4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第39章 二つの命
 東三条邸に滞在中の帝は若宮と共に眠りについた。久しぶりに眺めるかわいらしい寝顔を見て、今日内裏に連れて帰りたいと思いながら、ぐっすり眠っている若宮の頬を触って微笑むと、若宮の部屋の表がまだ夜が明けきっていないにもかかわらず騒がしい。するとそっと何者かが入ってくる。

「何者だ・・・若宮はまだ就寝中である。静かにせよ。」

すると寝所の御簾に近付くとそっと申し上げる。

「橘晃でございます。」
「晃か、急ぎの用か・・・。」
「はい・・・。」

帝はそっと起き上げると若宮に単をかけて御簾から出てくる。そして几帳にかけていた単を肩にはおり、部屋の隅で橘晃の報告を聞く。

「申せ。」
「は、先程内大臣邸の早馬が参りまして、麗景殿中宮様親王無事出産とのことでございます。詳しい内容はこちらの内大臣殿からの文でご確認を・・・。」
「晃ご苦労。そこで少し待っていてくれないか。」

帝は橘に明かりを持ってこさせると、内大臣からの文を読む。

『少し中宮のご予定よりも早く親王が生まれてまいりました。少し小さめに生まれてまいりましたが、とても元気な産声で生まれてまいりましたので、皆安堵しております。しかし相当な難産であったため、中宮は直後気を失われ、何とか今のところ命には別状はないもののまだ意識が戻っておいでではありません。なんとも申し訳なく・・・。 内大臣 二条宮実仁』

この文を橘に見せると、帝は橘に助言を聞く。

「今すぐ行ってやりたいが・・・・。どうしたらよいものか・・・・。」
「そうですわね・・・少し覚悟が必要かもしれません。もともと麗景殿様はお体が弱く、体力も弘徽殿様ほどおありではありません。このまま産後の肥立ちが悪いうえに意識がお戻りにならないようでしたら・・・・。」
「そうか・・・このことは仲の良い弘徽殿には内密にせよ。晃、今すぐ馬を用意せよ!馬で今すぐ内大臣邸に参る。車では遅すぎる。早く!」

晃は下がり馬の用意をする。その間、帝は狩衣に着替え対の屋前の庭に用意された馬に乗って急いで内大臣邸のある二条院まで走らせた。

「開門!わが名は五位蔵人兼侍従の橘晃と申す。今上帝の至急のお出ましである、すぐここを開けられよ。」

門衛は急いで門を開け深々と頭を下げる。橘晃を先導に車宿に馬を預けて中宮のいる部屋に向かう。途中内大臣が帝を迎えると、とりあえず中宮の部屋は立て込んでいるという理由からか客間に通す。すると中宮つきの播磨が急いで客間にやってきて深々と頭を下げて申し上げる。

「誠に申し訳ありません!この私がついておりながら、中宮様があのようになられるとは・・・。」
「そなたが悪いのではありませんよ。今はどのような状況か?」
「実は・・・中宮様は双子を御懐妊だったようで、親王様は無事お生まれになりましたが、片方の内親王様は逆子のため出産後すぐにお亡くなりになりました。典薬寮女医に言わせますと、いまだ内親王様についていた胎盤が少々残っている様子で出血がひどくそのため意識が戻らないとのことでございます。」

帝は脇息にもたれかかってため息をつくと、真剣な顔で考え事をする。急いで女医がやってきて帝の前に座ると、深々と頭を下げる。帝は珍しく冷静さを失い女医に怒鳴りつける。

「女医というものが居ながらどうにかならないのか!侍医をこちらに呼べ!」

女医はいつも温厚な帝の態度におどおどしながら、申し上げる。

「恐れながら・・・われわれもできる限りのことはしております・・・。気を御静めに・・・。」

帝は脇息にもたれて肘をつき、涙を流す。帝は涙を拭うと、立ち上がって中宮の部屋に向かう。部屋に入ると中は静まりかえり、播磨が若宮を抱いて帝の前にやってきた。帝は若宮を抱くとまた泣き出した。

「この子は雅和と名づける。」
「そういえば帝もこれくらいの小ささでお生まれになりましたわ。きっと立派な親王としてお育ちになりますわ。」

帝は播磨に若君を渡すと、亡くなった内親王の亡骸を持ってこさせる。本来であれば、穢れを嫌うので帝には触らせないのであるが、どうしてもというので亡骸を見せるのである。亡くなった内親王は生きているのではないかと思うぐらいかわいらしい顔をしていた。

「この姫宮は少しでも生きていたのだろ。雅子内親王として内親王宣下をしよう。丁重に葬ってやってくれ。」

内親王の亡骸を女房に渡すと、帝は中宮の寝所に入られる。いまだ意識は戻っておらず、荒い息で眠り続けている。帝は白い中宮の手を握り締めると、その手を帝の頬にあてた。中宮の手は冷たく、今にも命の灯火が消えてしまいそうであった。

「播磨、外で控えている橘晃に東三条邸と、内裏に中宮の意識が戻るまで公務も何もかも取りやめにすると伝えよ。このままここに滞在し、中宮の看病にあたる。」
「しかし・・・。」
「権限は関白太政大臣に一任する。あと、生まれたがなくなった雅子内親王を内親王宣下し、喪に服すよう。」
「はい畏まりました。」

播磨は部屋の外で控えている橘晃に帝の言葉を伝え、橘晃は急いで馬に乗り関係各所に帝の言葉を伝える。もちろん内裏は混乱して予定されていた更衣や尚侍入内もすべて無期延期された上、生まれた内親王の逝去により、宮中は喪に服すことになり、様々な節会や宴は半年間すべて中止となった。もちろん東三条邸の皇后の耳にも入り皇后はお悔やみとお見舞いの文を帝と内大臣に送った。皇后はとても思い詰められたのか、夕方東三条邸より、二条院に急ぎの早馬がやってくる。

「帝に申し上げます。東三条邸の皇后様、御予定より半月早く陣痛が始まったようでございます。皇后付きと女医によりますと、夜半ごろお生まれになるとのこと・・・。」
「そうかわかったと伝えよ。あちらには摂津も橘もいるから心配ない。皇后も二度目の出産だ。生まれたら知らせてくれないか・・・。」

橘晃は深々と頭を下げると、東三条邸の使者に帝の言葉を伝える。

 夜半ごろ、帝はずっと中宮の側に付きで、綿に含ませた水を中宮の口元に当てて水分を与える。女房達が帝に食事を持ってきても口をつけずに、ひたすら中宮に付き添っている。すると橘晃は入ってきて御簾の側で申し上げる。

「どうした、晃・・・。弘徽殿のことか・・・?」
「はい、内親王のご誕生でございます。母子共に健やかという知らせでございます。どのように致しましょうか。」
「御料紙と筆を・・・。あとで届けて欲しい・・・。これを届けたら晃は帰っていいよ。政人と交代しなさい。お前もずっと寝てないのだろう。」
「いえ、これくらい・・・。」

御料紙と筆を受取ると、皇后にお祝いとお見舞いの文を書く。

『綾子、無事に生まれたようだね。本当ならすぐにでも会いに行きたいのですが、和子の容態が思わしくなく行けません。申し訳なく思っています。内親王の名前は孝子と名付けようと思っている。きっと雅孝は私のことを怒っているであろうね。  常康』

皇后に宛てた文を橘晃に託すと、また中宮の側についた。

 丸々二日経ち、夜が明けようとしているのか、隙間から微かな光が漏れてきた。やはり帝は一睡もせずに冷たい水に浸した布で中宮の汗を拭いたり、水分を与えたりして時間を過ごした。まぶしい光が隙間から中宮の顔に漏れると、少しずつだが、中宮は意識を戻しだした。帝は気がついて中宮の名前を呼ぶと、中宮は目を開けて帝の顔を見る。

「帝?」
「気がついた?ずっと眠っていたのだよ。さあ女医を呼ぼう。」
「帝・・・少し待ってくださいませ。私・・・。」
「何?」

帝は中宮の白い手を頬にあてて中宮の言葉を待った。

「私夢を見ましたわ。とてもきれいな野原に立っておりましたの。きれい過ぎて何だか先に進みたくなったのですが、突然小さな姫を抱いて品の良い直衣を着た帝によく似た方が現れて、帝が悲しまれるのでここから先は行ってはいけないと・・・。訳を聞こうとしても微笑まれるだけで・・・・。気がつくと帝が私のことを呼んでおられたのです・・・。」

(もしやそれは兄上と亡くなってしまった内親王ではないか・・・・。)

そう考えた帝は、中宮に優しく言う。

「それは私の双子の兄上かもしれないね・・・。兄上はあなたとの婚儀の日に病気でお亡くなりになられた。本当に私と瓜二つの優しいお方だよ。いつも品の良い直衣を着ておられた。中宮、女医を呼んできましょう。みんなとても心配しているよ。可愛い若宮も母君の事をきっと待っているに違いない・・・。」

帝は立ち上がって御簾から出ようとすると、中宮は帝に聞く。

「姫宮は?後から生まれた姫宮は?帝・・・。」

帝は一瞬立ち止まったが、そのまま何も言わずに近くに控えていた播磨に女医を呼ぶように命令する。慌てて女医は中宮の具合を見るとなんと不思議なことか、今まで弱々しかった脈は正常に戻り、産後の戻りも正常に戻っていた。その事を別室で帝に伝えると、帝は緊張の糸が切れたのか、突然倒れてしまった。ちょうど帝の寝ずの看病を心配して侍医が控えていたので、すぐに客間に運び診察すると、大変な高熱で意識も弱い状態であった。内大臣は慌てて客間に飛んできて侍医に帝の病状について問いただす。

「ご心配はございません。単なる過労と御見受け致します。丸二日も寝食もされず看病をされたのですから・・・・。二、三日ゆっくりお休みされて精のつくものを御召し上がられると、元通り元気なお体に戻られます。私も倒れられたと聞いた時は大変驚きましたが、中宮様が予想以上の回復様に驚かれ、一気に疲れが出たのであろうと思います。中宮様ももう心配はありません。処方いたしました薬湯を朝晩お与えください。また、中宮様も消化の良い物から順に食事をお出しいただき、とても栄養豊富なものをお召し上がりになればひと月後の床上げも可能でしょう。私はこれで・・・。何かあればお呼び下さいますよう・・・。」

そういうと侍医は典薬寮に戻っていった。内大臣は東三条邸から帝の乳母である橘を呼び寄せると、帝の側に付き添わせ、内大臣は内裏に報告のため参内する。丸一日眠り続けた帝は、眠りから覚めると熱も下がり、起き上がることができるようになったが、立ち上がろうとするとめまいがして倒れそうになった。

「帝、まだもう少しこちらにお世話になりましょう。中宮様の件で無理なさりすぎですわ。二条院からの知らせを聞き、橘はもう心配で心配で・・・。もちろんこのことは皇后様には内密にしておりますが、東三条の若宮様が珍しく駄々をこねられて・・・。」

帝は橘から受取った薬湯を飲み干すと、苦笑する。

「雅孝には本当に悪い事をしてしまったね。さぞかし怒っているのであろう・・・。」

橘はうなずき、薬湯の入った器を受取ると今度は重湯の入った器を帝に渡して言う。

「もちろんですわ。ここに来る時もついて来られると・・・・。駄々を・・・。新しくお生まれになった弟宮を見たいとも言っておりました。本当に二条院の若宮様は中宮様によく似たかわいらしい若宮様ですわ。姫宮様がすぐにご逝去されたことは残念でしたが・・・。東三条の姫宮様は皇后様に良く似ておられますのよ。先が大変楽しみで・・・。」

すると部屋の外で何だか騒がしい。

「中宮様!」
「和姫様!誰か!和姫様を御留め申し上げて!」

と外では女房達が騒いでいる。

少し経つと、小袖に単を着ただけの中宮が帝のいる部屋に飛び込んでくる。

「帝・・・・。」

橘は帝のいる御簾から飛び出して中宮を止める。

「橘局、帝に会わせてくれないかしら・・・。帝をこのようにしてしまったお詫びを・・・。」
「中宮様、さ、お戻りになられて静養を・・・。」
「少しでいいの、帝は気が付かれたのでしょ。私の口から帝にお詫びを・・・。」

すると帝は少しふらつく体でありながら立ち上がって、御簾を出て中宮のもとに向かい、そして中宮を抱きしめた。橘は急いで帝に単を掛け人払いをする。

「和子、ゆっくり横にならないと・・・。私はただの過労、たいしたことはない。」
「播磨からすべてを聞きました。姫宮のことも、帝が寝食もされずに私に付き添っておられたことも・・・。そしてそれがもとで倒れられたことも・・・。なんとお詫びしたらよいか・・・。」

帝は涙でいっぱいの中宮をさらに抱きしめ、額にキスをすると言う。

「ずっと一緒にとお約束したではありませんか・・・。この件で私は本当にあなたが私にとって大切な人であると痛感いたしました。妻は綾子ただ一人と思っていたはずなのにおかしな話ですね。さあ、お戻りなさい。早く元気になって後宮に戻ってきてくださいね。」

中宮はうなずいて橘に支えられながら戻っていった。

「晃か政人は控えているか?」

政人が帝の御前に現れると、政人から御料紙を受取り内裏に向けて文を書く。

『尚侍及び更衣の入内を白紙にせよ。もうこれ以上後宮に人を増やすつもりはない。内裏に戻るまでの権限は関白太政大臣に任せる。   今上帝 常康』

書き終わると政人に渡し、帝は寝所に横になる。またもや帝の急な入内白紙の言葉は宮中を混乱させた。



《作者からの一言》

双子ですね^^;もちろんこういうことは想定内なのでしょうね^^;実はこれを機会に和姫を抹殺しようと思ったのですが、なんとなく情が出て復活させました^^この雅和親王がお子ちゃま編の主人公になります。どうなるかはお楽しみ^^

さて、帝が死んだ内親王を抱いてますね^^;本来であれば、穢れるということで、触ったりしないのです^^;もちろん出産現場には安産祈願の僧侶や陰陽師が付き添いますので、死んだ内親王にお札か何かまじないつけた上で帝に渡したのでしょう。歴史上には最愛の妃を看取って亡骸を抱いて泣き叫んだという帝が実在します。もちろんこのような帝は異例中の異例ですが・・・。
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