願う。泰明は気配があるのに返事がないのを不審に思い、気配のするほうへ歩いていくと、確かに几帳の裏で人影が見えた。

「泰明!来ないで!お願い・・・見ないで・・・。」

泰明は彩子の声に気づき、几帳をどけると、単のみを被った彩子が座っていた。

「彩子様・・・これは?」
「お願い見ないで・・・お願いだから・・・。」

泰明は周りに散らばっている彩子の衣を拾い集めて彩子に渡すと、彩子は泣きながら泰明から受け取った衣を着る。しかし涙が止まらず、几帳の裏で泣き続ける。

「どうしたのですか?このようなところでこのような姿・・・。」
「東宮様に・・・東宮様にいきなり・・・。」
「お怪我はありませんか?いたいところは?」
「・・・・。」
「ひとまず、御所を離れお帰りください。帝に知られたら・・・。はやく!」

彩子は泣きながら急いで御所を後にする。泰明は部屋を片付けると、東宮の御在所に向かう。

東宮は何もなかったようにいつも通りの態度で泰明に接する。しかし明らかに東宮の頬には引っかき傷があり、相当深い。出血は治まっているものの尋常ではない。

「東宮様、この頬の傷は?」
「庭に迷い込んだ猫にやられた。」
「猫にしては大きな傷ですが?東宮様、帝には内密にいたしますので、本当のことを・・・。」

泰明は人払いをして東宮に近づくと、東宮は小さな声で本当のことを言う。

「実は父上の女御を無理やり・・・。そのとき引っかかれた。これでいいだろう。泰明は私の味方だろ。父上には言うなよ。」
「しかし・・・あのお方は帝のご寵愛の・・・。」
「わかっているとも。そして私の初恋の人。安子に子供ができないのなら、あの方に産んでもらおうと思ったのだ。うまくいけばだけど・・・。」
「東宮様、帝やあの方の名誉もございますので帝にはご報告はいたしませんが、せめてあのようなことをされたのですからあの方にお詫びを・・・。」
「わかった。あの時はどうにかしていたよ。後でおわびの文を届けさせるよ。これでいい?」
「はい。」

大事な彩子をああいう様にして泣かせた東宮を泰明は怨んだ。しかし自分の気持ちを押し殺した。

(万が一、彩子様が懐妊されたら・・・・とんでもないことに・・・。帝は床に伏しておられるのに・・・。)

 泰明の不安は的中し、あの事があってから数ヵ月後、彩子の懐妊が発覚した。もちろん東宮の子を懐妊した彩子は嘆き悲しみ、そしてつわりのひどさから床に伏してしまった。彩子はこの懐妊を帝には報告せず、どうしようか悩む。東宮との経緯を彩子に打ち明けられた小宰相はどうすればいいのかと悩んだ。

(何とか帝のお子として辻褄が合わないかしら・・・。最近は帝のお渡りがあっても一緒にお休みになるだけだったし・・・・ちょうどあの頃は帝が寝込んでおられた頃・・・。ああ、私は自害しないといけないわね・・・。)

彩子も悩み悩んで不謹慎だが、お腹の子が流れてくれないかと思う。しかしどこからか懐妊情報が漏れ、彩子の懐妊の噂が流れてくると、急いで帝は泰明を呼び、人払いをすると真意を問いただす。

「もしかして泰明・・・・。」
「いえ私ではありません。しかし・・・。ありえるといえばありえるような人物でございます。」
「そうだよ・・・あれきり会わせてないからね・・・。で、だれ!」
「以前誰かが女御様を譲って欲しいといわれたのを覚えておられますか?」

帝は決してないと思われたものの名前が浮かび、泰明に言う。

「もしかして・・・・康仁か?」

泰明はうなずくと、ことの経緯を包み隠さず帝に申し上げた。帝は驚いて、黙り込んだ。考え事をすると、彩子の懐妊が本当であるか確かめるため、泰明を連れて承香殿に入る。そしてひどいつわりのため、御帳台の中で横になっている彩子を泰明に診察をさせる。泰明は彩子の前で、まず彩子に診察することを告げ、挨拶をし頭を下げると、彩子の御帳台に入る。診察のため、中に入り几帳と御簾にて目隠しをされる。泰明は脈などを診る。

「女御様、お腹の触診を・・・失礼いたします。」

小袖の上からお腹を触診し、足にむくみなども診た。貧血がないかと確かめようと彩子の頬を触ると、彩子は泰明の首に両手を回し、泣きながら泰明に小さな声で言う。

「お腹の御子があなたの子であれば・・・もう少し気が楽なのに・・・。」
「彩子様・・・そのようなことを言っては・・・。帝のお耳に・・・。つわりがお辛いようでしたら、今から針を打ちましょう。まったくはなくならないのですが、紛らわす程度には・・・。」

泰明はつわりが少しでも楽になるように針を打つ。彩子は少し楽になったようで、放心状態で泰明の顔を見つめる。

「女御様、これで終わらせていただきます。」

泰明は挨拶を済ますと御帳台を出て帝の前に座り頭を下げる。

「どうだった。懐妊しているか?」
「はい確かに・・・。春ごろのご予定でございます。触診させていただきました。お腹のほうも順調に大きくなられております。来月あたりに安定期になられると・・・。つわりがひどいようでしたので紛らわす程度でしたが、針を打ちました。これで少しお休みになられるでしょう。」
「順調なのか?」
「はい。女御様は流産されやすい体質と聞いておりましたが、そのような兆候もなく、順調でございます。」
「んん。この懐妊は内密にしないといけない。女御の懐妊についてはあなたに任せる。いいね。今から東宮御所に行く。支度を・・・。」
「御意。」

帝は泰明を残し、ごく近臣の者のみを連れて東宮御所を訪れる。突然の帝の訪問に驚き、何事かと思う。帝は寝殿の一番奥に通されると、東宮を前に座らせ人払いをする。

「右大臣も前に来ないか、あなたにも聞いていただきたいこと。」

右大臣は東宮の少し後ろに座り、帝の話を聞く。

「康仁、もっと前に来なさい。」
「はい・・・何か?」

帝は今までの表情とは一変し、まずらしく苛立った顔でいう。

「康仁、わが妃大和女御が懐妊した。」

右大臣は前に乗り出し言う。

「それはそれは喜ばしいこと。帝のご寵愛を一身に受けておられるからでしょう。」
「右大臣殿、喜ばしいことではない。私はここ半年女御の肌に触れてはいない。ということはどういうことか・・・わかっているね、康仁。」

東宮と右大臣は青ざめる。

「どういうことですか帝・・・。誰か御殿に・・・。」
「いや、それはない。小宰相がいるからね。この数ヶ月に小宰相が付かなかった事が一度だけある。それは彩子が私の許可なく東宮御所に訪れて康仁に桐壺東宮女御について進言した日のみ。覚えがないとは言わせないよ。康仁。」
「はい・・・。わかっております。その日一度のみ父上の女御の肌に・・・。」

右大臣は青ざめ東宮にいう。

「東宮、これはどういうことなのかわかりますか?私は東宮の教育係としてそのようなことをするような教育は・・・。廃太子は免れませんよ。」
「まあ早まることはないよ、右大臣。今はもう彩子に執着はしていない。だからといって東宮に譲るつもりはない。もう譲る相手を決めている。しかし東宮の子を懐妊した以上、この子をどう扱うかが問題である。ここにくるまでずっと考えていたのだが、来年春彩子が子を産んだら、私は東宮に譲位をする。もし子が皇子であれば、次期東宮として立てよ。もちろん私の子として立太弟せよ。もちろん中宮を始め、摂関家の者達は異を唱えるであろう。これは私の意向である。いいですか?右大臣殿。そして東宮。あなたの子として認めてやりたいが立場が悪くなるのでね・・・。妹安子の子として内密に処理してもいいのだが、彩子の懐妊は必ずどこからか漏れる。中宮にはこっそりとこのことを伝えてはおくが・・・・。」

東宮は帝に対してお詫びをし、帝が下がるまで頭を下げ続け、帝の心遣いに感謝する。

 正式に彩子の懐妊が帝の子として発表されて、彩子は少し気分的に楽になったようである。彩子は東宮の再三の面会にも断り続け、あまり人を近づけないようになった。つわりは治まりつつあるものの、精神的に不安定な面があり、小宰相が目を離す事が出来ない状態である。今年の新嘗祭は帝にとって最後の新嘗祭となる。

「帝、わたくしも最後の新嘗祭に参加させてください。」
「彩子は無理しなくていいのですよ。今日も倒れたと小宰相から聞いた。最近必ず一度は倒れる。」

彩子は残念そうな顔をして、承香殿に戻っていく。その後姿を見て、帝はなんともいえない顔をして溜め息をつく。

「鈴華、彩子は相当精神的に辛いようだね・・・。とても元気で明るい姫だったが・・・。」
「女としてああいうことになると人が変わると聞きます。私も彩子様のような状況でしたら・・・・。本当にお辛そうで・・・。」

鈴華は彩子の懐妊発表後に内密に真実を知らされており、次期東宮の件も知らされた。もちろん彩子に同情し、もし皇子が生まれたときの場合のことを承諾した。

「毎日自害してしまわないかと私は心配するのですよ。あと半年何事もなければいいのだが・・・・。」
「小宰相も大変ね・・・。寝ずに側に付き添っているのだから・・・。」
「侍医の和気泰明も交代でつけているから安心だが・・・。」
「あの東宮侍医の?」
「ああ、色々あるのですよ・・・。あの二人は・・・。もともと幼馴染だから、彩子は和気が側にいることで安心するのでしょう。和気が側にいるときは決して取り乱したりはしないし、倒れることもない。あの者が一番信頼をおける医師の一人ですよ。何人か女医もいるが、彩子は和気以外を側に近づかせないし・・・。和気も都一優秀な医師だ。近いうちには典薬頭いやそれ以上になるだろうね・・・。和気は医術だけではない。様々なことを習得してきたよ・・・宋国で・・・。鈴華のお父上の立場を危うくするような存在かもしれません・・・。」

鈴華は改まって帝に言う。

「私は帝のもとに入内して、十六年・・・。摂関家の姫として何不自由のない生活をさせていただき、ご寵愛を受け、雅和様の御子を二男一女頂きました。でもとてもうらやましかった・・・・彩子様が・・・。この宮中にいても天真爛漫で、ご寵愛を一身に受けられた。あのように可愛らしい彩子様がうらやましかった・・・。本当にいつも前向きだったあの性格が・・・。でも今は・・・当時の面影もない・・・。私は本当に同情してしまいました・・・。」
「鈴華も変わったよね・・・。彩子が入内してきたとき色々あったのに・・・。丸くなったよね・・・。歳?」
「まあ、雅和様も、御髪にちらほらと白いものが・・・。お優しすぎる雅和様は相変わらずですけど・・・。」
「もう三十五です。まもなく三十六になる。いい年だ・・・。鈴華も同じ歳なのだから、一緒だよ・・・。さあ、明日から色々儀礼や行事がてんこ盛りだ。」
「そうですわね・・・明日は御帳台の試みの日・・・今年の舞姫はいかがでしょうね・・・。」
「毎年鈴華も彩子も舞姫が楽しみだったものな。鈴華も彩子も以前舞姫だったし・・・。東宮が気に入る姫でもいるかな・・・。」
「そうなるといいですわね・・・。」

二人は微笑みながら、昔話をする。

次の日、登華殿で行われる五節舞に、彩子が現れる。帝は泰明を呼びいう。

「泰明、彩子は大丈夫か?」
「どうでしょう・・・どうしても観たいと言われ、やむを得ずこちらに・・・。私が影で控えておりますので、何かあればお呼びください。」
「今日は東宮や東宮女御たちもこちらに来る予定だ・・・。何もなければいいが・・・。頼んだよ泰明。」
「御意・・・。」

彩子は中宮鈴華の横に座り、鈴華と挨拶を交わす。

「彩子様、お体のほうは大丈夫ですか?無理をされては・・・。」
「いえ、今日くらいは参加をしたくて・・・。明日からはゆっくりとさせていただきますので・・・ご心配ありがとうございます。」

やはり少し気分が優れないような顔色をしているので、鈴華や帝は心配した。すると東宮たちが現れ、帝や帝の妃達の前で挨拶をする。

「父上、お招き頂きまして大変嬉しく思います。」
「うむ・・・。」
「中宮様もご機嫌麗しく、そして女御様は御懐妊とお伺いしました。お祝い申し上げます。」

彩子は会いたくなかった東宮の顔を見ると、急に気を失い倒れてしまった。

「彩子様!」
「和気はいないか!彩子が倒れた!早く御殿へ・・・。」

泰明は几帳の陰から現れ、彩子の前に座ると、頭を下げ彩子を抱き上げ退出する。会場にいるものは驚き、慌てた。もちろん彩子のお腹の子の父である東宮も慌てて彩子を追いかけようとするが、帝が止める。

「康仁!女御を心配してくれてありがとう。あれは、毎日最低一度は倒れるのでね・・・。泰明が側にいないといけないのだよ。元気がとりえの妃だったが今回の懐妊で体調を崩したのだ・・・。心配させてすまなかったね・・・。さあはじめてくれ。」

一方承香殿の御帳台に彩子を運んだ泰明は診察を始める。気を失ったこと以外は何とか異常はなく、気が付くまで側に座って看病をする。いつも診察のときは二人の間柄を知っている小宰相の配慮で人払いをする。彩子は気が付いたようで、泰明は彩子に微笑むと、彩子は起き上がって泰明抱きつく。

「彩子様・・・。東宮様がこられるのを知っていたら、お止めすればよかったですね・・・。」
「・・・。泰明、このままでいさせてちょうだい・・・。」

彩子は泰明の肩にもたれかかって、目を閉じ言う。

「泰明、帝に里下がりの許可をもらってくれないかしら・・・。できれば大和がいいのだけれど、どこか静かなところで・・・。」
「そうですね・・・右大臣様とご相談の上・・・。」
「ありがとう泰明・・・感謝するわね・・・。お腹の子さえいなければ・・・・このような苦しい思いなどしなくても・・・。」

すると泰明は彩子にくちづけをする。

「もうそのようなことは言わないでください・・・。私が側にいます。約束してくださいますか?」

彩子はうなずくと、二人は再びくちづけを交わす。

 彩子の願い通り大和への里下がりの許可が下りる。彩子は実家に戻り、休養をする。大和守はお腹の子の父が東宮であることを知らないので、彩子の里下がりにとても喜ぶ。彩子も東宮が近くにいないということで、気分が晴れるのか、倒れるということはなくなった。もちろん泰明も蘭を連れての帰郷をし、明日香と交代で、彩子の診察をする。

年を越し、だんだんと春が近づいてきた頃、桜の花のつぼみがほころび始める。彩子のお腹も大きくなりいつ生まれてもいいようになったので、大和守は出産の準備に取り掛かる。

「彩子、皇子ならいいね・・・。」

彩子はその言葉に動揺しつつも、父である大和守に微笑む。都では譲位の準備が整い始めた頃、彩子は東宮にそっくりな皇子を産んだ。その知らせはすぐに帝に伝えられ、東宮にも伝えられた。そして帝はすぐに譲位の宣言をした。帝は皇子の名前を「良仁(ながひと)」と名づけ、自分の子として親王宣旨をし、次期東宮として扱うように群臣に伝えたのである。

乳母は彩子の五つ年下の妹が務めることになった。やはり彩子はこの親王を抱こうともせず、顔も見ないのである。

良仁は生後半月が過ぎ、都に戻ることになった。彩子は良仁と帰郷することを拒んだので、泰明は彩子に会い、説得をする。

「彩子様、明日都よりお迎えの使者が参ります。彩子様もお帰りになられないと帝がご心配しなられますし、半月後に控えた譲位の儀礼にご出席できなくなります。あと良仁様にもご面会を・・・。もうこれから会う機会がなくなりますよ・・・。お願いです、良仁親王様をお抱きください。いくらお父上様があの方だとしても、お母上様は彩子様には違いないのですから・・・。彩子様・・・。」
「いやなものはいや!良仁はあの方にそっくりなの・・・。あの時のことを思い出してしまうのよ・・・。」

彩子は泰明に抱きつき、泣くのである。泰明は困った顔をして、彩子を抱きしめる。

 次の日、右大臣家の使者がやってきて、大和守に面会する。右大臣の代理として春宮大夫源博雅が彩子に会う。

「女御様に置かれましてはご機嫌麗しく・・・。本日はご帰京を迎え・・・・。」
「大夫殿、私は後から戻ります。先に親王だけお帰りあそばして。」
「は?」
「これを帝にお渡しください。」

彩子は博雅に帝にあてた文を託し、立ち上がって寝殿を退出する。すると乳母に抱かれた親王が入ってきて、博雅に親王を見せる。

「帝の七の宮、良仁親王様でございます。わたくしは親王様の乳母を務めさせていただくことになりました女御様の妹源幸子と申します。」

博雅は親王の顔を見て東宮の顔に瓜二つであることに気が付く。しかし気のせいであろうと、あまり気に止めなかった。出立の準備が整うと、博雅は親王と乳母のみを乗せて大和を出る。国境まで大和守と泰明が見送る。

「博雅様、わたくしも大和に残り、女御様のお側に控えております。必ず女御様を説得し、帝の譲位の儀礼までには帰京を・・・。そのように帝にお伝えください。」
「わかった。典薬寮にもそのように伝えておく。早めにご帰京を・・・。」
「かしこまりました。」

右大臣家の車が、見えなくなるまで見送ると、泰明は溜め息をついて戻っていく。

「泰明、どうして彩子は親王を拒否するのか・・・。あのような彩子を見た事がない・・・。」
「実は・・・彩子さまのお父上ですので申し上げますが、あの親王は帝のお子ではありません。帝の皇孫殿下にあられます。」
「何?どういうこと?皇孫殿下とは?」
「色々ありまして詳しくは申し上げられないのですが、あの親王様の父君は東宮康仁様。このことは内密にせよとの仰せです。譲位の後、あの親王様は康仁親王様の弟として立太弟することになっております。ですので彩子様は親王様がお生まれになってから一度もお抱きにもなられず、面会もされないのです。私も説得はいたしましたが・・・・。あれほど東宮様に似ておられると・・・。」

大和守は黙り込んで邸に戻る。

 一方都では、良仁親王のみの帰京に帝は驚き、博雅が彩子からの文を帝に渡す。帝は彩子の文を見ると、黙り込んで溜め息をつく。

「帝、良仁様をご覧になられますか?」
「そうだね・・・。東宮も呼んできなさい。」

東宮は安子のいる桐壷で、帝からのお呼びを待っていた。

「東宮様、帝より殿上のご命令が・・・。いかがいたしましょうか?」
「わかった・・・。大和女御様はご帰京か?」
「いえ、新宮様のみのご帰京です。」
「そう・・・。安子、待っていてくれないか・・・。」
「はい・・・東宮様。」

東宮は博雅に案内されながら、清涼殿に案内する。清涼殿ではすでに小宰相と乳母に連れられた良仁が帝に抱かれて待っていた。

「本当になんと可愛い親王だろうか・・・。(これが私の子であれば・・・。)」

帝は自分の孫である親王をあやしながら微笑んでいた。そこへ東宮が御前にやってきた。

「康仁か、さあ入りなさい。」

東宮は帝に言われ帝の前に座ると、頭を深々と下げる。

「さあ抱きなさい。弟宮の良仁である。本当にお前に似て可愛らしい宮だ。」

東宮は、本当は自分の皇子である良仁を恐々抱きしみじみと見つめる。

「きっと彩子がいれば抱くことも許さなかったであろうな・・・。この宮は次期東宮にするから、兄であるお前がこの宮を守るよう。そして立派な帝になるように良い環境を与えよ。決して三の宮、四の宮にはこの宮の東宮の座を譲らぬよう。わかったね・・・。」
「はい・・・。」
「もう一度言っておく。この宮は私の七の宮だ。皇位継承順位を越えてこの宮を次期東宮にすることで、摂関家などから異を唱えるものも多々あろう。次期帝である康仁がそのものの異を唱えさせぬよう、頼んだよ。これで私も安心して康仁に譲位できる。私は二条院にいるから、何かあれば私に相談しなさい。私はいくらでも口を出すよ。」

帝は微笑み東宮と良仁を見つめる。東宮は良仁の頬を触りながら自分の子であることを実感し、微笑んだ。


《作者からの一言》

東宮は寵愛の安子が血縁的に子が出来ないと知らされ、ショックのあまり母に瓜二つであり、初恋の姫君で父君の寵愛している女御彩子を無理やり懐妊させてしまう。そして東宮の思惑通り皇子が生まれました。

やはり彩子にとって最悪でしょう・・・。そして暴行されたあとの姿を一番愛する泰明にみられ相当なショックに違いありません。まあ泰明に見つかったからこそ、内密に事が運ばれ、新宮は当分の間、東宮の隠し子として育つのです。

しかしこの宮が生まれたことにより、さらに不幸が訪れるのですが・・・・。
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