4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第71章 黄櫨染御袍
 師走のある夜、東宮御所寝殿内の御帳台にて、東宮と綾乃は寄り添って就寝していた。朝方綾乃ははっきりとした夢を見る。


「黄櫨染御袍・・・。」


と綾乃はつい寝言で言ってしまい、目が覚める。黄櫨染御袍といえば、帝のみが着用することが出来る禁色である。綾乃は何度か公式儀礼で帝が着用していたのを拝見している。


「綾乃・・・何か言った?こうろ・・・?」
「いえ、何も・・・。」
「そう・・・聞き違えか・・・。」


黄櫨染御袍という言葉を口にするだけで恐れ多いことである。それでなくても綾乃はそれを着た東宮の夢を見てしまったのである。まだ帝も健在であり、譲位さえ決まっていないのにもかかわらず、このような夢を見たという事を公に口外すると、何か悪いことになるような気がして、黙ることにした。もちろん綾乃の朝方に見るはっきりとした夢が、正夢になることが多い。東宮や、御帳台の側に控えている女官達が寝言を聞いていないかとドキドキしながら東宮の隣で寝ようとしたがなかなか眠れなかった。結局夜が明けるまで起きたまま、東宮の寝顔を眺めていた。視線を感じた東宮は目を覚まし、綾乃の顔を見て微笑む。


「おはよう・・・綾乃・・・。ああよく寝た・・・。やはり朝はよく冷えるね・・・。やはり一人で寝るより綾乃と寝る方が暖かくてよく眠ることが出来る。どうかした?」


綾乃は首を横に振って起き上がると、東宮は綾乃に衣をかぶせて、東宮だけ御帳台から出る。そして上着を羽織ると女官が持ってきた角だらいで顔を洗い、外に出て大きく体を伸ばす。


「籐少納言、綾乃はあまり寝ていないようだから、もう少しゆっくりさせてやって。」
「はい、畏まりました。東宮様、早くお入りください。お風邪を召しますわ。」


東宮はいつものように円座に座り、脇息にもたれかかって綾乃が起きてくるまで書物を読む。今日から事始めで新年に向けての準備がはじまる。様々な殿上人達が東宮御所に参内し、挨拶に来る日でもある。


「そろそろ綾乃様を・・・。」


と籐少納言が東宮に声を掛けると綾乃を起こし、朝餉の準備をさせる。綾乃が着替え終わると朝餉が整い、東宮と一緒に朝餉を食べる。綾乃は東宮の様子を伺いながら食べる。


「綾乃、どうかした?今日は何だか朝から変だね。僕の顔に何かついているのかな・・・。」
「いいえ・・・。」


東宮は首をかしげて朝餉を食べ終わると、綾乃が食べ終わるまで書物を読む。


「そうだ、今日いろいろな殿上人達が出入りするから、調子が悪いのであれば、部屋にいるといいよ。いくら東宮妃であっても必ずいないといけないわけではないのだから・・・。」
「はい・・・。」


綾乃が食べ終わるのを待って東宮は直衣に着替える。綾乃は東宮妃付きの女官達に髪をとかれながら、考え込む。


(気付いていないようね・・・。)


「東宮妃様、お部屋に戻られますか?」
「いいえ、わたくしも東宮様のお側に・・・。」


そういうと、女官達は几帳を立てて、綾乃を唐衣に着替えさせる。


 昼頃になると続々と事始めの挨拶に様々な者達がやって来て、廂に座り御簾越しに挨拶をしたり世間話をしたりして帰っていく。やっと今日の予定を終えたのは夕方頃で、やはり堪える。


「綾乃、疲れたでしょう。ずっと側にいたのですから・・・。皆あなたが側にいたので緊張した様子だった。綾乃が入内するまで結構狙っていた者がいたとか言うしね・・・。さあ、今晩は早めに切り上げて寝ないと、明日は大臣達が続々と来るよ。もしかして右大臣が若宮を連れてきてくれるかもしれないよ。特に左大臣は次期関白を狙っておいでだから、きっとこの僕に売り込みをするのだろうね・・・。左大臣と会うのが一番疲れる。この僕とは外戚でもなんでもないからさ。結構焦っておいでなのだよ。」


東宮は世渡り上手といわれてもさすがに疲れたようで、夕餉の準備が整うまでの間脇息にもたれかかってウトウトしている。綾乃は近くにいる女官に言って衣を一枚かぶさせた。夕餉の準備が整い、綾乃は東宮を起こすと、驚いた様子で自分がウトウトしていたことに気付く。


「最近疲れがたまっているのかな・・・。もう東宮に就いて二年経つのに・・・。中務のころはいろいろな人にあったり歩き回ったりしていたのに・・・全然疲れなど感じなかったのに・・・。」
「まぁ、中務卿宮様時代とは違った責任というものがあるからでしょうね。雅和様、あとひと月は儀礼がとてつもなく多いのですからあまり無理をなさらず、程々に・・・。」
「そうだね・・・。さあ夕餉をいただいて、早めに寝よう。今日も寒いしこちらで。」


綾乃は夕餉を済ますと、一度部屋に戻り、着替えしなおすと再び寝殿の方に足を向ける。


「小宰相、今日は本当に冷えるわね・・・。雪でも降るのかしら・・・。」
「あら、本当に雪が・・・初雪ですわね・・・。」


綾乃は立ち止まってちらちらと落ちてくる雪を眺める。


「綾乃様、お風邪を召しますわ。さ、早く寝殿の中へ・・・。」
「ええ、そうね・・・。」


寝殿に入り女官達は寒い風が中に入らないように締め切る。もうすでに東宮は御帳台に入って、横になっていた。小宰相は綾乃を小袖姿にすると、きちんと着ていたものをたたんでいく。


「今日は小宰相が側にいるの?」
「ええ、昨日は籐少納言様や東宮様つきの女官達でしたので、今晩は綾乃様付きの者達が交代でお側におります。」
「そう・・・。」


綾乃は東宮の待つ御帳台に潜り込む。


「雅和様、寒いと思ったら雪がちらついておりましたわ。」
「そう、だから今日は一段と寒かったんだね・・・。明日は積もるかな・・・。積もるにはまだ早いか・・・。」


東宮は綾乃を呼び寄せて抱きしめる。外が寒いからか特に東宮の体の暖かさが感じられる。


「あたたかい・・・。」
「綾乃、ずいぶん体が冷えているね・・・。ずっと雪でも眺めていたのでしょう。温石でも持ってこさせようか・・・。」
「いいえ、こうしているだけで十分です。」


東宮は綾乃を横にすると自分も横になる。そして東宮は綾乃を胸に抱きながらすぐに眠ってしまう。


(本当に暖かい・・・。こんなに早く眠ってしまうほどお疲れだったのね・・・。)


綾乃も東宮の暖かさに包まれながら眠りに就くと、やはり朝方同じ夢を見る。そして同じように起きる。その後何日も同じ夢を見て同じ時間に目が覚めるので東宮も気になっていたのか、就寝前人払いをしてついに綾乃に問いただす。


「綾乃、ここ何日もうなされて朝方目が覚めるようだね・・・。どうしたの?」
「毎日同じ夢を見るのです・・・。とても恐れ多い夢で・・・。」
「人払いをしているから、言ってごらんよ・・・。」


綾乃は意を結していう。


「雅和様が、黄櫨染御袍を着て幸せそうに微笑まれるのです・・・。それを私と若宮が見つめているのですが・・・。」
「ん?それだけ?」
「はい・・・。」


東宮は微笑んで、綾乃を抱きしめて言う。


「うなされるような内容じゃないじゃないか・・・。安心していいよ。ここだけの話ね・・・。綾乃は本当に予知夢を見るね・・・。実は綾乃には言っていなかったのだけれど、父上は在位二十年を目途に譲位したいと仰せでね・・・。再来年在位二十周年だろ、それまでには譲位をとお考えのようだ。まだはっきり決まったわけではないのだけれど・・・。父上は二十歳で帝位に。再来年、僕も似たような歳になる。皇子も生まれたし・・・。でもまだ自信はないな・・・。二年間東宮としていろいろ学んできたけど・・・・。今のように綾乃をずっと側に置くことも出来なくなるし・・・。綾乃が眠れない理由・・・もっと複雑かと思ったよ・・・。僕は東宮だ、何かない限り、帝位に就くよ。いずれね・・・。さあ、安心してお休み。また明日、忙しいよ。もうすぐ晦日だからね・・・。」


綾乃は安心したのか、気がついたころには東宮の胸の中で眠っていた。


東宮はそっと綾乃を横にして、眠りに就く。綾乃はこの日以来、黄櫨染御袍の夢を見ることがなくなった。やはり気にしすぎだと綾乃は思った。



《作者からの一言)

あまり意味のない章かもしれませんね^^;でも着実に東宮の即位が始まっています。
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