4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第44章 月姫として
 実は頭中将の別邸は月姫(皇后)の母君の邸の隣にあった。以前は一つの大きな別邸であったが、降嫁してしまった頭中将のおばあさまと、月姫の母宮のために半分に分け建て替えられたのだ。もちろん帝の曾おじいさまである亡き院の縁の別邸ということで、特別視されて検非違使でもそう簡単に入って来ることが出来ないのである。

 頭中将と月姫は車に乗り込むと、連絡係の萩を残して隣の別邸に向かった。そしてふたりは別邸に住む頭中将の祖母に挨拶に行った。

「おばあさま、こちらは朝ご報告した姫君です。気に入っていただけるとうれしいのですが・・・。」

すると月姫が自己紹介をする。

「月子と申します。突然こちらにお世話になる上、正装もせずお邪魔致しまして大変申し訳なく思っております。よろしくお願い申し上げます。」
「まあなんてかわいらしい!きちんとした良い姫をお選びになったのですね。でもどうして本邸にお連れしなかったのですか?」

頭中将は苦笑して言った。

「おばあさま、母上の性格はご存知でしょう。勝手に私の子を身籠った姫を本邸に入れたらどうなるかを・・・。あの方は息子が思い通りにならないと気が済まない方だから・・・。」
「そうですわね、私のところに連れてくるのが賢明ですわ。月姫、この私を気にせずに自分のおうちと思ってゆっくりなさってくださいね。将直、いつまでこちらに?」
「今日はこれから宿直ですので、明日から当分近衛府にお休みを頂くつもりです。もちろんおばあさまのお名前をお借りすることにはなりますが・・・。」
「よろしくてよ。このようなかわいらしい姫君をお迎えになったところですもの。半月でもひと月でもどうぞ。ご結婚のお祝いとして、私から数点贈り物をさせていただきましたわ。きっとお役に立つと思いますわ。」
「助かりますおばあさま。さ、部屋に案内しよう、月姫。」
「はい・・・中将様。」

月姫は手を頭中将に引かれて部屋に入ると、急なことにもかかわらず様々な調度が揃えられていた。

「おばあ様が言っていたのはこれかな?」

といって鏡や櫛、そしてきれいな反物を手に取り、月姫に手渡す。そして反物を月姫に合わせると言った。

「これはいい。これでかさねを作ろう。こちらは男物だな・・・これは私にかな・・・。」
「中将様、内裏とはまったく違った表情をされるのですね・・・。中将様、その反物お貸しください。この私があこめをお作り致しますわ。あこめなど何度も・・・そう何度も・・・。」

月姫はここ最近帝のあこめを何枚も作っていた事を思い出した。帝は必ず縫って差し上げたあこめを着てくれていた。そしてあふれんばかりの笑顔で喜んでくれた。

「姫、無理をなさらなくても・・・。家のものに作らせますよ。健やかな子を産んでいただけたらそれで・・・。あ、もうそろそろ出ないと・・・宿直ついでに休職届けも出してまいります。姫・・・。」

そういうと頭中将は姫を抱きしめると名残惜しそうに部屋を出て行った。部屋にいる女房達は、二人の仲睦まじい姿に見とれている。すると一人の女房が近付いてきて姫に聞く。

「私は高瀬と申します。頭中将様の乳母の子ですの。さすがに私が小さい頃よりお仕えしてきた方ですわ。このようなお綺麗な方を妻に娶られるなんて・・・。左衛門督から頭中将になられてから、ずっと恋わずらいを・・・。特に長谷寺からお帰りになられた頃から寝込まれていたのですよ・・・。ここ数日まで・・・。それが急に元気になられたと思ったらこうして素敵な姫が現れて・・・。先程もここにいるもの皆お二人が並んでおられる姿を見て、絵物語に出てくるようなお二人だと感心しておりましたの・・・。私達も頭中将様のあのような表情は見たことがありません・・・。」

姫は扇で顔を隠して苦笑する。

「わからないことがございましたら、この高瀬にお申し付けください。頭中将様からいろいろ任されましたので。こちらにいる女房達も皆頭中将様がお選びになったものたちばかり。決して頭中将様の母君に見つかるようなことは致しません!ご安心を!」

(また中将様のお母様のこと?よっぽどのお方なのね・・・。)

「中将様の母上様?」

すると様々な女房達が集まってきて母君の事を言い合う。話によると、中将の父は源姓でありながら、大納言まで登りつめこれからという時に病で亡くなった。まだ幼かった中将を母君一人でここまで育て上げた方で、一人っ子であった中将を大変可愛がり、厳しくしつけをされたという。先帝や今上帝の信頼もあり、元服後従六位上左衛門大尉から十年で従四位下頭中将まで出世したという母君ご自慢の息子。これからも出世間違いないということで期待も多く、母君の一方的な縁談に相当困っていたらしい。姑との仲もそういうことからか良くもなく、中将は母君が口を出されるとすぐにこちらのおばあさまを頼って逃げてくるというわけだ。内裏にいるときの中将よりもこちらや姫の前の中将が本当の中将だということもわかった。姫は内心少しほっとした。女房達も本邸の窮屈な生活からこちらに来ることが出来てうれしいようである。

 次の日のお昼前、宿直から帰ってきた頭中将は少し疲れた様子で姫の前に座る。そして姫が笑顔で迎えると疲れが飛んだ様子で微笑む。

(公達の妻の生活ってこんな感じなのね・・・。出仕から帰ってきた殿をこうして笑顔でお迎えして・・・。もし常康様があのまま少将であられたら・・・今頃中将になられいてこのように・・・。)

ふっと悲しげな顔をする姫に頭中将は気がついたが、気づいていない振りをして狩衣に着替えた。着替え終わると中将は姫の膝に頭を置くと、姫は微笑んで中将の頬に手を当てた。

「中将様、宿直でお疲れでしょう。私の膝でよろしければ少しお休みに・・・。」
「ありがとう、そうするよ・・・。」

そういうとすぐに眠ってしまった。姫は高瀬に単を持ってこさせると、中将の体にかけた。姫はもともとこのような生活がしたかったのだと気がついた。宮中のような何かと儀礼の多い堅苦しい生活ではなく、ごく普通の生活を夢見ていたことを・・・。このまま後宮には戻りたくはないと思った。

 一刻ほど眠ったのか、急に中将は起き出す。そして女房達を遠ざけると、胸元から文を取り出す。

「あなたに渡そうか悩んだのだけれど、今日御前に呼ばれてしまってね、ついでに宇治に行くなら渡してくれと・・・・。女房達は遠ざけたから、読んだらいいよ。出来ればあなたとの橋渡しを頼みたいようないい方をされたが、当分こちらにいるからと言ってお断りしたよ。」
「そう・・・。中将様・・・嫌な役をさせてしまったようで・・・。」
「いえ、私こそあなたのような方をこうして独り占めにしているのですから・・・。お腹の御子が生まれるまでこうして夫婦のようにさせていただけるだけでも・・・。」

姫は文を開くと帝が大変心配して宇治のことやいろいろ不自由がないのかなど、書かれていた。どう見てもかなり動揺した文字で書かれている。姫は中将にその文を渡すという。

「今の私にはこのような文は必要ありませんわ。中将様、この御文を燃やしてください。今持っておくわけにはいきません。これから一年は綾子としてではなく、月姫として生きなければ・・・。」
「いいのですか?萩殿にでも渡しましょうか?」

姫はそれでも首を横に振っているので中将は庭に降りると従者に火を持ってこさせ、姫の目の前で帝からの文を燃やした。

「これでいいのよ、これで・・・・。」

そういうと姫は部屋の奥に戻っていき、脇息にもたれかかった。そして扇で顔を隠し、中将にわからないように涙した。もちろん中将は気づいていたが、姫のために黙っていた。



《作者からの一言》

頭中将にとっては楽しい日々が始まる反面、綾子は色々なことに気付く。なんだかんだ言っても頭中将を通して帝を見ているのです。それと決別するために、帝からの文を焼き続けます。もちろん頭中将は綾子の気持ちをちゃんとわかっているのです。
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