4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第121章 彩子の帰京と惨状
 新宮が帰京して十日後、彩子も帰京の準備を整える。右大臣家の使者は近衛府の警備の者数人を連れてやってくることになっている。今回は譲位の準備で忙しいのか、良仁のように博雅やそのほかの大夫クラスの役人は付いてくる事が出来なかった。特に運悪く大和守は所要で国を離れていた。その上、最近国境いで賊が続出しているのである。困り果てた智明と泰明はできる限りの警備の者を集め、自分たちも普段を持ち歩かない刀を携帯することにした。

「山城国まで何もなければいいのだが・・・。山城国のに入れば、検非違使たちも付くという。」
「兄上、蘭を彩子様の車に乗せていいでしょうか。」
「そうだね。賊は金品も狙うが、最近は女子供を連れ去るらしい・・・。 蘭姫も彩子様の車に乗せよう。運よく蘭姫は彩子様になついていることだし。」

夜、関係者を集め、次の日の打ち合わせを行った。何度も何度も確認して夜が更けるまで打ち合わせをする。

 次の日朝早く、準備がすべて整い、彩子は家族の者にお別れの挨拶をする。

「このような時にお父様がいないのは残念だけど・・・。もう都に戻らないと・・・。みんな元気でね・・・。」
「彩子も・・・。」

彩子は右大臣家の車に乗り込み、大和の国を発つ。彩子の車の側には数人の近衛の警備の者と、泰明が馬で警護をし、大和守の代わりに智明が先頭を歩いた。後ろには数人の右大臣家の者達が並んでいる。彩子は車の中で、蘭姫と共に手遊びをしたり、歌を歌ったりして時間を過ごした。

智明はいつもならばこの街道を行きかう人々が多い時間帯であるのにも関わらず、誰も通らないことを不思議に思い、警戒をしながら国境に近づくと、列の後ろのほうで叫び声が聞こえる。

「賊だ!大和女御様の車を守れ!」

その声に智明は大和守の従者に山城国に助けを呼ぶように命じると、馬を走らせ彩子のいる車に急ぎ刀を取り出し、車に近づこうとする賊を追い払う。

「早く山城国に入れ!すぐに助けが来る!」

牛飼い童はおびえて動く事が出来ず車は動こうとはしなかったので、しょうがなく智明は賊を追い払いながら彩子に言う。

「大和女御様、必ずお守りいたします!車から出てはなりません!」

泰明も車の後ろで賊と戦っていた。泰明の腕からは切られたらしく血が流れている。泰明は相手をしている賊の顔に見覚えがあった。

「お前は大和のものだな!」
「だからなんだ!」
「こちらの車におられる方は大和女御こと、大和守二の姫彩子様であられる!十年ほど前の天災時に受けた御恩を忘れたか!彩子様はお前らのような者たちにも手を差し伸べられたではないか!私は大和守様、彩子様と共に救援に回った大和国元少目で国医師であった和気泰明である!」
「なんと!彩子様の車か!」
yasuakikega

賊の男は部下の者たちに声をかけ、賊は蜘蛛の子を散らすように下がっていった。泰明は立ち去って行った賊に切られた腕を押さえながら、右大臣家や近衛のもので怪我をしたものの手当てをしようと馬から診療道具を取り出す。

「泰明!」

彩子は泰明の怪我に気が付き、車から飛び降りて小袖の袖を破くと、泰明の腕を手当てする。

「彩子様、ありがとうございます。しかしこれ以上触らないでください。彩子様が穢れてしまいます。怪我した者達の手当ては私がいたしますので早く車に戻り、都にお戻りください。」

車の反対側にいた智明は彩子と泰明に気づき、言う。

「女御様、車にお戻りを!泰明!怪我をしたのか。大丈夫か!」
「兄上・・・これくらい大丈夫です。それよりも怪我人を・・・。兄上、先に山城国へ彩子様を・・・。」
「ああわかった・・・。山城の者達がもうそこまで来ているので、彩子様を引き継いだ後、戻ってくる。頼んだぞ。泰明。」

智明は彩子を車に戻すと、無傷であった者数人と共に山城国に向かう。すぐに山城の警備の者と山城守がやってきて惨状に驚き嘆く。

「ああ!無傷の者はこれだけですか!和気殿、良くここまで女御様をお守りした。このことは帝にきちんと報告しておこう。怪我した者は?」
「私の弟、典薬寮侍医和気泰明が怪我を押して手当てをしております。私も国医師ですので、今すぐ戻って手当てを・・・。大和女御様をよろしくお願いします。」
「わかりました。また詳しくは後ほど知らせて欲しい。」
「はい、ではよろしくお願い申し上げます。」

智明は山城守に一礼すると、もと来た道のりを戻っていった。蘭はこの状況にショックを受けたのか、彩子に抱きついたまま震えていた。彩子は蘭の頭を撫でで言う。

「蘭姫、あなたの父上様は良くがんばりました。誇りに思わないとね・・・。今も怪我人の手当てを・・・。」

一方泰明は痛い腕を我慢しながら手当てをする。数人は重症であり、意識のないものもおり、泰明は重症の者から手当てをし、自分を後回しにした。智明も到着し、智明は大和の役所に助けを求めるように使いを出してから手当ての手伝いをした後、泰明を診る。泰明の緋色の束帯の左袖は真っ赤な血に染まり、智明は驚く。智明は袖を破ると、傷が結構深く、なかなか血が止まらない様子だった。

「お前の大事な腕を・・・。大丈夫か?」
「大丈夫です。しかし少し感覚が・・・。利き腕ではないので・・・。」
「何が大丈夫だ!左腕をだめにするところだったぞ!」
「それよりも、怪我人が・・・。」
「命に別状ないものばかりだ。安心したらいい。もうすぐ助けが来る。」

怪我人の十数人は和気家の邸に運ばれ、治療をする。賊に襲われたということを聞いた大和守は急いで戻ってきた。大和守は泰明たちを呼び、話を聞く。

「彩子は無事で何より・・・・。朝廷にご報告をしないといけない。詳しく述べよ。」

一番近くにいた泰明が大和守に包み隠さず言う。

「なぜ、賊はやめたのか?」
「賊の中に見覚えのある者が・・・。十年ほど前の災害で救護した者達が含まれており、彩子様の名を出したとたんに去っていきました。もし気づかなかったとしたら彩子様は無事では済まなかったでしょうね・・・。」
「大和の者か・・・。取締りを厳しくしないといけない・・・。智明、頼んだよ。ところで怪我人の様子は?」
「はい、右大臣家のもの四人、いずれも軽症。右近衛少将様軽症、右近衛将監様がた三名のうち1名重体。うち2名重症。あとは大和国で雇った者たち10名軽症です。そして泰明なのですが・・・。左腕を・・・。もしかしたら障害が残るかもしれません・・・。」
「わかった・・・そのように朝廷に報告しておく。泰明、怪我をしているのに悪いが、落ち着いたら報告書を都に届けてもらえないか・・・。怪我を負ったものは大和国が責任を持って治療をしよう。」

 無事に後宮に戻った彩子は蘭と共に承香殿に入った。彩子も蘭もおびえていたが、彩子は蘭のためにも蘭を励まし、そして慰めた。蘭は疲れたのか、泣きながら寝てしまった。帝は無事に無傷で戻ってきた右近中将の報告を聞き、承香殿に急いでやってくる。

「彩子!無事か!」
「帝・・・。」

帝は彩子を抱きしめると、彩子は緊張の糸が切れたのか、気を失ってしまった。帝は彩子を抱きしめながら、彩子についていた侍女に詳しく聞く。侍女もおびえた様子で詳しく話すと、帝は顔を青ざめ、彩子の顔を撫でる。

「ところで怪我をしたものの様子は?」
「よくはわかりませんが、後ろに控えていた者十数人・・・。中には倒れて動かない者も・・・。そして・・・・そして・・・。」
「どうした。申せ。」
「侍医の和気様が・・・。彩子様の車に近づいてきた賊を止めようと・・・。腕を切られました・・・。怪我をしながらも彩子様をお守りし賊を一喝した途端、賊は逃げていきました。」
「泰明がか?彩子を守ろうと怪我を?」
「はい・・・。」
「容態は?」
「わかりません・・・・でも彩子様が車から飛び降り和気様の手当てを・・・。それ以上は・・・。」
「そうか・・・お前も大変な目にあったねゆっくりするといい。・・・おやその子は?」
「和気様のご息女蘭姫様にございます。和気智明様が念のためと彩子様の車に乗せたのです。」
「そういえば泰明には宋国から連れて帰ってきた姫がいたね・・・。なんと可愛らしい・・・。」

彩子が目を覚ますと、彩子は帝にしがみつき涙を流す。

「泰明が・・・泰明が・・・そして帝からお借りした近衛の者達が・・・・。右大臣家の者達、大和の国の者達が・・・・。私のために・・・。」
「きっと大丈夫だ。現場には和気智明もいる。泰明はきっとけろっとた表情で帰京するよきっと・・・・。彩子、心配はいらない。きっと大丈夫だから・・・。」
「帝・・・。私が親王と帰っていればこのようなことには・・・。」
「大丈夫・・・。さっき賊討伐に検非違使を大和に派遣した。無事だった者に聞くと、賊にも数人負傷者が出ているようだ。きっとお父上が怪我をしたものたちの世話をしているだろうから、安心したらいい・・・。疲れただろ、産後間もないのだから、ゆっくりお休み・・・。」

彩子は女官たちに支えられながら御帳台に入り横になる。帝は清涼殿に戻り、大和からの報告を待つことにした。やはり帝は、身を挺して彩子を守った泰明の事が気になり、大和に使いを出した。

次の朝には帝のもとに続々と報告が入ってくるが、泰明の容態については入ってこなかった。帝はこの事件が落ち着くまで譲位を延期することにした。この日のうちに軽症だった者が、使者と共に都入りした。この事件で怪我をした者たちに帝は見舞いの品を与え、近衛のものについてはさらに休みを与えた。都入りした者の中に泰明も含まれており、まず和気本邸に入った。典薬頭は泰明を迎えて、怪我の治療を行う。思ったよりも怪我はひどく、まだ完全に血が止まってはいなかった。典薬頭は泰明に治療と薬湯を処方し、安静にするように言う。

「伯父上、、今から参内を・・・。帝や関係各所にご報告を・・・。」
「ではそれが終わればすぐに戻り、安静を・・・。」
「わかりました。すぐに参内し、戻ってまいります。」

泰明は束帯に着替え、参内の準備をする。準備が整うと、車に乗り内裏に向かう。痛い腕を我慢しながら報告書を手に内裏に入る。

「帝、侍医和気泰明殿、殿上願いが出ておりますが・・・。」
「和気が参内したか!早く通せ!」
「しかし、まだ怪我の穢れがありますのでいかがいたしましょう・・・。」
「では庭に通せ・・・。」

泰明は清涼殿の東庭に通されると、大和守よりの報告書を侍従を通して渡す。帝は書状に目を通すと、泰明にねぎらいの声をかける。

「和気殿、よく女御を守ってくれた。傷を負ったと聞いたが、どうですか?」
「いえ・・・このような傷・・・。」
「女御もたいそう心配していたよ。あなたのご息女蘭姫は女御が預かっている。あとで迎えに行くと良い。承香殿殿上を許す。そして身を挺して女御を守った和気泰明殿に、褒美として私が譲位をした後、女御である彩子を与える。」

帝の周りにいた近臣の者たちは帝ご寵愛の女御を侍医である泰明に褒美として与えるという言葉に驚く。泰明は正式に彩子をいただけるという帝の言葉を頂き恐縮し言う。

「恐れ多いお言葉・・・。恐縮しております。帝ご寵愛の女御様をこのような私が賜るとは・・・。」
「遠慮は要らない。泰明殿であれば、安心して彩子をやれるのだから。さ、あなたの可愛い姫を迎えに行くといい。関係各所には私から報告しておく。泰明殿は当分休みを取られよ。」

泰明は帝に深々と頭を下げると、立ち上がって彩子の御殿である承香殿にむかう。

 あの事件からひと月たち、重症を負った者達が都入りした頃、帝は再び譲位の日を決めなおした。はじめに後宮を出た彩子はひとまず二条院に入る。ここは以前まで右大臣邸として使われていたが、帝の祖父の亡き二条宮の遺言により、今上帝雅和親王に引き渡され譲位後の住まいとされる。右大臣の正妻で、帝の母宮である和子女王は右大臣の本邸になる五条邸には付いていかず、孫である彩子の産んだ五の姫宮と、六の宮と余生を過ごすことになった。彩子と東宮の間に生まれた七の宮良仁親王は右大臣邸にて次期東宮として養育され、帝王学を学ぶことになる。彩子は帝の母宮である和子女王に面会し、挨拶を交わす。

「彩子様、先月はご帰京の際に散々な目に遭いましたね・・・。死んだ者がいなかったのが不幸中の幸いでした。」
「本当にあの折は右大臣家の者達が負傷し、本当にどのようにお詫びを申し上げたらいいか・・・。」
「構いません。あの時あの・・・侍医和気殿がいたおかげで、助かったようなものです。あのあと和気殿は?」
「傷が癒えずに未だ休みを取っていると・・・。」

彩子は溜め息をついて、心配そうな顔をする。

「彩子様、お見舞いに行っていらしては?帝より今後のあなたの事を伺ってあります。あなたの姫宮若宮たちは寂しいでしょうが、あなたが想っておられた方と再婚されるのですから、良かったではありませんか・・・。」
「母宮様・・・。」
「どうぞいってらっしゃい。彩子様と和気殿のことは皆知っていること。帝が和気殿に彩子様を譲られると聞いたときは皆驚いていましたが・・・。よろしければわたくしの車をお使いなさい。」

母宮は微笑んで彩子を送り出す。

 和気邸は鴨川を挟んで東側の上賀茂にあり、閑静なところである。邸の周りに朝廷とは別の自家薬草園を持ち、たくさんの医術を学ぶ者が地方から集まり、下宿している。和気家は丹波家と共に昔から朝廷に仕え、代々典薬寮の二大勢力として地位を争っている。泰明は当主の甥に当たり、当主に継ぐ者がいないので一族で一番優秀な泰明を養子に迎え嫡男とした。彩子は先触れも無く和気家を訪問したので、和気家の者達は驚いて、泰明に伺いに行く。

「あの・・・泰明様、大和守二の姫彩子様がお見舞いに参られましたが・・・。」

泰明は驚き、読んでいた書物を落とすと慌てて従者に通すように言う。泰明は慌てて部屋中読み散らかした書物や蘭が書き散らした紙を整理すると、女房たちに言って蘭を別室に行かせる。

「思ったより元気そうで安心したわ・・・。」
「彩子様・・・。」

彩子は突然の訪問に慌てている泰明を見て微笑む。彩子は泰明の側によると座って様子を伺う。

「どう?怪我の様子は?」
「おかげさまで随分良くはなりました・・・。伯父上の許可が下りないと出仕ができないのです。毎日こうして和気家の書物を読み漁っておりました。すべて読み終わってしまいそうです・・・。」
「泰明は本当に勉強熱心ね・・・。」
「それは・・・あの・・・彩子様を養わなければならないからです・・・。もっと禄をいただけるようにならないと・・・。彩子様やその・・・あの・・・。」

泰明は顔を赤らめて彩子から目を逸らす。

「何?泰明。」

彩子は泰明の顔に近づいてじっと見つめる。泰明はさらに顔を赤らめて言う。

「あのその、私にも跡継ぎが必要なのです・・・。男(おのこ)を・・・。私は和気家を継ぐ者として・・・。彩子様に産んでいただきたいのです。ですから、彩子様と、生まれてくるであろう私たちの子供たちを養うために、もっと禄をいただけるようにがんばらないと・・・。」
「なあんだ・・・。」
「何だとは何ですか・・・。僕はやっとのことで彩子様との仲を正式に許していただけたのに・・・。」
「私も嬉しいのよ。泰明と一緒になれるんだもの。本当に大丈夫?その腕・・・。」
「まだちょっと感覚が鈍いのですが、何とかなりますよ。利き手じゃありませんし・・・。体は元気です。病気じゃありません。早く出仕できるように大人しくしておきます。」

二人は向かい合いながら楽しげに笑う。すると思い出したように泰明が言う。

「御殿を抜け出してこられたのでしょう?早く戻らないと、大騒ぎに・・・。」
「いいの、今日から帝の母宮のおられる二条院に移ったの。母宮様が泰明のお見舞いに行ってらっしゃいといってくださったから・・・。ゆっくりできるのよ・・・。」
「そうですか・・・。ではゆっくり私の話し相手にでもなっていただけますか?」
「はい・・・。」

二人はいい雰囲気になり見つめあい、泰明は彩子の肩に手を置き抱きしめ口づけをしようとすると表で人の気配がする。二人は離れ、顔を赤らめる。

「あの・・・泰明様、お取り込み中申し訳ありませんが、御当主様がご帰宅され、こちらに・・・。後ほどにいたしましょうか?」
「いや、いい。伯父上もご存知の方だから・・・。」

泰明の女房が下がっていくと、彩子はさらに泰明から離れ、泰明は彩子に几帳を立てかける。
すると典薬頭が入ってきて言う。

「お客様らしいね・・・。良かったのかなお邪魔して・・・。」
「いえ、伯父上、彩子様がお見舞いに・・・。」

典薬頭は驚いて几帳の前に座り、お辞儀をする。

「これはこれは大和女御様。このようなところへ来られるとは・・・。」
「お久しぶりですね、典薬頭殿。泰明から色々あなたのことを伺っております。今日二条院に移ったので、泰明のお見舞いに・・・。帝の母宮様も、まだ出仕していないと帝から聞かれてたいそう心配されていますの。母宮様も先月の件でたいそう心配されて・・・。」
「右大臣家の和子女王様までご心配を?なんとまあ・・・。女御様、今から泰明の治療をいたしたいと参りましたが・・・・後にいたしましょうか・・・。」

泰明は彩子との間を邪魔されたように感じ、むくれて言う。

「伯父上、また後にしてください。今大事な話を・・・。」
「そうだな、邪魔して悪かった。女御様、ごゆっくり・・・。」

典薬頭はさっさと部屋を後にすると、泰明は溜め息をつく。彩子は立ち上がっていう。

「もう帰るわ・・・。明日は中宮様が二条院にお入りになるから、お迎えの準備をしないと・・・。私はなんだかんだいっても側室だからきちんとお迎えしないとね・・・。あと今日は久しぶりに姫宮、若宮とゆっくり過ごす約束をしていたし・・・。」
「できるものなら、彩子様のお子様も引き取りたいくらいです・・・。しかし帝がお許しにはならないでしょうね・・・。」
「ええ、姫宮は裳着を済ましたら伊勢斎宮になるし、若宮は元服後、源氏を賜って臣籍に下ることになっているのよ。帝が譲位されて、私があなたのもとに嫁ぐまで、あの二人の宮を可愛がってあげないと・・・。」
「彩子様、あの宮にはもう会われないのですか・・・。可愛くないのでしょうか・・・。」

彩子は振り返って微笑みながら言う。

「可愛くないわけじゃないわ・・・。ただあの方に似すぎて、あの時のことを思い出してしまうから・・・。本当は会いたいわ。でも会えないのよ。生まれて顔を見た時そう決めたの・・・・もうあの子は私の子ではないと・・・。帝の子として生まれたけれど、きっと大きくなると疑問に思うときがくるはずよ。そのとき私はあの子になんていえばいいの?もうそれならば私はもういないことにすればいいのよ・・・。泰明は侍医としてずっと次期帝やあの子のもとにいるのでしょう・・・。決して父があの方であることは漏らさないで・・・。帝のお許しが無い限り・・・。私はあなたを通じてあの子の成長を感じるだけで満足だから・・・・。いいわね泰明・・・。じゃあ帰るね・・・。」
「彩子様・・・。」
「あ、言い忘れていたわ!早くその怪我を治しなさい!私がお嫁に来るまでに治さないと、きちんと禄がもらえなくなるわよ。じゃあね。」

泰明は彩子を見送ると、溜め息をついて、すのこ縁に座り込む。

もう日が傾きかけ、とても綺麗な禁色の色をした夕焼けが、泰明を包み込んでいた。


《作者からの一言》
彩子を賊から守って腕に重症を負った泰明。もちろんこれは医師として致命傷となります。利き手ではないので他の者たちに悟られないように生きていくのです。

禁色の色の夕焼けって見た事がありますか?とてもきれいな柿色というかオレンジ色というか茶色の混じった色なのです。夏に見られます。今年の夏にとてもきれいな夕焼けを見てきっとこれが禁色なのかなって感動しましたね^^;別に季節をあらわしただけでこれがどういうことはありません。
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