4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第69章 庚申待ちの宴と急な不幸な出来事
 梅雨の明けた夏の暑い日の頃のことだが、いつものように東宮は東宮御所にて綾乃を側に置きそして帥の宮と共に書物を読みながら一日を過ごす。最近綾乃も一緒に書物を読む。すると帥の宮も驚くほど、綾乃は呑み込みが早い。


「女御がもし男であればきっと右大将殿のように出世間違いないのであろうね。姫であるのがもったいないよ。」


と帥の宮が綾乃を褒め称える。すると綾乃は扇で顔を隠して照れる。


「綾乃はなんでも呑み込みが早いからね・・・。こういうことに関しては嫉妬してしまうよ。」


と東宮は冗談半分で綾乃に言う。


「東宮はなんというか女性的な性質ですね・・・。勉学よりも歌や雅楽など、みやびなことの呑み込みが早い。お顔も女性的ですしね・・・。」


と帥の宮が言うと、東宮は顔を赤らめていう。


「兄上!私は兄上と違って勉学は苦手ですけれど・・・。」


綾乃は東宮と帥の宮のやり取りを見て、微笑む。帥の宮は東宮の耳元で、綾乃に聞こえないように話す。


「例の雅姫、母上の皇后も御覧になりたいそうですよ・・・。帝のお耳にも入ったらしく、是非次の庚申待ちの宴の時に余興をと・・・。もちろん後宮主催の内々のもので・・・。」
「兄上、あのような恥ずかしい姿、父上にお見せするなど・・・。」
「いやきっとお気に召されると思うよ。」


渋々だが東宮は余興として一度きりならということで了承する。庚申待ちの宴まであと半月、あれよあれよという間に事が運び、今回の後宮主催の庚申待ちの宴は有志による仮装と決まる。庚申待ちの宴の日にちが近づくに連れて、後宮は慌しくなっていく。そして誰から洩れたのか、宮中に東宮が姫姿になられるという噂が流れる。誰も東宮に声を掛けようとはしないが、東宮が前を通るたびお辞儀をすると何かこそこそと話す。


 いよいよ庚申待ちの夜がやってくる。東宮は後宮の一室を借り、姫姿になる。綾乃は東宮だけ変装させてはいけないと、自分も殿上童の格好になる。綾乃は直衣姿になり、腰より下まで伸びた長い髪を結い上げ束ねる。もちろん右大将によく似たところがあるので、可愛らしい殿上童となる。先に着付けが終わった綾乃は様子を伺いに東宮が着替えている一室に入る。


「雅和様?」


綾乃は着替え途中の東宮を見て目を疑う。まさしくそこにいるのは和子女王だから・・・。東宮は綾乃に気付き、声を掛ける。


「綾乃、殿上童の格好、とても可愛いよ。やはり変だろ、この格好・・・。あまり好きではないのだけど・・・。よくこんな衣装を毎日着られるね・・・。」
「まだ今日は夏の正装なので軽いのですよ・・・。本当に雅和様は女王様そのものですわ。」


最後に髪を束ね、女官が用意したつけ毛を付けると、どう見ても姫君である。着替え終わると、宴の行われる常寧殿へいつもと反対で、綾乃が東宮の手を取り、誘導する。


「さあ、姫君、行きましょうか・・・。」
「綾乃・・・冗談きついよ・・・。」
「今日だけです。今日は私が男役なのですから、いつも雅和様がしてくださっているようにいたしますわ。」


東宮は意を決して今夜限りの姫になりきろうと思った。会場に入ると、帝をはじめ後宮中の者達が集まっていた。あるものは白拍子にある者は男装に半分くらいの者達が変装していた。東宮の雅姫と綾乃の殿上童が入ってくると、すぐに二人は帝と皇后の前に座り、丁寧に招待のお礼を述べる。


「おお、まさしく和子女王の若い頃ではないか・・・。そう思わないか?綾子。」
「そうですわね。和子様そのもの・・・。綾乃もとても可愛らしい殿上童ですね。」


帝と皇后はたいそう喜んで、帝は姫姿の東宮を横に座らせて宴の間中、酌をさせる。


「父上、もうこれっきりにしてくださいね・・・。」
「何を言うのだ。またその姿で清涼殿へおいで。可愛がってあげるから・・・。」
「まぁ!帝。お戯れが過ぎますわ。この姫は東宮雅和様ですのよ。臣下のものにこのような姿を見せては・・・。」
「冗談冗談。本当に男にしておくのがもったいない子だ。帥の宮の言うとおり、姫宮であれば降嫁の申し入れが耐えない姫宮になられるだろうね。」


和やかな雰囲気に釘をさすように参議橘晃がやってくる。そして何か書きつけたものを帝の女官に渡し下がっていく。女官はその書付を帝に渡すと目を通し、東宮にも見せる。


『三条大納言殿、東三条邸にて倒れ危篤。』


東宮は立ち上がって、別室にて着替える。そして帝と共に清涼殿へ戻り、話をする。するとまた参議が急いで入ってきて帝に申し上げる。


「申し上げます。東三条邸の使者によりますと、三条大納言様たった今ご薨去とのことでございます。」
「わかった。後ほどお悔やみを・・・。」
「御意。」


参議が下がると、東宮は帝に言う。


「東宮女御にはどのように伝えましょう。懐妊中の大事な時期ですし・・・。」
「とりあえず、伝えなければならないであろうな・・・。」


帝は東宮女御桜姫の女官を呼び、三条大納言の死去について話す。すると女官は驚いた様子で下がっていく。夜が明けると、三条大納言逝去の噂がもう都中に流れ、もちろん桐壺の東宮女御の耳にも入る。三条大納言が亡くなったことで、あれほど栄華を極めた東宮女御桜姫は後ろ盾をなくす。一応祖父である左大臣が代わりを務めると言うが、この秋の除目をもって亡くなった三条大納言に家督を継がすつもりであったから、もう大変。もともと持病で休みがちだった左大臣はショックのあまり倒れてしまい出仕を断念してしまった。大納言の年が離れた弟君はまだ少将という身分。到底女御の後ろ盾は出来ない状態である。人々は皆、落ちぶれていくであろう東三条摂関家と懐妊中の東宮女御桜姫を不憫に思う。もちろん皇后も左大臣が後ろ盾なのだが、皇后に関しては母宮に財があるので、あまり支障はない。というよりあまりあてにしてはいなかった。


 三条大納言の葬儀中、桐壺の東宮女御は里下がりをし葬儀終了後、喪に服しながらも後宮に戻ってきた。東宮は桐壺の東宮女御を見舞いに行く。


「桜姫、この度はお父上殿が急に亡くなってしまって大変だったね・・・。これからいろいろあると思うけれど、健やかな御子を育んでください。」


と東宮は桐壺の東宮女御に優しい言葉を掛けた。


「心にもない事を・・・。わたくしも、このお腹の子も邪魔だとお思いなのでしょうに・・・。」


と桐壺の東宮女御が言うと、女官達は焦って女御の口止めをする。そして女御の乳母が、東宮に対してお詫びをする。


「真実を述べただけです。東宮はこうして私が懐妊したと言うのにこちらに一度も来て頂けず、東宮御所の女御ばかり大事になさいます。入内後一度たりとも直接優しい言葉をかけてもいただけず・・・。懐妊を知ったときはこれで東宮はこちらに来ていただけると思っておりましたのに・・・・。」
「女御様!口を御慎みに!わざわざ東宮様がこちらに足を運んでいただけましたのに・・・。」


東宮は立ち上がって、退出際に女御に言う。


「勝手にすればいいよ。もともとあなたが御所にいる女御と仲良くしていただかなかったからです。ここに留まるなり、実家にお戻りになるなり、好きにしてください。では。」


女御は心に思っていることと反対の言葉を発してしまったことに自分を責める。


(私って・・・せっかくこうしてわざわざ来ていただき、初めて直接優しい言葉をかけていただけたのにもかかわらず・・・。こちらに移って懐妊を東宮様に知らせてから、何度もお見舞いの文をいただいたのに・・・。私ってどうして裏目裏目に・・・・。)


女御は御帳台の中に入って父君の死の悲しさと、自分の行いを悔やんで泣き叫ぶ。


 それから数ヶ月が経ちあれからというもの、今まで来ていた東宮のお見舞いの文さえ一通も来なくなってしまった。


 間もなく出産のために東三条邸のほうに里下がりをする。主のいない東三条邸は、ひっそりとして今までの優雅さなどこれっぽっちもなかった。そして女御は気がつく。


(お父様がいたおかげで私は優雅な生活が出来たのね・・・。なのに私はわがままを言って二の宮様でなくては嫌だと言っていた・・・。こうし
て一番慕っていた方の御子を身籠り本来なら幸せなのにもかかわらず、お父様にばかり愚痴を言って・・・。東宮様が通われなくなったのも一番私のせいなのに・・・。きっと私がお父様を殺してしまったのと同じなのだわ・・・。そうよ私が全部悪いのよ・・・。後宮に戻ったら改心して綾乃姫のように奥ゆかしくなって仲良くしよう・・・。)


と思った。東三条邸では残っている財を少しずつ削って、女御の出産準備に充てる。女御の出産のための準備もきちんと行い、いつでも出産できるように整えた。あれほどわがままに育った女御であったが、今回のことにとても感謝して、正室である母君にお礼を言う。母君も女御の変わり様に驚く。


「桜姫、いい?亡き殿の残していただいた財と私の実家から少しですがあなたのためにきちんとこれからの事をさせていただきます。これからあなたのためにいろいろ費やさないといけませんが、安心して。」
「三の姫は?見当たらないけど・・・。」


母君は苦笑して答える。


「あなたのことで手がいっぱいなので、右衛門督のお兄様の養女にしていただいたのよ。丁度姫君がいないから・・・。」
「そう・・・私のために・・・。」
母君によると、やはり大納言が亡くなってから、下働きのものや、女房達、従者達を出来る限り削減し、最低限度の生活をしているという。母君も昔の衣装などを出してきて縫いなおし、できる限り女御が後宮で恥ずかしい思いをしないようにと節約してきた。収入といえば、荘園から送られてくるもののみ。大納言が出仕時に朝廷から頂いていた禄はないのである。家族を養う分ぐらいはあるのだが、後宮に姫を入れている分余計に財がかかるのである。母君の父である正四位下刑部卿源晟朝臣は可愛い孫のためにと、できる限りの援助をしてくれている。そのような事をまったく知らなかった女御は自分を恥ずかしく思った。


「亡き殿のお父上、左大臣様はあなたの後ろ盾になっていただけるそうだけど、相当お体が悪いそうなので、無理を言えません・・・それでなくても皇后様のお父様・・・。皇后様のことでも手がいっぱいですものね・・・。期待されていた一の宮様が廃太子されただけでも左大臣様にとって心労であったと聞きましたし・・・。今回のことでも・・・。あとはあなたが皇子を授かればね・・・。しかし、右大臣様の女御様が懐妊されたのですから、もしあちらにも皇子が授かったら、あちらの皇子が次期東宮になられるでしょう・・・。今となっては右大臣様のほうが権力も財もご寵愛も上ですもの・・・。後ろ盾のない今回の東宮様の立太子は本当に異例のもの・・・。権力と財力がある家の姫が入内されるということで可能になったのですから・・・。本当に残念だけど・・・。」


女御はここに滞在中は必ず無理を言わないように心がける。母君がいろいろ申し出ても遠慮し、できる限りに実家に負担をかけないようにする。何でもかんでも遠慮をする女御を見て、母君はとても女御の事を不憫に思う。


 本当に不幸というものは重なるもので、女御が里帰りの数日後、寝込んでいた左大臣がついに持病のため逝去した。やはり摂関家のひとつ東三条摂関家が志半ばにして大事な二人をなくすことは大騒ぎとなる。まだ秋の除目には日にちがあり、それまで左大臣、大納言の一席は空席のままとされた。その上、これを機会に関白太政大臣は年老いたため引退を表明し、家督を内大臣に継がすことも表明していた。次に誰が関白太政大臣となるのか、それとも適任なしとなるのか、朝廷内は騒然となる。その上、東三条の女御は予定日を過ぎても産気づかず、やっと産気づいたと思えばたいそうな難産であった。ある日の午後、清涼殿と東宮御所に東三条邸より使いが来る。


「東宮に申し上げます。」


東宮が返事をすると使いのものが申し上げる。


「東三条の東宮女御様、皇子をご出産されました。しかしながら即日薨去。女御様におかれましては産後の肥立ちが悪く危ない状態との事。」
「わかりました。ご苦労であった。下がっていいよ・・・。」


同じ内容が帝にも伝えられる。東宮は東三条邸に使いを出し、様子を伺わせる。帝は東宮を清涼殿に参内させる。


「東宮、本当に残念な結果になってしまったね・・・。不幸は重なるというが、二度あることは三度ある・・・。」
「そうですね・・・。東三条邸に使いを出しました。女御だけでも助かって欲しいのですが・・・。」
「やはりあの家系は怨まれているのであろうか・・・。去年の帥の宮の件といい・・・すべて東三条家に縁があるもの・・・。ふう・・・。皇后も気をつけないといけないね・・・。」
「去年の帥の宮の件のときに一応皇族内の東三条家縁のお払いを僧都に頼んでおきましたが・・・。」
「それなら安心だ。一応また書状でも送っておくことにしよう・・・。」


一の宮薨去のあと、腕のいい女医を使わせ、何度も東宮の使者が東三条家に出入りをし、細かい様子を東宮に報告する。よくならないという様子を聞いて、東宮はため息をついて公務に当たる。犬猿の仲といわれた綾乃も心配でならなかった。東宮の母宮である和子女王が東宮を出産の後、長い間生死をさまよいずっと帝が付き添っていたことがあったが、東宮が帝に東三条邸に行きたいと申し出ても、許しが出ない。やきもきした状態で時間ばかり過ぎていった。二日が過ぎようとした夜更け、寝所で寝ていた東宮は御所内の騒がしさに目を覚ます。東宮は起き上がり、籐少納言を呼ぶ。


「何か騒がしいのだけど・・・。なにかあったのかな・・・。」
「中宮職の大夫様がこちらに参内され、ただいま宿直中の春宮大夫様と話しておいでです。間もなくこちらに報告があると思われるのですが・・・。」


少し経って春宮大夫が寝殿に入ってくる。


「何かあったのですか?このような夜更けに中宮職大夫が来るとは・・・。」
「申し上げます。ただいま東三条邸から使者が戻って来たのですが、残念ながら東三条の女御様薨去との事です。」
「そうか、本当に残念だ。帝には伝わっているのか?」
「はい。そのように中宮職から・・・。」
「ご苦労であった。葬儀の方は摂関家の姫として盛大に行うように通達して欲しい。」
「御意。」


大夫が下がると同時に綾乃がこの騒ぎで起きてきて寝殿に来る。そして心配そうに東宮を見つめる。東宮はその場に座り込み、涙を流す。綾乃は東宮に近づき、肩に手を置く。


「綾乃、やはり桜姫はだめだった・・・。なんという事をしてしまったのか・・・。ずっと冷たくあたってしまっていた。きっと桜姫は無念だっただろうね・・・。」


綾乃は何もいえないまま東宮に付き添っていた。


「綾乃、大事な皇子も失い、そして女御も失うとは・・・。本当に私はついていない・・・。」
「そんなことはありません。私のお腹にも雅和様の御子がおりますわ。決して亡くなった若宮のようにならないよう、精一杯愛しみます。」
「そうだね、もう一人御子が綾乃のお腹にいるのだもの・・・。」


東宮は微笑んで、綾乃を引き寄せる。綾乃は東宮の涙をふき取り微笑む。気を取り直して、再び喪に服す。


 東宮の喪中明けを待ち、通常より少し遅れて秋の除目が発せられた。太政大臣の引退、左大臣、三条大納言の逝去のより、今まで以上に入れ替わりが激しい。今回、関白太政大臣は置かれず、左大臣に内大臣であった土御門摂関家藤原朝臣忠治卿。右大臣はそのまま。内大臣は異例ではあるが、右大将源朝臣将直卿が兼任で就くことになった。醍醐源氏では最高の位に就いたことになる。もちろん東宮妃の父君であるという理由もあるが、やはり帝の信頼もあるからである。さらに摂関家の権力がさらに弱まる形の除目となったのは言うまでもない。



《作者からと一言》

桜姫が死去してしまいましたね^^;ちょっと同情するかな^^;これでますます摂関家と源氏の対立が激しくなりそうな気配?
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