4年生、2年生のねえねと、幼稚園児の双子っちのいるママです。アメブロで発表している小説の倉庫として使っています。お好みの物があるかわかりませんが、覗いてくださいね^^ ご感想お待ちしております!

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第73章 宇治での出会い
 暑い夏がやってきた。東宮は綾乃を東宮御所に残して仲の良い左近衛少将源常隆と共に宇治を訪れる。常隆は東宮の警護を兼ねている。今回は改装を終了した宇治の院を下見に来たのである。もちろんお忍びであるので、最低限のものしか連れてこなかった。


帝が譲位後住む院は、皇后の母宮が、帝の曽祖父院に形見分けで頂いたもともと皇族所有もので、皇后の母宮が帝と皇后のために譲り渡したのである。母宮の住まいは隣の邸に移る。こちらは綾乃の亡き曾祖母の所有のもので、皇后の母宮とは親子以上に年の離れた姉宮である。内大臣の好意でその邸を皇后の母宮に譲ったのです。


 東宮は改装後の院を見て回ると、隣の別邸に日程は決まってはいないが、数日お世話になる。東宮は皇后の母宮静宮に挨拶をすると、部屋に案内される。


「常隆、ここは東宮妃が生まれたお邸らしい。数年はこちらで育ったって言うし・・・。綾乃の母君ってどのような方だろうね・・・。きっとお綺麗だったに違いない・・・。」
「そうですね・・・。」


東宮は綾乃が皇后の子である事を未だ知らない。もともと綾乃は内大臣似で、なんとなく皇后に似ているような感じがする程度なので、わからないのだ。少し宇治なら涼しいかなと思ってこちらに来たのだが、あまり都と変わらなかった。


「宮様、宇治を散策に行きましょう。即位されたらもう出歩くことも出来ませんよ。今のうちに・・・。もしかしたら理想的な女性に出会えるかもしれません。綾乃様だけとは言わずに・・・。」
「しかしね・・・。」
「行きましょう!宇治には私の母の実家縁の鳳凰堂があります。良ければ見せていただきましょう。」
「あそこは左大臣家、土御門摂関家縁の・・・。そういえばあなたの母と私の祖母は姉妹だったね・・・。父上は土御門摂関家の血筋だった・・・。」
「実は左大臣様に見せていただけるようにお許しを得てありますのでご安心を・・・。」
「そうか・・・。せっかくだから寄らせてもらおうか・・・。」


東宮は小葵文様の入った夏の直衣に烏帽子をかぶり、常隆は狩衣に烏帽子をかぶって護衛のための刀を携えて二人で散策に出かける。宇治川の川縁に近づくと、やはり風が涼しく、少しの間岩に腰掛けて二人で世間話などをして話し込む。ここ宇治は都貴族の別荘地であるので、涼みに来ている者達がちらほら来ているようだ。


「明日は狩衣にしよう。この直衣じゃ身分がわかってしまう。皇族の直衣じゃね・・・。」
「そうですね・・・。私もこれほど都の者達がこちらにきているとは知りませんでした。」


二人は宇治川の川べりを歩きながら、平等院に向かう途中、前に旅装束を来た若い姫と女房風情の二人が、道端でしゃがんでいる。東宮は常隆と共にその二人に近づき、常隆が二人に問う。


「どうかなさいましたか?どうもお困りのご様子で・・・。」


すると、女房が言う。


「姫様の草履の鼻緒が切れまして、足を挫かれてしまったのです・・・。私にはどうしようもなく・・・。困っておりました。」


すると東宮は姫の側に近づき、姫の草履を手に取ると、自分の小袖の袖を少し破いて草履を直す。


「宮様、そのようなことはこの私が・・・。」
「常隆、いいよ。これくらい。本当にお困りのようなのだから・・・。」


東宮は直した草履を姫に履かすと、姫は顔を赤くしてお礼を言う。


「どちらの宮様か存じ上げませんが、ありがとうございました。」
「歩けますか?歩けないようでしたら私がどちらかにお運びいたしましょう。」


常隆は東宮を止めに入ったが、聞き入れようとはしなかった。


「女房殿、この近くに縁の寺や別荘などはありますか?」


女房は困り果てた顔で言う。


「あるにはあるのですが・・・。姫様がこのあたりの縁のところには寄りたくないと・・・。」


東宮は困った様子で少し考えると、常隆に言う。


「常隆、大叔母様にこの姫を足が良くなるまでお預かりしていただいていいか聞いてきて。だめだって言われても連れては行くけど・・・。」


常隆は呆れた顔で邸に戻る。


「この近くにある邸だから、遠慮しないで・・・。さあしっかり掴まってください。」


そういうと東宮は姫を抱き上げて歩き出す。女房は申し訳なさそうに後からついて行く。なんとか邸に着くと、常隆が客間に案内する。東宮はすのこ縁に姫を座らせると、姫の草履を脱がせて足についた土を払うと、再び抱き上げ、畳の上に座らせる。


「さあ、こちらでじっとしていてください。今何か冷やすものを持ってこさせますから・・・。」


すると数人の女房が入ってきて、几帳を立てかけると、姫の旅装束を脱がし足の手当てをする。東宮は寝殿に行って静宮に会う。


「大叔母上、無理に客間を使わせていただきまして申し訳ありません。けが人を見つけてしまいましたので・・・。」
「まぁ、東宮様はお優しいこと・・・。見た感じかなり高貴なおうちの姫様でしょうね・・・。あのように良い衣装と香りをされておられるから・・・。こちらまでお運びになられたのですからたいそうお疲れでしょう。お部屋にお戻りになられて・・・お休みください。あの姫はこの私が責任を持ってお預かりいたしますから・・・。」


東宮はお礼を行って自分の部屋に下がる。そして小袖や直衣を着替える。常隆は東宮の側にやって来て、心配そうに声を掛ける。


「あのような距離を宮さまが姫を抱いてここまで来られるとは・・・。急いで馬でも借りに行けばよかったのですが・・・。お体のほうは大丈夫ですか?」
「いいよ。あれくらい・・・。そんなに重くはなかったし・・・。でも何処の姫なのだろうね・・・。このような場所で女房と二人でとは・・・。」
「本当におかしな話です・・・。」


すると、例の姫についていた女房が東宮の部屋にお礼にやってくる。


「先程は姫様のためにこのようなところへ連れてきていただきとても感謝しております。後ほど姫様のお邸からお礼を差し上げたく出来ればお名前を頂戴したいのですが・・・。」


東宮は首を振って言う。


「いえいえ、当たり前の事をしたまでです。私は訳あって名前は明かすことは出来ません。そしてそちらの姫君のお名前も聞くつもりはありません・・・。しかしなぜ近くに縁の場所があるのに寄りたくはないのでしょう・・・。そしてとても高貴な御家の姫君と拝見しましたが、どうして二人きりでこの宇治へ?」


女房は少し考えていう。


「とてもお恥ずかしいことで公言はしたくはなかったのですが、助けていただいたということで、お話いたします。実は姫様はお邸から家出をなさったのです。」


東宮は驚いた様子で言う。


「ほう・・・なぜ?」
「実は姫様には一度縁談があったのですが、ある理由で破談になったのです。もともとその相手のお方を姫様がお慕いされていらした方で、あの方ならとお想いでいらしたのですが・・・。もう姫も十八になられ、姫君のお父上様は他の方との縁談をおすすめになられたのです。しかし姫様は拒否されて・・・。勢いで家を出られたのです・・・。」
「それはそれは・・・。姫君はとても苦しい思いをされたのでしょうね・・・。ところで姫君の足の具合は?」
「こちらの邸の方に良くして頂きましたので、だいぶんよくなりました・・・。」
「でも無理はいけませんよ・・・また痛くなってしまいます。当分こちらにいらしたらいい。大叔母上もいいとおっしゃっているし・・・。遠慮せずに良くなるまでお過ごしください。」
「ありがたいお言葉でございます。ほんとうに・・・。」


女房は頭を深々と下げて東宮の部屋を出て行く。東宮は姫の怪我が大したことなく安堵する。


 次の日、東宮は狩衣を着て、常隆と共に昨日見に行けなかった鳳凰堂に向かう。もちろん狩衣姿の二人を見て門衛は通そうとしなかったが、常隆が左大臣からの紹介状を門衛に見せると、急いで門を開け、管理を任されている者が出迎えに来る。


「これはこれは、宮様。門衛の不手際申し訳ありませんでした。どうぞごゆっくりご見学ください。」


東宮は、このものに礼を言うと、案内されながらじっくりと見学をする。やはり何代か前全盛期の土御門摂関家の統領が自分の別荘を改装して寺院にしただけはある。いたるところに贅を尽くされ、とても美しいお堂になっていた。東宮はとても満足して、鳳凰堂をあとにする。東宮が部屋に戻ると都から文が届いていた。東宮は文箱を開けると、綾乃からの文であった。なんと文には綾乃が明後日こちらにやってくると言う。少し東宮は複雑な気持ちでため息をつく。


(いくら何もないとはいえ、どこの誰かわからない姫を同じ邸内に泊めていると知ったら綾乃はどう思うかな・・・。別に何もないけど・・・。勘違いが一番困る。)


側についている常隆は心配そうに東宮を見つめる。


「宮様、どうかされましたか?」
「明後日こちらに東宮妃が来るらしい・・・。別に客間の姫とは何もないのだけれど、勘違いされたら困るので・・・。何かあったときは常隆、頼んでいいかな・・・。」
「ええ、構いませんよ。宮様のためでしたら・・・。」
「すまないね・・・。」


常隆は東宮の部屋を下がり、自分の部屋に戻る。東宮は狩衣を着替え、直衣姿になる。そして釣殿に場所を移し、脇息に肘をついて、書物を読む。やはり釣殿は水辺に建てられているので、なんとなく涼しい風が流れる。もちろん几帳の後ろには警護のため、常隆が控える。反対側にある泉殿では遠くから例の姫君が東宮の姿を、顔を赤らめながら見つめている。もちろん姫は東宮であることは知らない。どこかしらの宮様としか思っていないのである。姫君が泉殿から見つめていることに東宮は気付いていなかったが、警護に当たっている常隆は姫の存在と気持ちに気がつく。


(きっとあの姫は東宮を想っておられる・・・。何とかして差し上げることは出来ないだろうか・・・。東宮はそういうことは少し疎い御方だし今まで東宮妃様一筋で・・・。)


もともと常隆は帝を始め、いろいろな方々から綾乃以外の姫にも興味を示させるように仕向けてくれないかと頼まれている。この宇治の旅行もその一環で、別荘地であり避暑地でもあるので、必ずというほど宇治川で舟遊び等をしているどこかの姫君がいるはずということで、出会いがあるかもしれないと帝が東宮に譲位後の御在所の下見に行ってくれないかと頼み、警護兼仕掛け役として常隆を同行させる。もちろん綾乃を連れて行かなかったのはこのためである。そしてここの主である静宮も皇后から事情を聞いて承知をしている。しかしながら突然明後日綾乃がこちらにやってくるのを聞いて、時間がないことに常隆は焦る。昨日の偶然の姫君との出会いはとてもいいチャンスであったが、まったく東宮は姫君の事を興味を示していない。それどころか、今日のように目的の物を見た後はすぐに帰ってきてこうして釣殿で書物を読んだり龍笛を吹いたりしている。このままでは都には帰れないと、悩み悩む常隆を知ってかしらずか、黙々と書物を読む。常隆は立ち上がって、恥を忍んで姫君の客間に行って姫君の女房と会う。


「お願いがあるのです・・・。姫君はもしや宮様の事を想っておいではないかと・・・。」


女房ははっとして常隆に言う。


「おわかりになられましたか?その通りでございます。あの宮様はどちらの方かとしつこくお聞きになられるのです。昨夜もよくお休みになられていません・・・。ところでお願いとは?」


常隆は座り直して姫の女房に言う。


「私は左近少将源常隆と申します。宮様については明かすことが出来ないのですが、ある御方より頼みごとをされこうして宇治までやって参りました。あの宮様はお妃様とお子様がおられるのですが、お妃様以外の姫君様方に興味を示されず、ある御方もお妃一人ではいけないと、こうして出会いを求めて・・・。しかし明後日、突然宮様のお妃様がこちらにやってこられると聞いて、焦っております。恥を忍んでお願いしたいのはそちらの姫様に今夜宮様と一緒に過ごしていただけないでしょうか?」


女房はなんとなく東宮の身分に感づいたらしく、うずづいて常隆に言う。


「わかりました、もしかして宮様は姫の父君が進めている縁談の御方かもしれません。姫様は権大納言藤原貞清卿の一の姫鈴華姫様であられます。もともと幼馴染の若君とご婚約されていたのですが、昨年突然お亡くなりになられて姫様も後を追って自害されそうになられたところに大納言様からの縁談話・・・。」
「ああ、昨年亡くなった東三条家の右近少将殿ですか・・・。知っております。とても利発で将来を有望視されていた方・・・突然のご病気だった・・・。」
「良くご存知で・・・。」
「権大納言様の姫君の事・・・来年入内内定とある御方から伺っております。それなら話が早いですね。宮さまが姫君を気に入っていただけないときっとまた入内をお断りになられます。そうすれば姫君は・・・。」


常隆と姫君の女房は打ち合わせをした後、また釣殿に戻る。泉殿の姫は諦めて部屋に戻って行ったみたいである。


「常隆、どこかに行っていたの?」
「ちょっと所用で・・・。」
「そうか・・・。もうきりがいいので部屋に戻るよ・・・。」


部屋に戻っても東宮はすのこ縁に座り込んでまだ書物を読んでいる。やっとのことで夕餉の時刻がやって来て常隆と共に夕餉を食べる。いつもよりも口数が少ない常隆に少し東宮は変に感じた。常隆はさっさと夕餉を済ますと東宮に頭を下げると部屋を出て行った。もちろん常隆は静宮や姫の女房との打ち合わせに出かけたのである。


 夜が更け、蒸し暑さのためなかなか寝付けない東宮はすのこ縁に座り込んで夜空を見つめ夜風にあたる。すると鈴華姫がそっと横に座る。東宮は姫に気付くと姫は頭を下げて昨日のお礼を述べる。東宮ははじめて姫の顔を見ると、顔を赤らめる。姫の姿かたちはとても美しく、綾乃に比べ大人っぽい。すでに周りにいたものたちは誰一人おらず、二人きりとなっていた。鈴華姫は東宮のすぐ側によると、東宮にそっともたれかかる。東宮は立ち上がって部屋に入り続けて鈴華姫も入る。


東宮は顔を赤らめたままで脇息にもたれかかり、ため息をつく。姫も同様に顔を赤らめる。長い沈黙が訪れ、東宮は緊張のあまり心臓が張り裂けそうになる。


「宮様、私・・・宮様に初めて会った時から宮様のことが・・・。」


東宮は困った顔で言う。


「私には妻も子もおります。あなたの想いを受け止めるわけには・・・。」


すると姫は泣き出す。東宮は驚いて姫のもとに駆け寄り、姫を抱きしめる。姫は東宮の張り裂けそうな心臓の音を聞き、もしかして東宮も同じ想いではないのかと思う。


「すみません・・・あなたを泣かせてしまった・・・。」
「私の事、お嫌いですか?」
「いえ、そうではありませんが・・・。」


姫は東宮の胸にうずくまって言う。


「宮様は自分の気持ちに嘘をついておられていませんか?」
「え?」
「宮様の速い鼓動が私には感じられます。私と同じ鼓動が・・・。」


東宮は苦笑をすると姫に言う。


「そうかもしれませんね・・・。先程あなたをはじめて見て心を奪われそうになったのは事実です。しかし、ここであなたと関係を持ってしまうと・・・。私はあなたを不幸にさせたくはありません・・・。間もなく別れが待っているのですから・・・。」
「構いません、意に添わぬ結婚をする前に一晩でもいい、想った方と過ごしたいのです・・・。」


東宮はうなずき、姫の顎に手をやると、姫にくちづけをする。東宮は少し戸惑いながら、姫を見つめて改めて抱きしめる。


「名前はなんと言うのですか?」


と、東宮は姫に問いかけ、姫はうつむきながら答える。


「鈴華です・・・。」


東宮は微笑む。


「鈴姫か・・・鈴の音のようにきれいな方だ・・・。足の方はもう大丈夫ですか?」
「はい・・・だいぶん・・・。」


東宮は姫の袿と単を脱がすと、抱きかかえて寝所にはいる。東宮は姫を横にすると自分も羽織っていた単を脱ぎ、一緒に横になり、姫に改めてくちづけをする。


「本当にいいのですか?一晩の関係でも?」


姫がうなずくと、東宮は慣れた手つきで姫の長袴の腰紐に手をあて解く。一瞬姫はビクッとして身を縮めたが、東宮に耳元で優しい一言を掛けられ安心したのかそのまま東宮に身を任せて一晩を東宮と過ごす。姫は何もかもが初めての経験だったので、あのあと一睡も出来なかった。ただ、東宮の胸に抱かれながら、一晩限りの恋を名残惜しそうに東宮を見つめながらいろいろと思う。そして東の空が明るくなりだした頃、姫は東宮の寝所から出て、乱れた小袖と髪を直し、着ていた衣装を着る。そしてそっと東宮の部屋を抜け出し、自分の客間に戻る。そしてせっかく出会って結ばれたのにもう別れなければならない悲しみで、座り込み泣く。


「姫様・・・。」
「あの方が縁談相手ならいいのに・・・。」


そういって女房にしがみついてさらに泣き出す。女房は姫の縁談相手がこの宮様であることは知っていたが、まだはっきり決まったことではないので伏せておくことにした。この後鈴華姫は昨晩に東宮にもらった扇を胸に再び寝所で眠りにつく。




《作者からの一言》

東宮は綾乃以外の姫に興味を持ち、ついに関係を持ってしまった。この姫はこの東宮が譲位後新帝として即位した後に初めての女御として入内する予定の姫なのです^^;もちろん東宮も知りません。鈴華姫はもちろん自分の嫁ぎ先がどこであるかは知っています。でも良く考えたらいけないことしてるんですよね^^;しかし偶然にも嫁ぐ相手と関係を持った人が同じだったから良かったのですが・・・・。違ったら豪いことですね^^;
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