4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第72章 朧月夜再び
 年が明け、今年いっぱいで帝が譲位するという正式な発表がされた。来年早々までに即位の予定である。その予定でこの年の予定が組まれていく。もちろん東宮は即位のために様々な事をこなしていく必要がある。公務も増え、充実した生活を過ごしている。もちろん後宮も帝の代が変わると、次の代の妃にこの後宮をあけ渡さなければならない。譲位後の御在所の選定から、女官の選定、役人の選定で徐々にではあるが準備をする。


 春が訪れ、譲位後の御在所も決まって着々と改装されていく。皇后綾子はある日の夜、今年最後の思い出の桜を見ようと弘徽殿からこっそり抜け出して、桜の根元に座り見上げる。今夜はなんともいえない朧月夜。満月なのだが、うっすら靄がかかったような月夜である。


(そういえばあの時もそうだった・・・。)


当時頭中将であった今の内大臣源朝臣将直としてはいけない恋に落ちたのもこの頃であった。あの出会いがあったからこそ、東宮妃である綾乃が生まれたのである。もうここに来るのは何年振りであろうか・・・。皇后はため息をついて眺め続ける。するとしげみで物音がする。


「誰!」


皇后は身を縮めて音のするほうを見つめる。


「その声は・・・綾子様・・・?」


声の主はしげみから出てきて、立ち止まる。皇后は声の主を見て驚く。


「将直様。」


皇后は立ち上がって衣についた土を掃う。


「将直様。内大臣になられても宿直ですか?」


内大臣は微笑んで言う。


「右大将も兼任していますので、本当にたまにですが人が少ないときだけ・・・。綾子様はなぜこのようなところに?このような夜中に供もつけずに危ないですよ。」
「今年でこの桜を眺めるのも最後でしょ。何だか寂しくなってしまって・・・。」
「そうですね・・・年が明ければあなたの御殿は綾乃が住むことになります。早いものですね・・・あなたとここで出会って十七年・・・。出会った日もこのような朧月夜で、あなたを皇后とは知らずどなたかの女官と思って朧月夜の君と呼んでいた・・・。」
「そうですわね・・・。あの頃はこのようにこっそり弘徽殿を抜け出して将直様と話すのが楽しみでならなかった・・・。とてもいい思い出・・・。和子様はお元気?」
「はい・・・。」
「幸せそうで何よりです。」


内大臣は不意に皇后を後ろから抱きしめる。皇后は抵抗をせずに、そのままでいる。


「あれからずっと綾子様の事を想い続けておりました。わけあって女王様を正妻に迎えましたが・・・。やはり忘れることなど出来ません・・・。今まで綾乃が側にいてくれたので、あなたへの想いを紛らわすことが出来ましたが・・・・。宇治に行かれたらもう・・・。」


皇后は内大臣から離れて言う。


「わたくしは帝の妃です・・・。もうこれで終わりにしましょ。あなたには和子様や若君、姫君がいるのです。」
「しかし・・・。」


皇后は振り返って内大臣に本当に最後のくちづけをする。そして皇后は内大臣から離れると、そのまま弘徽殿に方に走り去る。内大臣は桜の根元に座り込んで、ため息をつき桜を見上げる。


(そうだよな・・・もともと身分違いだったのだから・・・。綾乃という姫を頂いただけでも満足しないといけないのに・・・。)


内大臣は苦笑し、ため息をつく。


 走って弘徽殿の近くまで戻ってきた皇后は、息を整えるために階段に腰掛ける。


「綾子、そんなところで何をしている?」
「帝・・・。」


帝は供を連れずに皇后の御殿に来ていた。帝は皇后の横に座る。皇后は内大臣の香が移っていないか気になった。帝はなんとなく香に気がついたが、気がついてない振りをする。


「まだ夜は冷える。綾子、中に入ろう。」


帝は皇后の手を引き、弘徽殿に入る。女官達は突然の帝のお出ましに驚く。


「摂津、また皇后はこちらを抜け出していたよ。いくら警備の厳しい後宮とはいえ、夜は物騒だ。滝口の者や近衛の宿直の者の目に留まるかもしれない。」
「申し訳ありません・・・。」


摂津は帝に謝り、皇后の汚れてしまった衣装を取り替える。もちろん摂津も違った香のにおいが移っていることに気付く。もちろんその香の持ち主が誰かというのは知っている。摂津は皇后の香を移した新しい衣装に取り替えると、帝の待つ皇后の寝所へ皇后を向かわせる。皇后が寝所に入ると、帝は摂津以外の女官を部屋から下がらせる。皇后は帝と目を合わそうとせず、下を向く。


「綾子、内大臣は元気そうだった?」


と、帝の言葉に驚く。


「今日は近衛の宿直と聞いたから会っていない。」
「どうして私に聞くのですか?」
「さあね・・・。綾子なら知っているのかなって思ったから。」


帝は皇后を抱きしめ、皇后にわからないように改めて匂いを嗅いでみる。微かではあるが、髪に内大臣の香の匂いが残っていたが、衣に関しては摂津がすべて取り替えたので、すっかり匂いがなくなっていた。帝は少し嫉妬をしながらも、皇后と一緒に体を寄せ合って横になる。もちろん帝は皇后が内大臣と会ったことに気がついていると皇后は確信する。


(多分綾子はあの桜のところに行ったのだろう・・・。内大臣は必ず宿直の時はあの桜を経由して内裏を一周しているし・・・。偶然会ってしまったかもしれないな・・・。どうして私は綾子に甘いのだろう・・・。)


と帝は少し嫉妬しながら皇后とともに眠りについた。



《作者の一言》

これで皇后綾子と内大臣源将直との関係に終止符が打たれました。帝もなんとなくそのことに気づき、今夜だけはと許したのかもしれません。ホントに心が広すぎる帝ですね^^;
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