4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第127章 和気家の事情
 泰明は従者と共に本邸に入る。本邸も喪中の装いに皆変わっており、典薬頭の葬儀の準備も着々と進んでいる。泰明は養子であるが、嫡男でもあるので、喪主をしなければならない。

夜になると、男系の親族が集まり、亡骸の前で夜を過ごす。和気家は神式であるため、亡骸の胸には守り刀を置き、邪気から亡 骸を守っている。今日は仮通夜に当たり、親族のみ集まってくる。親族の中には泰明が会ったことのないものまで集まるので、泰明は緊張をしている。

こういう場というものは昔の話が出るものであり、もちろん典薬頭の若い頃などの話も出てくる。今夜は官位を忘れて酒を飲みながら昔話を誰が始めたということなく始まる。

「本当に兄上は兄弟の中でも優秀で、出世頭でおられたな・・・。」
「いやいや・・・。亡き泰智兄さんのほうが優れていたではないか・・・。」
「泰智?」

と泰明は叔父である医博士和気伴成に問う。

「ああ、泰明殿のお父上だよ。私たち兄弟とは別腹の兄上で、泰明殿にそっくりだったよ。泰明殿が大和から出てきた時は驚いたよ。始めて泰明殿の腕を見たときの眼差しは本当に兄上の若い頃を見ているようであった・・・。」
「伴由兄さんと泰智兄さんの歳は同じだったけれど、数ヶ月の差で伴由兄さんのほうが兄なんだよ。本来ならば、泰智兄さんが和気家を継ぐはずだった。」
「え?私の父上は側室の子じゃ??」
「その逆・・・。私達が側室の子なのですよ。父上の正室は摂関家から迎えられて、泰智兄さんを産んですぐに亡くなったからね・・・。次男であったが、正室の子として父上はたいそう可愛がったのだけれども、私たちの母上はたいそう泰智兄さんを冷遇してね・・・。私たちが見ても本当におかわいそうだったよ。」

この話から、泰明の父より五歳年下の叔父、伴成が昔の話を話し出す。

 長男伴由と次男泰智は、母は違うが歳が同じなので、小さい頃から父の英才教育を受け、競い合いながらも、ともに仲良く医術を学んだ。父は一番愛していた正妻によく似た次男を嫡男にしようと、特に可愛がり、自分の知恵をすべて小さいうちから与えた。もちろん泰智も小さい頃から才能を表し、周りの者からも医学に関して神童といわれる程の子供であった。もちろん側室は面白くない。何かにつけ泰智に辛く当たり、本妻の子でありながら、まるで使用人の子の様に扱う。泰智は兄である伴由を立て、何事にも遠慮がちだった。元服の時も華やかに元服の式を行った長男伴由とは逆に、ひっそりと元服した。丹波家出身の側室は実家の縁で伴由を典薬寮に勤めさせ、泰智は大学寮医師養成所から始めた。この大学寮で大和守の嫡男と出会い、仲良くなる。そして優秀な成績で大学寮を卒業し、典薬寮の医師として働き始めたのだ。

「和気様!」

典薬寮の側の影から女医見習いが走ってくる。

「泰智様。私、典薬寮に女医見習いとして派遣されました。これで一緒に・・・。」
「わかっていましたよ。あなたが地方に飛ばされるわけないから・・・。」

泰智は微笑んで手を引き、二人で市まで歩いていく。市に着くと色々な店を眺める。

「彰子殿、好きな物を選んだらいい・・・。お祝いです。」
「泰智様・・・。でも・・・。」
「先日禄が出たから、遠慮しなくていい。好きな物を・・・。」

女は色々物色しながら好みのものを選ぶ。

「泰智様、これでいい?」
「このような櫛でいいのですか?もっといいものを・・・。」

泰智は店のものに代金を支払うと、女に渡す。女は喜んで泰智の腕にしがみつくと、泰智は顔を赤くして女の邸まで送る。女の邸は六条にあり、大きな邸宅である。

「お父様に会ってください。きっと泰智様を気に入るから。」
「いや、今度にします。典薬頭様もご迷惑ですから・・・。」
「私が丹波家の者だから?」
「いいえ、そういうわけでは・・・。では私はここで・・・。明日典薬寮で・・・。」

泰智は微笑んで手を振り女と別れる。この女は典薬頭の二の姫である。昨年典薬寮の医師養成施設で出会い、密かにお互い恋心を抱いていた。もちろんこの二人の仲は両家に許された仲ではなかった。

毎日のように勤めが終わると、泰智が邸近くまで送り別れる。そして毎回障子は典薬頭に将来を誓い合った仲として会ってくれるようにせがむ。もちろん認めてもらうために会いたいのはやまやまだが、この邸は泰智の継母(父の側室)の実家であり、典薬頭は兄に当たる。もちろん継母は可愛い姪を泰智の妻にすることはありえないのである。

「いつになったら、お父様に会ってくださるの?」
「きっと反対される。会っても無駄だから・・・。」
「どうして?あなたは優秀な医師よ。お父様はあなたのことを認めているもの・・・。」
「仕事では認めていただいても、実際は違うのです。私はあなたの叔母様にとても嫌われているから・・・。あなたの叔母様は・・・。すみません・・・。」

泰智は次の日から彰子と目を合わさず、もくもくと仕事をする。この日は珍しく邸に早く帰ってきたので、兄である伴由が声をかける。

「今日は早いね。いつもはどこか寄り道をしていたようだけど?」
「兄上・・・。」
「どうかしたのか?最近変だよ。今まで出仕を楽しんでいるように見えていたけれど・・・。」
「兄上、お願いが・・・いやいい・・・。」

このような日々がひと月続き、ある嵐の夜。泰智は書き物をしていると、近くに雷が落ちる。

「キャ!」

その声に泰智は気が付いて扉を開けると、雨にぬれた彰子が立っていた・・・。

「彰子姫・・・。」
「泰智様・・・。」

彰子は泰智の姿に気が付くと、走り泰智の胸に飛び込んだ。

「どうしたのですか!このような嵐の夜に一人で・・・。さあ、なかに・・・。」

数人の女房が彰子に気づき、慌てる。

「泰智様!この姫君は?」
「東と北の対の屋には内密に。何か拭くものと着替えを・・・。」
「はい!」

彰子は泰智の胸の中で泣きながら言う。

「私・・・結婚させられそうなの・・・。典薬寮も辞めさせられる・・・。」
「え?」
「叔母様の若君とよ・・・。あなたのお兄様と・・・。私・・・お父様に言ったの・・・。泰智様としか結婚しないって・・・。そうしたらお父様はかんかんに怒って・・・。明日からの出仕を取り消しに・・・。だから私・・・。家出してきたの・・・。今すぐ私をどこかに連れて逃げて!私、泰智様じゃないと・・・。」

女房たちは急いで彰子に几帳を立て、体を拭いたり着替えをさせた。ここの女房たちは泰智の味方であるので、何も言わずに状況を判断し、西の対の屋に誰も近づけないようにした。着替え終わった彰子は泰智にしがみつき震える。

「わかりました・・・。今すぐ、私と結婚しましょう・・・。ここにいるものたちは私の味方です。しきたり通りには出来ませんが、私たちだけで結婚しましょう。明日この邸を出て、父上の上賀茂の別邸にお連れします・・・。私も当分出仕を控えます。お許しがいただけるまで・・・。」

そういうと女房たちは直ちに泰智と彰子に真新しい小袖を着せ、この部屋に誰も近づかないように見張る。二人は寝所に入ると、夜が明けるまで愛し合った。

朝になり、二人は着替えてこっそり下賀茂の本邸を抜け出し、別邸に入る。本邸では典薬頭が乗り込んできて大騒ぎになり、こちらのほうに向かってくるという。二人は決心して許しを得ようと典薬頭に話すことにした。案の定別邸にも典薬頭と、父である典薬助がきて二人を見つけると、引き離しにかかる。

「父上、丹波様!お許しください。私たちは昨年より将来を誓い合った仲・・・。どうかどうか・・・。」
「お願いお父様!」

二人は有無を言わさず仲を引き裂かれ、彰子は連れ戻されてしまった。もちろん彰子は典薬寮を辞めさせられ、泰智も謹慎をとるように言われる。謹慎が解かれ、典薬寮に戻った泰智は彰子を忘れるように黙々と仕事に精を出す。二人のことは内密にされており、噂にさえならなかったが、数ヵ月後に彰子が懐妊したという噂を耳にする。もちろん相手は泰智である。彰子と兄である伴由の婚約は破棄されることはなく、婚儀延期ということになった。

 あれから半年が経ち、彰子は姫君を産んだ。姫君はすぐに彰子から取り上げられ、乳母とともに、泰智の住む別邸に連れてこられる。このときすでに泰智は大和に行くことを決め、旅立つ支度をしていた。

「この姫に名前をつけないといけないね・・・。そうだ・・・大和の昔の都『明日香』と名づけよう・・・。これからずっと大和で過ごすつもりだから・・・。」

泰智は典薬寮に辞表を出し、友人である新大和守とともに明日香を連れ、大和に旅立つ。大和で新しい乳母を見つけると、都から連れてきた乳母を返した。都から離れて半年後、風の便りで彰子は兄伴由と結婚したことを聞いた。その後、国医師のもとで修行をし、国医師の娘を嫁にもらい、智明と泰明が生まれたのである。もちろんこのことは彰子の耳にも入った。

 泰明は姉である明日香が異母姉弟であり、亡き典薬頭の北の方が母であることに驚く。もちろん姉はこのことを知らない。確かに姉と北の方は面影が似ている。いつの間にか思い出話の中に北の方も入っており、泰明に言う。

「泰明殿が、大和から出てきて、一目見たとき本当に驚きました。あなたの父君泰智殿に瓜二つで・・・。もうあの方は26年も前に亡くなっていたなんて・・・。あなたの姉、明日香姫に会いたいわ・・・。きっと良い女医に・・・。」
「はい、姉上は一時典薬寮女医博士まで登りつめましたが、都で結婚後、死別して大和で女医をしております。私の妻彩子が女御時代、大和で主治医をしました。とても腕のいい尊敬する姉です・・・。またいずれ都に用事で来ることもございましょう・・・。」
「でも私の存在など・・・。私は姫に私の守り刀を持たせたけれど・・・。もちろん実家の丹波家の紋が袋と柄の部分に入っているわ・・・。でもそれは私の子である証にならない・・・。」
「しかし伯母上、会ってみてはいかがですか?一目見るだけでも・・・きっと気が晴れます。」
「そうね・・・。」

泰明はいずれ姉と北の方をあわすことを約束し、亡骸の晩を他の者と交代すると別室の寝所に横になった。もちろん二人の再会は実現し、今後親子として付き合うことになったのである。




《作者からの一言》
本来なら、泰明の父がこの和気家を継ぐはずだった・・・。伯父の亡き典薬頭が泰明を当主に指名した理由の一つとなります。もちろん腕が確かなこともありますが・・・。
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