4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第41章 朧月夜の君
 春が訪れ、皇后は自分の二人の子供たちが側にいない寂しさを、毎晩弘徽殿を抜け出して小袿のまま庭に出て満開の桜を眺める。誰もここに皇后がいるなど思うはずがない。ここ二、三日うす雲がかかった朧月夜である。その朧月を見てさらに皇后はため息をついて、桜の木にもたれかかる。

「毎夜そちらにおられますが・・・どうかなさったのですか?」

皇后は驚いて声のするほうを見る。

「誰!」

そこには品のよい宿直装束を着た若者が立っていた。

「まるである物語の朧月夜の君のようで・・・。つい毎晩のように眺めておりました。どちらの女官か女房殿か・・・・。毎晩眺めているうちにお美しいあなたのことが好きになってしまいました。」

そういうと皇后の手を握り手の甲にくちづけをする。皇后は帝以外の男にそのような事をされたことがなかったので、顔を真っ赤にして固まってしまった。暗がりでその男の顔ははっきりとは見えないが、なんとなく帝とは違った感じの姿形のよい者で、ついときめいてしまった。

「何も言われないということはよい返事と取ってよろしいのですか?」
「え?」

そういうと、桜の木の下でその男は皇后の唇にくちづけをする。

「あなたの事を朧月夜の君と呼んでよろしいですか?また会いましょう・・・。」
「あの!あなたは?」
「桜の君とでも呼んでいただこうかな・・・。では失礼します。」

皇后は放心状態で、男が消えていくのを見つめた。皇后ははっと気づくと、急いで弘徽殿へ戻った。そして何もなかったように寝所に潜り込み単を頭の上まで被った。

「桜の君・・・・。」

思い出したようにそういうと、先ほどの出来事を思い出し、顔を真っ赤にしてなかなか眠ることができなかった。

その後も桜の君が宿直の日、同じ時間同じところで密会をした。いつもいろいろ話をしたりするだけで、最近公務が忙しく後宮に来ない帝へ募る思いを忘れ、楽しい日々を過ごした。

「朧月夜の君、この私と結婚していただけますか?」
「え、それは・・・。」

そういうと、皇后は桜の君を離して、弘徽殿の方に走り去った。

(皇后様付きの女官か、女房殿だったのか・・・。)

桜の君はそう思うと、宿直所へ戻っていった。

 次の日、帝は皇后のもとにやってきた。以前より皇后が帝に頼んでいたことについてのようだ。帝がなかなか夜のお渡りがなかったわけもこれにあった。

「綾子、以前より行きたいと言っていた、長谷寺詣の件だけど、いろいろ手配が整ったよ。近衛の者から数十人列に付かせる事にした。」

帝が扇を鳴らすと一人の男が帝の後ろに座り深々と頭を下げる。

「この者は今回の列の責任者である新頭中将源将直殿だ。昨年まで衛門府にいたので腕は確かだ。そしてとても信用できる者。安心してお任せしたらいい。」

頭中将が頭を上げると、皇后は驚いて声が出なくなった。

(桜の君様・・・。)

「どうかしたの?綾子・・・。」

皇后は顔を扇で隠したまま、震える。もともと桜の君は皇后の事を後宮に出仕している女官か女房と思っている事を皇后は知っていたので、声を出せば自分が朧月夜の君とわかってしまうと思った。萩は機転を利かせ代理で返事をする。

「綾子、ここのところこちらに顔を見せてないから怒っているのですか?今晩こちらに参りましょう。昨日までのように清涼殿に詰めておく必要はなくなったし・・・。」

そういうと、帝は頭中将を連れて清涼殿に戻っていった。

「どうかなさいましたか?皇后様・・・。」
「萩、ありがとう・・・。ちょっと気分がすぐれないの・・・一人にしてくれないかしら・・・。」
「では薬湯を・・・。」
「いいわ・・・とりあえず一人にしてくれないかしら・・・・。」

皇后は一時とはいえ、頭中将にときめき、微かな恋心を抱いていた。今まで帝の寵愛を一身に受けていたのにもかかわらず、一時の偶然的な出会い・・・。皇后は密かな恋心を帝のために心の中に封印しようとした。

(私は何という事をしてしまったのだろう・・・ただの半月帝が来られなかったというだけで、他の殿方と・・・。)

一方頭中将は弘徽殿の中に朧月夜の君がいないかと目で追って探していた。しかしそれらしい女官や女房は見つからなかった。

(本当に弘徽殿にいる方なのか?もしかして物の怪の類かそれとも幻か・・・。あのように美しいのなら物の怪でも幻でも構わない・・・。)

そう思った頭中将はこの日の同じ所同じ時刻に行ってみる。今日はいくら待っても朧月夜の君は来ず、桜の木下で座り込む。出会った時に満開であった桜はもう散って葉桜になろうとしていた。今夜は朧月夜ではなくきれいな満月の夜だった。

(やはり朧月夜ではないと会えない幻か・・・・。でも確かにあれは生身の体・・・。)

頭中将は苦笑をし、その場を立ち去った。

帝は皇后を弘徽殿の庭に連れ出す。

「ほら見てごらんよ、綾子。今日はなんてきれいな満月なのだろうか・・・。」

皇后は浮かない顔をして満月を見上げる。すると帝は皇后の腕を引っ張るとあの桜のところにやってきた。そして皇后を抱きしめた。

「ここなら誰も来ないよ。綾子・・・。」

そういうと帝は皇后に口づけをした。まるで桜の君と同じような行為に皇后は涙を流した。

「常康様、なぜわざわざこちらに?」
「弘徽殿では必ず二人きりにはなれないからね。ここはよく右近少将の頃、宿直の時にここに来て桜と月を眺めたところだ。もう桜は終わってしまったけれど、ここなら誰も来ないと思って・・・。綾子が長谷寺に行くと当分会えないから今のうちにこうしてじっくり綾子の顔を見ておきたかった。」

そういうと帝は皇后の額に帝の額をあわすと、微笑んで改めて口づけをした。皇后は桜の君との密会の記憶と重なってしまい、帝を離して弘徽殿に走って戻った。

(やはり相当綾子は怒っているのだろうか・・・。でも・・・。)

そう思うと帝はため息をついて弘徽殿に向かっていった。帝は弘徽殿の階段に腰掛けて、月を眺めながら皇后のおかしな態度について考え事をする。もちろん皇后が頭中将と密会を繰り返していたなどとまったく気が付いていない様子である。橘が帝に気が付き、声を掛ける。

「帝、どうかなさいましたか?このような場所で・・・。」
「綾子の態度が気になって・・・。今まであのような態度など見せたことなどなかったのに・・・。私のこと嫌いになったのかな・・・。」
「そんなことはありませんわ・・・。大事なお子様方と離れて過ごされておられるのできっと滅入っていらっしゃるのだと・・・・。長谷寺詣できっと気晴らしになられ、元気になられますわ。」
「ならいいが・・・。こういうときはそのままにしておいたほうがいいのかな・・・。ありがとう橘・・・。」

そういうと帝は弘徽殿に入っていく。そして皇后のいる寝所に入ると単を頭から被って泣いている皇后を見つめ、帝は横になった。

「綾子、長谷寺から帰ってきたら、こちらに孝子を呼び寄せよう。内親王であれば後宮で過ごしても問題はない・・・。同じ弘徽殿で一緒に暮らしたらいいよ。気が付かなくて悪かったね・・・。あなたから大切な姫宮を取り上げたような事をしてしまって・・・。」

皇后は帝の優しさに触れ、さらに桜の君との密会について自分を責めた。やはり反応がない皇后に対し、帝はため息をつくと立ち上がった。

「やはり綾子をそっとしておいた方がいいようだね・・・。清涼殿に戻る。別に怒ってはいないからゆっくり休みなさい。」

そういうと寝所から出て、橘を呼ぶ。

「どうかなさいましたか?ご気分でも?これから麗景殿へお渡りになりますか?」
「いや、もう夜が更けてしまった。和子には迷惑だろうから清涼殿へ戻るよ。」

そういうと橘に先導されて清涼殿に戻る。すると滝口のあたりで頭中将に出会う。

「頭中将殿、今日はあなたが宿直なのですか?ここのところ多いですね。」

帝に気が付いた頭中将は頭を下げる。

「皇后は相当機嫌が悪いらしい・・・。このようなことは初めてだ・・・・。眠気も覚めてしまった。良ければ話し相手になっていただけるとうれしいのだが・・・。」

そういうと清涼殿の片隅で二人は話し出す。

「頭中将殿はどうして頭中将になられてから宿直が多いのか?」
「私には他の公達と違って通う姫がおりません。家にいても仕方がないので、こうして毎夜他の者と変わって宿直を・・・。夜の内裏は静まり返り気分も落ち着くのでございます。」
「どうして通う姫がいないのですか?」

頭中将は苦笑して帝に申し上げる。

「お恥ずかしながら、理想的な姫にめぐり合えないだけでして・・・。しかし想う女(ひと)はいます。その方は朧月夜の夜に出会っていろいろ楽しい時間を過ごしました。しかし求婚をしたとたん消えてしまわれた。あれはもしかしたら桜か月の精かもしれません。まるである物語の朧月夜の君か、かぐや姫の様・・・。」

帝は微笑んで頭中将に言う。

「その姫と結ばれると良いですね。皇后は元服前に出会った初恋の姫。とても理想的な姫・・・きっと私は皇后が良い家柄でなくても妻に迎えていたことでしょう。しかし今まで機嫌を悪くしてもすぐに笑顔に戻る姫であったのに・・・今回は違うようだ。」

帝は苦笑して月を眺める。

「女性というものは秋の空のように変わりやすいものと聞いております。長谷寺詣に行かれて気分転換されるときっともとの皇后様に戻られます。」
「だといいね。普通の公達の妻であれば、のびのびと生活できるのであろうが、何かしら宮中は堅苦しい・・・。ここだけの話だけれど、あの時私が右近少将のままであったらと度々思うのですよ。そうすれば、皇后も東三条の若宮や姫宮と共に過ごせたのに・・・。頭中将、警備中に引き止めて悪かったね。少し気持ちがすっとしたよ。ありがとう。ゆっくり眠れそうだ・・・。戻っていいよ。」

頭中将は深々と頭を下げると、内裏の警備に戻っていった。帝も寝所に戻り眠りに付いた。



《作者からの一言》

皇后綾子の浮気発覚です・・・。今のところ帝はこのことは知らないと思います^^;もちろん頭中将も想い人が皇后など思っていないのです。この三角関係に一番悩むのはやはり浮気をしてしまった皇后なのでしょう・・・。このことが将来とんでもないことになるのですが・・・・。さあ、お相手頭中将が警備で同行する静養先の長谷寺にレッツゴーです^^;さてどうなる???
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