4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第129章 康仁帝の略奪婚儀~立后
 ついに入内の日がやってきた。大内裏の隣にある二条院では朝から入内行列の準備で大忙しである。彩子は朝早く起き、身を清め、中務卿宮が用意した衣装を身に着ける。髪をきれいに整えた後、結い上げ冠をつける。邸中の騒がしさに綾子と誠仁が起きてくる。

「お母様きれい・・・。今日は何かあるの?」

と綾子が言うと、彩子は苦笑して黙っている。

「姫宮様、若宮様、お父様のところへ参りましょう・・・。」

と、綾子と誠仁付の女房が二人の手を引き、中務卿宮の部屋に入る。宮は二人の起床に驚いた様子で膝の上に乗せる。

「いつもより早い起床だね・・・。どうかしたの?」
「お父様、どうしてお母様はきれいな格好をしているの?お化粧もしているのよ。お人形さんみたいなの。ねえ誠仁。」
「うん!きれいだったよ。どうして?」

宮は悲しそうな顔をして言う。

「あなたたちの母は、帝であるあなたたちの兄宮に嫁がれるのだよ。兄宮のお妃になるのだ。また会えなくなるのですよ。」
「どうしてにいさまのお妃様になるの?どうして?」
「あなた方には東宮である弟宮がいるね。弟宮の父は私ではなく帝だから・・・。」

綾子達は不思議そうな顔をして聞いている。

「またお母様に会えないの?じゃあこの前お父様に買ってもらった子猫をお母様に差し上げていい?」
「どうして?綾子のお気に入りじゃないか・・・。」
「だってお母様もあの子猫を可愛がってくれているから・・・。綾子はまたお父様に買ってもらえばいい・・・。」
「綾子・・・。」
「会いたくなったら会いにいけるでしょ?」

宮は微笑んでうなずくと、綾子は部屋に戻り、お気に入りの子猫を抱いて彩子の部屋に入ってくる。彩子の準備は整っており、彩子は綾子を見て微笑んだ。

「お母様、にい様のお妃様になるんだってね・・・。これあげる。」

綾子は彩子に子猫を渡すと涙ぐんで座り込む。

「綾子・・・。この猫は綾子の大切な猫でしょ。」
「だって、だって、またお母様はいなくなるんでしょ。この子猫を綾子と思って大切にしてね。綾子はにいさまの妹だもん。またお母様に会いに行くね・・・。」

彩子は綾子の頭を撫でて涙をふき取る。出立準備が出来たようで、宮と彩子の父君が部屋にやってきて彩子が車に乗り込むのを見届ける。綾子は宮にしがみつき、泣くのである。

「博雅、頼みましたよ・・・。」
「はい、兄上。」

行列警備の責任者であり、宮の弟である頭中将源博雅は出立の声をかけ、行列は二条院を後にする。


「泰明、今日は特に元気がないね・・・。」
「兄上・・・。」

帝の診察を終え、典薬寮に帰ってきた泰明の兄、智明が診察報告にやってくる。

「帝はたいそうお元気でしたよ。昨夜は嬉しさのあまり眠っておられなかったようだけど・・・。」
「そうですか・・・。」
「今日入内というのにもう明日婚儀だろ・・・。明日から三日間宿直を命じられたようだね・・・。酷な事を・・・。代われるものならかわってやりたいが・・・帝の命だからだめだしね・・・。」
「兄上、それも後涼殿に詰めよと・・・。何を考えていらっしゃるのか・・・。」

帝のなんともひどい仕打ちに兄である侍医和気智明は溜め息をつく。

「泰明、でもしっかり仕事をしないといけない・・・。もうお前は和気家の当主であり、典薬寮を取り仕切るものなのだから・・・。」
「兄上、私は今まで彩子様がいたからここまでこられたのです。彩子様がいないと仕事が手につかない・・・。本当に私は打たれ弱いというかばか者だよ・・・。」

泰明は頭を抱えながら、涙を流す。

承香殿に御殿を賜った彩子は到着後座り込み、溜め息をつく。

(ああ、この御殿も久しぶりね・・・。何も変わっていない・・・。あの頃は楽しかったけれど・・・今回は・・・。)

彩子は落ち着く暇なく、表が騒がしくなるのに気が付き、身構える。案の定、帝が嬉しそうな顔をして承香殿に入ってくる。

「ふ~ん。やはり彩子姫は美しい。惚れなおしてしまいました。父上の選んだ衣装の趣味もいい。彩子姫、お願いがある。香はこれに変えて欲しい・・・。今の香は父上や泰明を思い出すからね・・・。私だけの彩子姫でいて欲しいから・・・。」

帝は女官に香を渡し、女官は彩子に香を渡す。

「この香はね、とても手に入りにくいもの。この私にしか手に入らないのだよ。誰も真似できない彩子姫だけの香・・・。とてもいい香りだろ。今すぐこの香をたき、私だけの彩子姫になってくれ。」
「はい・・・。」
「あとそれと、道具類も、この私が選んだものを持たせるから・・・。せっかく父上が用意してくれたのだろうけれど、私が選んだ物しか持たせないから。衣装もそうだよ。」
「い、嫌です・・・。道具くらいは私が使い慣れたものを・・・。」
「だめだ!その中に父上や泰明にもらった大切なものなどがあれば困る。道具も調度品もすべて新調しないと!これから私の言うことを聞かないとわかっているね・・・。」

側にいる女官たちや側近の者たちは帝の言動に驚き、身震いをする。帝はいろいろと注文をつけると微笑んで御殿を立ち去ろうとし、振り返って彩子に釘をさす。

「彩子姫、明日の婚儀を楽しみにしているよ。ちゃんと私のいうとおりにしていてくれたら、幸せにして差し上げますから・・・。あともう一人くらい私の子を産んでください。あなたしか産んでくださる人がいないからね・・・・。」

そういうと清涼殿に戻っていく。しばらくすると続々と帝付の女官達が入っていって、せっかく用意してもらった道具を片付け、真新しいものに変えていく。もちろん入内の際に着てきた衣装も新しいものに着替えさせられ、新しい香が焚かれる。とても高級ないいものばかり用意され、最高の待遇であるが、やはり彩子は道具の中に忍ばせていた泰明の思い出の品が気になってしょうがなかった。この騒ぎに驚いた中務卿宮は慌てて彩子の御殿にやってくる。

「どういうことだこれは?私がせっかく用意したものすべて変えられているとは・・・・。これはもう私に対する嫌がらせ・・・いやそれ以上である。彩子、もう黙ってはいられない!」

彩子は宮を止めて言う。

「宮様、いいのです。帝の言うとおりにして波風を立たせないようにしないと・・・。」
「しかしね彩子・・・。聞いてくれないか・・・。明日から三日間宿直を言い渡され、後涼殿に詰めよと・・・。泰明殿もだぞ!これはあてつけ以外何もない!」

もちろん彩子は宮の言葉に驚く。婚儀の夜は清涼殿にて行われることになっており、後涼殿は清涼殿の真横の御殿である。彩子のはじめの夫である宮と、その次の夫である泰明のみを真横の御殿で宿直させるなど、彩子を愛したまま手放した二人にとって屈辱的なことである。かわいそうなのは泰明で、初枕の後の朝に毎朝の診察をしなければならない。

「あと婚儀中の三日間は彩子を清涼殿の局に置いておくと・・・。なんという帝か・・・。親として心苦しいどころではない・・・。済まないね彩子・・・。」
「いいえ・・・。」

中務卿宮は溜め息をつきながら、退出し、邸に戻って行った。夜が訪れ、この夜は帝の訪問はないようだった。彩子の大和時代からの女房である五條は、絹に包まれた物を持ってくる。

「彩子様、これを・・・。」

包みを開けてみると、彩子が大事にしていた泰明からもらった宝物が入っていた。

「これは泰明の・・・。どうして?」
「道具が運び出される前に私がこの三点だけですが抜いておきました。」

彩子は泰明のもらった櫛やら貝に入った紅を抱きしめると五條に礼を言う。

「これを取り上げられたら私・・・。後宮でやっていく事が出来なかったわ・・・。五條・・・お願い・・・これ預かっていてね・・・。もし私が持っていたら取り上げられるわ・・・。」
「はい。かしこまりました。」

五條は大事に包みなおすと、自分の局に戻り大事に保管した。彩子は唯一取り上げられなかった綾子の子猫を撫でながら、物思いにふける。たぶん海を隔てたとなりの国から来たであろうこの白い長毛種のオスの子猫は彩子の良くなつき、彩子が撫でるごとにのどを鳴らし甘えてくる。綾子はこの子猫を白(はく)と名づけていたが密かに彩子は泰明の一字からとった泰(やす)と呼んでいた。もちろんこう呼ぶのは彩子のみの時である。寝る前にこの白を抱きしめてまるで泰明に語りかけるように今日一日の起こったことを話した。

「泰、明日はついにあのお方と結婚するのよ。明日は一緒に寝てあげられないけれど、いい子でいてね・・・。でないとあなたまで取り上げられてしまうわ・・・。」

彩子は白を寝所に入れて一緒に眠った。

ついに婚儀の日がやってくる朝から彩子の御殿は慌しく婚儀の準備を整えている。彩子は白を女房に預け、朝餉を取ると、身を清め帝の用意した婚儀用の衣装に身を包む。一方帝は朝餉を済ますと、泰明を呼び朝の診察をさせる。

「泰明、皇后はもう懐妊してもいい頃合かな・・・。昨年の夏に出産したし・・・。もう一人や二人産んでいただかないとね、年齢も年齢だし・・・。泰明ならわかるだろ、皇后がいつ懐妊しやすいかぐらい・・・。」
「さあ、私は存じ上げませんが・・・。」
「月の穢れの日程くらいは知っているのだろう・・・。」
「さあ・・・私は存じ上げませんが・・・。」

帝はムカッと来たようで、さらに泰明を挑発する。

「皇后の初めての男がこの私であればよかったな・・・。父上が皇后の初めての男であることを考えるだけでも腹が立つ。皇后はどういうことをすれば喜ぶのかな・・・。泰明。」
「さあ・・・。では私はこれで・・・今晩の宿直がありますので退出を・・・。」

冷静に振舞う泰明を見てさらに帝は苛立ちを覚える。もちろん泰明は冷静に振舞っているだけであり、腹の中は相当苛立ち、帰りの車の中で物に当り散らしていた。
立后.jpg昼間の儀礼が滞りなく行われ、夜が訪れる。彩子は清涼殿の局で婚儀の夜の準備をする。帝付の女官によって彩子の唐衣が解かれ、小袖姿にされる。髪などをきれいに整え、女官によって帝の夜の御座にある御帳台に誘導され、正座をして帝が表れるのを待つ。帝は女官たちによって直衣を脱ぎ小袖姿になると、彩子の待つ御帳台に入ってくる。帝は彩子を横にすると、くちづけをし、小袖の紐を解く。

「皇后、緊張しているの?あの時みたいに無理やりしないし、上手くなったから安心して。今日一晩十分かわいがってあげるから・・・。ああ、明日も明後日も・・・。皇后が懐妊するまでね・・・。」

彩子は帝に抱かれながら涙を流す。

 後涼殿にて宿直している泰明と中務卿宮は婚儀の夜が始まったことを女官から告げられると、複雑な表情で顔を合わせる。時間がたつにつれて、泰明は悔しさのあまり、手が震え、後涼殿の柱をたたき始める。もちろん中務卿宮も、泰明の気持ちがわからない訳ではない。

「泰明殿、大事な手を傷めますよ。それでなくても左手は・・・・。」

泰明はハッとして中務卿宮の言葉をもう一度聞く。

「今なんと?」
「彩子姫から聞きました。あなたの左手のことを・・・。医師として致命傷であると・・・。だいぶん良くはなったらしいが、またそのように手を傷めると・・・。」

泰明は無意識のうちに不自由な左手を自分で痛めていたのだ。

「そこまで回復させたのは彩子姫なのでしょう。それをそのような・・・。」
「そうですね・・・。」

泰明は左手を袖の中になおすと、中務卿宮とともに気を紛らわすような話題で一晩を過ごした。

 朝方になり帝に抱かれながら眠っていた彩子は目を覚まし、小袖を着ると座り込む。帝は彩子が起きたことに気が付き、目を覚ます。

「皇后、もうおきたの?早いね・・・・まだ日は昇っていないけど?」
「はい・・・。なんとなく・・・。」

帝は横になったまま彩子を見つめるという。

「昨夜はどうだった?父上や泰明との夜よりいいだろ?歳のいった父上や女の経験の少ない泰明と比べて・・・。」
「・・・・。」
「もう一人皇子が欲しいよ。姫も可愛いだろうな・・・。そうだ姫が欲しい。」

彩子は無言のまま、御帳台をでて局に戻る。局に戻ると、座り込んで彩子は泣いた。その声は帝や後涼殿の二人にも聞こえ、彩子の女官たちは慌てて衣装を着替えさせる。彩子は畳の上で横になると、天井を見つめて目を閉じる。

朝になり、帝は御帳台からでてくると、彩子は朝から帝の身支度につき合わされる。湯殿から出てきた帝に彩子は上着を掛け、朝餉の間まで帝の後ろをついていく。

「皇后も一緒に食べたらいい。」

帝は皇后の分も朝餉を用意させると、一緒に食べ始める。彩子は途中で箸を置くと帝はじっと見つめて黙々と食べる。

「皇后、もういいの?」
「はい・・・。」
「今日から一日側にいてよ。」
「はい・・・。」

悲しげな顔をしている彩子に帝は気にしながらも、朝餉を済ませ、直衣に着替える。

「皇后は着付けが上手いと聞いた。今日から私の着付けは皇后にしてもらおう・・・。」
「はい・・・。」

彩子は女官が用意した直衣一式を受け取ると、順に着付けていく。着付けると帝は満足そうに昼の御座に向かう。彩子は悲しそうな表情をしながら帝の脱いだものをきれいにたたみ、女官に手渡すと、帝の女官たちは彩子に同情する。

(皇后様でありながら、更衣のような事をおさせになる帝・・・。皇后がおかわいそうですわね・・・。)
(それでなくても無理やり和気様と離縁させられて入内されたのです。今から和気様の診察ですわ・・・。)
(本当におかわいそうなお方・・・。なんとか差し上げたいわね・・・。)
(昨夜もずっと泣いておられたもの・・・。)
(先帝からこちらに仕えていたけれど、先帝とは大違いだわ・・・。先帝は私のような女官にまで気を使われて・・・。そうそう皇后様は自分からすすんで帝の着付けをされていたわ・・・。)

帝の聞こえないところで、女官たちの彩子に対する同情の声は高まっていく。昼の御座で帝は彩子を側に置き、嬉しそうに彩子を眺めている。彩子は扇で顔を隠しながら、溜め息をつく。すると朝の診察に泰明が現れる。

「おはようございます。典薬頭和気泰明にございます。朝の診察に参上いたしました。」
「んん・・・。御簾の中に入ることを許す・・・・。」

泰明は御簾の中に入ると、帝の前に座り深々とお辞儀をする。側に彩子がいることに気づいていたが、気づかないふりをして黙々と脈診を行う。帝は泰明の左手の包帯で巻かれたこぶしに眼をやる。

「泰明殿、左手はどうしましたか?大丈夫?」
「あ、昨夜ぶつけまして・・・。たいした怪我ではありません・・・。」
「今日の調子はどうかな・・・。」
「これといって何もございません・・・。ただお疲れのご様子・・・。」

帝は彩子のほうを見つめて微笑んで言う。

「それはそうだろう。朝方まで皇后と楽しい夜を過ごしたのだから・・・・な、皇后・・・。」
「・・・。」

彩子は下を向き、黙っている。

「ご公務に支障が無きよう程々に・・・。」
「程々にね・・・・。」
「では私はこれで・・・。また明日朝参ります・・・。」

泰明が立ち上がり御簾から出ようと頭を下げながら下がっていくと、急に彩子が倒れた。

「さ・・皇后様!」

泰明は慌てて彩子のもとに駆け寄ろうとすると、帝は叫んだ。

「泰明!皇后に触るな!和気明日香を呼べ!今すぐ!」

泰明の後ろに控えていた泰明の助手医師は慌てて典薬寮に戻り、明日香を呼びに走る。帝は彩子を抱きしめて泰明に言う。

「これ以上皇后に近寄ることは許さん!何があろうとも!いいか!」

泰明は頭を下げたまま下がり御簾の外に出ると、悔しそうな表情で座り込む。慌ててやってきた明日香は座り込んでいる泰明を横目に、御簾の中に入り彩子を診察する。帝は泰明をにらみつけると、明日香に診断結果を聞く。

「申し上げます。皇后様は心労によりお倒れになりました・・・別室にて休養を・・・。」
「わかった・・・。今から運ぶ・・・。」

帝は彩子を抱き上げると帝の御帳台に運んだ。女官たちは彩子の唐衣を脱がし、小袖姿にすると、単をかける。帝は彩子の側に寄り沿い、明日香に言う。

「和気明日香、あなたに皇后の主治医をしてもらう。私は公務があるので、皇后の世話を頼んだよ・・・。」
「はい、かしこまりました・・・。」

明日香は頭を下げると、彩子の側につき看病をする。泰明はいらつきながら典薬寮に戻っていく。

(彩子様がお倒れになったのはあの帝のせいなのに・・・。何もできない私は・・・。)

泰明は自室に籠もると、帝の診察日誌を書きながらため息をつき筆を止める。

なんとか彩子は帝の婚儀を終え、正式に皇后として扱われるようになったが、日に何度も倒れる事があり、明日香が承香殿に常駐することになってしまったのである。


《作者からの一言》
ついに帝の思惑通り、彩子を手にする事が出来ました。しかし彩子は何もかもが無理やりで、愛のない帝との新婚生活に地獄のような毎日を過ごします。もちろん帝は彩子を御殿から一歩も出させず、許可を出すのは清涼殿お召しの時のみ。節会などの普通なら皇后も出席しないといけないものまで出席させないという籠の鳥のような生活が始まるのです。
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