4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第61章 決戦の庚申の夜
 三条大納言の庚申待ちの宴の返事が慌てて三条大納言より綾乃の部屋で橘を眺めていた中務卿宮に届けられた。内容は本来なら女人だけの宴であり、中務卿宮が来られて楽しまれるような内容ではない、どうしてもといわれるのなら三条大納言は宮中の庚申待ちの宴の参加を取りやめ、三条大納言家の宴の方に参加しましょうとのことでかなり焦った文面となっていた。もちろん中務卿宮は出席の返事を書き即清原に持って行かせた。清原に三条大納言家の様子を聞くとかなりごたついているようである。そして三条大納言からの文を渡した。内容を読むと、噴出してしまう。


『今回の当家の宴は二の姫がどうしても催したいといって聞かず、準備しているものです。ご招待する方々も、右大将殿の姫君以外は皆当家の身内となっており、どのような趣向で行われるかまではわかりません。もちろん宮さまが付き添われる方とは、右大将殿の姫君なのでしょう・・・。こちらといたしましては宮様の気分を害されないように私も参加させていただき、二の姫が右大将殿の姫を辱しめないよう監視させていただきます。静養中であられながら当家の姫がまたお騒がせしてしまいまして申し訳ありません。』


と慌しい字で長々しくかかれているので、相当中務卿宮の三条大納言家の庚申待ちの宴の出席に驚いたらしい。綾乃は文を見ながら噴出している中務卿宮を見て変に思ったらしく声をかける。


「雅和様?何か面白い内容の文ですの?」
「いや。何だか三条大納言殿の焦る顔を思い出してしまってね・・・。ちょっとなんて言うのかな、駆け引きって言うのが楽しいのですよ。もともとギャフンと言わせたかった人物だから・・・。」


何度も言うように三条大納言は皇后の兄に当たる。現在大納言邸はもともと皇后の実家の東三条邸。皇后の父左大臣はこちらのお邸を出て別の別邸から参内している。東三条邸に東宮である兄一の宮を慕ってよく二条院から遊びに来ていたが、皇后と中宮は仲がいいものの、温厚だった中宮の父宮を除き、皇后の身内の方々はこの二の宮であった中務卿宮を疎ましく思っていたのです。特にこの当時左大将であった三条大納言は二の宮が遊びにくるたび、冷たく当たっていた。それにもかかわらず、二の姫は中務卿宮を気に入ってしまったようで、いずれは東宮妃として育てていた姫の東宮妃入内を諦めて泣く泣く中務卿宮のお妃にと根回しをしていたのも報われず、こうして二の姫と中務卿宮のと板ばさみになってあたふたして、もちろんこの状況を中務卿宮は楽しんでいる。


「あの宮様、お客様ですが・・・。」


と、中務卿宮つきの女房が綾乃のいる部屋までやって来て言う。


「誰?」
「左衛門佐様でございます。お見舞いにいらしたそうで、いかがいたしましょうか。」
「分かった。今から部屋の戻るよ。綾乃も来る?きっとびっくりするよ。綾乃も行くから几帳の用意も。」


左衛門佐は弾正尹宮の長男で元服の折に、源氏を賜って臣籍に下った。中務卿宮と同じ歳で妹宮の夫である。弾正尹宮は先帝の同腹の弟宮で、左衛門佐の母君は帝の母君の双子の妹である。


「待たせたでしょう、左衛門佐殿。」
「いえ、右大将様から宮が回復されたと聞いて先触れもなく来てしまいまして、申し訳ありません。そちらは?」
「許婚の右大将家の姫です。さ、こちらが左衛門佐殿ですよ。どなたかに似ていると思わない?」
「まぁ、恐れ多くも帝に・・・。」
「私もはじめて会った時は驚いてしまったのですよ。さ、綾乃。大事な話をするから部屋にもどっていて。」


綾乃が退室するのを見届けると、中務卿宮は話し出した。


「さ、くつろいでいいよ。堅苦しい言葉はやめて、いつものように二人の時はね。位の違いはあっても友達なんだしね。どう、孝子との新婚生活は?孝子はちょっとわがままなところがあるでしょ。」


顔を赤くして左衛門佐は答える。


「毎日孝子は楽しそうにやっているよ。宮中と違って色々堅苦しいことはないからね。本当に私たちの婚礼のために過労で倒れるなど・・・。悪いと思っているよ。あ、そうだ、これを帝から預かってきた。だいぶん回復したと聞いて安心されていたよ。」
「わざわざありがとう。ところで、僕のことで何か発表はあった?」


帝からの文を渡した左衛門佐は首を横に振る。中務卿宮は帝から手紙を見る。期待するような内容の手紙ではなかったが、お見舞いの言葉が書かれている。期待している内容とは、やはり婚儀の日程のことである。右大将も話そうとはしないので気になっていた。


「宮、次の庚申待ちはすごいらしいよ。内容は分からないのだけど。宮は行けないのだね、残念。」
「ううん。僕は三条大納言家に行く予定なのだからいいよ。もしかしたらこちらのほうが面白いかも・・・。」
「ああそれね、孝子も呼ばれている。何か楽しいことがあるって聞いたよ。どうして宮が?身内だけの宴だって聞いたけど?」
「右大将の姫もなぜか呼ばれてね。面白そうなので、付き添っていくことにしたんだよ。」
「ふうん。」


二人は中務卿宮が休んでいる間の出来事をこと細かく歓談した。二人の華やかな話し声は、綾乃の対の屋まで響き渡った。中務卿宮は左衛門佐に帝への文を託して、左衛門佐と別れる。


(いつになったら婚儀の日程が決まるのかな・・・。まあ父上も早めると断言されたらしいのだから焦る必要はないか・・・。)


と思いながら、脇息にもたれかかってうたた寝をする。梅雨に入ってしまったのか、しとしとと雨が降り出した。


 数日がたち、この日は庚申待ちの宴の日。あいにくの雨模様に億劫になりながら、中務卿宮は布袴、綾乃は唐衣を着て中務卿宮家の車で三条大納言邸まで出かける。到着すると、わざわざ三条大納言が出迎えに来る。


「わざわざすみませんね。私のわがままで無理やりお邪魔して。とても楽しみにしているのですよ。どのような『趣向』かを・・・。さ、姫。」


そういうと、綾乃の手を取り車から降ろす。綾乃は顔を扇で隠しながらゆっくりと降りてくる。


「ちなみに、私は姫の『付き添い』ですので、姫の後ろで結構です。お構いなく。」


中務卿宮は苦笑して会場に向かう。大納言に案内されるまま、綾乃は座る。ずらっと大納言縁の姫君や公達の妻達が並んでいる。中務卿宮は綾乃の後ろに座り、様子を伺う。


「まぁ兄宮様、お体のほうはいかがですか?綾乃久しぶりね。」


声のするほうを振り向くと、中務卿宮の妹宮孝子が立っていた。


「まぁ何とかね。孝子も幸せそうで何よりです。」


綾乃は孝子に頭を下げ挨拶をする。すると二の姫が入ってくる。そして中務卿宮に申し上げる。


「まぁ、宮様。そのようなところに・・・。上座にいらっしゃって・・・。」
「申し訳ありません、私はただの付き添いですのでこちらで結構です。」


と中務卿宮は微笑む。綾乃は二の姫に挨拶をするが、二の姫は綾乃の顔を見るなり、にらみつけて上座に座る。招待客が揃ったのを確かめると、二の姫が宴の趣向を告げる。


「本日は皆様にお集まりいただき感謝しておりますわ。本来でしたら縁者達だけの宴ですが、本日は特別なお客様をお呼びいたしました。右大将様の姫君。今をときめく中務卿宮様の婚約者であられますが、私は認めたくありませんの。そこで、丁度宮様もここにいらっしゃることですから、この姫君と賭けをしようと思っておりますのよ。もちろん賭けるものは宮様。負けたほうが宮様から身を引くのですよ・・・。」


中務卿宮は予想通りの展開に苦笑して綾乃にこっそり言う。


「大丈夫です。綾乃は・・・。いつも通りにやれば勝てる相手です。」


貝合わせや、歌、香あわせ、様々な問題が出され、二人とも難なくこなしていく。右近の橘の姫、左近の桜の姫と言われる姫君たちの対決に、大納言も、招待客も息を飲んで見とどける。琴の対決では、中務卿宮の龍笛も加わって、招待客を沸かせる。二の姫の琴の響きはすばらしいものではあるが、さすが雅楽一家といわれる綾乃のほうが一枚上手で、当代一といわれる中務卿宮との合わせは皆を感激させた。二の姫の父である大納言も感激する。


「今年最初の宮中の庚申待ちの宴を思い出してしまいましたよ。右大将殿と宮のあわせ・・・。あの時は琵琶と笛だったが、そのときのようにすばらしい!さすがあの源博雅卿を祖とする一家の姫君。うちの姫など足元にも及ばん!二の姫、姫の負けですよ。身を引きなさい。」


まだ納得しない様子の二の姫に、大納言はあきれ果てた。すると中務卿宮が、立ち上がって言う。


「このように楽しい宴は初めてです。お礼に私達から出し物を一つ。姫お得意の五節の舞を・・・。いい?綾乃。」
「はい雅和様。」


綾乃は中央に立ち、中務卿宮が龍笛を吹き綾乃が華麗に舞い始める。本当の五節舞とは違っているが、宮のすばらしい笛の音と、綾乃の華麗な舞で見るものすべてを魅了する。以前後宮で綾乃が遊びで舞っている姿を知っている孝子内親王は懐かしさのあまり微笑む。綾乃は誰に教えてもらったわけではなく、二年間後宮に出仕した中、数日間で覚えた舞である。舞が終わり、中務卿宮と綾乃が深々頭を下げると、会場はどっと沸いた。大納言はとても満足な様子で中務卿宮に声を掛ける。


「さすが!感動してしまいましたよ。宮中の宴に行かなくて良かった。」
「お褒め頂き、ありがとうございます。もうこれで勝負はつきましたね。あとは二の姫君の気持ちの整理の問題だと思いますので、私達はこれで帰らせていただこうと思います。とても楽しい庚申待ちの宴でした。」


中務卿宮と綾乃は深々と頭を下げて、会場を退出した。大納言はわざわざ車寄せまで送りに来る。


「宮様、今回は当家の姫がご迷惑をおかけいたし、申し訳ありませんでした。私からきつく言っておきますので、お許しください。また右大将の姫君も当家の姫がこのような事を仕掛けたことに気分を害されたことでしょう。今日のことはいい薬になったことでしょう・・・。」


すると綾乃が言った。


「そんなことありませんわ。とても楽しい宴でまるで後宮にいた頃のようでした・・・。私も良い経験をさせていただきました。ありがとうございました。」
「三条殿、遅くまでお邪魔いたしました。さあ、綾乃帰ろうか・・・。」


中務卿宮は綾乃を抱きかかえて車に乗り込む。車の中で二人は寄り添い宴の事を話し時折楽しそうな笑い声が車の外に漏れる。


「綾乃、本当に楽しかったね。」
「久々に後宮の遊びを思い出して燃えてしまいしましたわ。」
「そうだね。綾乃は後宮仕込みだから最強だよ。だから勝てるって言ったでしょ。」
「本当ね・・・。」


もちろん三条大納言家の二の姫は悔しさと恥ずかしさのあまり何日間も部屋から出てこなかった。この宴の噂は次の日には都中に広がり、自業自得ではありますが、三条大納言家の姫君の評判が落ちてしまったことは言うまでもありません。



《作者からの一言》

桜姫はやはり何でも出来る綾乃には勝てませんでしたね^^;

さて、綾乃の実家ですが、醍醐源氏の末裔という設定です。醍醐源氏にはあの「陰陽師」でおなじみの源博雅が有名です。もちろんこの源博雅という人物は実在しており、雅楽の得意な人でした。後世に残る雅楽の曲も作っていますし、本も出しているそうです。醍醐源氏は清和源氏や村上源氏と違って、あまり活躍のない源氏です。ですので綾乃の実家は本来でしたら、従五位雅楽寮の頭程度の出世の家系なのですけれど、綾乃の祖父や父右大将が例にない出世によりここまで登りつめています。これほどの出世する人はいないのでしょうけれど、フィクションですのでご了承ください。
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