4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第42章 長谷寺詣
 皇后が長谷寺の向かう当日、朝早く旅立つ皇后を送るために弘徽殿に帝はやってきて、皇后の手を取ると、弘徽殿に横付けされた車まで見送った。お付の近衛の者達は、深々と頭を下げ、皇后やお付の女房達が車に乗り込むのを待つ。

「綾子、ゆっくりしておいで。私と孝子と一緒に待っているからね。」

皇后は扇で顔を隠しながら帝に会釈をすると、車に乗り込んだ。

「頭中将、頼みましたよ。」
「御意!」

そういうと頭中将は出立の合図をする。途中大和国に入ると、大和守やその従者達が列に合流し、警備を固める。そして大和の行宮(かりのみや)で一泊して長谷寺に向かった。長谷寺の宿坊の着くと住職が、皇后を部屋に案内し、長谷寺について話していく。宿坊から見えるきれいな牡丹が皇后の心を癒した。まだ満開ではないが、ちらほら咲いた牡丹はやはり花の寺として有名な長谷寺だけはある。特に今回は皇后のために寺を貸し切られていたので、ゆっくりと他の人を気にせず、半月間過ごすことができそうだ。

「萩、散策してもいいかしら・・・。近くで牡丹を見てみたいの。」
「それでは準備を致しましょう。警護の者も付けないと・・・。」

壷装束を来て頭から袿を被って庭を散策する。そしてある程度後ろから、近衛の者が警護をした。

「帝にも見ていただきたいですわね。こんなにきれいだなんて・・・綾姫様。摂津さんもつれてくればよかったですのに・・・。」
「ええそうね。長谷寺に来ている間、他の者達は里帰りできるのだからいいじゃないかしら。ここに連れて来た者たちもみんな気の知れたものたちばかり・・・。ゆっくりできるわ。あなたも羽を伸ばしなさいね。それとも内裏にいたほうがよかったのかしら?」
「何を言われますの?綾姫様。」
「知っているのよ。五位蔵人橘晃殿と仲が良い事くらい。」

萩は顔を赤くして黙り込んだ。

「秘密にしなくていいのよ。萩はそろそろお嫁に行ってもいいのよ。帝も同じ事を言っておられたのだから・・・。」

皇后は微笑んで萩を見つめる。

「ねえ萩、袿取ってもいい?暑いし、よく見えないもの・・・。萩は何も被ってないからよく見えるだろうけど・・・。」

萩は周りを見回して、警護の者の位置を確認したうえで、そっと皇后の袿をはずす。

「ありがとう萩・・・。やはりここの風は気持ちいいわ。後宮の堅苦しい空気と違うわ。」

萩は人の気配を感じるとまた皇后に袿をかぶせる。

「さあ、お部屋に戻りましょう。警護の者が近付きすぎですわ。まだこちらに何日もいるのですから、またゆっくりと・・・・。」

そういうと、萩は皇后を部屋に入れる。皇后は残念そうな顔で部屋に戻り、身なりをととえて脇息にもたれかかる。皇后はつまらなそうな顔をして、外を眺める。高い山の奥では、まだ山桜が咲いている。

(桜か・・・。桜の君は今日都へ帰られるのかしら?)

皇后はつい頭中将の事を思い出してしまい、顔を赤くした。ここまで来る道中も、皇后の車の横についていて皇后の体調などを伺いながら列の指揮をしていた。皇后は頭中将の声を聞き、自分の立場を見失いそうになった。

(常康様と出会っていなかったら、桜の君と結ばれていたかもしれない・・・。常康様がいなかったら?)

皇后は、最後に密会した日の事を思い出す。いつも微笑みながら雑談をしていた頭中将が、急に真剣な顔をして皇后を引き寄せ口づけをした後、求婚してきたあの時、はっと気が付いて、頭中将を離して走り去ってしまった時・・・。

(ここは常康様がいない。ちゃんと桜の君に本当の自分を知っていただかないと・・・。ここでなら会えるかしら?)

そう思うととても夜になるのが待ち遠しく思った。

 夜が来て皆が寝静まると、そっと起き出し袿を着て外に出た。そして廊下に座ると、三日月を眺めながら少し考え事をする。皇后は思い立った様に庭に下り、少し歩いた庭の石に腰掛けて夜空を見上げる。皇后はすらっと歌を詠むと、後ろで人の気配がする。

「その歌は誰に宛てた歌ですか?」

どこかで聞いたような声が近付いてきた。

「桜の君?」
「その歌は帝に宛てたのですか?朧月夜の君・・・。」
「え?」

そういうと頭中将は後ろから皇后を抱きしめる。

「あなたが、皇后様であったなんて・・・。どおりで身のこなし等に気品が・・・。」
「ずっと言えなかったのです・・・。でもいつ?」
「到着後の皇后様が庭を散策されていた時・・・被っていた袿を取られた時です。後ろで警護を致しておりました・・・。」
「そう・・・もし今日ここで会えたらきちんとあなたに言おうと思っておりました。」
「だからですか?私からの求婚を・・・。」
「私はあなたとは結婚できません。私には帝がおられるのですから・・・。」
「そうですね・・・。明日の朝、都に戻ります。帝に長谷寺に無事送り届けたと報告に戻らないといけません。朧月夜の君・・・。」

そういうと頭中将は皇后の手を引き引き寄せると抱きしめた。

「あなたへの想いは変わりません、しかしあなたは恐れ多くも帝の妃、それもご寵愛を一身に受けておられる方。私はこのあなたへの想いを我慢できません。あなたの心の中に、少しでも私の存在があるのでしたら、今夜を共にしていただけないでしょうか・・・。今夜限りであなたを諦めます。あなたとのよき想い出を・・・。」

皇后はうなずくと、頭中将は皇后を抱きしめた。そして自分の装束からあこめを脱ぐと、皇后にかぶせ、頭中将が泊まっている部屋に案内した。部屋に入ると扉の鍵をかけ皇后からあこめをはずすと、改めて皇后を抱きしめくちづけをした。

「あなたが帝の妃ではなければ、このままどこかに連れ去りたい・・・。せっかく理想の姫と出逢ったと思ったのにもう別れなければならないなんて・・・。来世では一緒になれたら・・・。」
「私はあなたのことが好きです・・・。もう少し早く出逢っていれば・・・。」

そういうと二人は抱き合い、夜を過ごした。

 夜が明ける前に二人は別れ、皇后は寝静まった部屋にこっそりと戻った。誰も気が付かない様子で皇后はほっとした。そして横になり、頭中将の肌の温もりを思い出し、眠気が覚めてしまった。朝が明け少し経つと、萩が皇后を起こしに来る。

「綾姫様、頭中将様が近衛の方々の半分を連れて都に一時帰られるそうで、皇后様にご挨拶をと参っておりますが・・・・。今大丈夫でしょうか?」
「ええ、もうだいぶん前に起きているから、大丈夫よ、お通しして・・・。」

すると、頭中将は皇后の御簾の前に座ると、深々と頭を下げる。先ほどまで一緒にいた二人は、皆に悟られないように装うが、やはりお二人共の顔は赤らんでいる。

「今から都に戻って帝に長谷寺まで皇后様を無事お送りした事を、報告に言ってまいります。またご帰郷の際にはお迎えに参上いたしますので、よろしくお願い申し上げます。何か帝にお伝えすることがございましたら何なりとお申し付けください。」
「頭中将様、ではお伝え願いますか?離れ離れになっていたとしても心は一つでございます。どうぞお元気で・・・と・・・。」

もちろんこの言葉は頭中将に向けられた言葉であって、そのことに頭中将は気づいた。しかし平静を装っている。

「では、御前失礼致します。」

そういうと皇后の部屋を下がり、数人の近衛の者を引き連れて馬に乗って都に帰っていった。皇后は萩たちに悟られないように頭中将との別れに涙する。

毎晩のように部屋を抜け出しては来るはずのない桜の君を待ってみる。数日が経ち、月が満月に近付いた頃、いつもと同じように抜け出していつものところで石に腰掛けて月を眺める。すると今日はいつもと違って宿坊の方が急に騒がしくなったので、慌てて部屋に戻ろうとすると、暗がりのためか小石につまずいて転んでしまった。皇后は起き上がって衣に付いた土を払い転んでかすり傷をした膝に付いた土を座り込んで丁寧に払っていると、ちょうど目の前に手のひらを差しのべる。

「大丈夫?綾子。」
「常康様?」
「そうですよ。つい綾子のことが気になりすぎて夢にまで出てくるようになったから、関白殿に無理を言って馬でここまで走って来たのだよ。でもどうしてこんなところにいるの?皆心配しているよ。さあ部屋に戻ろう。萩に言って手当てしてもらおう。」

そういうと帝は皇后を抱きかかえて部屋へ戻る。部屋では萩たちが心配そうに皇后を探していたようで、帝に抱えられた姿を見て一堂は安堵する。

「綾姫様!どちらに!」
「萩・・・眠れなくて・・・月と牡丹を見に行っていたの・・・。夜なら何も被らなくていいと思って・・・。」

萩は脹れながら皇后の手当てをする。

「常康様・・・いつ?」
「さっき着いた所だよ。予定よりも時間がかかってしまった。明日当たり空の車が来る。車では時間がかかりすぎて待てないから、橘晃と綾子の兄上とともに馬で走ってきた。」
「頭中将様は?」
「長谷寺から帰ってきた後から様子がおかしくてね・・・。毎日出仕していたのに最近休みがちで・・・。綾子の迎えを辞退したよ。家の者に聞くとなにやら寝込んでおられるらしい・・・。たぶん長谷寺往復で疲れが出たのかな。」
「そう・・・。」

萩は帝に白湯を持ってくると、いう。

「お部屋はこちらでよろしいのでしょうか?こちらは宿坊ですので大したおもてなしはできませんが・・・あの・・・あっちの方も・・・。」

帝は照れながら微笑むといった。

「わかっているよ。久しぶりの馬で疲れたからもう寝るよ。そうそう萩、控えている橘晃と左近中将殿に部屋を案内してやって欲しい・・・。」

萩はさっさと部屋を出て空いている部屋に案内した。帝は皇后の寝所に潜り込むとすぐに疲れているのか眠ってしまった。皇后は帝の側に横になると、帝の手を取り自分の頬にあてる。

(常康様・・・申し訳ありません。私・・・頭中将様のことが好きです。忘れようと思っても忘れられません。常康様は本当にお優しくていい方なのですが・・・。私を想ってわざわざこちらまで馬を走らせ来ていただいたのに・・・。このまま後宮には戻りたくありません・・・。)

皇后は自分の体の変化に気が付いていて、後宮を密かに出る事を考えていた。しかし出るにしても一人では何も出来ない。頭中将に体の変化を伝えようとしても一人では・・・。そこで皇后は意を決し、萩に伝えようとした。皇后は帝が熟睡しているのを確認して控えていた萩を庭に連れ出した。

「姫様お待ちください!!どちらへ!」

誰も来ないような場所に萩を連れ出すと、皇后は話し出した。

「萩、いい?あなたは私の味方よね・・・。何があろうとも・・・。」
「もちろんです!物心付いた頃より姫様のお世話をしております!」
「帝にも、お父様にもみんなには内緒よ!お母様には言わないといけないかもしれないけれど・・・。私、多分だけど身籠っているの・・・。」
「帝のお子ですか?そういえばまだ月の穢れが・・・。」
「帝のお子であればここまで悩まないわ。」
「では一体・・・・。もしや・・・。頭・・・。」

皇后はうなずくと、頭中将との詳しい経緯を萩に告白する。萩は顔を真っ青にして聞き入っていた。

「宇治にあるお母様の別邸があるでしょ。あそこはもともと亡きおじい様である院のもので、そう簡単には役人が出入りできるものではないのよ。帝でもよ・・・。そちらに病気として籠もろうと思うの。病気であれば里下がりが出来ると思うの。そちらで密かに御子を産んで・・・里子に出すしかないわ・・・。本当は帝の子として育てていくのがいいのでしょう。でももし、帝に似ていなかったら?これしか道はないのよ・・・。桜の君にもご迷惑はかけられないし・・・。もちろん実家にも・・・。何があっても、決して面会はしない。本当なら今すぐにでもここを出て行きたいのよ・・・。」
「わかりました。私の命に代えてでも!姫様をお守りいたします!」
「ありがとう・・・。とりあえず都に戻ってから・・・。」

そういうと二人は部屋に戻り眠りに付いた。

 朝を迎えると、帝と皇后は朝餉をとりながら会話をする。

「こちらに来た時は夜だったからよく見えなかったけれど、やはり花の寺といわれるだけありきれいだね・・・。あとで近くまで行って見よう・・・。護衛には君の兄上を付けるから、何もかぶらなくてもいい。ゆっくりと散策できる・・・。綾子、やはり気分がすぐれないの?」

返事のしない皇后を見て帝は心配をした。

 帝は皇后の手を引いて庭を散策する。皇后が来た時と違って、いろいろな牡丹が満開になっていた。帝は大変喜んで皇后に微笑む。

「無理を言って来てよかったよ。私の日々の気分も晴れそうだ。さっき私の車が到着したようだから、明日出立するよ。十分楽しまないと・・・。ね、綾子。綾子?」

帝は皇后の真剣な顔つきを見て驚いた。

「常康様、お願いがございます。」
「何?綾子の気分がよくなるのであれば、何でも聞いてあげるよ。」
「当分の間里下がりをお許しいただけないでしょうか?」
「そうだね、最近綾子は何だか変だ。きっと後宮の暮らしが窮屈なのかもしれないね・・・。期間は?」
「わかりませんが最低1年は頂きたいのです。」

すると帝は驚いたが、うなずき皇后の願いを聞き入れた。帝の寂しそうな顔を見て皇后は今にも今までの行いを告白しそうになったが、頭中将の事を思うとそれは出来ずにいた。

「綾子、きっと帰ってきてくれるのだろうね・・・。何だか胸騒ぎがするのだ・・・。」

帝の言葉に皇后はドキッとした。皇后は軽くうなずくと、また下を向いた。

「約束だよ・・・。」

そういうと帝は皇后を抱きしめた。皇后は改めて帝の優しさと心の広さを感じ涙を流す。皇后は涙をふき取ると、微笑んだ。

「きっと戻ります。きっと・・・。しかし御文を頂いてもお返事できないかもしれません・・・よろしいですか?」
「しょうがないね・・・。絶対戻っていただけるのならば我慢するよ。」

二人は無言のまま部屋に戻り、次の日朝早く都に向けて出立した。



《作者からの一言》

ほんとにとんでもないこと・・・。密通の相手の子を身籠る皇后・・・。わかったときには相当悩んだのでしょう。それなら関係を持つなと突っ込みたくなりますが、ここは平安時代。なんでもありかもしれません。

都の戻った頭中将は皇后に対する想いが募りすぎて恋煩いになってしまった^^;これ以上会ってはいけないとお迎えを辞退したのです。また出仕を控えたのも、やはり帝に後ろめたいことがあったからでしょうね^^;頭中将の初めてのお相手は皇后ではないのですが^^;初めてのお相手は後ほど出てきます^^;びっくりする相手ですよ~~~。
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