4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第59章 中務卿宮の過労
 桜の季節が終わり、そろそろ初夏の日差しが感じられる頃、東宮の婚儀も終わり、都も落ち着きを取り戻した。桜の季節から数えてひと月半、中務卿宮は相当忙しい日々を過ごしていたらしく、数日に一度慌しい字で綾乃に文を送っている。


『本当に今、「橘は花にも実にも見つれどもいや時じくになほし見が欲し」と言いたい気分です。いつ綾乃に会えるかわからないけれど、妹宮の降嫁が終われば会えると思いますよ。終わればたくさん休みを取るつもりでいますので、待っていてくださいね。 中務卿宮雅和』


と、中務卿宮は万葉集の一つを引用した内容の文を橘の花がついた枝に結んで送ってくる。綾乃も中務卿宮のようにそのまま万葉集をそのまま引用して返事を書く。


『橘の蔭踏む道の八衢に物をぞ思ふ妹(いも)に逢はずして 』

(橘の影を踏む分かれ道のように、あれこれ思うのです。あなたに逢わないので。)


と言う内容の返歌をしたので、慌てたように中務省にいる中務卿宮から文が届く。その文の中には会えない理由を律儀に事細かく書かれており、最後にこれからはできるだけ毎日文を書くから変な気を起こさないでくださいと書いてあった。それを見た綾乃はつい中務卿宮の焦り様に噴出してしまった。毎日のように文が律儀に届くのを知って綾乃の父である右大将はとても中務卿宮のマメさに感心する。

「綾乃、本当に最近の宮はお忙しいようですね。東宮の婚儀も滞りなく済み、その後すぐに中宮様の御懐妊の発表、そして今は孝子内親王の降嫁の件で毎日朝早くから夜遅くまで中務省に詰めておられるのです。その上宿直までされるしね。時折内裏や東宮御所に出入りされるけれど・・・。中務省の者達を始め、関係各所の者達は過労で御倒れにならないか心配なのです。」

先月初めには分かっていた中宮の懐妊の発表を東宮の婚儀の後にしたのは中務卿宮の配慮のためなのだろうか。

「綾乃、今回のことで帝はたいそう宮をお褒めになってね、もしかしたら宮と綾乃の婚儀が早まるかもしれないよ。本当に今年に入って中務卿宮になられたとは思えない成長ぶりです。後見人の私も鼻が高い。」

そういうと、これから宿直である右大将は綾乃の部屋を急いで退室する。綾乃は中務卿宮が過労で倒れはしないかと言う言葉にとても心配する。そして夜も寝られないまま、朝を迎えた。

 一方どうしてもその日のうちにやってしまわないといけない仕事のため、急遽宿直をしていた中務卿宮は、中務省の自分の部屋の文机の上で色々な今までの儀礼や文献の書かれた書物を見ながらいつの間にか眠っていたらしく、朝日で目が覚めた。そしてやり残した仕事をこなしていく。やり終えたあと、続々と中務省の者達が参内してきたようで、騒がしくなる。

「中務卿宮様!昨夜もお帰りにならなかったのですか?」
「ああ、なかなか終わらなくてね。権大輔殿、これを陰陽寮に、これは中宮職に、そしてこれは今から私が帝の御前で報告してくるから。」
「中務卿宮様、昨日もこちらに籠もっておられたのですから、今日こそお帰りになられて休養を・・・。」
「ありがとう、権大輔殿。引き受けたことはやらないとね・・・。じゃあ清涼殿へ参内してきます。」

そういうと中務卿宮は少しふらつきながら、清涼殿へ参内した。帝の御前に座り、参議に東宮婚儀報告書やら孝子内親王の降嫁についての報告書を手渡すと、帝の言葉を待つ。

「中務卿宮、顔色が悪いね。最近中務省に籠もりっきりだそうだけど、大丈夫ですか?」
「はい何とか・・・大丈夫です。」
「大丈夫そうに見えんが・・・。このあと数日休みを取りなさい。後のことは権大輔殿にでも出来る仕事だから・・・。」
「はい・・・。」
「ご苦労でした。中務卿宮、早く下がって邸に戻りなさい。」
「御前失礼します。」

と言うと中務卿宮はゆっくり立ち上がったが、立ちくらみをし倒れてしまった。驚いた帝は御簾の外に飛び出して、中務卿宮を支えて人を呼ぶ。

「誰かおらぬか!中務卿宮が倒れた!後涼殿に運べ!典薬寮の者を呼べ!」

ありとあらゆる殿上人達が中務卿宮の近くに集まり、丁度そこにいた右大将が中務卿宮を抱えて後涼殿の一室に運んだ。清涼殿の女官達が中務卿宮の束帯を緩め、単を掛けると中務卿宮はうわごとで綾乃の名前を何度も言う。帝の侍医がやって来て診察をした後、帝の御前に報告する。

「中務卿宮様は過労でお倒れです。薬を処方いたしましたので、当分の間仕事はお控えになり、精のつくものをお召し上がりになりますとよろしいかと・・・。」
「分かった、ありがとう。下がっていい。」

帝は心配になって後涼殿の一室に向かう。すると中宮が側に付き添って中務卿宮の手を握り締めていた。

「帝、なぜ雅和に倒れるまで仕事をさせたのでしょう・・・。まだ中務省に入って半年と言うのに・・・。もともとこの子は小さく生まれたため、体は強いほうではありません。また先程から綾乃の名前ばかり・・・。」

と中宮が心配そうな顔で中務卿宮を見つめると帝が中宮に言う。

「ずっと中務省に籠もりきりでたまにしかこちらに来なかったから気がつかなかった。」
「先日も麗景殿に顔を見せにやってきた時も、何だか疲れた様子でおりました。休みを取るよう忠告したのですが、なんと雅和は言ったと思われますか?早く綾乃と一緒になりたい、早く中務卿宮として認められ婚儀の日取りを早めていただきたいと申しておりました。帝、雅和の願い、聞き入れていただけないものでしょうか・・・。あまりにも雅和がかわいそうで・・・。」

と、中宮は涙ぐみながら帝の前に手をついて頭を下げる。帝も綾乃の名前をうわごとで言う中務卿宮を見て、なんともいえない顔で中宮を見つめる。

「分かった、何とかしてみましょう。和子、あなたは身重なのだからあなたの体を大切にしなさい。心配要らないよ。雅和の思いを大事にするつもりだから。しかし、親王の婚儀となるから、早くとも年明け・・・。いいかな和子。さあ、麗景殿に戻り、体を休めなさい。あなたもあまり体のお強いほうではない。」
「雅和のこと、よろしくお願い申し上げます。」

中宮は手をつき深々と頭を下げると、共の者とともに麗景殿に戻っていった。帝は御簾越しに権大輔を呼び、中務卿宮の今後のことについて話し出す。

「権大輔殿、今色々大変だと思うが様々な事を考慮のうえ中務卿宮の婚儀の日取りを決めてはいただけないだろうか・・・。出来るだけ早く。」
「は、今からですと儀礼や色々なことがあり早くても半年後にはなると思われますが、それでも?」
「分かっている。宮内省、陰陽寮、中務省と連携を密にして滞りなく婚儀が終えるよう頼みましたよ。あと中務卿宮をふた月ほど出仕停止の措置を取る。中務卿宮が静養の為の出仕停止中、権大輔殿には宮の代わりを・・・。」
「御意。」

権大輔が下がり少し経つと、中務卿宮は意識を取り戻し側にいる帝に気付き驚いて起き上がる。そして慌てて帝に申し上げる。

「なぜ私がここに???もしかして倒れたのですか!なんという失態を・・・申し訳ありません父上!」

帝は微笑んで優しく中務卿宮に言う。

「咎めはしない。ずいぶんがんばりすぎたようだね。父である私こそあなたの過労に気付かないとは・・・。中宮もたいそう心配していたよ。明日からふた月ほど、出仕停止の措置を取った。お咎めではないので安心して静養しなさい。さ、横になっていなさい。今右大将殿を呼んだので、二条院で一人では寂しいだろうから、五条邸でお世話になるといい。残りの仕事は権大輔殿に頼んだ。仕事のことは忘れて十分静養をしなさい。これは帝である父の命令です。いいね。」

帝は右大将がきたのを見計らって入れ替わりで退出する。右大将は帝に深々と頭を下げて中務卿宮のいる御簾の中に入る。

「気が付かれましたか?さあ、五条邸に参りましょう。それと宮と綾乃の婚儀の日程が決まりそうですよ。今よい日取りを中務省と陰陽寮で選定中と帝に伺いました。間もなく決まるでしょう。良かったですね。」

中務卿宮は大変うれしそうな顔をして返事をする。

「そうなのですか!」

中務卿宮は身なりを急いで整え、右大将とともに内裏を退出して綾乃の待つ五条邸に向かった。うれしさのあまり眠気や疲れが吹っ飛んでしまったのは言うまでもなく、早く日程が決まらないものかと、楽しみに待つことにした。



《作者からの一言》

過労で倒れた中務卿宮・・・。綾乃と早く一緒になりたいがために一生懸命働きます^^;若いので何とかがんばれたのでしょうけれど、やはり極限を超えてしまって倒れたのでしょう^^;帝が右大将邸の五条邸で静養せよと命令したところなんか、何だか意味深ですね^^;やはり中務卿宮にとって綾乃は大切な存在であると痛感したのでしょうか?だって中務卿宮が一生懸命お勤めするのはすべて綾乃のためなのですもの・・・・。
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