4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第33章 秋の除目の後
 あれから弾正尹宮の行動はおとなしく、東宮は忘れかけていた。帝はこのひと月の間いろいろお考えだったようで、秋の除目について大臣達との審議中に譲位をしたいといわれ、一同は大慌てで譲位を止めようとする。しかし意志は固いようで、お気持ちは変わらなかった。

「私が帝になって六年になろうとしている。東宮も立太子して二年が経とうとしているし、毎日のようにこうして私の側について帝王学を学ばれている。もうそろそろ私もゆっくりしたい。院や皇太后の御体の事も心配であり、東宮には若宮もいる。そして春には御子たちが生まれる。しっかりとした東宮であるからもう心配はないだろう。もう皇后とも話し合った上のことである。いいですか。」
「父上、私は未熟です。」
「いや、お前はしっかりしているし、周りにはしっかりとした大臣たちがいる。そして跡を継ぐ若宮もいる。しっかりとしてきたではないか。ちゃんとしっかり歩くようになったし。わかってくれよ、東宮。」

東宮は深々と頭を下げると、一同も深々と頭を下げる。

 そして譲位後の除目について話し合う。帝はすべてを東宮が決めるようにと仰せで、東宮が何を聞かれてもうなずくだけであった。一通り決まると、次は即位式について審議が始まった。その日のうちの譲位の話は都中に知れ渡り、突然の譲位に都の者達は驚いた。

 良き日を選んで紫宸殿にて譲位と即位の儀礼が執り行われた。急な譲位のために秋の除目は遅れていたが、即位の儀礼とともに秋の除目が言い渡された。もちろん代が変わったので、ほとんどの者が移動となった。関白殿はそのまま関白太政大臣、右大臣は左大臣、内大臣は右大臣、中務卿宮は内大臣、左大臣は春宮傳を兼任、主だった方々で変わっていないのは弾正台尹宮だけ。そして橘晃や藤原政人は五位蔵人兼侍従に昇進、綾姫は皇后、和姫は女御、若宮は東宮となった。

 後宮も慌しく、綾姫は弘徽殿へ、和姫は麗景殿へ東宮御所から移った。女房達や女官達が今までよりもさらに増え、橘を始め、摂津や播磨はあっちに行ったりこっちに行ったりと大忙しであった。一通り落ち着くと、帝は弘徽殿や麗景殿に顔を見せに行く。まずは皇后のいる弘徽殿へ行くと、皇后は脇息にもたれかかって、物語を読んでいた。帝に気がつくとその物語をしまいこみ、頭を下げた。

「綾姫、少しは落ち着かれましたか?いろいろ儀礼でお疲れでしょう。」

皇后は微笑んで帝に申し上げた。

「先程、典薬寮の女医が来ましたのよ。少しつわりがありますが、若宮のときに比べると大分楽ですわ。今度は内親王かしら。摂津が、やはり男の子と女の子では少し違うっていうから。女医は順調といっておりました。でも・・・。」

皇后は少し不安そうな顔でそれ以上は言わなくなった。代わりに摂津が帝に申し上げた。

「麗景殿の女御様の体調がすぐれず、臥せっておいでなのです。最近いろいろあったので、何事もなければいいのでしょうが・・・。つわりもひどく、何もお食べにならないようですし・・・・。もうそろそろ近くを女医が通ると思いますわ。どこかのお部屋に通しましょうか?」
「頼むよ。気になる。」

ちょうど女医が戻るようで、空いている常寧殿に女医を待たせ、帝はそちらに向かう。常寧殿に着くと、女医は深々とお辞儀をして帝が席に着くのを待つ。

「弘徽殿と麗景殿の妃達の経過を聞きたい。包み隠さず申されよ。」

女医は深々と頭を下げたまま申し上げる。

「弘徽殿の皇后様、それはもう順調であられます。つわりもそれほど強くなく、やはりお二人目であられますのでご心配の必要はありません。しかし出来るだけご無理をなさらぬようお願い申し上げます。問題は麗景殿の女御様なのですが、つわりもひどく、たいそうお弱りの様子で・・・。脈を取りましたところ、流産の兆候が見られます。まだ決まったわけではありませんが、絶対安静にされますようお願い申し上げます。また出来るだけ何かを口になさいませんと、母子ともども危険な状況となります。以上でございます。」
「うむ、そなたには麗景殿の側にいて最悪な結果にならないよう最善を尽くして欲しいのだが・・・。そして度々弘徽殿のほうにも診察を・・・その間常寧殿を典薬寮の女医の方々でお使いなさい。よろしいか?あと清涼殿の方に典薬頭を呼ぶように、いいですか。」
「はい、畏まりました。」

女医は深々とお辞儀をすると急いで典薬寮に戻っていった。帝は清涼殿に戻ると、内大臣を始め、後宮に関するすべての職の長官を集めた。

「私的な用事ですまないと思う。典薬頭、詳しく皆の者に伝えよ。」

典薬頭は麗景殿女御の流産の兆しの詳しい内容を丁寧に説明していく。そしてこれからどのように最悪の結果にならないようすべきか説明し、帝の指示を仰ぐ。皆はたいそう驚きざわついて、帝が話し出すのを待つ。

「とりあえず、典薬寮の女医数人を麗景殿に近い常寧殿に控えさせ、交代で麗景殿女御の世話をして欲しい。あとの者達は出来るだけ最善を尽くせるよう協力して動いていただきたい。わざわざ私的な内容で集まっていただき感謝している。ありがとう。下がっていい。」

内大臣以外の者達は続々と下がっていったが、内大臣は青い顔をして座り込んでいる。

「内大臣殿、まだ流産とは決まったわけではないから、安心してください。あなたにとって初孫です。こちらといたしましては最善を尽くします。」
「ありがたいお言葉に大変感謝しております。和子はもともとあまり体が強くないのです。和子の母も和子が小さい時に同じような症状でお腹の子と共に亡くなりましたし・・・。典薬頭の話を聞いていますと、私の妻とまったく同じ・・・。私からも出来る限りのことはいたします。御前失礼いたします。」

そういうと内大臣は内裏から邸に戻っていった。

 常寧殿では女医や下働きの者達が麗景殿女御看護のための準備で大忙しをしていた。いろいろな女官達も出来る限りのお手伝いをしている。麗景殿女御のための薬を調合するもの、せいのつく料理を食べやすく工夫し調理するもの、いろいろな唐渡りの書物を読んで、調べる者など、この常寧殿だけは四六時中いつでも何かあったときに対応できるように動き回っている。2~3人の女医のほかにも見習いの女医も数人待機して、代わる代わる麗景殿女御を見守っている。そして毎朝、帝の侍医が御簾越しに女医の診察をした脈や症状を見て状況を判断し、帝に報告する。今のところ良くも悪くもなく、何とか維持しているが、なにぶん何も口にされないことから、日に日に弱ってこられている。見るに見かねた帝はほぼ毎日時間を見つけては麗景殿女御の所に足を運んでいる。帝が麗景殿に入ると、女医たちや女房達が下がっていき、二人きりになった。

「和姫、いかがですか?何か口にしないと・・・このままではお腹の子にもよくないよ・・・。」
「帝・・・。」
「何か食べたいものがあれば言ってごらん。葛湯でも作らせよう、それとも蜜柑がいいかな・・・。この私が食べさせてあげるから。」
「なんて恐れ多い・・・。帝に食べさせていただくなど・・・。」

帝は女房にいろいろ食べられそうなものを用意させ、麗景殿女御を起こし帝の体にもたれさせると、少しずつ与える。女御も一生懸命物を口に入れようとするが、むせてしまってなかなかのどを通らなかった。帝は葛湯を口に含み、女御に口移しで与えると何とか飲み込むことが出来た。何度か繰り返し、用意した葛湯を飲みきると女御をそっと横にさせた。女御は帝が献身的に世話をしてくれることにうれしさのあまり涙ぐんだ。

「私にとって和姫は大事な方だ。何かあれば父宮の内大臣に申し分けない。早く和姫の麗しい笑顔を見せておくれ。小さい頃の約束どおり出来るだけ側にいてあげるから安心して。さあ公務が残っているから戻るよ。」

そういうと、播磨や女医達に後を頼んで清涼殿に戻っていった。途中弘徽殿に寄ると皇后は麗景殿女御の様子を聞いたので、帝は包み隠さず皇后に話した。皇后はどうすれば女御が元気になるか考える。帝は悩んだ
様子で弘徽殿を後にした。

 夜になると麗景殿は人が少なくなり、女医見習いと数人の女官だけとなっていた。相変わらず麗景殿女御は臥せっていて、薄暗い寝所の中で、息を荒げ朦朧としている。特に夜になると女御は落ち着いて横になりたいのか、女医を始めいろいろな人を寄せ付けないようにしていた。すると裏の戸が開く音がしてその音で女御は目を覚ます。女御は女医か何かであろうと再び目を閉じると、御簾のすぐそこに女官達や女医とは違う気配を感じるが体が言うことをきかないので動けなかった。

「帝・・・・?」

声をかけてみても返事はなかった。元気な体であったら、香や気配で誰か判断できるが、それは出来ず、薄暗い明かりでなんとなく帝のような姿が映るのみであった。女御は帝と思ったのか、そのまま眠ってしまった。帝らしきものは御簾の外から手を伸ばし、紙に包まれたものをおいて静かに部屋を出て行った。部屋の側に控えていたものも、あまり帝とは会っていないためか、姿かたちを見ただけで帝と思い込んで忍び込んだものをそのままにしていた。その様な事が何日もあり、ついに昼間麗景殿にお見舞いに来ていた帝にある女医が帝に申し上げた。

「帝、毎晩女御様のところにいらっしゃっているようですが・・・・。」

すると帝は驚いた様子で言う。

「私は一度も夜には女御のもとには行っていない。夜はゆっくり休ませたいと思ってね。」
「じゃあこれは誰が・・・。」

そういうと紙に包まれたものを帝にお見せする。帝は見たことのないものなので女医に聞いた。

「これは何?見たことはないが・・・。」
「これは人参でございます。唐渡りの薬として重用されており、なかなか都でも手には入りません。ちょうど探しておりまして、こんなにたくさん・・・。これで女御様のお薬が作れます。」
「人参か・・・でもこのようなものを手に入れられる者って誰だろう・・・。どちらであれば手に入れられる。」

女医は少し考えていう。

「大宰府あたりでしたら、大陸にも近いですし・・・・そちらでしたら手に入るかもしれません。」
「大宰府・・・もしかして・・・ありがとう下がっていい。」

帝は女御の御簾に入ると、女御の額にかいている汗をぬぐってやると、女御は気がつき毎晩のお礼を言う。女御は夜に訪れる人物を帝と思っているようで、帝は複雑な気持ちになった。毎晩訪れる人物は見当がついている。姿かたちが似ていて珍しい薬を持ってこられる人物・・・。一人しかいない。いつものように女御に食事を与えると、すぐに清涼殿に戻り、弾正台尹宮を呼び出す。弾正尹宮は素知らぬ顔で帝の御前に座った。帝は橘晃に紙に包まれたものを宮に渡させる。そして橘晃以外の者達を遠ざけるという。

「それは叔父上が持って来られた物ですか?典薬寮の者に聞くと都でもなかなか手に入らない代物という。今回されたことはどういう理由からか・・・・。」

宮は黙ったままで深々と頭を下げたままにしているのに痺れを切らしたのか、帝は御簾から出てきて宮の前に座り続けて言い出す。

「この私に直接渡すのならまだしも、なぜ夜中にわざわざ麗景殿に忍び込んでこのようなことをされるのか。これは私に対する挑戦と取ってよろしいのでしょうか、叔父上。」

すると宮は頭を上げて帝に申し上げる。

「そのように取っていただいても構いません。しかしこの私でも弱っている華に手を出すほど落ちぶれておりません。ただこれは大宰府にて同じようなことがあり、大宰府にいた大陸から来ていた医師がこれがいいと処方していたもの。残念ながら効果が出る前に必要はなくなってしまいましたが・・・・。しかし何かの役に立つであろうと、大宰府の医師からもらったものです。」
「それならそうと私か典薬頭にでも渡せばいいものを・・・。わざわざあのようなことをされなくても。あなたの立場が悪くなるだけですよ。」
「ただ帝はこの私を信用していらっしゃらない。もちろん今までの行為がそうさせたのでしょうが・・・。あのような麗しい華が苦しんでおられるのを黙ってみているわけにはいけません。」
「とりあえず今回のことは多目に見ましょう、ただし弘徽殿や麗景殿も私の大事な華達だ。これ以上波風をお立てになるようでしたら、黙っておりませんので、心得ておいてください。しかしあなたはそのような方なのでしょうか。父上は昔そうではなかったと仰せでしたが・・・。」
「私は昔から浮名を流すような性質ではありませんよ。話は長くなりますが・・・。」

そういうと昔の話をしだした。


 今から二十数年前、帝の父である院が東宮であった頃、宮は元服を終え宮内省卿として出仕していた。ちょうどその頃、兄宮である東宮が妃を迎えるということで、表向きはただの管弦の宴だが、裏向きはその妃候補で当時右大臣一の姫と東宮との顔合わせの宴に東宮と共に宮も出席していた。もちろん一の姫と双子の二の姫のお見合いも兼ねていた。お見合いの相手は数人いたが、宮は含まれていないことは知らずに、憧れの二の姫を一目見ようと必死になっていた。御簾越しに見える姫たちの姿は当代一といわれるだけあり麗しく、二人の楽しそうな話し声が聞こえてきた。後日東宮は一の姫との顔合わせで大変気に入り、入内を勧める様に右大臣に伝えた。宮は右大臣に二の姫を頂きたいと言ったが申し訳ないが決まってしまったと断られた。それどころか、姫たちよりも三歳年下の腹違いの三の姫がたいそう宮を気に入ってしまい、宮ではないと嫌だと言うので結婚してくれないかといわれる。しかし、まだ裳着したての姫とは結婚できないと何度も断ったが、三年後にしょうがなく結婚した。結婚をしたらしたで、三の姫はとてもやきもち焼きで、少し通ってくるのが遅いだけで癇癪を起こしたりするので通うのが億劫になり、三の姫のあてつけにあちらこちらに愛人を作ったり様々な浮名を流したりしていた。そしてちょうど東宮御所が火災で焼けてしまって仮の御所としていた邸で東宮妃を見てしまい初恋の姫である二の姫に瓜二つである東宮妃に恋をしてしまい東宮が参内で帰りが遅い時に東宮妃の部屋に忍び込んで東宮妃をものにしようとして見つかってしまったのである。そのことによって大宰府に左遷された宮は三の姫と共に大宰府に行き、寄りを戻して仲良くされていたが、子宝に恵まれず、昨年やっと懐妊したと思ったらつわりがひどく何も食べられなくなり衰弱し、運悪く母子共に命を落としたのである。


「私はずっと初恋の姫が忘れられずに浮名を流していたのかもしれませんね。帝の二つの華も当時の初恋の姫に感じが似ておられる。月見の宴の際に弘徽殿で見た二つの華は当時の思い出がよみがえるような風景でした。また恋をしそうになりましたよ。」
「そういえば、育ての母である右大臣の北の方は右大臣ではなく、他に好きな方がおられたと聞いたが、もしかしたらあなたのことかもしれませんね。宴で見かけた殿方を気に入ったが、見合い相手に入っていなかったので反対されたと・・・。同じ年でたいそう凛々しい方であったと・・・。右大臣と北の方は十二も年が離れているしね。」
「それならいいのですがもう昔のこと、いまさらそのようなことを聞かれてもどうにも出来ません。初恋の姫が苦しむだけでしょう。では私はこれで・・・。」

そういうと弾正尹宮は下がっていった。

 弾正尹宮や献身的な看病をした帝のおかげか、麗景殿女御は少しずつであるが体力を回復し、顔色もよくなってきたようで自分でものを食べることが出来るようになってきた。しかしまだ予断は許されず、安定期に入るまでは絶対安静の指示を受けた。もちろんいつ何があってもいいように常寧殿は典薬寮の仮詰め所のままにしておいた。


《作者からの一言》

宮の真実発覚です^^;なあんだそういうことと突っ込みたくなりますが、していることはずいぶん悪いです^^;

麗景殿女御のひどいつわり・・・かわいそうです。今でこそ点滴があるので、食べられなくても生きていけますが、当時は絶対命を失う人が多かったに違いありません。このひどいつわり、他にも理由があります。それは後ほど・・・。

女医についてですが、本当にこのような身分の人がこの時代にいたかは確かではありません。韓国や中国の後宮は男子禁制のため、女医という制度がありました。日本にもある時代にはあったそうです。官位表にも女医博士と言うのがあります。正七位下という相当低い位の方です。多分日本でも後宮の高い身分の方向けに作られた制度なのでしょうね^^;
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